知佳が指導教員について調査に来た期間は一ヶ月だった。最後の一週間のうち二日間をダブリンに滞在することになっていた。指導教員が「伝統的なお祭りがあるから、違う雰囲気を味わえるよ」と言った。今回はまた民泊に泊まることになり、その民泊のオーナーは指導教員の古い友人で、こちらに来るときはいつもその家に泊まっていた。二人が最初にアイルランドに着いた日も、ここに泊まったのだった。オーナーはその祭りの日には、子どもたちが仮装して一軒一軒回って踊るんだよと教えてくれた。知佳はそれを聞いて、途端にとてもおもしろそうだと思った。指導教員は笑いながら、それなら知佳と紗希も一緒に参加しなさいと言った。「私たち、もう子どもじゃありませんよ」知佳は気恥ずかしそうに言った。オーナーと指導教員はどちらも笑いながら、「私たちの目には、君たちはまだ子どもだよ」と言った。知佳も紗希も声をあげて笑った。「ダンスで集めたお金は、全部チャリティーに使われるんだ」と指導教員がさらに付け加えた。それなら……行くしかない!そうして祭りの日、知佳と紗希は二人ともきちんと仮装をして、地元の子どもたちに混じってステップを教わり、その場で覚えたそばから一軒一軒の家を回って披露していった。その日は大雪が降り、街が白い雪に覆われていたが、祭りの熱気は少しもそがれることがなく、街全体がまるで冬の遊園地のようで、あちこちから音楽と歌声が響いていた。知佳と紗希は子どもたちについて界隈をぐるぐる回り、次から次へと家々で踊り、体じゅうがぽかぽかに温まるまで跳ね回って、そしてまた一軒の家のドアを叩いた。ドアの向こうにあった大きな笑顔は彼女たちを見るなり一瞬固まり、しかしすぐに、さっきよりも大きな笑みに変わった。紗希は知佳よりも先に興奮して、大声で笑った。「うわ、ほんとにまた会えるとは思わなかったね!」ドアを開けたのは拓海だった。拓海は笑いながら紗希に、「ああ、雪がひどくてね。これ以上進むのはやめて、いったん戻ることにしたんだ。続きは来年の春にしようって話で」と言った。口では紗希に向かって笑っていたが、その視線はちらりと知佳のほうへ流れ、あたかも彼女に説明しているかのようだった。しかし知佳の目に入ったのは部屋の中にいるアナだけで、彼女は笑いながらアナに手を振った
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