凪紗のまつ毛がかすかに揺れた。だが、紬の嘘を指摘することはせず、ただ尋ねた。「……すごく仲のいいお友達なの?」紬は数秒間、言葉に詰まった。それからぎこちなく頷く。「ま、まあ……そんな感じ」「それなら、力を貸してあげてもいいんじゃないかな」凪紗は肩をすくめるようにして言った。「それもそうだね」紬は頭をかきながら笑った。「じゃあ、私もそろそろ行くね。また今度ご飯にでも行こう」「うん」凪紗が答える。紬が階段を下りていく姿を見送りながら、凪紗は眉を寄せ、何かを考え込んでいた。……例の投稿はあまりにも大きな騒ぎになっていた。ユーザーたちがたくさんコメントを残したことで、ヤクモヘルスグループもついに沈黙を保てなくなり、「投稿に言及された薬は当社が製造したものではない」と、声明を出すことになった。しかし、ヤクモ側が声明を出した直後、今度は別の話題がトレンドに浮上した。――「奇跡の新薬」の副作用が強すぎる、と糾弾する声だった。わずか数時間で閲覧数は数万件にまで跳ね上がり、被害者と名乗る人々が次々と体験談を投稿した。薬を服用してから病状が悪化したという者。薬の成分には大量の鎮痛剤が含まれているのではないかと疑う者。服用後に胃腸の不調や吐き気が生じ、さらには吐血したという者まで現れた。コメント欄はたちまち怒りと疑念で埋め尽くされ、その矛先は黒幕と目されたヤクモヘルスグループへと向けられた。ネット上で批判や追及が相次ぐなか、ヤクモは急きょ二度目の声明を発表した。問題の薬は一度も正式な承認を受けておらず、ヤクモが開発したものでも、製造を許可したものでもないこと。そして、すでに警察へ被害届を提出したことを明らかにした。だが、世間の騒ぎは収まるどころか、さらに広がっていった。「なぜ大量に流通していたのか」、「監督体制に問題はなかったのか」。そんな疑問が次々と投げかけられ、騒動はますます大きくなっていく。正俊はスマホの画面を睨みつけていた。指先が冷たくなる。本来、あの薬は短期間で副作用が現れるようなものではない。たとえ時間が経ってから患者に症状が出たとしても、それがあの薬によるものだと特定するのは難しいはずだった。――なのに、なぜこんなにも早く被害が出ている?正俊が考えを巡らせていると、凪紗が慌てた様子で部屋に入って
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