港町。瑠璃は三日三夜、昏々と眠り続けている。ついに、その指がぴくりと動く。俊也は息を呑み、かすかな嗚咽が一瞬止まり、目の奥にぱっと喜びの光が差す。「先生、先生!今、指が動いた!」その声にせき立てられたかように、病室のベッドに横たわる彼女は眉をひそめ、まぶたをかすかに持ち上げた。瑠璃の瞳が開くのを見るや、俊也は抑えがきかず、彼女を抱きしめるように身を投げかける。「瑠璃、やっと目を覚ましたんだな。僕、心配で心配で死にそうだったんだ……」俊也は涙声でしゃくり上げながら、途切れることなく言葉を並べ立てる。「医者は、今日中に目を覚まさなかったら、もう二度と目が覚めないかもしれないって!」鈍い頭痛に苛まれながら、騒ぎ立てる声にうんざりした瑠璃は、腕にすがりつく男を押しのけ、不機嫌そうに言う。「あなた、誰?」俊也の泣き声まじりの声は、その瞬間ぴたりと途絶えた。頬をぬぐう動きが、まるで一時停止させられたかのように止まった。まつ毛に涙を宿したまま、俊也は衝撃に打たれた顔で瑠璃を見つめる。「瑠璃、ぼ、僕が分からないのか?僕は俊也だよ」女の眉はさらにきつく寄せられる。「私の夫、澄人はどこ?」彼女は澄人に似た顔をした男をことごとく嫌っていた。似ているからこそ、なおさら嫌悪が募るのだ。目の前の男がたしかに澄人に七、八分ほど似ている。ただ、瑠璃には一目でわかる――これは澄人ではない。澄人の目元はもっと柔らかく、清らかで、伏せた睫毛にはどこか慈しみの気配が宿っている。彼のことを思い浮かべただけで、瑠璃の眼差しはふっと和らぐ。彼女はすでにすべての準備を整えていた。三日後の誕生日パーティーで、彼にプロポーズするつもりなのだ。とりわけ、あの指輪……瑠璃はポケットへ手を伸ばす。だが、次の瞬間、顔色がたちまち曇った。深く眉を寄せ、彼女は俊也を鋭く問い詰める。「ちょっと、私の指輪は?澄人に渡すための、あの指輪を見なかった?」指輪?どの指輪のことだ?あの指輪なら、五年前に澄人に贈ったはずじゃないのか?冷ややかで、まるで他人を見るような視線にさらされた瞬間、俊也の全身から血の気が引き、時が止まった。その場に釘で打ちつけられたように動けず、瞳にはただ愕然とした影が広がる。「瑠璃、何を言ってるんだ
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