小さな背中が、わたくしの前にすくっと立つ。小柄な少女が、向き合う姿は。男たちの失笑を買った。「ククク、世間知らずのガキが。お前が魔術を構築するより、俺の刃が、喉を掻っ切るのが先だぜ」 男は刃の切っ先をちらつかせ、一気に踏み込んだ。危ないっ?!「ええ、でしょうね。だから――」 ひゅん。軽やかに、飛ぶ。「ぐぅうっ!?」 膝。そう、しなやかな膝が、男の鼻っ柱にめり込んでいた。 瞬発的に飛びあがったルチアは、鮮やかな飛び膝蹴りを叩きこみ。「――魔術構築なんて、しませんよ」 いつの間にか、彼女の手には、硬質なブラックスティック。くるくりん、一回させて……男の肉体から、メキメキっと骨から奏でられる、不協和音。悲鳴。「なんだ、てめえっ!」「ああ。わたしは、ルチア・ファン・ギャニミード。……でも、覚えなくていいですよ」「な、なにを……ぐぎゃ!?」 返り血が、可憐な頬に一筋、飛んだ。 それでも、にっこりとルチアは微笑む。「どうせ、記憶ごと、綺麗に吹っ飛んじゃうと思いますから。――わたしも、わたしの“大切”を傷つけようとする人の顔、一秒だって、覚えておきたくないんです」 ――まあ、魔獣よりは、楽ちんそうで、よかったです♪ 鼻歌交じりに、聞こえたのはそんな言葉。 ――ガギンッ! かん高い金属音。 振り下ろされた刀剣を、ルチアは、こともなげに受け止めていた。 あまりの衝撃に、男の腕は、痺れと驚愕でわななく。「なっ!? なんて馬鹿力っ?!」「ひどい言い方。わたし“か弱い”乙女ですよ? ちょっとだけ、故郷の森がワイルドだっただけで」「そんな森があるかっ! どこの魔境だ!」 ルチアはおどけながら、スティックを、くい。手首を返し、ひねり上げる。 どんな原理か、呆気なく男はよろめき。ス
Terakhir Diperbarui : 2025-11-04 Baca selengkapnya