All Chapters of ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話 悪い人は打楽器よ、粉砕アンサンブル

 小さな背中が、わたくしの前にすくっと立つ。小柄な少女が、向き合う姿は。男たちの失笑を買った。「ククク、世間知らずのガキが。お前が魔術を構築するより、俺の刃が、喉を掻っ切るのが先だぜ」 男は刃の切っ先をちらつかせ、一気に踏み込んだ。危ないっ?!「ええ、でしょうね。だから――」 ひゅん。軽やかに、飛ぶ。「ぐぅうっ!?」 膝。そう、しなやかな膝が、男の鼻っ柱にめり込んでいた。 瞬発的に飛びあがったルチアは、鮮やかな飛び膝蹴りを叩きこみ。「――魔術構築なんて、しませんよ」 いつの間にか、彼女の手には、硬質なブラックスティック。くるくりん、一回させて……男の肉体から、メキメキっと骨から奏でられる、不協和音。悲鳴。「なんだ、てめえっ!」「ああ。わたしは、ルチア・ファン・ギャニミード。……でも、覚えなくていいですよ」「な、なにを……ぐぎゃ!?」 返り血が、可憐な頬に一筋、飛んだ。 それでも、にっこりとルチアは微笑む。「どうせ、記憶ごと、綺麗に吹っ飛んじゃうと思いますから。――わたしも、わたしの“大切”を傷つけようとする人の顔、一秒だって、覚えておきたくないんです」 ――まあ、魔獣よりは、楽ちんそうで、よかったです♪ 鼻歌交じりに、聞こえたのはそんな言葉。 ――ガギンッ! かん高い金属音。 振り下ろされた刀剣を、ルチアは、こともなげに受け止めていた。 あまりの衝撃に、男の腕は、痺れと驚愕でわななく。「なっ!? なんて馬鹿力っ?!」「ひどい言い方。わたし“か弱い”乙女ですよ? ちょっとだけ、故郷の森がワイルドだっただけで」「そんな森があるかっ! どこの魔境だ!」 ルチアはおどけながら、スティックを、くい。手首を返し、ひねり上げる。 どんな原理か、呆気なく男はよろめき。ス
last updateLast Updated : 2025-11-04
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第42話 黙秘権プリーズ!

 ルチアは、スティックに付着した血を、悪漢の服で雑に拭うと。 何事もなかったかのように、カチリ。それを腰に差した“杖の隣”へと、何事もなかったかのように、収納した。 杖との二本差し。つまり、あれは……折り畳み式の、対人魔術兵装。「ベアトリーチェ様! お怪我は、ありませんでしたか」「ひゃ、ひゃい! わ、わたくしは、だ、大丈夫ですけれど!?」 ぱたぱたと駆け寄ってくるルチア。 わたくしは恐怖のあまり、後ずさることしかできない。 だって、怖い! この子、どう考えても、わたくしより、あの魔獣より、ずっと、ずっと、怖い!?「え、でも。顔色悪いですよ? 本当に大丈夫ですか?」 わたくしの手を取り、心配そうに、顔を覗き込んできた。どの口が言ってるのかしら、あなたは?! でも、こくこくと、頷くことしかできなかった。「ふぅー、結構、いい運動になりましたね! あ、そうだ。司書さんに報告しなきゃ」 「うぎゃー」とさらに、どこからか新たな悲鳴が聞こえてくる。バージル殿下の研究室からだった。「あー。まだ、侵入者さんいたんですね。……一度、|魔術警報《セキュリティ》に検知されたら、図書館に住み着いている“知識のゴースト”さんたちに、魂吸われちゃうのに。あーあ、かわいそう」「かわいそうって!? この図書館、危険地帯過ぎませんこと!?」「そりゃ、国家の重要研究機関に付属する、機密書庫なんですから」 当り前でしょう、とルチアは首を傾げる。 わたくし、なんて恐ろしいところに忍び込んでいたのかしら。色んな意味での恐怖が、今さら、どっと伸し掛かってくる。「でも。ちゃんと、お約束、果たせてよかったです。ベアトリーチェ様にも、お父様にも」「あなたのお父様じゃありませんことよ?」 機嫌よさそうにニコニコするルチア。いいから、頬の返り血を拭いてちょうだいよ。 さっきまでの、戦いっぷりは幻覚だと思いたいけれど、証拠が目の
last updateLast Updated : 2025-11-05
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第43話 帰れば美しき、我が邸宅

 ガタン、ゴトン。石畳を駆ける車輪の音が、やけに頭に響くわ。「……で?」 向かいの席に座る、我が腹黒執事に向かって、わたくしは非難の声を上げた。「で、とおっしゃいますと?」「どこで油を売っていたのよっ! わたくしが、どれだけ大変な目に遭ったと思っているの!? 危うく、人生が、終わるところでしたのよ!?」「逆に、こちらもお聞きしたいのですが。待つようお伝えしたのに、なぜ、殿下の研究室から、わざわざご移動しようと?」 ……沈黙。 あ、これ、知ってるわ。わたくしの軽率な行動を、ねちねちと責められるパターンのやつだわ、あわわわわ!?「あー。……まあ、今回は、特別に、大目に見て差し上げてもよくってよ?」「まさかお嬢様は“待て”すら出来ない、やんちゃなお子ちゃまでいらっしゃいましたか?」「違うもん! あなたが、あまりに遅かったのが悪いんだもん!」「結果として。お嬢様の行動は、王立アカデミー附属図書館の|魔術警報《セキュリティ》に穴を開けたと同義なのですが、ご自覚は?」「はうっ!?」 そうなのよ。わたくし、隠し通路から、脱出しようとした訳だけれど……。 なぜか、区画の警備魔術が、一時的に、ごっそり解除されてしまっていたんですって!「あれって……やっぱり。わたくしの、せい、かしら?」「他にあるわけがないでしょう。おそらくは、王族の緊急避難通路を、不用意に起動した不具合でございますね」 スパッと言い切られた。うぐぐぐっ。「襲撃犯たちは、お嬢様の作った穴をまんまと利用し、殿下の研究室へ辿り着いた、と。よくぞまあ、侵入者を“手招き”しておいて、皆様にバレずに済んだものですね?」「いやぁあああっ! 言わないで、イヅル! なにも聞きたくないぃぃぃっ!」 ああっ、すべてが――わたくしのやらかしっ! 幸い警備体制を解除
last updateLast Updated : 2025-11-06
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第44話 夜霧ディヴェルティメント

 あれは、嘘偽りなき真実なのだろう。 私はそう思った。 “一人の父親として、ただただ娘の身を案じております” 走り書きされた文字には、父親の悲痛な思いが滲んでいたように見えた。 だからこそ、だ。シャーデフロイ伯爵邸に駆けつけた時、目の前に広がる光景に、己の思考が凍りいたのは。 門は、半壊。巨大な獣がこじ開けたかのように、へしゃげて。 かつて、寸分の狂いもなく整えられていた庭園は、いくつものブーツ跡で踏み荒らされ、魔術によって焼け焦げていた芝生が異臭を放つ。 ――戦闘は、あったのだ。間違いなく。それも熾烈なものが。 甲冑を着た衛兵たちが、負傷した仲間を運び出し、怒号に似た声を張り上げる。 だというのに。「これはこれは、殿下。……こんな夜分に、お早いことで」 館の大扉から、悠然と現れた当主ウェルギリ伯は。 今しがた、極上の一瓶を開けたところだと言いたげに、ブランデーグラスをゆるり揺らしていた。 背後では、メイドたちが、ガラス片を手慣れた様子で片付けている。そう、淡々と。日常の一環のように。 箒が掃く、サッサッ、という乾いた音。(伯どころか。使用人たちの、この落ち着きよう。この異常事態に、まるで動揺していない。……これは、なんだ?) 違和感を飲みこんで、私は尋ねた。「……どういうことだ、伯爵。一体、何があった」「なあに、文でお知らせしたとおりです。小うるさい羽虫が、騒いでいただけのこと。既に、叩き潰しましたゆえ、御安心召されよ」「だが、そなたからの報せでは……令嬢がっ!」「おお、左様。それについては、誠に、そう、誠に困っておりましてな。いやはや、どうしたものか、と」 そこにいるのは、愛娘の危機に動転する父親では、断じてなかった。 平時と何ら変わらぬ、悠然とした『翼ある蛇』……父王が警戒して止まぬ、辺境の
last updateLast Updated : 2025-11-07
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第45話 パン屑の先は、沼迷宮

 私は、この不吉な艶やかな黒に、目を細めた。紫がかった妖艶な色彩に。「これも、あえて残された、のか?」「……おそらくは」 もはや、不可視の戦争。そんな渦中に、知らぬうちに巻き込まれている。 どんな仮説を立てても、決定的な証拠に、何も至らない。「殿下。他の場所でも、同様の戦闘痕が、複数発見されております。この痕跡は、道しるべのように……王立アカデミーの方角へと、続いておりまして」「なんだと?」 ますます、面倒なことになった。 我々は、何者かの手によって、誘われているのだ。 あらゆる情報が、先程まで我々がいたはずの、あの場所へと、導いていく。「……行くぞ」 辿りついた図書館。司書に確認を取れば、判明する不自然な|魔術警報《セキュリティ》解除。 それは己のいた区画、第7書庫。そこを担当しているはずの、司書補ルチア。 まさか、と思った。いるかもしれない。険悪な関係の……我が婚約者が。なぜかそんな予感がした。「――二人とも、無事かっ!」 急いだ先に広がっていたのは、信じがたい光景。 床に転がる、さらなる賊、四人。 そして。「ベアトリーチェ……嬢。それに、ルチア」 目に飛び込んだのは、およそ現実とは思えないちぐはぐな絵図。 片や、涙目でぶるぶる震え、立ちすくむ令嬢。 片や、頬に血糊をつけたまま、穏やかに微笑む、もう一人の令嬢。「これは、一体、何があったんだ?」 思わず、唖然としながら投げかけた問い。 二人は、顔を見合わせると、こう答えた。「「そこに悪い人がいましたので……?」」 まるで示し合わせたような言い訳に、覚えた眩暈。 ――これはきっと、疲労が見せた幻覚に違いない。 ***
last updateLast Updated : 2025-11-08
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第46話 魔女はどこだ?

「してやられた、な」 されど、そう悲観することもないかもしれない。 ともすれば、これは私が真実に近づいている証左なのではないだろうか。 少なくとも、“黒幕”はそう恐れた。私という男を。そう考えれば、この胸の屈辱も、少しは――。「……などと、思わねばやってられんな」 虚勢だ。吐くのは、自嘲のため息。いずれにせよ、ここにあった事件の調査資料は、灰燼に帰した。 まさしく、犯人の思い通りになってしまった訳だ。(ならば、シャーデフロイ邸への襲撃は、陽動だったのだろうか?) いや、待て。犯人のもう一方の目的は、この私自身の暗殺だったようだ。 ならば、奴らにとって、“標的の王太子バージル”がここにいなかったことは、予想外だったのではないか。 そうだ。だとしたら……、まだ、“僕”は負けてない。 思考が、すぅっとまとまり――ふと、見上げたそこには、本棚が。「バージル殿下?」 動きを止めた私に、ローラントが心配そうに声をかけた。 だが、今はそれどころではない。本棚の配列が、変わっている。太陽への道、通商勅令、ある若き騎士の迷い、聖オットーの双王国年代記……。「……ローラント」「はっ」「私に、シャーデフロイ家襲撃の報を知らせ、この研究室から連れ出したのは、お前だったな?」「はい、もちろんでございます! ……それがなにか?」「ならば、信じるとしよう」 おそらく、ローラントは“白”だ。彼の忠誠心は疑いようもないだろう。 だが、他の騎士は? このアカデミーにいる、ありとあらゆる人間は?「バージル殿下。いったい、なにを……」「静かにしろ。壁に耳あり、だ」 ただならぬ気配を感じ取ったのか、ローラントは息
last updateLast Updated : 2025-11-09
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第47話 ウソとホントのパ・ド・ドゥ

「ですが……なにかの偶然という可能性はありませんか。たまたま本が落ちて、誰かが並び替えたとか。そう、それこそイタズラ、とか……」「信じたくないのはよくわかる。だが、ありえん。この状況下で、そんなイタズラをする馬鹿がどこにいる。私が、襲撃の報を聞いて、席を外した、ほんの僅かな間だぞ」「そう、ですね。……確かにタイミング的に、イタズラはありえない。しかし、だとすると……」 ローラントの顔が、絶望に染まる。 そうだ。即席の思い付きでは、ありえない。私の本棚に、どんな本があるかを把握してなければ、こんな真似は早々できんのだ。 故に、より恐ろしさが際立つ。「ですが、殿下。もしこれが、黒幕からのメッセージだとしたら、あまりに不可解です。なぜ、自分たちの標的を、わざわざ教えるような真似を?」「……わからん。だからこそ、不気味なのだ」 とんだ挑戦状だ。資料を焼いたうえで、この私に向かって、堂々とベアトリーチェ嬢を狙っていると、アピールしてくるとは。 もはや、「いつでも、貴様の身の回りの誰かを手に掛けられるぞ」と脅迫されているに等しい。頭に浮かぶ……大切な人々。「クク、ククク……。面白い」 不意に、乾いた笑いが、私の口から漏れた。 ああ、怖くてたまらない。怖いさ、たまらないとも! だからこそ、“僕”はシュタウフェン王家の次期後継者として、強く、振る舞わねばならなかった。「受けて立つぞ、正体不明の黒幕よ。このバージル・ファン・シュタウフェンが、この程度の揺さぶりで臆するとでも、思っているのならば――」 “僕”は自らを奮い立たせるように、そう宣言した。 それこそが、皆が、この国の未来を担う者に、求める姿なのだから。「必ず、後悔させてやるっ!」 臆病者には、誰も付いてこない。だから、“
last updateLast Updated : 2025-11-10
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第48話 皮肉も甘えも、あなたが挟むなら

 憤慨していると、イヅルは意地悪に口端を吊り上げて、ニュースペーパーを取り上げる。「――それはまさに、ベアトリーチェ伯爵令嬢が悪漢の手に落ちんとする、刹那。颯爽と現れたバージル殿下は、手勢の騎士団を率いて、賊を一網打尽にしたのであるっ」「や・め・な・さ・い! もう、わたくしの周りにいる大人って、本当に嘘つきばっかりっ! キーッ! どうして、誰も彼も正直に生きられないの!?」 本当、うんざりよ。すぐに、その気取った朗読を制した。 陰謀を打ち破った、騎士団を率いる若き王太子。 ささやかながらも、勝利に貢献したのは、またもや勇敢なる二人の令嬢。ベアトリーチェと、ルチア。「わたくし、己の心や在り様を、安っぽいフィクションにされて、楽しむ趣味はないのだわ」「ふむ。とは言え、貴族とは“多かれ少なかれ、多彩に人生を演出なさるもの”だと愚考しますが」「あのね、見てごらんなさいよ」 本日のお茶会は、中庭でのささやかなもの。暖かな日差し、色とりどりの花。なのに、わたくしの心は、ちっとも晴れやしない。 なぜかって? わたくしの目に映る、あらゆる景色が、嘘に塗り固められているように見えて仕方がないからよ!「ああ、なんてことでしょうね。たった二日で、あれだけ荒らされた庭が、何事もなかったかのように元通り。わたくし、我慢できる“多かれ”にも、限界があるのよ! わかる?」「ここは素直に。まずは夜を徹し尽力した、当家の庭師たちをお褒めになるべきかと」「そうね。ええ、そう、きっとね! でも、おかげで、わたくしの記憶が、おかしな妄言みたいじゃないのよ! ああっ、なんて皮肉なのかしら!」 つっけんどんに返す。 焼きたてスコーン、クロテッドクリーム、真っ赤な自家製ジャム。とてもじゃないけれど、そんなものを楽しむ気分にはなれなかったわ。「この紙面みたいに、わたくしにも“映える|脚色《クリーム》と真っ赤な|嘘《ジャム》を、スコーンに塗りたくれ”とでも言うのかしら」「そうつれない態度をなさらないでください。
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第49話 煩いのはコマドリですか?

「……平和、ですわねえ」 チュリリリリ、と駒鳥が鳴く。 講義が終わった後。お気に入りのテラス席での、ティータイム。アカデミーでの心地よい束の間。「以前は、お友だちと、他愛のないおしゃべりを楽しんだものですが……今や、すっかり静かなもの。ですが、逆に考えれば、一人だからこそ、誰に気兼ねすることなく、読書をしても構わないわけですわね」 詩集を片手に、ぽつり。 そう考えると、あながち悪いことではないように思えてくる。 誰かと一緒にいれば、流行のドレスの話やら、どこそこの家のゴシップやら、情勢の機微やらに、常に気を張っていなければならないのだから。 もちろん決して、わたくしにとって苦ではなかったけれど。「もしかしたら、一人でゆったり過ごせる、と言うのも……案外、悪くはないのかも」 もちろん、将来の社交を考えれば、ずっと一人きりでいるわけにもいかないけれど。 人生の今くらいは、ね。「みなさん、遠巻きには見てらっしゃるのよね。ちらちら、と」 『化けウサギ事件』と『図書館襲撃事件』。 二つの大事件を経て、わたくしを見る生徒たちの視線は、複雑怪奇なものへと変わった。 以前のように、あからさまな陰口を叩く者は、もういない。 今は、畏怖8割、好奇2割といったところかしら。風見鶏みたいに顔色を変えて、本当に大変そうね。どう扱ったらいいのか、わからない。そんな戸惑いが、サロンの空気全体に満ちている。 でも、もうひとつの原因は、明らかに――この異変。 人が話しかけてこない原因は……たぶん、アレ。(はあ。……また、ですわ) ぞくり。肌を舐めるような、執拗な視線。 わたくしは、ティーカップを口元に運びながら、さりげなく、本当に、ごく自然に、視線の主を探す。 (……いたわね。そこの柱の陰) 眉間に深い皺を寄せ、も
last updateLast Updated : 2025-11-12
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第50話 私はあなたを見ないと気分が悪くなる(前半)

 調べたら、ルチアったら! アカデミーの色んな所で、信じられないくらい活動してるの! 夜間の司書補だけでなく、剣術クラブ、馬術クラブ、薬草園の世話、魔術実践サークル、錬金術サークル……どんだけエネルギッシュなのよ! だから、薬草園で待ち伏せして、ドスドス近付いて、ドンと押してみたのだけれど!「押しても引いてもっ、体幹がっ、強すぎるっ!」「ああ。薬草園でのことですか? ベアトリーチェ様が突然、真正面から、しなだれかかってきたからびっくりしちゃいました」「しなだれかかったんじゃないわ! 突き飛ばそうとしたんだってば」「またまた~。でも、顔を真っ赤にしてて、息も上がってて、すっごく心配になっちゃいましたよ。そのまま倒れこんじゃうし」「勢い余って、ふらついたの! 力入れ過ぎて、眩暈が……あれは本気の嫌がらせだったのよ!」 そこを駆け寄ったルチアに、軽々と抱きかかえられ。“お姫様だっこ”で医務室へと運ばれ。 最終的には「ベアトリーチェ様ったら、わたしに会いたい一心で、お体に鞭打ってご無理を!?」という、熱病のような特大の勘違いをさせてしまったわ。「あんなのっ! 一生忘れられないわよ、アカデミーで公然羞恥プレイじゃないの! とんだ、晒し者よ!」「あはは、恥ずかしがり屋さんなんだから~」「笑わないの! わたくしは真面目に言ってるの!」 でも、その。ち、力強い腕だったわ。……意外と。 思い返すと、思わずポッと照れてしまう。あんなに力強く抱きしめられたの、生まれて初めてだったから。「と言うか。……あなた、どうして、そんなに逞しいのよ?」 思わず、本音がぽろり。 すると、ルチアは、「えーとですねえ」と、屈託なく笑った。「うーん、平民だった頃は、ひろーい野山を駆け回ったり、羊を追いかけて、時々、その羊を狙ってくる化け狼を、狩ったりしてましたからね。だから、かなぁ……?」
last updateLast Updated : 2025-11-13
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