午前の講義を終え、回廊を歩くわたくし。ブツブツ独りごちる。「結局のところ、何が悪かったのかしら?」 歯噛みするほどに悔しい。 ルチアの態度なんて、もう絶望よ。『素敵な人』なんて扱いされるたびにゾワゾワするもの。 エイデンの森から帰ってきてから、ずっと考えているけれど。結局のところ、わたくしの計算とは検討違いな方向にばかり事態が転がっていく。 庭園迷路を、全力逆走してしまった時みたいだわ。(経験あり)「うーん。でも、よくよく考えてみたら……ウサギちゃんが化物になったのは、わたくしのせいではないわ。頑張って嫌味を言おうとしたところに、トラブルが起きちゃっただけですもの」 そうよ。そうなのよ! わたくし、今回は何も失敗していないじゃない! ルチアを転ばせたり、汚すことはできなかったけれど。ツンツンすることは、頑張ったのだし! あのまま何も起きてなければ、きっとすっごい見事な意地悪も出来たはず! たぶん!「となれば、話は簡単ですわ! ぐずぐずしていないで、さっさと次の計画を立てればよいだけ!」 そうよ、いつまでも足踏みしているなんて、わたくしらしくない! ファイトよ、ベアトリーチェ! 一度そうと決まれば、胸抑えきれない創造の炎が、メラメラと燃え上がるのを感じるわ!「そうよ、噂が活発な今こそ、何をやっても効果的!お覚悟なさいな。次こそ、ぎゃふんと言わせて差し上げますから」 自然と口元が綻び、悪役らしい笑みが浮かんでしまう。うふ、うふふふ……。「――何の話だ。ベアトリーチェ嬢」 突然、北風が頬を掠めるかのように、鋭い声が飛んだ。 回廊の先に、そびえ立つような人影。その正体は――。「ひゃぁあああっ!? バージル殿下!?!?」「……人の顔を見て、悲鳴をあげるとは。いい度胸だな」 陽光を溶かした金髪に、湖の青を閉じ込めたような碧眼。肌は磨き上げられた象牙細工。 この国の最高傑作たる彫刻すら凌駕する美
Terakhir Diperbarui : 2025-10-24 Baca selengkapnya