Semua Bab ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~: Bab 31 - Bab 40

47 Bab

第31話 メラメラ燃えるイマジネーション(前半)

 午前の講義を終え、回廊を歩くわたくし。ブツブツ独りごちる。「結局のところ、何が悪かったのかしら?」 歯噛みするほどに悔しい。 ルチアの態度なんて、もう絶望よ。『素敵な人』なんて扱いされるたびにゾワゾワするもの。 エイデンの森から帰ってきてから、ずっと考えているけれど。結局のところ、わたくしの計算とは検討違いな方向にばかり事態が転がっていく。 庭園迷路を、全力逆走してしまった時みたいだわ。(経験あり)「うーん。でも、よくよく考えてみたら……ウサギちゃんが化物になったのは、わたくしのせいではないわ。頑張って嫌味を言おうとしたところに、トラブルが起きちゃっただけですもの」 そうよ。そうなのよ! わたくし、今回は何も失敗していないじゃない! ルチアを転ばせたり、汚すことはできなかったけれど。ツンツンすることは、頑張ったのだし! あのまま何も起きてなければ、きっとすっごい見事な意地悪も出来たはず! たぶん!「となれば、話は簡単ですわ! ぐずぐずしていないで、さっさと次の計画を立てればよいだけ!」 そうよ、いつまでも足踏みしているなんて、わたくしらしくない! ファイトよ、ベアトリーチェ! 一度そうと決まれば、胸抑えきれない創造の炎が、メラメラと燃え上がるのを感じるわ!「そうよ、噂が活発な今こそ、何をやっても効果的!お覚悟なさいな。次こそ、ぎゃふんと言わせて差し上げますから」 自然と口元が綻び、悪役らしい笑みが浮かんでしまう。うふ、うふふふ……。「――何の話だ。ベアトリーチェ嬢」 突然、北風が頬を掠めるかのように、鋭い声が飛んだ。 回廊の先に、そびえ立つような人影。その正体は――。「ひゃぁあああっ!? バージル殿下!?!?」「……人の顔を見て、悲鳴をあげるとは。いい度胸だな」 陽光を溶かした金髪に、湖の青を閉じ込めたような碧眼。肌は磨き上げられた象牙細工。 この国の最高傑作たる彫刻すら凌駕する美
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-24
Baca selengkapnya

第32話 メラメラ燃えるイマジネーション(後半)

《これは王家と伯爵家における、政治的決定だ。余計な期待はせぬようにな》《互いに、割り切るべきだろう。そうではないか、ベアトリーチェ嬢》 思い出される苦い記憶。 婚約が決まった時の、お茶会での振る舞い。 我が家を侮辱し、イヅルを犯罪者の末裔呼ばわりした高慢な態度。 わたくしが笑顔で、何度も何度も歩み寄ろうとしたのに、素っ気なく袖にし続けた、あの日々。「故に、妙な支障があるならば、すぐに医師に報告するのだ。後々、王室に累が及ぶような事態は、避けたいゆえな。……不必要な騒ぎは、ごめん被る」 畳みかける、そっけない言葉の数々。 ああ、そうね。彼が本当に気にしているのは、わたくしの体調そのもの、ではない。(王室に不必要な累が及ぶこと。自分の名声に傷がつくのがそんなにお嫌?) だからこそ、表面上は配慮を装って『形だけ』は尋ねた、ということなのだろう。 やはりいつもの彼だわ。そう考えると、ストンと腑に落ちた。 胸にあるモヤモヤが、結露となって奥底へと落ちていく。 だからこそ、なおさら無性に腹が立った。 あなたがわたくしを踏みにじった、あの屈辱の時間は……決して、なかったことになんかならないのだわ!「バージル殿下。わたくしたちには、余計な期待も気遣いも、必要ありませんわ。今まで通り、お互いに、必要な距離感を持つべきですわね」 わたくしが言い返すと、バージル殿下は驚いたように目を見開く。 やはり、この堅物王子様の考えは、どこまでいっても理解できないわ!(たとえ王妃になるのは良しとしても――あなたの隣になんて、死んでもごめんですわっ! 今さら、この気持ちは変わらないっ!) あなたは、わたくしの大切を傷つけたのよ! ローラント殿が悲しそうな目で、「ベアトリーチェ様」とすがるように名を呼んできたけれど。それ以上、言葉は紡がれなかった。 わたくしは丁寧に一礼して、場を去る。二度と振り返らなかった。 そこから離れても、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-25
Baca selengkapnya

第33話 貴女の企み、スケルツォみたいね

「――というわけなのよ! イヅル!」 自室に戻ったわたくしは、興奮冷めやらぬまま。我が忠実なる執事に、雷鳴の如き閃きをつまびらかに叩きつけた。 壁には情熱と努力の産物……もとい、巨大人物相関図。その中心に、わたくしは新しい付箋を、ドン!と力強く貼り付ける。【次期作戦目標:王立アカデミー附属図書館】「ほう。あの図書館、でございますか」 イヅルは、まったく驚く素振りを見せず、静謐に紅茶の準備を進めている。 銀のポットから、田園風景が描かれた陶器のカップへ。琥珀の液体がなみなみ注がれていく。 カモミール特有の、リンゴに似た爽やかな香りが、ふわりと心を撫でた。(あれ? この香りは……) どうして、今日はカモミールを選んでくれたんだろう。心がささくれ立った夜、悪夢にうなされた夜に、そっと淹れてくれるティーブレンド。 ……まさか、わたくしがアカデミーに復帰した当日だから? 今日一日、起きたであろう、目に見えない心労を慰めてくれようと? すん、と、昂っていた気持ちが、凪いでいく。 つい、わたくしは、黙々と給仕をするイヅルの横顔を、じっと見つめてしまう。 すると、視線に気づいたのか、イヅルはクスリと悪戯っぽく微笑んだ。「おや、いかがなさいましたか? わたくしめの顔に、何か?」「なんでもありませんことよ!」 危ない、危ない。気持ちが弛んでしまいそうになってしまったわ! こういう、たまに見せるさりげない優しさが本当に危険っ! わたくしは、慌てて咳払い。本題へと戻る。「そう、狙いは図書館なのよ! バージル殿下が、己の知識欲を満たすために入り浸っている、あの探究の聖域! この手で、あそこを混沌の渦に叩き込んで差し上げるの!」「……まあ。別に、狙い自体が悪いとは申しませんが」 差し出されたカップを受け取りながら、わたくしは不敵な笑みを浮かべた。「ふふん。素直にわたくしを褒めなさ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
Baca selengkapnya

第34話 鐘が鳴れば、本が誘うの

 カラーン、カラーン……。 閉館を告げる鐘の音が、物悲しく鳴り響く。  王立アカデミー附属図書館。大閲覧ホールの、目立たぬ書架の陰で。  わたくしは、分厚い図鑑を盾にしながら、息を殺していた。 周りでは、生徒たちが「あら、もう閉館ですって」「レポートが終わらないわ」なんて、名残惜しそうに席を立ち、ぞろぞろ出口へと向かう。  閉館間際の、浮き足立ったざわめきは独特よね。  死角にいたわたくしのすぐ傍を、書物整理を始めた一人の司書補が、足早に通り過ぎた。「お嬢様、もうよろしいですよ」 顔を上げれば、いつもの漆黒の執事服ではなく。  アカデミーの優秀な学生が務める『|司書補《アプレンティス》』知的で、少し禁欲的な制服を着こなしたイヅルの姿。(……似合っているじゃ、ありませんの) それになんだか……いつもより、ちょっとだけ、若く見える。  もし、あと何年か。わたしたちの年齢が近かったなら、こうして、一緒にアカデミーに通えていたのかしら、なんて。「しかし、お嬢様。このような回りくどいことをせずとも、シャーデフロイ伯爵家として、正式に夜間利用の手続きが取れたのでは?」 「そんなの、わたくしが犯人だという証拠を残すようなものじゃないの!」 「ほう。証拠を残すとまずい、という自覚は、おありで」 当り前よ! だって、こんなの犯罪じゃないのよ。  今日のわたくしたちは、『閉館時間ギリギリまで熱心に勉強していた、真面目な生徒&親切な司書補』として潜りこんだのよ。わかってらっしゃる? やがて、最後の利用者が去り、扉が閉まる。  しんと静まり返る図書館。遠くから司書たちの足音や作業音、定期巡回の衛兵が歩けば鎧が擦れる。  いつもの図書館とは、まるで違う。緊張を孕んだ響き。  そこをてくてく、と息潜めて歩けば――。「わあ……」 まだ夜には早いと、すがりつくような夕暮れ。天井のステンドグラスを透かしては、床に宝石を散りばめたみたいな神秘的な模様を描いている。 混じり合った、独特の『知
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
Baca selengkapnya

第35話 悪役令嬢は本もお好き(前半)

「どうするのよ、イヅル! このままでは、ただ不法侵入しただけで終わってしまいますわ! わたくしの『叡智の森に響く、不協和音』は、どうなってしまうの!?」 「……そのような、ポエミーな作戦名だったのですね」 わなわなと震えるわたくしを見て、イヅルは、ふぅ、と、本日何度目になるかも分からない、諦念に満ちたため息をついた。「仕方がありませんね。では、目標を変更いたしましょう」 さらりとイヅルは、一枚の見取り図を取り出した。「“全て”を狙うのは物理的に不可能です。……ならば、狙うべきは、ただ一つ」 白手袋に包まれた、長い指が指し示したのは、この広大な図書館の、ほんの一画。とある小さな一室。「……ここが、何ですの?」 「バージル殿下の、本当の“聖域”。――閉架書庫に隣接する、彼個人の研究室でございますよ」 あんぐり。最初は何を言われたのか、さっぱりわからなかったわ。  知らない情報が、脳に到達するまでって、本当に時間がかかるものなのね。「そんなところがあるなんて、初耳でしてよ!?」 「王族権限で、個人的に借りておられる一室ですね。どのような研究をされているかは、存じ上げません。……まあ、予想はつきますが」 「内容なんかはどうでもいいのよ! こんな情報があるなら、最初から教えてくれたらいいじゃないのよ!」 そうだわ! 狙いは殿下、ただ一人ですもの! 図書館全体を荒らすなんて、野蛮で非効率極まりないわ!  なんてスマートな作戦なのかしら!「ご理解いただけたようで何よりです。さあ、参りましょうか。衛兵が巡回に来る、その前に」 イヅルは迷うことなく、わたくしをエスコートしてくれた。  向かった先は、書架にある『古代シュタウフェン朝 王政史 第七巻』。  この分厚い背表紙に手を掛け、いくつかの手順をこなすと……ごごご、と、壁面の一部が、内側へと開いていく。  現れたのは、ひんやりとしたカビと。忘れられた時間の匂いする、秘密の通路。「なっ……! どうして、こんなものが!?」 「王侯貴族が頻繁に利用する施設など、そこかしこに秘密通路の一つや二つあるものですよ。……緊急時の、避難経路も兼ねておりますしね」 「それも初耳ですけれど!?」 いったいイヅルの情報網は、どうなっているのかしら。というか、その理屈だと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-28
Baca selengkapnya

第36話 悪役令嬢は本もお好き(後半)

「何事だ、ローラント。騒がしいぞ」 バージル殿下は、顔も上げずに答える。いつも通りの、北風みたいな声だ。 でも、どこか疲労困憊が滲む。長い時間、勤勉に励んでいたことが窺えた。「申し訳ございません。それがですね……」 駆け寄ったローラントが、耳朶に口元を近づけ、なにかを伝えた。「――なんだとっ!?」 カチャン、と鋭い音を立てて、殿下の持っていた羽根ペンが床に落ちた。苛立ちと、信じがたいといった動揺の表れ。 さらに差し出された一通の文書。受け取り、封を切った殿下の眉間に、深い皺が刻まれる。「……先の事件に、関連しているのか? いや、それより――彼女は、無事なのか?」 え、彼女? 誰? ……何の話をしているのかしら? なにがなんだか、まるでわからないけれど、とんでもなく、きな臭いことが起きてるみたいなことだけは、わたくしにも分かる。 バージル殿下は読んでいた資料を、パタン、と乱暴に閉じる。 さらに厳しい表情で立ち上がった。「分かった。すぐに向かう。お前は、先行して、状況をさらに詳しく把握しろ!」「はっ!」 敬礼し、嵐のように去っていく、ローラント殿。 バージル殿下も、無造作に置かれていた剣を手に取る。焦燥に駆られた表情で。「これも……私の未熟さ故、なのか?」 あの氷点下の仮面すらも、脆く剥がれ落ちていくかのような剥き出しの葛藤。そのまま部屋を足早に出て行ってしまった。 すると、研究室は無人になった。残されたのは、読みかけのまま机に広げられた資料と……殿下の描きかけのメモだけ。「ねえ、イヅル」「はい、お嬢様」「なんだか全然よくわからないのだけれど。わたくしたち……とんでもなく、ラッキーなのではなくて?」 そう。 何の苦労もなく、邪魔者はいなくなり。目の前には、無
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-29
Baca selengkapnya

第37話 剣を取れ、後悔よ我を好きにせよ(前半)

 思考を研ぎ澄ませる、静寂。 閉館後のアカデミー附属図書館。この片隅に与えられた、私だけの書斎。 王太子という重責から解放される、数少ない居場所。 父上や臣下たちの、期待も失望も、ここには届かない。いつもならば、心安らかながら研究に没頭できるはずが……。「クッ。どの文献にも、該当するものがない」 安息は未だに訪れない。 机に広げられているのは、資料の山。 あの忌々しい『化けウサギ事件』で使われた術式のスケッチ。そこから関係しうる呪印の膨大な文献。 だが、古い資料からでは、類似点がまるで見いだせない。「事件の真相を、この手で暴き出す……そう部下に吠えたではないかっ!」 父上は「忘れろ」とおしゃった。 すべて調査委員会に任せろ、と。そも、こんなものは王太子の仕事ではないのだと。(そうだ、落ち着け。父上が仰る通りだ。為政者たる者、思考すべきは事件の『真実』ではないっ! 王国にとっての『有益な物語』。この騒動をいかにして王家の威信高揚へと繋げるか……それこそが私の仕事だ) 上に立つ者の責務とは、必要な仕事を、必要な人間に割り振ること。 このように、コソコソ動いてしまえば、『殿下は、誰にも任せられないと、我らをお疑いになっている』と不和を持ち込みかねない。「だがっ、どうすればいいっ! 何をすれば、この焦燥感は止むのだ!」 吐き捨て。苛立ち紛れに、髪をかきむしる。真実が闇に葬られて欲しくないっ、この手で掴みとりたいっ! 焦りが、思考を鈍らせる。分かってはいる。だが、どうしようもなく、心が急くのだ。 あの事件以来、ずっとそうだ。あの女のことを考えると、どうしようもなく、ペースが乱される。 ――ベアトリーチェ・ファン・シャーデフロイ。 苦々しくも無視できない、私の最大の汚点。(あの女は……一体、何者なんだ。否、『何』なのだ?) 理解不能だ。 社交界
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-30
Baca selengkapnya

第38話 剣を取れ、後悔よ我を好きにせよ(後半)

 シャーデフロイ家の、禍々しい『翼ある蛇』と『ジェンシャン』の封蝋。 私は破り捨てるように封を切り、中身に目を通す。目に入る、走り書きされた、乱れた文字。--- 火急ゆえ、失礼には御海容を。 宮廷内の誰が『敵』に内通しているか分からぬ、この状況下。 されど、シュタウフェンの若獅子たる殿下の双眸だけは、曇りなきものと信じ、筆を執っておりまする。 己が力不足を認め、恥を忍んでどうか何卒。我が至宝、ベアトリーチェをお救いするため、力をお貸しいただきたい。 一人の父親として、ただただ娘の身を案じております。 ご助力賜りし御恩は、必ずやお返しすることをお誓い申し上げまする。 ~ヴェルギリ・ファン・シャーデフロイ~--- 気づけば、密書をわなわなと握りつぶしていた。(馬鹿な! 伯爵家の警備はどうした!? これはなにかの企みか、いや、だが……) あの、ウェルギリ伯が。父上でさえ一目置く、あの老獪な毒蛇が、私個人に、頭を下げる、だと。疑いよりも、戸惑いが先に立つ。「先の事件に、関連しているのか? いや、それより――彼女は、無事なのか?」 出た声は、自分でも驚くほど、感情に揺れていた。抑えきれぬほど、マグマのように熱く滾る。 パタン、と、読んでいた資料を乱暴に閉じた。もう、こんなものを調べている時間はない。 もはや逡巡は、なかった。「分かった。すぐに向かうとしよう。お前は、先行して、状況をさらに詳しく把握しろ」「はっ!」 敬礼し、走り出すローラント。 残された書斎で、私は、強く、唇を噛みしめた。「これも……私の、未熟さ故、なのか…?」 己への、不甲斐なさに嘆きが漏れる。 そうだ。私が、もっと早く、己と向き合っていれば。 ――いや、今、後悔している時間など、ない。 私は立ち上がると、愛剣を鞘ごと、荒々しく掴み取った。 後悔よ、我を
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-01
Baca selengkapnya

第39話 飽きた迷子は、ピカロ行き

 でも、また気付く。それはそれで、またこの塔を並べ替える必要が……あるのでは? じっと見るのは、積まれた本。今となっては、もっと面倒ですわね。「うう、お夜食のサンドイッチ。早く食べたいわ……」 ぐぅ、お腹まで「もうやめようよ」ともの悲しく訴えてくる始末。 ああ、もうっ! どうしたらいいのかしら! そんな風に、一人で頭を抱え、うんうん唸っていたら…ピコーン!「――そうだわ! そもそも、ちゃんと順番通り並べる必要なんて、これっぽっちもないじゃありませんの!」 目的はあくまで、バージル殿下を、精神的に追い詰めること。 殿下が資料を探した時に、“いつもの場所に、いつもの本がない”だけで、目的達成ではないかしら!?「うふふ。さすが、わたくし。天才だわ。おなかが空いてる方が、名案が閃くようですわね~♪」 一度そうと決まれば、もう、迷いはない! 今回のテーマは、ランダム! 歴史書の棚に詩集を差し込み、兵法書の隣に動物図鑑を並べ……何の脈絡もなく、本を突っ込んでいく。「ふぅ~。満足! 頑張ったわ、わたくし!」 ふと、壁の振り子時計を見上げれば。「あら、もうこんな時間? イヅルったら本当に遅いですわね……?」 一体どこで油を売っているのかしら。 でも、まあ、いいわ。先に帰ってしまいましょう! イヅルも大人なのだし。別にわたくしが先に帰ってしまっても、一人で帰れるわよね。(ふふん、放っておいたあなたが悪いのよ。後で、たっぷりお説教して差し上げるわ!) 意気揚々と、書架に偽装された隠し扉の前へ。 ……そして、わたくしは、ぴたり固まった。「……あら?」 そう。研究室の壁と本棚しかない、この状況。ホール側で、イヅルが操作した手順は覚えているけれど……。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-02
Baca selengkapnya

第40話 図書館はお静かに

「なんだと!? あのシャーデフロイの魔女だとっ!?」「ええ、そうよ! さあ、我が眷属たち! この身の程知らずたちを、永遠の闇に葬ってやりなさいっ!」 ガバッ!? 悪漢たちは、思わず身構えて、周囲を警戒。背中合わせに、即席陣形。「な、なにも起こらねえぞ……ぐわっ!?」 ぶん投げたのは、一番重そうな法典史。リーダー格っぽい男の顔面に、見事クリーンヒット! あ~、最近、本当に、投擲の腕前ばかり上達している気がするわ~。「うふふふ、オーーッホッホッホッ! お笑いですわー、なんてお粗末ですこと! 眷族なんているわけがないのですわ、このおバカさん!」 ああ、もうダメ。人間、恐怖が限界を超えると、どうやら変なキレかたをするらしい。 わたくしは、半泣きのまま踵を返し、研究室の扉へと、レッツ突進!「てめぇ、このアマッ……!」  男は鼻っ柱を抑えていた。鼻血がだらだら流れている。だいぶ不味い当たり方をしたらしいわね。「あはははははっ、アポイントメントも取らずに訪問するからですわ~!」 なぜか、笑いが止まらない。涙はぽろぽろと零れ落ちてくるのに。 もう、わたくしの情緒は、めちゃくちゃだった。 バーン!と、勢いよく扉をブチ開け、そのまま明るい廊下へと転がり出る! 背後から追いかけて来る、男たちの怒声。「小娘をまんまと逃がしたな、この間抜けどもっ!」「さっさと始末しろ! バージルだけじゃねえ、奴も標的だ! この部屋にある資料も、全て処分しろとのお達しだぞ!」「待ちやがれっ!」 もう~!! なんなんですの~!!!!? なに! なにが目的!? バージル殿下ですって? わたくし、殿下の暗殺計画に、巻き込まれているというの!? 魔術を使いたくても、こんなパニック状態で、精密な術式など組めるはずがない! ドレスの裾を、膝上までたくし上げて、全力疾走よっ!「うう~! 最近、わたくし、走ってばっかりですわ~っ! 追いかけられてばっかりです
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-03
Baca selengkapnya
Sebelumnya
12345
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status