Semua Bab ポンコツ悪役令嬢の観察記録 ~腹黒執事は、最高のショーを所望する~: Bab 21 - Bab 30

47 Bab

第21話 悪夢の目覚めにレベランス(前半)

「今だッ! 撃てェッ!」 殿下の号令一下、轟音。騎士たちが一斉に、眼下の魔獣たちへと魔弾の雨を降らせる。 袋の鼠となった魔獣たちは、次々と魔弾に貫かれて倒れていく。 生き残った魔獣は、それでも俊敏な動きで闇に紛れようとした。でも、もう逃げることはできないの。なぜなら――!「蛍光インクで光っているぞ! よく狙え! 一匹たりとも逃がすな!」 そう、シャーデフロイ家の秘伝インクは――魔力光で蛍光するから。それはもちろん、みんなが使ってる魔術灯でもね。 そして、最後に残った、ひときわ巨大な一匹を……!「必殺! 田舎娘アッターック!!」 わたくしの背後から、雄々しく駆けつけてきた、ルチア渾身の|一撃《スコップ》が、脳天に炸裂! 地面へと叩き伏せたの。「よし、取り押さえろーっ! 生きている魔獣は捕獲だ!」 騎士団の魔力の鎖が、生き残った瀕死の魔獣に絡みつき、動きを封じ込めていく。 ……ああ、ようやく終わったのね。 スコップを杖のように突き、荒い息をつくルチアと。 泣きながら、他の令嬢と抱き締め合うツェツィーリア様と。 無理がたたって、足がガクガク震え、もう一歩も動けない、わたくし。 みんな、生きてるぅうううっ!!!「……うっ!」 安堵した瞬間、崩れ落ちそうになる。 でも、身体は、ふわりと、誰かに抱きとめられた。「大丈夫ですか? シャーデフロイ嬢」「え、ああ。ありがとう、ござ、いま……す?」 毛布をかけてくれる、にっこり笑うこのお顔。 それは研究員に変装した、わたくしの腹黒執事だった。「ご立派でしたよ、お嬢様。今宵の貴女様は、どんな魔法生物よりも輝いておられましたね」 イヅルは誰からも見えない角度で、そっとウインクをしてみせた。 魔法、生物扱い……ですって!?
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-14
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第22話 悪夢の目覚めにレベランス(後半)

「ご心配には及びません。これくらい、どうということはありませんので」 心を読んだように、微笑むイヅル。  いつもの食えない笑みに、なんだか無性に腹が立って枕を掴んだ。  なんで、わたくしがイヅルの心配なんかしなくちゃいけないのよ!「この! どの口が言うのかしらっ!」 枕を掴んで投げつけようとしたけれど、力が入らなくて、ぽすん、と情けない音を立てて落ちるだけ。いたたたたっ!?「わたくしが、どれだけ怖い思いをしたと思ってるの! あなた、途中まで高みの見物を決め込んでいたでしょう!?」 「いえ、そんなことは。忙しく働いておりましたとも。ほら、きちんと研究員として、お嬢様方をご案内して差し上げていたではありませんか」 「そもそも、あの人があなたの変装っ!??」 すぐ目の前にいたなら、最初からそう言いなさいよ!「もっと早く助けなさいよ!  ちょっとでも遅れていたら、わたくし、今頃っ!」 思い出して、ぶるりと身体が震える。  確実にあの時、迫っていた死の気配。思わず、恐怖に飲みこまれそうになる。 すると、イヅルはベッドの傍に跪き、包帯がまかれた手をそっと両手で包み込んできたの。大きくて、逞しい手が。「……え?」 「申し訳ございませんでした、お嬢様」 真摯に真っすぐ、黒曜石の瞳が見つめて来る。「貴女様を、危険な目に遭わせました。いかなる理由があれど、それは万死に値する、私の落ち度。……どうか、お許しを」 顔を伏せ、わたくしの手の甲に、額を寄せる。  その姿は、罪の許しを請う、敬虔な信徒のよう。  ちょ、ちょっと、待って! こんなイヅル、わたくし知らないんですけど!?「え、ええと……別に、許さないなんて、一言もっ!?」 「いいえ、いかなる罰もお受けしますので、どうか……」 「そんなこと言われても、困りますわっ?!」 いつも飄々としている彼が、こんな風にしおらしくしているなんて。なんだか、調子が狂ってしまうじゃないの!「も、もういいで
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-15
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第23話 騎士はかく語りき

「そうとも! あのパニックの中で、なぜ、伯爵令嬢はあれほど明確な指示が出せた? 極めつけは、あの“魔力蛍光インク”だ! 我々が暗闇で射撃する羽目になることを、最初から知っていたかのような、用意周到さではないか!」 カールの言は、大きく力強い。 そう、騎士達はプロだ。だからこそ、理解してしまう。 ベアトリーチェの行動が、どれほど『ありえない奇跡』の連鎖であったかを。 ここまで重なる偶然など、ありえないのだと。「それは……! 確かに、理由はわからぬ。しかしっ!」「だとすれば、伯爵令嬢は英雄などではない。己の名声のためなら、生徒の命すら駒として使う、恐るべき魔女だ!」「そのような侮辱、許されはせんぞ! カール卿!」 魔女。これは単に魔性を持つという意味ではない。 人に仇なす、“魔人の女”を指している。公然と、貴族の令嬢に向けて良い言葉では――本来は断じてない。「ふぅ。貴様こそ冷静になれ、ローラント。我々騎士団は、まんまとあの女狐の掌の上で踊らされたに過ぎんのだよ」「黙れッ!!」 ローラントが、激昂してカールの胸ぐらを掴みかかった。「卿は見ていなかったのか!? 恐怖に顔を歪ませながらも、たった一人、魔獣の群れに立ち向かわれた、あのお姿を!」「ああ、見たさ! だからこそ、反吐が出る! あれも全て“演技”だとしたら、どれほどの怪物かとな!」「なっ……?! 伯爵令嬢は、我々と同じく傷だらけだったのだぞ!」「擦り傷程度であろうが。名誉の負傷と、マッチポンプの自傷では、訳が違うぞ」 そう、今まさに。 ベアトリーチェ・ファン・シャーデフロイの評価は、真っ二つに割れていた。 伯爵令嬢は、『命を賭けた、勇猛果敢な英雄』なのか。 それとも、『全てを仕組んだ、血も涙もない魔女』なのか。 とは言え、どちらかに断定できるほどの材料もなく。「おい。さすがにカールは、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-16
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第24話 プリマドンナの不在プリズム

 警護騎士団の詰め所が、物々しい論戦に白熱する頃。 王立アカデミー女子寮のサロンは、正反対の甘い香りに包まれていた。 色とりどりのマカロンパリジャン、メレンゲ菓子。フレーバーはローズ、ピスタチオ、フランボワーズ。 そこに美容と健康に良いブレンドハーブティー。流行るオリエンタルな香水。 そんな華やかな雰囲気とは裏腹に、集う令嬢たちは、どこかヒステリックな熱を帯びていた。「まあ、ツェツィーリア様! 本当に、ご無事で何よりでしたわ! あの恐ろしい魔獣とと来たら、真っ先にツェツィーリア様を狙っていたではありませんか!」「そうですわよ。思い出すだけで、今でも身が震えてしまいますわ!」 一人の令嬢が、思い出したようにハンカチで目元を押さえる。 サロン全体でも、参加者は少なくない。再びあの夜の恐怖を思い出し、シンとなる。「フン! あんなケダモノ、あたしが本気を出せば、どうと言うことはなかったわ。……ちょっと、不意を打たれただけよ」 されど、サロンの中心人物、ツェツィーリアは不機嫌そうに返す。 シューベルト侯爵家令嬢として、万全の状態ならばなんとかできた。いや、出来なければならない。という自負はある。 ああ、落ち着いて、心が静まった状態で杖が振るえたならば。「でも、まあ、ね。……あの女、ベアトリーチェが、あたしたちを助けたのは、事実よ」 それでも不本意そうに、しかしはっきりと事実を認めた。 この一言が、堰を切ったように、令嬢たちの好奇心と疑惑に火をつける。「でも、ツェツィーリア様! 不気味じゃありませんこと? なぜ、あの方だけが、ウサギたちの危険性に、最初から気づいていたのかしら?」「そうよ! あの時の、氷のように冷たい声!『牙を隠していないとも、限らないのではなくて?』ですって! まるで、全てを知っていたかのようだったわ!」 一気にゴシップ特有の、ねっとりとした熱を帯びていく。 待ってましたとばかりに、ツェツィーリアは、扇をパンっと開いて、推理を披露し始めた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-17
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第25話 カラスのスープは甘く、切ない

 日が傾き始めた頃。 わたくしは、ようやく筋肉痛が我慢できる程度には、回復していたわ。「お嬢様。お目覚めはいかがですか? 厨房に、滋養豊富なコンソメ・ドゥーブルと、胃に優しい鶏肉入りのパナードを用意させましたが」 音もなく現れたイヅルの手には、湯気立つ皿が乗ったトレイ。 とっても美味しそうな匂いね、でも――。「ふんだ。わたくし、食欲なんて、これっぽっちもございませんわよ」 ――ぐぅうううううううっ。 言うが早いか。高らかに鳴り響いたのは、紛れもなく、わたくしのお腹の虫。「ほう。食欲がない、と」 くっ!? イヅルを困らせてやろうと思ったのに! わたくしったら、お腹の虫まで正直者なんだから!「むぅ~……な、なら、食べさせなさいな。わたくし、もうスプーンを持つのも痛くて仕方ないのですわ」「おやおや。とんだ甘えん坊さんですね」「全然違いますーっ! 誰かさんが助けるのが遅かったせいで、全身が痛むのです! 責任を取らせているだけですわ! わかります!?」「はいはい。すべて慈悲深きビーチェお嬢様の仰る通りでございます」 イヅルは、くすり、と喉の奥で笑うと、ベッド脇に優雅に椅子を引き寄せた。 厨房に特別に作らせたという、滋養たっぷりの暖かいスープを、わたくしの口元へ。あーん。「……熱いわよ」「これは失敬。では、冷ましてから」 ふー、ふー、と。銀のスプーンに息を吹きかけるイヅル。 うー。なんだか、見ているこっちが、気恥ずかしくなってしまうじゃないの。「一応、聞きますけれど。あの惨状、まさかあなたが仕組んだわけではございませんわよね?」 気まずさを紛らわすように、一番聞きたかったことを口にした。「あの惨状、と申しますと?」「一流を自負しているのだから、主人が言わなくてもお察しなさいな」 イヅルとキクチの一族なら、あの程度の混乱を作り出すことなど、造作もないはずだもの。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-18
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第26話 翼ある蛇には、血も涙もある

「おや、旦那様。おかえりなさいませ。もう少し静かにお入りいただけた方が、傷ついたお嬢様への気遣いとしては、適切かと存じますが」 イヅルが、涼しい顔で皮肉を言う。 いつも気配なく侵入してくるくせに、いけしゃあしゃあとよく言うものだわ。この執事は。 が、今のパパには、そんな嫌味など聞こえていないようだった。「……ビーチェ?」 ベッドの上の、包帯だらけのわたくしの姿を認めると、あの策略家として名高い毒蛇の強面を、くしゃくしゃに歪ませて。 よろよろと生まれたての子鹿のような、覚束ない足取りで歩み寄ってくる。「ハァイ、パパ♪ ……もしかして、その、怒ってる?」 努めて明るく、おどけて、ひらひらと手を振ってみせる。 けれど、返ってきたのは――。「ビーチェーーーーーッ!!」 むせび泣くような、魂からの絶叫だった。 津波の勢いで駆け寄って来たかと思うと、わたくしの小さな体は、ありったけの力で、むっぎゅーっと、骨が軋むほど強く抱きしめられていた。「ふがっ! ぱ、パパ、くるひぃ! くるひぃよぉ……!?」 熱い雫が、シルクの寝間着に、ぽた、ぽたと染みを作っていくのがわかる。 耳元で聞こえるのは、もう、言葉にならない、しゃくり上げるような嗚咽。「うわーーーーーん! よがっだ! 生ぎでだ! ほんとうに、よがっだぁぁぁぁぁっ!」 あの冷徹非情で知られ、政敵からは“翼ある蛇”と恐れられるシャーデフロイ伯爵が。 家臣たちの目も憚らず、わたくしの寝間着に顔を埋めて、おいおいと、声を上げて号泣している。 あまりのことに、わたくしも、イヅルも、遅れて駆け付けた使用人も、みんなポカン。「ぱ、パパ! みんな、みんな見ておりますわよ!」 さすがに、ちょっと恥ずかしいっ! イヅルがそっとハンカチを差し出しているけど、そんな紳士的な気遣いしなくていいから、早くこの怪力から助けてぇっ!
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-19
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第27話 幕間劇 ~ 目覚めぬ悪夢の遁走曲(フーガ)

 エイデンの森での騒乱が、生徒たちの安堵と、駆けつけた騎士たちの怒号で満たされる、ほんの少し前のこと。 騎士団の掲げる剣と魔装ライフルが放つ魔弾すら届かない、森のさらに昏き領域。 そこでは誰も知らぬ、もう一つの逃走劇があったのだ。「ハァッ、ハァッ! くそっ、どこだ、どこからっ!?」 逃げ惑うは、とある術師。 ざわり、と背後の茂みが揺れる。違う、右だ! いや、頭上か!? 木々の梢を、黒い鳥のように軽やかに飛び移る、いくつもの影。それはもはや、人間が重力の下で行う動きではなかった。「クソッ! なんだ、こいつらは!? どこから現れた! 報告にはなかったぞ!」 忌々しげに吐き捨てる声は、震えている。 灯りは使えない。使えば、闇に潜むナニカに、己の居場所を教える自殺行為に等しいからだ。(なぜ、こいつらはこんなにも夜目が利く? 暗視の|霊薬《ポーション》を飲んですら、この有様なのだぞ!?)  ああ、楽な仕事のはずだった。 アカデミーに潜ませた内通者の手引きで、ちょっとした仕掛けを施したシロガネウサギの群れを放つ。起きる惨劇。 そこにちょいと追い打ちで、標的に奇襲を仕掛ければ、もう終わりだ。 結果はどうでもいい。シュタウフェン王立アカデミーが、血に染まる事件さえ起こせれば、火種は国内外にまで広がるはずだったのに。「ぐふっ!?」 すぐ後ろを走っていたはずの仲間が、短い呻きと共に、崩れ落ちた。 なのに、いつの間にか……正体不明の存在に、一方的に追い詰められている。「どうした!?」「こ、こいつ……息をしていない。外傷は……ないぞ!? 毒、か?」 崩れ落ちた死体の首筋に、虫刺されたような小さな小さな痣が一つ。 ……だが、この暗闇では知る由もない。「おい、こっちもだ! また誰か減ったぞ!」 仲間が一人、また一人と物言わぬ骸となる。隣にいたはずの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-20
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第28話 珍獣様のおな~り~!(前半)

「なんだ、騒がしいな。知り合いか?」「えーと……わたくし、見当もつきませんわ。うふふふ」 我が物顔で、このシャーデフロイ伯爵家の敷地内に、ズカズカ上がり込んでくるような、常識外れのご令嬢なんて……一人しか知らないけど。「おそらく、お前への見舞いだろう。ならば、私が顔を出さねばなるまい」「でも~、わたくしてば~、まだ本調子ではございませんのよ~? だからあまり……」 ――タタタタタタタタッ!!! こちらの会話を隔たるように、絨毯の上を、仔馬が駆け抜けぬけるような音が、近づいてくる! え、嘘でしょ?!「お客様、お待ちになって!? 危のうございます!」「廊下を走られては、いけませんっ!? お客様ーっ!?」 メイドたちの必死の制止も、まるで効果なしっ! どんどん、どんどん、近づいてきて――。 スパーーーン!(本日2回目) さっき、パパが半壊させかけた扉が、とどめを刺す勢いで、再び開け放たれた! がらんがらん。あああっ、ドアノブが床の上をころころと転がって……(諦め)「お待たせしましたー! ベアトリーチェ様、お加減いかがですかっ!」 息を切らし、熟れたリンゴみたいに頬を上気させたルチアが立っていた。 手には、素朴な枝編みのバスケット。(わたくし、あなたのことなんか待ってなかったわよ!?) なんだか、もう、頭痛がしてきそうだわ。「ルチア、どうしてあなたがここに? それにどうやって、わたくしの部屋が……」「メイドさんたちに聞いても、通してくれそうになかったので、自力で探しました! 途中から、治療に使われそうなハーブの匂いがしたので、すぐに分かりましたよ!」「匂いっ!?」 なんなのかしら、この野生児は!? まさかご親族に、狩猟犬とかいらっしゃる? 呆気に取られていると、ルチアはパタパタと、ベッドのそばまで駆け寄って、わたくし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-21
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第29話 珍獣様のおな~り~!(後半)

 すると、父の眼が鋭くキラリと光った。「そうか。つまり、君は……我が娘ベアトリーチェに、大きな借りがある、と。そう考えてよいのかな?」「借り、ですか?」 本気で借りと言うのなら、キッチリ返してくれるんだろうな? そんな、わかりやすい圧だった。命の恩人ならば、相応の元が求められる。「――はいっ! 私にできることなら、なんでもお手伝いしますっ!」 でも、ルチアは怯まなかった。(なんでもお手伝いする!? それ、政治的に言っちゃいけない|言質《ヤツ》ナンバーワンよ。誰か教えてあげて!!?) あわわわ、となるわたくし。百戦錬磨の父も、あまりに真っ直ぐな言動に、さすがに毒気を抜かれタジタジ。 そして、ちらりと、わたくしとイヅルの顔を見比べる。 ――なんだ、この、とんでもない爆弾娘は。 鋭い眼が、そう語っていたわ。 この娘、一切、裏表がないどころか……感情のボリュームがマックス過ぎる。「それで、その、なんだ。君も、今回の件で、怪我などは……」「私はこの通り、ぴんぴんしてます! ベアトリーチェ様が、守ってくれたので!」 力こぶを作るような仕草をするルチア。 考えたら、魔獣とスコップで殴り合って無傷とか、この娘、それだけでも普通にとんでもないわね。 怒涛の勢いで、ルチアのしゃべりは止まらない。くだらないことをどんどん、父に一方的に話しかけていくのよ。信じられる?「だから、私、ベアトリーチェ様のお父様に会えて、ほんっとうによかったです!」「……そうかね」 そこで、百戦錬磨の父は何を想ったのか。父は、鼻から、ふぅ、と長い息を漏らし。 ……なぜか、ほんのり優しい顔になった。「ベアトリーチェ」「は、はい」「……良い友人を、持ったな」「えっ!?」「私は、王宮に戻
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-22
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第30話 イマージュ仕立てのアカデミア

 ふと我儘な感傷が、胸をよぎる。(はあ。どうせなら、本当のわたくしを評価されたいものだわ) でも、“本当のわたくし”とは、一体誰のことかしら? 悪役を演じようと、空回りばかりしている、このわたくし? それとも、森を駆け回っていた、あの無邪気だった子供?(社交界の華だと褒めそやされていた、わたくしだって。……今となっては、どこまでが本当のわたくしだったか) そんな、わたくしらしくないことに思考が沈みかけた。「ベアトリーチェ様ーーーっ!!」 わたくしはハッと顔を上げた。 ドタバタと、駆け寄ってくる満面の笑みが一つ。「ルチア、あなた」「お身体、もうよろしいのですか!? イヅルさんから、今日から復帰されると伺って、朝からずっとお待ちしていたんですっ!」「……また、イヅルが余計なことを」 思わず、こめかみがピクリと動く。 彼女は、周りの生徒たちなど、気にも留めていない。 ずい、とわたくしの腕に、子犬みたいにぎゅっと抱き着いてくる。「ルチア!? あなたいきなり、なにをっ! このアカデミーの状況を分かってらっしゃる!?」 生徒がざわりと波立つ。「まあ、ギャニミード嬢、あの御方に!?」「……なんて命知らずな」 ああ、もうっ! 悪目立ちしているじゃないの!「え? ――ああ。誰かに注目されてるのなんて、いつものことじゃないですか。それがどうかなさったんですか?」 え、どうかなさったんですかって……気付いては、いるの?「わかっているなら、なぜ――」「だからですよ! だから、私、こうしてお迎えに来たんです。……私が一番に、ベアトリーチェ様はそんな人じゃないって。素敵な人だって見せてあげなくちゃ」 ぱあっと、花が咲くような笑顔。 わたくしは言葉を失った。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-23
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