All Chapters of 旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させていただきます: Chapter 31 - Chapter 40

50 Chapters

第31話 さよなら、ノイマン家

 全ての荷造りが終わったのは午後4時を回っていた。「ゲルダ様、この荷物はどうしますか?」ジャンが尋ねてきた。「こんなに大量に運ぶのにはいささか人手が足りませんね」ジェフが荷物を見つめている。私達の背後には32個のトランクケースが積み上げられていたのだ。「ええ、そうね。取り敢えずこの荷物は台車に乗せて外に運び出しましょう。すぐに持って来てくれる?」すると……。「はい! 俺がすぐに持ってきます!」いきなり背後で大きな声が響き渡った。「「「え?」」」私達が驚いて振り向くとそこに立っていたのは何とウィンターであった。「ウィンター! 生きていたのね!?」「勝手に殺さないで下さいよ。とにかく台車が必要なんだですよね? 何台必要ですか?」気持ち悪いくらい愛想笑いを浮かべたウィンター。「そうねぇ……この荷物を全て運び出せるだけの台車が必要だわ」「この量だと台車が2台もあれば足りますね。それじゃ大至急持ってきます!」ウィンターは駆け足で部屋を出ていった。「……一体アレは何なのかしら……?」「う〜ん……ひょっとすると媚を売ってるのではないですか?」ジェフが首をひねる。「寝返るつもりじゃないですか? ゲルダ様の元に」ジャンが驚きの言葉を口にする。「はぁ? 冗談じゃないわよ。私は今迄散々ウィンターから酷い呼び出しを受けていたのよ。アイツったらね、私がハァハァ息を切らして必死で歩いているのに、あざ笑っていたのよ。そんな男なんかこっちに寝返ってきてもお断りよ」するとガラガラと大きな音が聞こえてきた。音はどんどん大きくなっていく。そして……。「お待たせいたしました! ゲルダ様!」大きな声と共にウィンターが台車を持って現れた。しかも2台同時に。これには流石に驚いた。「ちょっと、どうやって2台一緒に運んできたのよ」「何、後ろの台車はロープでくくりつけて一緒に引っ張って来たのですよ」私の質問に自慢げに語るウィンター。「へぇ〜中々やるじゃない。ウィンターのくせに」「ええ。無い知恵を絞ってきました」自分で言うとは卑屈な男だ。「それじゃ、さっさと台車に荷物を詰め込みましょう。外に運び出すのよ」「「「はい!」」」私の言葉に3人の男たちは元気よく返事をした。**** それから1時間後――屋敷から運び出したトランクケースをウィンターが持
last updateLast Updated : 2025-10-22
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第32話 アネットとラファエルの真実

「さて、それじゃ行くわよ」「はい」私の言葉に大きく返事をするアネット。もはや私達の立場は完全に逆転だ。2人でノイマン家に背を向けて歩き始めた時……。「ちょっと待てぇ!」散々聞き覚えのある声が背後から聞こえた。「何よ……うるさいわね?」振り返ると、肩で息を吐きながらこちらを睨みつけているラファエルがいた。「まだ私に何か文句でもあるの?」腕を組みながらラファエルに尋ねた。アネットも無言でラファエルを睨みつけている。「ああ、あるぞ。いや、文句しかない。ゲルダ! お前が出ていったら誰が金銭面で俺たちの面倒を見るんだ? 使用人たちはゲルダが出ていったことを知って、全員が荷造りし始めているぞ。この屋敷を出ていくと言ってな。お前……ウィンターを使って言いふらしただろう! 使用人たちの給料はお前が支払っていたとな!」ビシッと人を指差すラファエル。全く……何処までも上から目線の男だ。ムカつく奴め。「ええ、そうよ。事実を述べたまででしょう? それで? 使用人たちが皆荷造りしているということは……給料が貰えなくなるから辞めるということね?」「ああ、そうだ! お前が全額預貯金を引き出したせいで、俺たちは文無しになってしまったんだよ! どう責任を取ってくれるんだ! 弁償しろ!」するとそれまで黙って聞いていたアネットが、あろうことか口を挟んできた。「いい加減にしなさいよ! 全て自業自得でしょう!? ゲルダさんにあんな仕打ちをしていればいずれ離婚を言い出されるとは考えもしなかったの!?」「な、何だと!? この……裏切り者め!」「何が裏切り者よ! 私をダシにして、夫持ちの女性と今迄堂々と不倫してきたくせに!」何? 今アネットは何と言った?「え? ちょっと待って。アネット、貴女がラファエルの恋人なんじゃなかったの?」「「違う(わ)!!」」今度はアネットとラファエルが同時に声を上げた。「え? 一体どういうことなのよ?」「それは……」ラファエルが言いかけた時、アネットが口を開いた。「ラファエルは黙っていて! 聞いて下さい。ラファエルはもう3年も前から夫がいる女性と不倫していたのですよ。そしてその不倫を隠すために幼馴染で身寄りのない私を恋人のフリをさせて、堂々とあの屋敷で不倫していたのですから! しかもベロニカを私の親友に見立てて!」アネットは自棄気味に
last updateLast Updated : 2025-10-23
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第33話 私の事業計画

――19時すっかり夜になってしまったモンド伯爵家の玄関前で私とアネットはタクシーから降り立った。「ご乗車ありがとうございました!」タクシー運転手は大喜びで走り去って行った。それは当然だろう。ここまでの運賃は3500シリルだったのだが私は5000シリルを支払って、残りはチップとして運転手にあげたのだから。「ゲルダさんは太っ腹ですね~」アネットが感心している。「そりゃそうよ~。だって彼らは歩合制で働いているのよ? まだまだタクシーは普及していないから乗る人も少ないのよ。少しでも協力してあげなくちゃ。乗り心地はどうだった?」「ええ! それはもう最高でした!」アネットは笑顔で答え、不意に真面目な顔つきになる。「ところでゲルダさん……随分性格が変わりましたよね? ご本人ですよね?」「え? そ、そうだけど? でもアネット。貴女だって随分性格が違うように見えるけど?」自分の事を誤魔化す為に逆にアネットに尋ねた。「それはそうですよ! だって聞いて下さいよ~。ノイマン家の人達が私に言ったんですよ。『ゲルダに意地悪な態度を取れ』って。酷いと思いませんか~? 本当は私、ゲルダさんと仲良くしたかったのに。だって立場は違うけど互いに利用されてきたのですから。言う事聞かないとラファエルの奴、私を叩いたりしてたんですよ?」「何ですって!? DVまでされてたの!?」「何ですか? DVって?」アネットがキョトンとした顔で尋ねてくる。……そうだった。この世界にはそんな言葉は無かったのだ。「DVと言うのはね……親しい相手から暴力を振るわれることよ。だけどそんな目に遭わされていたのね?」途端にアネットが哀れになってしまった。どうりでアネットが怪我をしても知らんぷりしていたわけだ。おのれ、ラファエル。許すまじ。女性に暴力を振るうなど、言語道断。「安心して。この私がノイマン家を徹底的に追い詰めて破滅させてやるから!」私はアネットの両手をガシッと握りしめた。「ゲ、ゲルダさん……」涙目で私を見つめるアネット。女2人で玄関前で手を握り、見つめ合っていると突然目の前の扉が開かれた。「ゲルダ様……一体玄関前で何をされているのですか?」扉を開けたのはブランカだった。そしてアネットを見ると視線が厳しくなる。「ゲルダ様……何故この方がこちらにいるのでしょう?」「あ、あの……
last updateLast Updated : 2025-10-24
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第34話 シェアハウスとは

 食後――ダイニングテーブルには私とアネット。そしてブランカ、ジャン、ジェフの5人が残っていた。ウィンターは厨房係になったので片付けに行っている。最後まで何故自分一人で片付けをしなくてはならないのだと駄々をこねていたけれど、言うことを聞かなければここから追い出すぞと半ば脅して片付けに行かせたのである。「すみません! ゲルダさん! 質問があります!」真っ先に手を上げたのはアネットだ。「はい、アネットさん。どうぞ」「シェアハウスって何ですか?」「それはね、私がこの屋敷の大家になって、色々な人達にここに住んで貰うのよ。幸いなことにこの屋敷は沢山部屋が余っているからね」「つまり、アパートメントを経営するってことですか?」ジャンが質問する。「う〜ん確かにそれに近いけどね。でもアパートメントは自分専用の台所やバス・トイレが一つの部屋に完備されているわけでしょう? それがシェアハウスとの違いね。シェアハウスって言うのは皆で一つの大きな家に住むのよ。そして皆で台所やバス・トイレを共有して使うのよ。例えば食事をとるこのダイニングルームもそうだし、皆でくつろぐことの出来るリビングルームもね。それを普通のアパートメントよりは格安で提供してあげるのよ」「へ〜それは今までに無い斬新なアイデアですね」ジェフが感心したのか、頷く。「ええ、そうよ。素敵だと思わない? こんな高級住宅街にある、しかも伯爵家の豪邸に一般庶民でも住むことが出来るなんて最高でしょ?」「確かに素敵ですね。ところで喉が乾きませんか? ウィンターにお茶を入れてくるように頼んできましょうか?」ブランカが尋ねる。「ええ、そうね。確かに喉が乾いたわ。あいつ、気が利かないからきっとこちらから言わないと永久にお茶なんか出てこないと思うわ」「そうですよ! ウィンターは本当に気が利かない間抜けですから!」アネットが同調する。「では行って参りますね」ブランカが席を立つと私は話の続きを再開した。「そこで、今回新たにこの屋敷をシェアハウスとする為にあなた達にはこのシェアハウスの住人兼、従業員になって貰いたいのよ」3人をグルリと見渡した。「我々は何をすれば良いのですか?」ジェフがメガネの縁をクイッと持ち上げる。「やってもらうことはフットマンと変わりないわね。この屋敷の管理をして欲しいのよ。尤もこの屋
last updateLast Updated : 2025-10-25
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第35話 愛人情報を教えて

「ゲルダ様、このお屋敷は全部で客室を合わせ、25部屋ありましたので一番広いお部屋をゲルダ様の部屋として使えるようにしておきました。後でお部屋にご案内いたしますね」ブランカが紅茶を飲みながら教えてくれた。「あら、ありがとうブランカ。それですべての部屋にベッドはあったのかしら?」お茶菓子のナッツをつまみながら尋ねると今度はジェフが説明した。「10部屋にはベッドがありましたが、残りはありませんでした。おそらく客室として使われていなかったのではないでしょうか?」「ふ〜ん……でも取り敢えず私達が今夜寝る為のベッドはあるということね?」「はい、そうです」返事をしたのはジャンだ。「なら、後は早いもの勝ちで好きな部屋を選べばいいんですね!?」ウィンターが目の色を変える。「駄目よ! ウィンターは足が早いでしょう? 不公平だわ!」アネットが反論する。「何だよ! アネット! 口出すなよ!」2人が火花を散らしそうになるのを私が止めた。「まあまあ落ち着きなさいよ。うん、確かに早いもの勝ちは不公平だわ。だから公平に……じゃんけんで勝負よ!」勿論、私の言葉に異論を唱える者はいなかった。「よし、いい? それじゃ皆で一斉にやるのよ?」「「「「「はい!!」」」」」全員が力強く返事をする。「用意はいい? それじゃいくわよ。せ〜の! じゃ〜んけ〜ん……!」****「うううう……お、俺が一番負けるなんて……」ウィンターが悔しそうに壁を叩いてる。結局一番先に勝ったのはブランカ、次にアネット、ジャン、ジェフの順番だった。まぁウィンターが負けるのは分かりきっていたけど……それに、ウィンターには他にやってもらうことがあるのだ。「ゲルダさん。それじゃ部屋を選んできますね」アネットがニコニコしながら私に声をかけてきた。「ええ。好きな部屋を選ぶといいわ。そうだ、アネット。貴女に大事な話があるから部屋を選んだらまたここへ戻って来てくれる?」「はい、分りました」そしてアネットはブランカとジャン、ジェフと一緒にリビングを出て行く。そしてウィンターも彼等の後についていこうとするのを私は止めた。「ウィンター、貴方はまだやることがあったでしょう? どうせ残った部屋を選ぶだけなんだから今行く必要は無いわよね?」「え? そ、それじゃ俺は何をすればいいんですか?」ウィンターの
last updateLast Updated : 2025-10-26
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第36話 愛人ベロニカ

「ベロニカ・ウェルナーと言う女性はゲルダさんと同じ22歳の女性です。彼女は10歳年上のチャールズ・ウェルナー侯爵と3年前に政略結婚したんです。そしてその後すぐですよ! パーティーでラファエルと知り合って2人は恋に落ちたんです。しかもその時、ベロニカは夫婦で出席していたんですから!」アネットは興奮しながら説明する。「そうなの!? 馬鹿な男だとは思っていたけど、まさか人妻と知っていて恋仲になったのね? でも……アネット。随分詳しく話を知っているわね? まるでその場にいたみたいだわ」「当然ですよ。私のその場にいたのですから」「え?」アネットの言葉に耳を疑った。「ちょっと待って。いたって……まさか2人は一緒にパーティーに参加したの?」「ええ、そうです。そのパーティーはパートナー同伴のパーティーだったのですから。しかもウェルナー侯爵家主催ですよ。要はチャールズ侯爵が新妻をお披露目する為のパーティーだったんです。噂によるとチャールズ侯爵はとても嫉妬深い方らしく、ベロニカが他の男性に誘惑されないように、あえてパートナー参加が条件付きのパーティーを開いたとも言われていたのですよ」何と驚きだ。「ベロニカはとても恋多き、美しい女性として噂が耐えない女性だったんです。それでラファエルは出会う前から彼女に興味を持っていました。そんな時にウェルナー侯爵家からのパーティーの招待状が届いたんです。そして嫌がる私を無理やり出席させたんですよ? 自分はスーツを新しく新調したくせに、私なんかレンタルドレスだったのですから!」「レンタルドレス……それはあまりに酷いわね」仮にも貴族の集まりのパーティーでレンタルドレスとは……他人に厳しく、自分に甘い。最低な男だ。「そして2人でパーティーに出席して……気付いてみればラファエルの姿が消えていたんですよ。私は知り合いも誰もいないし、あちこち探しに行ったんです。そして噴水の美しい夜の庭園に行ってみたんです。そしたら……」「そしたら……?」「男性と女性の会話が聞こえてきたんです。そこで私はそっと声の聞こえる方向へ近づくと……何と! ラファエルとベロニカがベンチに座って抱き合っていたんです!」「え? 自分の屋敷で? しかも夫が主催のパーティーでそんな大胆なことをしていたなんて物凄い女ね」「はい、そうです。チャールズ侯爵は主催者で来賓客
last updateLast Updated : 2025-10-27
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第37話 ラファエル抹殺計画

「ゲルダ様、お話は終わりましたか?」そこへ丁度タイミングよくブランカが戻ってきた。「ブランカ、丁度良かった。貴女に大事な話があるのよ。ちょっとここへ来て座ってくれる」私は自分の向かい側の席を指さした。「大事な話ですか……ゲルダ様の言う大事な話は何だか嫌な予感しかしませんが……」ブツブツ言いながらもブランカは私の向かい側の席に座った。「それで大事な話とは何ですか?」「ええ、実はね。私達はまず最初にシェアハウスを作る前にやるべきことがあるのよ」「やるべきこと……? それは一体?」「いやね〜分かっているじゃないの。ノイマン家の連中を完膚なきまでに叩きのめすのよ。もう既にノイマン家は全財産を失い、使用人たちも去っていき、風前の灯火状態かもしれないけれど、まだまだよ。二度と立ち直れないほどに潰しておかないと、私やアネットのように第二、第三の犠牲者が出るかもしれないじゃない」「ええ、その通りです!」アネットが相槌を打つ。「成程……それで私にどうしろと言うのでしょう?」「ええ、実はラファエルには本命の恋人がいたのよ。名前は……何だっけ?」アネットに尋ねた。「はい、その方はベロニカ・ウェルナー侯爵夫人です。彼女は新婚ホヤホヤの時代からラファエルと不倫関係と言うふか〜い仲になっていました」「何ですって!? よりにもよって侯爵夫人と不倫!? な、何て大胆な……」これには流石のブランカも顔をしかめる。「ええ、そうよ。そして知ってるでしょう? 不倫がこの国ではどれだけ重い刑罰が課せられるか……」「ええ、存じております。ですが、それと私が一体何の関係があると言うのですか?」ブランカが首を傾げる。「ウェルナー侯爵は現在外国に単身赴任中なんですって。そうよね? アネット」「ええ、そうです!」アネットは興奮気味に頷く。「夫の不在をいいことに毎晩ラファエルの元へ通って、ヤルことヤッてたのよ」「…何やら意味深な言い方ですが…つまり夫の留守を狙って、毎晩ラファエル様の元へ通っていたというわけですね?」「ええ、その通りよ。だから私は密告しようと思うのよ」「密告ですか? ウェルナー侯爵にですか?」「そうよ」「でも何処の国へ単身赴任してるのか分かるのですか?」ブランカの言葉にアネットを見ると、首をブンブン振る。うん、アネットが知るはずは無いだろう。
last updateLast Updated : 2025-10-28
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第38話 業務命令

「……と言う訳よ? 分かった?」私の言葉にアネットとブランカは目を見開いている。「ゲルダさん……本気ですか?」アネットが尋ねてきた。「ええ、本気も本気。マジだから」「マジ……と言うのがどういう意味かは存じませんが、何とも大胆な計画ですね。果たしてそううまくいくでしょうか?」ブランカが首をひねる。「ええ、絶対にうまくいくに決まってるってば! それじゃ次はウィンターを呼んできてくれる?」ブランカに声をかけた。「え?ウ ィターをですか? あの男にどんな用事があるというのです?」ブランカは敵意をむき出しにしている。「勿論、彼にも今回の計画で働いてもらうのよ」「そう、うまくいきますかね……。ウィンターは、はっきり言って脳筋馬鹿男ですから」アネットがボソリと言う。脳筋バカ男……おおっ! 中々素晴らしいネーミングだ。「大丈夫だって、臨時ボーナスをちらつかせればきっとうまくやってくれると思うけど」「分かりました。あの男に何を頼むかは分かりませんが……取りあえず呼んでまいりますね」ブランカは立ち上がると厨房へと向かった――「ゲルダ様、俺をお呼びだそうですが?」程なくしてブランカに連れられてウィンターがやってきた。「ええ、そうよ。とりあえず、空いてる席に座ってくれる?」「は、はぁ……」ウィンターは番端っこの席に座った。「……ウィンター」「はい」「話が遠いからもっと近くに座ってくれないかしら?」「え〜どこでもいいって言ったじゃないですか!」ウィンターが大きな声で言い返す。「あのねぇ、どう見ても私とウィンターの距離は3m位は離れているじゃない。大体大きな声を出さなくちゃ互いの声が聞こえないっておかしいでしょう!?」私も負けじと声を張り上げる。「分かりましたよ、近くに座れば良いんでしょう?」ウィンターは立ち上がると、私の斜め向かい側に座った。「やっとまともに話が出来る距離になれたわね。さて、ウィンター。さっき私はここを『シェアハウス』にすると言ったのは覚えているわよね?」「はい、一応は」「でも、その前にやる事があるのよ。ラファエルとラファエルの浮気相手をこらしめるのよ」「ええ!? ベロニカ様をですか!?」何故かウィンターが驚きの声を上げる。「何よ。ひょっとして名前を知っていたの?」「え、ええ。まぁ……何しろ彼女は物凄
last updateLast Updated : 2025-10-29
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第39話 証拠を掴め!

「な、何で俺がノイマン家に戻らなければならないんです?」ウィンターが震えながら私を見る。「そんなこと分かりきってるじゃない。あの屋敷の現状を知っておくには誰かが偵察していないと知ることが出来ないでしょう?」「うん、うん。ゲルダさんの言う通りね。アネットが頷くとウィンターが喚いた。「うるさいアネット! だったらお前が行けよ! ラファエル様と一番近い場所にいたのはお前だろう!?」「はぁ!? ばっかじゃないの、あんた! どうして私がノイマン家に戻らないといけないのよ! ふざけんじゃないわよ!」う〜ん…段々アネットのガラが悪くなっている気がするけれど……気の所為ということにしておこう。一方、ブランカは我関せずと言わんばかりに静かに紅茶を飲んでいる。「ゲルダ様! 俺よりも絶対アネットがいいですって! 大体俺は最後にノイマン家の方々から『裏切り者』と呼ばれながら出ていったんですよ?」「成程……つまり、ウィンター。貴方は追い出されたわけじゃなくて、自分の意思でノイマン家を出てきたわけでしょう?」「う!」「それにねぇ……アネットはラファエルから暴力を振るわれてきたのよ?」「そうそう」アネットは腕組みしながら頷く。「うう!」「ウィンター。貴方はラファエルから暴力を振るわれたりしたことあるかしら?」「いいえ! 一度も無いですよ! だってラファエルとウィンターは本当に仲良しでしたから!」「黙れ! アネット! 余計な事話すなぁっ!」「ほら、やっぱり2人は馴れ合いの仲だったってことじゃない」「うぐっ!」私の言葉に一々、大袈裟に胸を押さえるウィンター。「なら決まりね。話によると、ノイマン家は使用人たちが続々やめていってるって話よ。それはまぁ当然の話よね? 給料を支払って上げていた私はラファエルと離婚したし、預金残高はゼロ。彼等は使用人たちに給料を支払えるどころか、自分たちの明日の生活も知れぬ状態なんだもの。だから貴方がノイマン家に再び使用人として戻れば、きっと彼等は泣いて喜ぶはずよ?」「……とてもそうは思えませんけど…「泣いて喜ぶに決まってるわよ。だって無給で働きますって言えばいいんだから」「はぁ!? 俺にタダ働きしてこいって言うんですかぁ!? 冗談じゃありませんよ!」ウィンターが髪の毛を掻きむしる。「……全く馬鹿な男ね……」ブランカが
last updateLast Updated : 2025-10-30
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第40話 ブランカの自信

 翌朝――私達はダイニングルームでウィンターが用意した素朴な料理を食べていた。「うん。見かけはともかく、やっぱり美味しいわね」スプーンでマッシュポテトを口に運ぶ私。「確かにあまり食欲をそそられる出来栄えでは無いですが、味はいいと思いますね」ジャンがカリカリベーコンをフォークに刺した。「確かに見た目はイマイチなのよね〜」アネットはスープを飲む。「うん、見た目だけなら10点満点中5点というところですね」「5点は上げすぎよ。私は2点でいいと思うわ」ジェフの言葉にブランカは反論する。するとウィンターが喚いた。「あんた達……いい加減にしてくださいよ! 文句があるなら食べなきゃいいでしょう! 食べなきゃっ!」その言葉に私達は黙って料理を口に運ぶ。「あ〜! またそうやって無視ですかい!? 大体この料理の何処が見栄えが悪いっていうんですか!」そこで私は口を開いた。「いいのね……。本当のことを言っても……」「え、ええ。勿論ですよ」ウィンターは若干引き気味なりながらも返事をする。「なら言わせてもらうわ! まず色合いよ! 全体的に今朝の料理は茶色ばっかりじゃない。料理ってい者は目でも楽しむものよ? 赤や緑の食材を加えないと料理っていうのは見栄えしないのよ?」私の言葉にウィンター以外の全員が頷く。「それだけじゃない。料理の盛り付け方もなっちゃいないわ。いい? 例えばこのボイルしたウィンナー。真ん中を高く盛り上げるだけで、見栄えが変わるでしょう?」「おお~! なるほど!」ウィンターは感心したように唸る。他のメンバーも感心したように頷いている。「いい? ウィンター。貴方にはね、将来的にはいずれキッチンカーもやってもらうつもりなんだから少しは料理の本でも読んでもっと研究するのね」「何ですか? キッチンカーって?」ウィンターが首を捻る。「いずれ時が来たら教えてあげるわよ」その後も私はウィンターに料理のうんちくを説明しながら朝食を食べ終えた――****「それではあまり気が進みませんが、ウェルナー侯爵家の屋敷へ行ってまいりますね」ブランカは私が迎車を頼んだタクシーの前にメイド服姿で立っている。「ええ、ブランカ。なるべく早くウェルナー侯爵の居場所と、いつ頃屋敷に帰ってくるのか探り出してね。大丈夫、貴女なら出来るわ!ファイトよ!」私はブラ
last updateLast Updated : 2025-10-31
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