全ての荷造りが終わったのは午後4時を回っていた。「ゲルダ様、この荷物はどうしますか?」ジャンが尋ねてきた。「こんなに大量に運ぶのにはいささか人手が足りませんね」ジェフが荷物を見つめている。私達の背後には32個のトランクケースが積み上げられていたのだ。「ええ、そうね。取り敢えずこの荷物は台車に乗せて外に運び出しましょう。すぐに持って来てくれる?」すると……。「はい! 俺がすぐに持ってきます!」いきなり背後で大きな声が響き渡った。「「「え?」」」私達が驚いて振り向くとそこに立っていたのは何とウィンターであった。「ウィンター! 生きていたのね!?」「勝手に殺さないで下さいよ。とにかく台車が必要なんだですよね? 何台必要ですか?」気持ち悪いくらい愛想笑いを浮かべたウィンター。「そうねぇ……この荷物を全て運び出せるだけの台車が必要だわ」「この量だと台車が2台もあれば足りますね。それじゃ大至急持ってきます!」ウィンターは駆け足で部屋を出ていった。「……一体アレは何なのかしら……?」「う〜ん……ひょっとすると媚を売ってるのではないですか?」ジェフが首をひねる。「寝返るつもりじゃないですか? ゲルダ様の元に」ジャンが驚きの言葉を口にする。「はぁ? 冗談じゃないわよ。私は今迄散々ウィンターから酷い呼び出しを受けていたのよ。アイツったらね、私がハァハァ息を切らして必死で歩いているのに、あざ笑っていたのよ。そんな男なんかこっちに寝返ってきてもお断りよ」するとガラガラと大きな音が聞こえてきた。音はどんどん大きくなっていく。そして……。「お待たせいたしました! ゲルダ様!」大きな声と共にウィンターが台車を持って現れた。しかも2台同時に。これには流石に驚いた。「ちょっと、どうやって2台一緒に運んできたのよ」「何、後ろの台車はロープでくくりつけて一緒に引っ張って来たのですよ」私の質問に自慢げに語るウィンター。「へぇ〜中々やるじゃない。ウィンターのくせに」「ええ。無い知恵を絞ってきました」自分で言うとは卑屈な男だ。「それじゃ、さっさと台車に荷物を詰め込みましょう。外に運び出すのよ」「「「はい!」」」私の言葉に3人の男たちは元気よく返事をした。**** それから1時間後――屋敷から運び出したトランクケースをウィンターが持
Last Updated : 2025-10-22 Read more