「……何だ? これは?」義父がテーブルの上に置かれた小銭を忌々し気に見ている。「見て分かりませんか? お金ですよ。え〜と……全部で4852シリルあります。どうぞ受け取って下さい」どうよ? お金は置いたのだから文句はないでしょう? 私は呆気に取られている4人をグルリと見渡した。「は? ふざけないでちょうだい! こんなはした金、お金のうちに入らないのよ!」一度も働いたことがないくせに、何とも罰当たりな台詞を言う義母に苛立ちが募る。「ああ、そうだ! たったこれっぽっちで何が出来るというのだ!」「おい、ゲルダ。冗談はその顔だけにしておけ」ラファエルはどさくさに紛れて失礼なことを言う。「あ……そうですか。ならどうぞこのままここにいてください。私は出ていきますから」「「「は……?」」」3人の声が見事にハモる。そうだ、彼等が出ていかないのならこの部屋に残して私がさっさと出ていけばいいのだ。部屋にある重要書類は全て手持ちのバッグの中に入っているし、アクセサリーの入った金庫も隠してある。鍵は私が持っているので決して彼等に見つかることは無いだろう。呆気にとられている彼等の前を素通りしようとすると、我に返ったラファエルが呼び止めた。「おい? 何処へ行く気だ? やはり頭がイカれてしまったんだな? こんな夜更けに外に出ていこうとするなんて。これでも俺はお前の夫だからな? とにかく落ち着け、落ち着くんだ。今のお前は頭が一時的におかしくなっているだけなんだ。深呼吸でもして落ち着けば絶対に金の在処を思い出せるはずだ」落ち着けを連呼するラファエル。いや、むしろ落ち着くのは自分の方ではないだろうか?「そうだ、ゲルダ。落ち着いて金の在処を思い出せ」阿呆義父までクズ息子と似たようなことを言う。「そうよ! だったら……こっちは所在場所を知っておく必要があるわ。ゲルダ! 何処へ行くのか正直に言いなさい!」義母は眉間にシワを寄せてこちらを睨みつけている。「分かりましたよ……実家です。お金の相談で実家へ行くんですよ」そう、ノイマン家に今後のお金の援助を止めてもらう為にね……!すると……。「何だ? そうだったのか? だったら初めからそう言えばよかったのだ」急に手の平を返したかのような態度を取る義父。「まぁ、そうだったのね? 引き止めて悪かったわ。だったらさっさと行か
Last Updated : 2025-10-12 Read more