ハドリーは剣を持つ右腕を深く引き絞り、足を前後に開き、左手を剣先の下に添えた瞬間、剣が清めの力で神々しく輝き、剣先を魔形に向けて瞬時に突き出し清浄な光を放った。 狙いは一点。剣先から放たれたのは、怒りにも似た稲妻の光線。 それは魔形の心臓を正確に貫き、次の瞬間、凄まじい爆音とともに魔形は光の塊となり、飛散した。 光の粒子が雪のように舞い散り、それと同時に影のような無数の分身達も幻のように、瞬く間に消滅していく。 ……だが。勝利の余韻に浸る間もなく、世界が変質した。 肌を刺すような、圧倒的で異様な畏怖の気配。 夜空がピキピキと音を立てて割れ、蠢く稲妻のようなゲートが口を開く。 そこから現れたのは、顔も、服も、影すらも持たない存在。 闇の光そのものが長い髪の人の形を成したかのような――闇を司る神のような畏怖の魔形が、静かに現れた。 (これが、リンテアル皇国を滅ぼすほどの脅威……) シルヴィアの思考は、あまりの威圧感に白く染まった。 目の前に君臨するそれは、もはや生き物ではない。天災そのものが人の形を模しているかのようだった。 「――厄災の魔神か」 リゼルの震える声が、静寂を切り裂く。 その恐怖をねじ伏せるように、副騎士長は声を張り上げた。 「恐ろしい程の禍々しい気配だ。だが、倒れた騎士達の想いを無駄にはできん!リンテアル皇国にその牙が届く前に、ここで、我らの手で浄化するぞ!」 「おおおっ!」 副騎士長の叫びに呼応し、残った騎士たちが剣を魔形に向け、一斉に剣を掲げる。 空間を焼き尽くすほどの清浄な光が放たれ、魔形へと殺到した。 しかし、魔形がただ静かにその手を差し出し受けた瞬間――光は吸い込まれるように消え失せる。 それどころか、魔形の虚無の瞳に見据えられた騎士達は、糸の切れた人形のように動きを止め、次いで、狂ったように隣の仲間に剣を向けた。 「な……ッ!?」 悲鳴すら上げる間もなく、騎士たちが互いを斬り始め、自滅していく。 リゼルは信じがたい光景に目を見開いた。 「消去に洗脳だと……? まずい、このままでは、リンテアル皇国が確実に滅びる……」 「そうはさせない」 掠れた、けれど芯の強い声。 地面に膝を突いていたフィオンが剣を支えにふらつきながらも立ち上がった。 フィオンはそのままこちらを見る。 シルヴィアは、だめ
Last Updated : 2026-02-28 Read more