Lahat ng Kabanata ng 恋するプレジデント♡ ~お嬢さま社長のめくるめくオフィスLOVE~: Kabanata 11 - Kabanata 20

59 Kabanata

社長就任とあの人の秘密 PAGE4

 ――社長就任の記者会見当日。今日は梅雨の晴れ間らしく、朝からよく晴れていて暑い。 でもわたしはビシッとグレーのスーツで決め(でもブラウスは胸元に大きなリボンがあしらわれたフェミニンなものを選んだ)、江藤さんの運転する黒塗りの高級セダンで颯爽と出社した。 自慢のサラサラのロングヘアーはバレッタでハーフアップにして、少し華やかめのメイクもした。就任会見はテレビやネットなどで中継もされるため、多少はテレビ映りを気にしているわけである。「――では社長、いよいよでございますね。行ってらっしゃいませ」 本社ビルのエントランス前でクルマを降りる時、江藤さんに「社長」と呼ばれたわたしは何だかむずがゆい気持ちになるのと同時に、やっと「わたしが今日から社長なんだ」という実感がこみ上げてきた。「ありがとう、江藤さん、行ってきます!」 嬉しさと少しの不安が入り混じった気持ちで、わたしは彼に頷いて見せた。「――萌絵、平本くん、おはよう!」「あ、佑香……じゃなかった。社長。おはようございます」 エントランスをくぐり、さっそく出社してきた友人たちに挨拶すると、萌絵が急にかしこまってわたしに挨拶を返してきた。「萌絵、そんな急に態度変えないで。なんか淋しいから今までどおりでいいよ」「そうだよ、田口。急に態度変えたら佑香が混乱しちまうじゃんか。――うっす、佑香」 わたしが困惑していると、平本くんが萌絵をたしなめてから今まで通りの軽い調子で挨拶してくれた。一人だけでも態度を変えないでいてくれる人がいると、何だか安心する。それが気心の知れた友だちならなおさらだ。「あー……、そっか。ゴメン。じゃあ改めて……佑香、おはよ。今日から社長だね。頑張って」「うん、頑張るよ。二人とはこれからもずっと友だちだよ。帰りにも時々は一緒にゴハン食べたり、飲みに行ったりしようね」「いいねぇ。そん時は佑香、お前のおごりでな」「えー? なんでそうなるのよ」「なーんてな、冗談に決まってんだろ。もちろん今までどおり割り勘でな」「それがいいよね。あと、三人で社食でランチも。佑香に会食の予定とかない時にね」「うん。秘書の野島さんにそう言っとくわ」 社長になっても変わらない、この三人でのワチャワチャした関係が心地いい。 ――と、少し向こうにわたしに向かって|
last updateHuling Na-update : 2025-10-08
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社長就任とあの人の秘密 PAGE5

「――ねえ、野島さん。父から聞いたんだけど、あなたが南井さんの甥御さんだっていうのはホント? でも、苗字が違うよね?」  二人きりのエレベーターの中で、わたしは思いきって彼に訊ねてみた。いくら敵対している相手の親戚だとはいえ、恋心を寄せている相手なので、初日から気まずいのはイヤだと思ったから。 「ええ、事実ですよ。苗字が違っているのは、僕の母が副社長の姉だからです。嫁ぎ先の苗字が野島だったので」 「なるほどね、そういうことか」 「叔父が会長と敵対していることは僕も存じておりますが、僕は叔父とは違います。あなたに誠心誠意お仕えするつもりですのでご安心下さい」 「……そう、よかった。秘書が敵側の人間だったら、安心して社長の仕事なんかできないもの」  もちろん、わたしがホッとした理由はそれだけではないのだけれど……。それはわたしの個人的な事情でしかない。 「あの、僕から社長にも一つ、質問よろしいでしょうか?」 「うん……、いいけど。なに?」 「先ほどご一緒だった背の高い男性社員は、社長と一体どういったご関係なんですか?」 「え?」  意表を衝かれた質問に、わたしは面食らった。これは、一体どういう趣旨の質問なんだろうか? 「それって平本くんのことね、平本歩くん。彼は営業一課の所属なんだけど、大学からの同期で、ただの友だちよ。彼
last updateHuling Na-update : 2025-10-09
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社長就任とあの人の秘密 PAGE6

 ――重役フロアーのいちばん奥に、会長室と連なる形で社長室は配置されている。その隣には秘書室の社員専用の給湯室があり、社長室からは直通の通路が設けられていて、わざわざ大回りしてお茶や飲み物を運ばなくていいようになっているので、秘書の皆さんは大変喜んでいるらしい。「――社長、僕がIDを認証してロックを解除させて頂きます。どうぞお入り下さい。今日からこちらがあなたの職場となります」「ありがとう、野島さん」 広々としていながらシンプルなインテリアで揃えられた室内に入ると、中でわたしを待っていてくれたのは――。「村井さん!」「おはようございます、佑香社長。今日からあなたの第二秘書を務めさせて頂きます。よろしくお願い致します」 ひっつめた黒髪にメタルフレームの眼鏡をかけた、紺色のスーツ姿の女性。村井瑞穂さん、三十二歳。ちなみにまだ独身だそうだ。「うん、おはよう。こちらこそ、今日からよろしく」 野島さんには敬語で話してしまって「敬語は不要だ」とたしなめられたので、村井さんには頑張って敬語抜きで答えてみた。まだぎこちないかもしれないけれど、これから少しずつ慣れていくつもりだ。「社長、就任会見は十時からですので、それまではこちらでゆっくりなさっていて下さい。私たちにしてほしいことがあれば、何なりとおっしゃって下さいね」「ありがとう、村井さん。でも、その前に会見のスピーチの原稿に目を通しておきたいから……」 本当は社長専用の回転チェアーにでも座って、室内を眺めながらのんびりしたいところだけれど、社長になってもわたしはやっぱり貧乏性というか仕事が好きらしい。そんなヒマがあるなら少しでも仕事をさせてくれという感じなのだ。「野島さん、用意してくれるって言ってたけど、できてる?」 彼には昨日のうちに、「就任会見のスピーチ用の原稿を作っておいてほしい」とお願いしていた。彼も忙しいのに申し訳ないと思ったけれど、「明日までに用意しておきます」と言ってくれたのだ。「はい、こちらが原稿でございます。社長、ご確認下さい」「ありがとう。野島さん、仕事早いね」 わたしは彼からA4サイズのコピー用紙二枚分の原稿を受け取ると、さっそく目を通し始めた。父から唐突に社長の座を譲られて戸惑ったけれど。それでも自分なりのやり方で社長業に励んでいこうとする決
last updateHuling Na-update : 2025-10-10
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社長就任とあの人の秘密 PAGE7

 ――まずひと仕事終えたわたしは、社長椅子に腰を下ろした。 デスクは西向きの大きな窓に背を向ける形で配置されているけれど、窓が遮光・断熱のペアガラスになっていることと(ここと会長室の窓だけそうなっているらしい)、回転チェアーの背もたれが高くなっているため、直射日光は避けられている。  あとはグレーの布張りのソファーセットと木製ローテーブルの応接スペース、二人の秘書のデスク、資料や本などが並べられたスチール製のキャビネットがあるくらいの本当に簡素でシンプルな、それでいて高級感もある室内だ。 もちろんそれぞれのデスクには専用のデスクトップパソコンがあり、一台しかないインクジェットプリンターは共有らしい。 南側の壁面には、これまたシンプルなアナログの壁掛け時計も設置されている。「――社長、何だか味気ないインテリアでしょう? 会長が、あまりゴチャゴチャと物を置かれることを嫌っておられたので……。何か置いてほしい物などございましたら、ご自由に持ち込まれて構いませんので」「ううん、いいのよ村井さん。わたしもこれくらいシンプルな部屋の方が落ち着くから」 わたしも父に似て、部屋の調度はシンプルな方がいい。その反面、自宅の部屋はこれでもかと可愛いもので溢れていて、妹の日和からは「何、この部屋!? 胸やけする!」と言われているのだけれど。「社長、喉が渇いていらっしゃいませんか? 何か飲み物でもお持ち致しましょうか?」「野島くん、コーヒーや紅茶を淹れるのが得意なんですよ。ご実家が喫茶店をなさっているらしくて、今でも会社がお休みの日にはお手伝いしてるんですって」「へぇ……」 そういえばわたし、彼のパーソナルデータについてまだ何も知らなかった。南井副社長の甥御さんだということも、つい最近父から聞かされて知ったばかりなのだ。「……はい、実はそうなんです。会長には喜んで頂けていたんですが、社長のお好みに合うかどうかは……。もしそれでもいいとおっしゃるなら、お淹れ致しますが」「あ、ううん。今はお水でいいよ。その美味しいコーヒーは昼食後の楽しみに取っておくことにするわ」「かしこまりました」 野島さんがすぐにグラスに注いだミネラルウォーターを持ってきてくれて、わたしはそれで喉を潤してホッとひと息ついた。 まだ彼に対する小さな不信感は|燻
last updateHuling Na-update : 2025-10-11
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社長就任とあの人の秘密 PAGE8

「――わぁー……、すごい数の報道陣ね……」  秘書である野島さんと一緒に、ステージ袖から大ホールに入ったわたしは、すでに詰めかけている大勢の報道陣に圧倒されかけていた。 でも、日本屈指の有名一流企業であるこの城ケ崎商事の社長になるということは、それだけ全国からの注目を集めるということなのだと思うと、ビシッと気が引き締まる思いだ。 「そうですね。テレビ局や新聞社、雑誌社だけでなくネットニュースの記者まで集まっていますから。あと、この会見はネットで生配信もされるそうですよ。社長は責任重大ですね」 「そうね……。でも、あなたが作ってくれた原稿もあるし、大丈夫。ちゃんとやり遂げて見せるわ」 「頼もしいですね、社長」 「むしろこれだけ注目されると、俄然やる気が湧いてくるわ。わたしね、追い込まれるほど燃えるタイプなの」  見た目が大人しそうだからとなめられやすいわたしだけれど、実はけっこう気は強い方だ。だからこそ、この会社へ入社する時に父のコネではなく自分の力で入社試験を受けることを選んだのだ。 「……あれ?」 「どうしたの、野島さん?」  一緒にホールの中を見回していた野島さんが、驚いたように声を上げた。いつも冷静な彼が、ここまで取り乱すことは珍しい。 「いえ、あの……叔父が、この会場に来ているんです」 「えっ、南井さんが?」  彼が指さした先を見れば、ホールのいちばん奥に、報道陣に隠れるようにして南井副社長が何やら不敵な笑みを浮かべて立っている。でも、どうしてあの人がここにいるんだろう? 何かイヤな予感がする&helli
last updateHuling Na-update : 2025-10-12
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社長就任とあの人の秘密 PAGE9

『先日、父から突然後継者として指名された時には、正直戸惑いもございました。本当にわたしでいいのかと。ですが、父はわたしにとりまして尊敬できる経営者の先輩であり、目標でもございます。そんな父から期待されているのなら、精一杯やってみようと決意致しました。それは決していい加減な気持ちからではなく、わたし自身の並々ならぬ決意からでございます。なので皆さま、どうかわたしが一人前の社長として成長していくさまを、温かいお気持ちで見守って頂ければ幸いでございます』 わたしはその後も、父がどんなふうにこの会社を守ってきたのか、そんな父の姿を見てきてどう感じていたのか、今後はこの会社をどんなふうにしていきたいのかを自分自身の言葉も交えて語り、役員人事についても話してスピーチは無事終了した。『――城ケ崎佑香社長、ありがとうございます。続きまして、質疑応答に移らせて頂きます。なお、会見終了時刻は十一時三十分ごろを予定しておりますので、各メディア様一名に付き、質問は一つまでとさせて頂きます。質問の重複はご遠慮下さいますようお願い申し上げます』 就任スピーチ自体は、わたしにとって大した問題ではなかったのだけれど。ここからが本当の緊張の始まりだ。一体どんな質問が飛んでくるのか。もっとも、わたしはどんな質問にも真摯に答えていくつもりでいるけれど。 でもふたを開けてみれば、そんなに意地悪な質問は来なかった。役員人事を父の代からの据え置きにしたことはツッコまれてしまったけれど……。『現在の人事につきましては、あくまでも暫定的なものです。より適任者となる人物がいれば、交代もございます』「副社長の南井氏は、現在は会長であるお父様と敵対しておられたそうですが。その方を排除されず、留任にされたのはどうしてでしょうか?」『敵だからといって排除してしまうのは、わたしの流儀ではございません。父が副社長に任命した以上、彼は優秀な人物のはずです。わたしは彼のことを敵とはみなさず、ともにわが社を守る仲間だと考えております』 父とは敵対していたかもしれないけれど、わたしとなら分かり合えるかもしれない。それは彼の甥である野島さんのために出た言葉だった。 当の野島さんを振り返ってみたら、嬉しそうに頷いてくれた。でも南井さんの方は……、何やら不敵な笑みを浮かべたままだ。(「やれるものならやって
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オフィスラブは難しい? PAGE1

「――社長、野島くん、お帰りなさい! 会見、お疲れさまでした!」 社長室に戻ると、留守番してくれていた村井さんが満面の笑みで出迎えてくれた。「ただいま、村井さん! 何とか無事に終わったわ。あー、お腹すいた!」「ただいま戻りました。お留守番、ありがとうございました」 わたしと野島さんは口々に返事をして、一旦デスクに腰を落ち着けた。わたしのデスクの上にある、ピカピカに磨かれた〈社長〉のプレートが何だか誇らしげに存在感を放っている。「就任会見、私も自分のパソコンで拝見してましたよ。感動的な素晴らしいスピーチでした」「どうもありがとう。でも、野島さんの原稿がなかったらあそこまでちゃんとスピーチできたかどうか。だから彼には感謝しかないのよ」「そんなことはないでしょう? 質疑応答にはきちんとご自身のお言葉で答えてらっしゃいましたし、スピーチだって僕が作らせて頂いた原稿にはなかったことまでお話しされていたじゃないですか」「まあ、そうなんだけどね」「……そこは謙遜されないんですね」 野島さんにツッコまれ、わたしはてへへと笑った。何だか照れくさいやら、恥ずかしいやら。「社長、野島くんと仲がよろしいんですね。社長と秘書の関係が良好なのは大変けっこうなことなんじゃないですか」「……うん、そうね」 村井さんの言葉に、わたしは1テンポ遅れて頷く。もちろん、「ボスと秘書との関係」という意味で彼女は言ったんだと思うけれど、もしかしたら別の意味もあるのかもしれないと思ったのだ。「…………ねえねえ村井さん、ちょっと」「はい?」 わたしは彼女を手招きし、野島さんの死角に入る位置へ誘導した。これからガールズトークをしようとしているのに、男性である彼の目に入るところではしにくいし、会話に割り込まれても困る。「何でしょうか。社長」「村井さん、女同士だからこの際ハッキリ訊かせてもらうけど。もしかしてあなた、気づいてるんじゃない? わたしが野島さんに好意を持ってるって」「ええ、気づいておりました」「…………あー、やっぱりね……。じゃあもしかして、さっきの言葉もそういう意味で?」「はい。いけませんでした? これでも私、社長の恋を応援しているんですよ」「ありがとう、村井さん!」 わたしは彼女の両手を握った。正直、オフィスラブなんてどんなものなのかまだ分からないけれど、
last updateHuling Na-update : 2025-10-17
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オフィスラブは難しい? PAGE2

「――じゃあ改めて。佑香、社長就任おめでとう!」「俺たちもタブレットで観てたぜ、お前の会見。めちゃめちゃいいスピーチしてたじゃん」 社長に就任しても、今までと変わらない友人たちとのランチタイム。ちなみに今日のメニューは、わたしはポークジンジャー定食、佑香は豚の冷しゃぶ定食、平本くんはミックスフライ定食だ。 ウチの会社の社員食堂は子会社の〈城ケ崎フードサービス〉が一手に引き受けてくれていて、メニューが豊富なうえにどれも美味しくて、それでいてボリューム満点なのにどのメニューも五百円以下という格安で食べられるのだ。「ありがとね、佑香、平本くん。でも、わたしくらいのものじゃない? 他の社員たちに混ざって社食でランチする社長なんて。それも毎日よ?」 たまに気分を変えて社食で……という大企業の社長さんならいるかもしれないけれど、さすがに毎日のランチを社食で摂る社長はそうそういないだろう。「確かにお前くらいのもんだろうな。けど、お前は肩書きこそ〝社長〟だけど気持ちはOLのまんまなんだろ? それも総合職の」 そう。実はわたし、二人とは同期入社だけれど総合職で入社したのだ。二人は一般職での入社だったのだけれど、そんなことは関係なく親しくなった。というか、平本くんは元々大学から一緒だったけれど。「うん、まあねぇ。だからこれからも、二人との関係は変わらないよ」「っていうか平本くん、社長に対して『お前』呼びはないんじゃない?」「そうだよね。わたしのことを『お前』って呼ぶの、この会社ではお父さんと平本くんくらいだよ」 でもわたしは、それを不快に思ったことは一度もない。むしろ、急に「佑香さん」とか「社長」とかよそよそしく呼ばれるとかえって落ち着かないのだ。平本くんには平本くんらしくいてほしい。「うー……、そうか。なんかゴメンな」「ううん。平本くんなら全然オッケーだよ。だからこれからも、ずっと『お前』って呼んでくれていい」「……そっか」 そう言うと、彼は嬉しそうにはにかんだ。(……あれ? なに、この反応……) わたしは豚肉を口に運んでから、首を傾げた。彼のこのリアクションはどう見たって、恋している人のそれにしか見えないけれど……。 でも数日前、萌絵にそのことをからかわれた時にはムキになって否定していたような気が……。(あれあれ? でもムキになるって
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オフィスラブは難しい? PAGE3

「っていうか佑香、男のシュミ変わった? いつからあんな顔だけの男がタイプになったんだよ?」「……え? だから言ってるじゃない、野島さんは顔がイケメンなだけじゃないって。でも、う~ん……確かに」 険のある平本くんの言葉に反論しながらも、わたしは妙に納得してしまう。 大学時代までのわたしは、「男は顔や見てくれより中身が大事!」というタイプだった。だから大学時代に付き合っていた彼氏(念のため、平本くんではない)もどちらかといえばそういうタイプの人で、性格は優しくて穏やかだけれど顔はそれほどイケメンでもなかったと思う。 でも、野島さんは誰が見てもイケメンなのは明らかで、さっき平本くんに指摘されたとおりなのかもしれない。「わたし、一目ぼれしちゃった相手って野島さんが初めてなんだよね。あ、もちろんそれだけじゃないんだけど! どうしてなんだろ? 自分でも不思議なの。やっぱり、あの人には惹かれる運命だったのかなぁ」「…………お~い、佑香ぁ? 戻ってこ~い」 自分の世界にどっぷり浸り、ウットリと遠い目をしていたわたしは、平本くんの呼びかけで現実に引き戻された。「もう諦めなよ、平本くん。このとおり、佑香はあんたのことなんか最初っから眼中にないんだって」「だぁ~かぁ~らぁ、そんなんじゃねえって言ってんだろ!?」 萌絵になだめられた彼は、またもやムキになって吠えた。そして周りの人たちにギョッとした目で見られ、「……すいません」と神妙に縮こまった。おかげで一緒のテーブルに着いているわたしと萌絵まで注目を集めてしまい、なんだか居心地が悪くなる。 しかも、わたしは今やただの社員ではなく、この会社の社長だというのに……。(…………平本くん、そういう態度だからわたしへの好意がバレバレなの、どうして分かんないかな……) わたしは鈍感な方ではないと自負しているので、もういい加減彼の気持ちには気づいている、というかハッキリ分かっている。これは百パーセント確定だ。 彼は要するに単純なのだ。ウソもごまかしも下手くそで、感情表現もストレート。だからこそ周りの人から信用されているんだと思うし、そこは友人としても社長としても、わたしも評価している。 でも、彼には申し訳ないけれど、やっぱりわたしは彼の気持ちに応えてあげることはできない。「――そういえば佑
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オフィスラブは難しい? PAGE4

「――ただいま」 社長室に戻ると、村井さんは戻ってきていたけれどそこに野島さんの姿はなく、代わりに通路の向こうにある給湯室からコーヒーのいい香りがしている。「あ、社長、お帰りなさい。野島くん、今給湯室でコーヒーを淹れてくれてますよ。ついでに私と彼自身の分も」「ホントだ。コーヒーのいい香りがするね。でも、三人ともコーヒーじゃなくてもよかったんじゃないの? 好きなもの、飲めばいいのに」 給湯室にはそれこそ紅茶も緑茶もハーブティーも、誰の好みかは分からないけれど中国茶まで常備されているというのに。何も社長のわたしに遠慮して無理にコーヒーでお付き合いする必要はないと思うのだけれど……。「いえいえ、いいんですよ。私もコーヒーは嫌いじゃないですし、野島くんの淹れてくれるコーヒーは本当に美味しいんで私も好きなんです。元々は紅茶派なんですけどね」 ちなみに父も大のコーヒー好きである。母は気分次第でコーヒーも紅茶も飲む。日和は紅茶しか飲まない。「……へぇー、そうなの」「――社長、お帰りなさい。お約束どおり、コーヒーを淹れて参りました。砂糖とミルクはお好みでどうぞ」 そこへ、コーヒーが注がれた三人分のマグカップとシュガーポット、ミルクピッチャーを載せたトレーを抱えた野島さんが通路を通って戻ってきた。わたしたち三人は応接スペースへと移動する。「ありがとう、野島さん! じゃあさっそく……」 わたしは受け取った香り立つマグカップに、お砂糖をスプーン二杯とミルクをたっぷり注ぎ入れて、ティースプーンでかき混ぜた。コーヒーは甘めが好きなのだ。「いただきま~す。……うん、ホントに美味しい! さすがはご実家の喫茶店を手伝ってるだけのことはあるわ」「畏れ入ります」 もう午後の始業チャイムは鳴ったけれど、社長室ではしばしのんびりとコーヒーブレイクタイム。今日はこの後二時ごろから取材の申し込みが数件あったけれど、急ぎの仕事は他になかったはず。「はぁ~、こんなに美味しいコーヒーが毎日飲めるなら、社長になった甲斐はあったかもなぁ」「喜んでいただけて何よりです。――ところで社長、明日からの予定ですが」「うん」 カップをローテーブの上に置いた野島さんが、スーツの内ポケットから手帳を取り出して広げた。「明日のお昼には、顧問弁護士の上沢先生と会食の
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