――朝食を済ませ、今日も江藤さんの運転する我が家の高級セダンで出社したわたしは、本社ビルの一階ロビーでちょうど出勤してきた萌絵と平本くんをつかまえた。「萌絵、平本くん、おはよう」「あ、佑香。おはよ。おっ、パンツスーツじゃん。いいね、カッコいいよ」「うっす、佑香。……あれ、珍しいな。お前、今日はパンツなのか」 二人とも、さっそくわたしのレアなパンツスーツ姿に食いついた。社長に就任する前、ただのOLだった頃にもパンツで出社したことはほとんどなかったのだ。「うん。今夜の接待で失態おかすわけにいかないから、一応その対策でね」「ああ~、確か副社長のご友人が経営してるとかいう会社の」「そうそう、それ。無理やり飲まされて失敗やらかしたらさ、それだけで南井さんに足元すくわれちゃうかもしれないから」「なるほどね」 萌絵も入社してから二年以上の付き合いだから、わたしが悪酔いするとどうなってしまうのかはよく知っている。とはいえ、そういう失敗はごく稀にしかないので、悪酔いしたわたしもまたレアな姿ではあるのだけれど。「ただね、野島さんにはわたしのパンツスーツ姿を見せるの初めてだから、彼はどう思うかなってちょっと心配なんだけどね」「彼なら最初はビックリするだろうけど、ちゃんと褒めてくれそうだよね。だからそこは心配しなくていいんじゃない?」「だといいんだけどね……」「まあ、佑香はスタイルいいし、どんなの着ても似合うから」 わたしがまだ眉尻を下げていると、萌絵はさらにフォローしてくれた。「……ありがと、萌絵」「俺も、お前のパンツ姿けっこう似合ってると思うぜ。いいんじゃね?」 それまでずっと無言だった平本くんが、ボソッと口を挟んできた。わたしと萌絵は「うぉっ!?」と軽く飛びずさる。「平本くん……。それってお世辞じゃないよね?」「んなワケねえだろ。俺はお前に対してはいつも大真面目なんだからな」「うん、知ってるけど」 ハッキリ言って、彼のわたしへの気持ちは萌絵どころか周りにいる他の人たちにも分かるくらいバレバレなのだ。だからこれも、彼からの遠回しなアプローチだとわたしは解釈している。わたしはそれに応えられないのだけれど……。「わたしはその言葉、平本くんより野島さんから聞けた方が嬉しいんだ。ゴメンね。……あ、わたし、そろそろ行くね」 壁掛け
Terakhir Diperbarui : 2025-11-07 Baca selengkapnya