All Chapters of 恋するプレジデント♡ ~お嬢さま社長のめくるめくオフィスLOVE~: Chapter 71 - Chapter 80

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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE1

「――でもごめんね、村井さん。わたしたちだけ先に幸せになっちゃって」  彼女はまだ独身で、彼氏もいないらしいのだ。ちょっと申し訳ない気持ちになる。 「いいんですよー。私は私でステキなお相手を見つけますから。とりあえず婚活パーティーにでも参加してみようかしら」 「婚活パーティー……」  わたしと忍は思わず顔を見合わせた。まだ二十代のわたしたちにはピンとこない選択に、三十代である彼女とのジェネレーションギャップを感じる。 「ちなみに、理想のお相手はどんな人なの? 希望する年収の額とか」 「それ、僕も興味あります」 「年収は……そうですねぇ、一千万くらいで。あとは高身長のイケメンで、優しくて、自分で家事もこなせる人ですかね」 「一千万って、微妙な額ですよね……」 「っていうか、そんな人って現実的にいるのかな?」  わたしたちは村井さんには聞こえないよう、ヒソヒソと言い合った。彼女の掲げる理想の男性像はなかなかにハードルが高そうだ。彼女になかなか彼氏ができないのも、そこらへんに原因があるような気がしてならない。 「……って、私の婚活話はどうでもいいんですよ。そろそろ仕事にかかりましょう」 「ああ、そうね。――ところで野島さん、メール便って高森物産からって言った?」  やっと頭を〝お仕事モード〟に切り替えたわたしは、忍に訊ねた。 「はい。先週の木曜日、接待の席の帰りに僕からお願いしておいたんです。例の新規事業の資料があれば送ってほしい、と。……社長はかなり
last updateLast Updated : 2025-12-11
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE2

「――うん。確かに佑香の言うとおりだとしたら、我が社の経営は一気に傾いてしまいそうだな」 わたしと一緒にミーティングルームへ向かう父は、わたしの考えを聞くと眉間に深いシワを刻んだ。「野島さんが言うにはね、これも南井さんの作戦なんじゃないかって。わたしたち親子を失墜させるための。わたしは違うと思いたいけど、あの人ならやりかねないって」「それは……野島君の考えすぎなんじゃないか? いくら何でも、南井君はそこまで卑怯な男ではないだろう」「だといいんだけどね……。あ、お父さん。この話は他言無用でお願いします」「分かっているよ」 ――ミーティングルームのドアを開けると、そこにはすでに専務・常務などの重役が揃っていた。もちろん、その中には南井副社長の姿も……。「みなさん、今日はお忙しい中集まって頂いてありがとうございます。今日の議題は、高森物産の新規事業への、我が社からの出資に関してです。――野島さん、みなさんに資料をお配りして」「かしこまりました」 忍が重役たちに資料を配付していく。この資料は、今朝高森社長からわたし宛てに届いた資料を彼にコピーしておいてもらったものだ。 みなさんに資料を読んでもらいながら、高森物産が我が城ケ崎ホールディングスに百五十億円もの出資を求めていることを話すと、南井さんを除くみなさんの表情が険しくなった。ということは、やっぱり彼もこの件に一枚嚙んでいるんだろうか?「……みなさん、どう思われますか? わたしと父に忖度する必要はありませんので、正直な意見を聞かせて下さい」「この事業計画、果たして実在するんでしょうかね? このご時世に上海へ進出するなんてリスクしかないと私は思うんですが」「わたしもそう思います。ですけど、もし実在しない計画なのだとしたら、高森物産はなぜ弊社に百五十億もの多額の出資を求めているんでしょう?」 専務と女性常務が、まず疑問を口にしてくれた。「やっぱりそう思われますよね。実はその二点がわたしも引っかかっているんです」「もしもこの計画そのものが『絵に描いた餅』であるなら、我が社は多大な損害を被ることになるだろうな」 わたし、父、専務と常務の四人が慎重派に傾く中、南井さん一人だけがムキになって反論を始めた。「待って下さい! まだその計画がウソだと決まったわけではないでしょう!? 検討の余地はあるので
last updateLast Updated : 2025-12-12
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE3

 ――ちょっと強引かな、とも思ったけれど、わたしはとりあえずこの会議での結論を出すことにした。 「では、みなさんの意見が出揃ったところで今日の会議についての結論を出そうと思います。勘違いしないで頂きたいのは、この結論がこの案件そのものについての結論ではないということです。――この件については今後も引き続き、慎重に検討したうえで先方にお返事をしたいと考えていますが、みなさん、そういうことでよろしいでしょうか?」  高森さんにはそのうえで、「今はまだ検討中なので、結論が出次第お返事を差し上げます」とだけ伝えておくつもりだ。そうすれば、こちら側も誠意を見せたことになるだろう。 「異議なし」 「わたしも同じく。……副社長は?」 「私も、異議はありません」 「――ということだそうだ。佑香、これでいいか?」 「はい。みなさん、今日はお時間を割いてお集り頂いてどうもありがとうございました。お父さんもありがとう。では、今日の会議はこれで終了します。お疲れさまでした」  ――ということで、今日のところは解散となり、重役の皆さんはそれぞれの執務室へと引き揚げていく。 「ああ、佑香。――社長室へ戻る前に、ちょっといいか? お前に訊きたいことがあるんだ」 「うん、いいけど……」  わたしは父に呼び止められた。何だろう? 野島さんと付き合い始めたことは父にも話したはずだし、その時に反対はされなかったはずだけれど。 「お父さん、なに? わたしに訊きたいことって」 「
last updateLast Updated : 2025-12-13
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE4

「――お帰りなさい、社長。先に戻らせて頂いてました」「お帰りなさい。重役会議、お疲れさまでした」 社長室の中では、いつの間にかわたしより先に戻ってきていた忍と村井さんが待っていてくれた。「ただいま。村井さん、ありがとう。戻ってくる途中にちょっと父と話してたから遅くなっちゃった。ごめんなさい」「いえ、別に謝って頂く必要はありませんが……。会長と? 何を話されていたんですか?」 三人で一旦応接スペースに落ち着くと、彼は深刻そうに顔を曇らせる。そういえば、彼と交際を始めたということをわたしがウチの家族全員に話したことを、彼はまだ知らなかったのだ。「ん? あなたとの結婚についてどう考えてるか、って。……ああ、ちなみにウチの家族全員、わたしとあなたが付き合い始めたこと知ってるし、喜んでくれてるからね」「け……っ、けけけけ結婚んんん!? い……いくら何でもそれは気が早すぎるんじゃ……」 彼が顔を真っ赤にして思いっきり動揺しているので、わたしは思わず吹き出した。けれど、わたしにも彼の気持ちはよぉーーく分かる。「そこまで動揺する必要ある? ……まぁ、わたしもそう思うから、父に言ったの。『まだそこまでは考えてないよ』って。でも、いつかはそうなったらいいなぁとは思ってる」「佑香さん……っと、失礼しました! 社長」「いいよ、別に。ここには事情を知ってる村井さんを含めたわたしたち三人しかいないんだから」 他の誰かが聞き耳を立てているわけでもないので、彼にうっかり名前で呼ばれたとしても、わたしがそんな些細なことで彼に目くじらを立てるわけがないのだ。「そうよー、野島くん。私も事情は分かってるんだし、好きなように呼んだら? 社長はそんなことくらいじゃお怒りにならないわよ」 村井さんもそう言ってくれた。忍も彼女に気を遣う必要はないのだ。というか、彼女ひとりだけ蚊帳の外に追いやってしまうのは何だかかわいそうだ。「あ……、そうですね。それはもちろん、今すぐどうこうしたいという話ではないんですよね? いずれは結婚したいという、最終目的地みたいなもので」「最終……ではないけど、まぁそんなところね。その場合、あなたがウチに婿に入ってもらう可能性もあるけどそれは問題ない?」「そうですよね。佑香さんには妹さんしかいらっしゃらないんですもんね
last updateLast Updated : 2025-12-14
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE5

「――それで、会議の方はどうなりました?」  この中でただ一人、会議の場にいなかった村井さんがわたしに訊ねた。そろそろお仕事モードに戻らなければ。 「高森物産への資金援助の件は、とりあえず慎重に調査もしつつ検討する必要があるってことで今日のところは結論が出ました」 「調査……というと?」 「あの会社が十分に信頼するに値する企業かどうか、慎重に調べる必要があるの。反社会的勢力と取引がないか、不自然な資金の流れがないか、この計画が実在するものなのか、その規模はどれくらいのものなのか。あと、資金を援助することで、ウチの会社にどれだけのメリットをもたらすのか。そういうところをね。我が社の優秀な調査チームに依頼するつもり。――というわけで野島さん、依頼メールの送信よろしく。わたしは高森さんに連絡を入れなきゃ」 「かしこまりました」  彼はさっそくデスクに戻ると、パソコンに向かって調査部門へ送信するメールの文章を作成し始める。わたしもデスクに戻りがてら、つい彼の見事なまでのタイピングに見とれていた。わたしもタイピングはそこそこ速い方だと思うけれど、彼の手元に見とれてしまう理由は速さだけじゃない。 クルマのハンドルを握っている時の手元といい、パソコンを使っている時の手元といい、男性の手元ってどうしてこんなにカッコよく見えてしまうんだろう? 「……社長? どうされました?」  あまりにもじーっと見つめすぎていたらしい。パソコンの画面から顔を上げた彼と目が合ってしまった。彼が不思議そうに首を傾げる。 「あ……、ううん! ごめんね、気にしないで続けて。さて、わたしもお仕事しなきゃ!」  バツが悪くなったわたしは慌ててごまかし、デスクに戻った。電話の受話器に手を伸ばそうと
last updateLast Updated : 2025-12-15
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE6

『――お待たせしました。高森です』  しばらく保留音が鳴った後、高森さんが電話口に出た。 「高森社長、おはようございます。城ケ崎です。朝のお忙しい時間に連絡を差し上げて申し訳ございません」 『ああ、いや。構いませんよ』  高森さんはわたしから電話がかかってきたというだけで、何だか上機嫌だ。気持ち悪い……。 「では、さっそく本題に入らせて頂きます。そちらから送って頂いた、先日お話のあった新規事業参入の資料、拝見致しました。それで、この件につきまして、先ほど重役会議で話し合ったのですが……」  わたしはここで、わざともったいぶって間を作った。相手への返事を焦らすことで、あくまでもこちらが優位にあると相手に思わせるのが狙いである。 『……はい。それで……、どうなりましたでしょうか?』 「申し訳ございませんが、すぐに結論を出すのがリスキーだと判断致しまして。これからじっくり時間をかけて、慎重に検討した後にお返事を差し上げるということになりましたがよろしいでしょうか? それとも、これはお急ぎの案件ですか?」 『……いや、特に急がなければならない案件ではございませんのでな。それはもう、そちらの判断にお任せします』 (……しめしめ。向こうはすっかりこっちのペースに乗らされてる)  高森さんの反応を聞いて、わたしはこっそりほくそ笑んだ。どうやら作戦は成功らしい。 
last updateLast Updated : 2025-12-16
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE7

 ――電話の後、わたしはいつもどおりの仕事をこなし、今日もお昼休みがやってきた。 でも、先週までと違っているのは――。「――社長、今日も社食に行かれるんですよね? 僕も一緒に行きます」 わたしの〝彼氏〟に昇格した忍も一緒に行くことになったということだ。彼としては、もう萌絵や平本くんに遠慮する必要がなくなったわけである。ということは、今まではずっと遠慮していたということだろう。「うん。野島さんも一緒に行こう」 スラックスのポケットに二つ折りの財布を突っ込んだ彼が席を立つと、わたしもバッグから長財布を出して立ち上がる。「あ、私は今日お弁当持ちなので。お気になさらず社食デート、行ってらっしゃいませ」「……うん、行ってきまーす」「行ってきます、村井さん」 村井さんに冷やかされつつ、わたしたちは二十二階の社員食堂へと下りて行った。   * * * *「――佑香、こっちこっちー! ……あ、野島さんも一緒なんだ。お疲れさまです」 仲よくオムライスのトレーを抱えて席を探していると、四人掛けのテーブルにデンと陣取っていた萌絵が手を振っておいでおいでしてくれた。わたしたちがテーブルに到着すると、彼女は忍に後輩の顔で会釈する。 ちなみに、彼女が頼んだのは冷やし中華だった。「田口さん、お疲れさま。一昨日は実家の店に来てくれてありがとう。社長もありがとうございました」「いえいえ、あたしたちはあくまで客として行かせて頂いただけですから。――あ、よかったら席変わります? 佑香と向かい合わせの方がいいんじゃないですか?」 わたしの向かいに座っていた萌絵が、そう言って遠慮がちに腰を浮かす。「ごめん、田口さん。でもありがとう。じゃあ……そうさせてもらおうかな」 というわけで、わたしと忍は向かい合わせに、萌絵はわたしと隣り合わせに座る形になった。「それじゃ、いただきま~す!」 彼と仲よくゴハンを食べ始めたわたしは、ふとある違和感に気づいた。いつもはいるはずの彼が、今日はこの場にいないのだ。「……そういえば今日、平本くん来てないね」 今朝、わたしに面と向かってフラれたショックで顔を合わせづらいんだろうか?「もしかして、わたしのせいかなぁ? だとしたらちょっと平本くんに申し訳ないかも」「えっ? ……社長、彼と何かあったんですか?」 わたしにそう訊ねる忍の声
last updateLast Updated : 2025-12-17
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE8

 ――と、そこへ一人の女性社員がやってきた。この会社で唯一制服のある、受付業務の女性社員だ。 「あ、佑香社長。お疲れさまです。野島さんと……田口さんも一緒なんですね」 「ああ、広瀬さん。お疲れさま。っていうか同期なんだから、敬語はいらないって。……今からお昼?」  わたしに「ええ」と答えた彼女は広瀬茉由。わたしと平本くん、そして萌絵の同期入社組だ。わたしと同じくらい……いや、背が高いのでわたし以上にスタイルがよくて大人っぽい美女で、艶やかな黒のウェービーなロングヘア―を、清潔感のあるアップスタイルにしている。 受付スタッフは常に誰かがカウンターにいなければならないので、交代制でお昼休憩を取る決まりになっているらしい。その証拠に、ついさっきまで食堂にいた受付スタッフが、彼女と入れ替わる形で食堂を出ていくのが見えた。 「そういうわけにはいかないでしょう? あなたはもう、この会社の社長なんですから。ただの同期として接するわけにはいきません。わたしたち受付スタッフはこの会社の〝顔〟なんですから」  隣の空いたテーブルで冷製パスタを食べ始めた彼女が、わたしにさっきの発言への反論をした。怒っているわけではなくて、彼女の真面目な性格ゆえの反論だと思う。 「……そっか。広瀬さんのそういう真面目なところ、わたしは尊敬するよ。ちょっと淋しいけど」 「あたしは変わらずに
last updateLast Updated : 2025-12-18
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噛みしめる幸せと、忍び寄る裏切りの足音 PAGE9

「――社長」「…………ん? なに?」 社食から社長室へ戻る途中、浮かない顔をしているわたしに忍が心配そうに声をかけてくれた。そういえば、わたしは萌絵や広瀬さんの話を聞いてからずっとため息ばかりついている。オムライスも三分の一ほど残してしまったし、彼が気にしてくれるのもムリはないだろう。「平本くんのこと、気になりますか? 叔父と昼食に出かけたことが」「…………あー、えっと……」 どうしてこんなに気にしているのか自分でも分からないけれど、果たして〝彼氏〟である忍に、今のこの気持ちを話していいものか……。「僕のことはお気になさらず、素直なご自分の気持ちを話して下さって構いませんよ。何を聞いても僕は気にしませんから」「うん……。平本くんね、わたしが『友だちのままじゃダメなの?』って言った後、返事を渋ったって言ったでしょ? まぁ、その気持ちも分からなくはないの。自分の失恋相手と〝友だち〟でいるなんて、彼にとっては多分苦痛以外の何ものでもないはずだから」「……はい」「それは仕方のないことだって、わたしも思ってる。でも……、そのせいで彼が南井さんの手先になっちゃうのはイヤだなぁって。彼、わたしのこと恨んでるのかなぁなんて思っちゃって。だから南井さんのお誘いにホイホイ乗っちゃったんじゃないかって、そんな気がするの。それってわたしのせいなのかなぁ……って。……わたしの考えすぎかな?」 忍は相槌を打ちながら、わたしの話を最後まで聞いてくれた。そしてやっと口を開く。この話を聞いて、彼はどう感じたんだろう?「それは社長のせいなんかじゃないと思います。その程度で叔父の側に寝返ったのだとしたら、彼の社長への気持ちは所詮その程度のものだったということでしょう。それを、叔父は利用したんです。叔父はそういう計算高い人なんですよ」「えっ?」 彼はいつになく辛辣で、わたしは呆気にとられた。叔父である南井さんのことでここまで険のある言い方になるのはしょっちゅうだけれど、平本くんのことをここまでボロカスに言うのは珍しい。それだけ彼に対して怒っているのか、ライバルだと認めているからなのか……。「それでも社長がご自分のことを責めて、彼に対して責任を感じていらっしゃるとしたら……。本当は彼に対して友情ではない感情を抱かれているからではないでしょうか」「……えっ? 友情
last updateLast Updated : 2025-12-19
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揺れ動く心…… PAGE1

 ――自分の心の中にある、平本くんへの本当の気持ちを自覚してから、わたしはもうグダグダだった。 仕事中もミスばかりするし、ため息は途絶えることもなく、二人の秘書に心配ばかりかけていた。 「――社長、少し休憩されてはいかがですか?」 「ああ、そうですね。僕、コーヒーを淹れてきます」 「ありがとう、二人とも。心配かけてごめんね」  村井さんがそんなわたしを見かねてそう提案してくれ、忍が給湯室へと向かった。 こんなに不安定な社長についてきてくれる優秀な秘書たちに、わたしは感謝しかない。わたしが頭を抱えている問題は仕事に関係なく、個人的な問題なのに。 「……社長、お昼休みまでに何かあったんですか? 午後に入ってからずっと様子がおかしいですけど」 「うん……。そっか、村井さんも気づいてたか」 「ええ。社長のことをよく見ているのは野島くんだけじゃないんですよ。私だって、社長の秘書なんですから」 「そう……だよね」  忍とは違う意味で、彼女もわたしにとってなくてはならない存在だ。彼には言いづらいことも、女同士だから彼女には話せるということもあるから。 たとえば体調――特に月一回来るあの時のこととか、結婚してからだと妊娠中のこととか。 「それで、何があったんですか?」 「うん……、実はね――」  わたしは彼女に、今日平本くんが南井副社長と一緒にランチへ行ったことや、彼がわたしを裏切るかもしれない、とショックを受けていることを話した。  そしてその理由は、わたしが大学時代から彼に恋心を抱いていて、その気持ちが今も小さく燻ぶ
last updateLast Updated : 2025-12-20
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