「――野島さん、あのね、わたし……」「……はい?」 いつもみたく、お砂糖二杯とミルクの入った甘めのコーヒーを飲みながら、わたしは忍にあのことを打ち明けようとした。でも、いざ口を開いてみると、どこからどう話していいのか分からない。それにやっぱり、彼の反応が怖くてなかなか言い出せないというのもあった。「あ……、ううん。やっぱりいい」 結局、わたしはこのタイミングでは彼に話すのをやめてしまった。まあいいか、これからだって、彼に話すタイミングはいくらでもあるわけだし。「……あの、社長……というか、ここでは佑香さんとお呼びします」「うん。……なに?」 今度は彼が、わたしに話を切り出した。でも名前で呼ぶということは多分、平本くんとは関係のない話だろう。「今度のデートの行先、僕なりに考えてみたんですが。僕たち二人の共通項って読書とコーヒーが好きだということじゃないですか。だから、ブックカフェなんてどうですかね?」「ブックカフェか……。うん、いいんじゃない?」 ブックカフェとは文字どおり、好きな本を読みながらコーヒーや紅茶などのドリンクやスイーツが楽しめるお店のことだ。 わたしは読書が趣味だし、彼も趣味の域まではいかないけれど本を読むのが好きで、二人とも大のコーヒー好きでもある。そんなわたしたちのデート先としてはまさにうってつけの場所だといってもいい。「でしょう? それで、昼くらいに待ち合わせをして、ランチを済ませて、ブックカフェを何軒かハシゴして。あとはウィンドウショッピングをしたり、スカイツリーに登ったりで半日は楽しめると思うんです。どうですか?」「ランチは喫茶〈結〉で?」 わたしはつい、からかい口調になる。さっきまで深刻な話をしようとしていたのがウソみたいだ。「えっ、ウチの店ですか!? ……う~ん、まぁいいですけど。両親も姉も、佑香さんが顔を見せて下さったら喜ぶでしょうし。でも、僕が客として店で昼食を摂るのはなぁ……。何だか、『おっ、デートか?』とか冷やかされそうで」 ご子息の彼女がデートの待ち合わせで自分の店に来るなんて、お店をやっている人ならではの経験だろう。忍は今までの恋人とも、こうやってご両親のお店で待ち合わせをしていたんだろうか……。 忍の過去の恋愛なんて興味ないとか言っておきながら、こういうことは気になるなんてわたしは勝手だと思
Last Updated : 2025-12-21 Read more