All Chapters of 恋するプレジデント♡ ~お嬢さま社長のめくるめくオフィスLOVE~: Chapter 81 - Chapter 90

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揺れ動く心…… PAGE2

「――野島さん、あのね、わたし……」「……はい?」 いつもみたく、お砂糖二杯とミルクの入った甘めのコーヒーを飲みながら、わたしは忍にあのことを打ち明けようとした。でも、いざ口を開いてみると、どこからどう話していいのか分からない。それにやっぱり、彼の反応が怖くてなかなか言い出せないというのもあった。「あ……、ううん。やっぱりいい」 結局、わたしはこのタイミングでは彼に話すのをやめてしまった。まあいいか、これからだって、彼に話すタイミングはいくらでもあるわけだし。「……あの、社長……というか、ここでは佑香さんとお呼びします」「うん。……なに?」 今度は彼が、わたしに話を切り出した。でも名前で呼ぶということは多分、平本くんとは関係のない話だろう。「今度のデートの行先、僕なりに考えてみたんですが。僕たち二人の共通項って読書とコーヒーが好きだということじゃないですか。だから、ブックカフェなんてどうですかね?」「ブックカフェか……。うん、いいんじゃない?」 ブックカフェとは文字どおり、好きな本を読みながらコーヒーや紅茶などのドリンクやスイーツが楽しめるお店のことだ。  わたしは読書が趣味だし、彼も趣味の域まではいかないけれど本を読むのが好きで、二人とも大のコーヒー好きでもある。そんなわたしたちのデート先としてはまさにうってつけの場所だといってもいい。「でしょう? それで、昼くらいに待ち合わせをして、ランチを済ませて、ブックカフェを何軒かハシゴして。あとはウィンドウショッピングをしたり、スカイツリーに登ったりで半日は楽しめると思うんです。どうですか?」「ランチは喫茶〈結〉で?」 わたしはつい、からかい口調になる。さっきまで深刻な話をしようとしていたのがウソみたいだ。「えっ、ウチの店ですか!? ……う~ん、まぁいいですけど。両親も姉も、佑香さんが顔を見せて下さったら喜ぶでしょうし。でも、僕が客として店で昼食を摂るのはなぁ……。何だか、『おっ、デートか?』とか冷やかされそうで」 ご子息の彼女がデートの待ち合わせで自分の店に来るなんて、お店をやっている人ならではの経験だろう。忍は今までの恋人とも、こうやってご両親のお店で待ち合わせをしていたんだろうか……。 忍の過去の恋愛なんて興味ないとか言っておきながら、こういうことは気になるなんてわたしは勝手だと思
last updateLast Updated : 2025-12-21
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揺れ動く心…… PAGE3

 ――そんなわたしの心の揺らぎなど構いもしないで、事件が起こったのはその翌日のことだった。「おはよう……、あれ? 村井さん、どうしたの?」 忍と一緒に社長室へ出勤してくると、応接スペースのローテーブルの上に雑誌を何冊もドッサリ並べていた彼女がそのうちの一誌の誌面を凝視したまま何やら険しい顔をしている。「あ、社長。おはようございます。今日、出勤前にコンビニで本日発売の週刊誌を全誌買ってきたんですが」「ああ、先週のわたしの就任会見の記事が載ってる週刊誌ね? それで、どうしてそんなに怖い顔してるの?」  会見の翌日は、忍が新聞を全紙買ってきてくれていたなぁと思い出す。村井さんは村井さんで、週刊誌を買い漁ってきたらしい。忍といい、村井さんといい、わたしの秘書たちって……。それはともかく。「それがですね、あの〈週刊イレブン〉なんですけど。見て下さい。こんな記事が載ってるんですよ!」「えっ? ちょっと見せて」「一体どんな記事が……、うわー。これは……」 わたしと一緒に忍も誌面を覗き込むと、そこに載っていたのはこんな内容の記事だった。『城ケ崎ホールディングスの新社長・城ケ崎佑香はキス間のセクハラ上司!』 こんな見出しが躍り、酔っ払って忍におぶさっているわたしや、クルマの中でわたしと彼がキスをしている写真が掲載されている。写真はおそらく隠し撮りだろう。記事の内容を読んでみても、わたしに関することがあることないことツラツラと書き連ねられていて、もはや悪意しか感じられない。「記者の名前は三橋礼司……ですか。この人、もしかして」「うん。多分、あの時の記者だと思う」「ひどいですよね、こんなの! この記者に連絡して、すぐにでも訂正記事を書いてもらわないと!」 村井さんもプンスカ怒っている。でも、彼女の言うとおりだ。こんなのは立派な名誉棄損に該当する。「あの記者、編集部に在籍してるとは限らないよね。もしかしたらフリーかも。連絡先知ってる人、誰かいないかな。……あっ、一人いた!」 わたしには一人、心当たりがあった。でも、その人は今いちばん顔を合わせたくない人物でもある。心してかからなければ。「わたし、ちょっと行ってくる。すぐに戻るから」「えっ、社長!? 行かれるってどこに?
last updateLast Updated : 2025-12-22
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揺れ動く心…… PAGE4

 副社長室を始めとする重役たちの執務室は、社長室・会長室を除いてすべて二十構造になっている。 まず廊下に面したドアをノックすると、副社長の秘書である武内京香さんが「はい?」とドアを開けてくれた。 「――あ、社長。おはようございます。どうされました?」 「おはようございます。南井さんにちょっとお願いしたいことがあって。取り次いでもらえます?」  基本的に、わたしは自分の秘書である忍と村井さんを除く他の重役秘書には敬語で話すことにしている。みなさんわたしより年上で、社員としても先輩にあたるからだ。――それはさておき。 彼女は「かしこまりました」と頷き、すぐ南井さんに取り次いでくれた。 「――社長、おはようございます。私に一体どんなご用件でしょうか?」 「おはようございます、南井さん。さっそくですが本題に入らせて頂きますね。――この記事を書いた三橋さんという記者の方、ご存じですよね?」  わたしは彼の目の前に、社長室から持ってきた〈週刊イレブン〉を持ってきて、彼の前にあの記事を突き出す。 「……ええ、存じておりますが。彼も高森君と同じで私の古い友人の一人なんでね」 「はぁ、……そうですか」  彼はすっとぼけるかと思いきや、あっさり知り合いだと認めたので、わたしは何だか肩透かしを食らったような気持ちになる。
last updateLast Updated : 2025-12-23
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揺れ動く心…… PAGE5

「――社長、おかえりなさい」 「ただいま」  わたしは社長室へ戻ると、デスクの抽斗から付箋を取り出し、雑誌のドッグイヤーしてあったあのページに目印として貼り付けた。 「……あの、叔父と何かありましたか? 顔色が少し悪いようですけど……」 「何かされたってわけじゃないけど、平本くんのこと、あなたよりも『利用価値がある』って言われた」 「えっ!? それじゃあ、彼を利用しようとしていると認めたようなものですよね」 「うん……。あの三橋っていう記者の連絡先ゲットしたから、今から連絡取ってみる」  南井さんからもらったあの記者の名刺を広げ、そこに書いてある彼の携帯番号をスマホでダイヤルする。さすがに繋がらないかと思ったけれど、意外にも3コールほどで応答があった。 『――はい、三橋ですが。どちらさまですか?』 「突然お電話を差し上げてすみません。わたし、城ケ崎ホールディングス社長の城ケ崎佑香と申しますが。あなたのお友だちの南井副社長から連絡先を教えて頂いたんです」 『城ケ崎社長……、そうでしたか』   わたしが名乗ると、三橋さんはハッと息を呑んだ気がした。自分がやらかしたことに自覚はあるみたいだ。 「こうして連絡を差し上げた用件はお分かりのはずですが」 『はい。あの記事のことですね? それで、そちらの要求は?』 「まずはわたしに謝罪して、あの内容に
last updateLast Updated : 2025-12-24
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揺れ動く心…… PAGE6

 ――付箋を貼り付けた今週号の〈週刊イレブン〉をバッグに突っ込み、忍はクルマのリモコンキーを手にして手早く外出の支度を済ませる。 「じゃあ村井さん、わたしと野島さんはちょっと外出するから。その間に処理が必要な案件が来たら、リストアップしておいてもらえる?」 「かしこまりました。お昼までには戻られます?」 「さあ……。戻れるとは思うけど、もし戻ってこられなかったらお昼も外で済ませてくると思う。友だちにはわたしから連絡しておくし、父が来たらわたしが外出してること伝えておいてくれる?」 「はい。では行ってらっしゃいませ。お気をつけて」 「すみません、村井さん。後はよろしくお願いしますね」 「いいのよ、野島くん。愛しの社長のこと、しっかりガードしてあげるのよ」 「はい!」  彼についてきてもらえるのは、本当に心強い。万が一にも三橋という記者とトラブルになった時、空手三段だという彼がきっと頼もしいボディーガードにばってくれるから。     * * * *   ――途中で銀行のATMに立ち寄り、百万円の現金を引き出してから、わたしたちは神田にある陽信出版の〈週刊イレブン〉編集部を訪ねた。 ちなみに金額を百万円にしたのは、ATMで一回に引き出せる限度額が百万円までだからである。もう一度並べばもっと引き出せるかもしれないけれど、それもまた面倒だ。 「――社長、あの
last updateLast Updated : 2025-12-25
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揺れ動く心…… PAGE7

「――それで、三橋さん。わたしへの謝罪と訂正記事のこと、考えて下さいました?」  約束していた十時。〈週刊イレブン〉編集部の応接スペースで、わたしと忍は三橋さんと編集長を務める男性と向き合った。 忍はわたしの隣に座り、ガッチリとガードを固めてくれている。ローテーブルの上には、三橋さんが入れてきてくれたフリードリンクの冷たい麦茶の紙コップが二つ。もちろん訪問者であるわたしたちの分だ。そして、百万円の入った封筒が一つ。 「ここに百万円あります。あなたの月収よりずっといい金額だと思います。これで手を打って頂けませんか?」  彼がこの封筒に手を伸ばせば交渉成立でわたしの勝ち、払いのけるか見向きもしなければ交渉決裂でわたしの負け。さあ、どうする……? 「……分かりました、私の負けです。城ケ崎社長、この度は失礼な記事を書いてしまい、本当に申し訳ございませんでした。すぐに訂正記事を書いて、来週号に乗せて頂くということで許して頂けますか?」 「編集長の僕からもお詫び申し上げます。あの記事にOKを出したのは僕です。本人もこうして反省していることですし、許して頂くわけには参りませんでしょうか? もちろん、訂正記事も僕の判断でキチンと来週号に掲載させて頂きますし、ホームページやSNSでも謝罪文を公開させて頂きますので」  三橋さん本人の後、編集長さんも深々とわたしたちに頭を下げた。彼はまだ四十代くらいだと思う。三橋さんは南井さんの元同級生だとしたら五十歳なので、少し年下の上司ということになる。わたしと忍みたいに。 「ああ、いえ! 謝罪文なんて、そこまでして頂かなくても……。そういうことでしたら、この件はもう、こちらはこれ以上追及しませんから。……ただ、最後にお訊きしたいことがあるんですが」 「ああ、ニュースソースが誰か、という
last updateLast Updated : 2025-12-26
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揺れ動く心…… PAGE8

「――佑香さん、これからどうします? まだ時間は早いですけど」 陽信出版のビルを出たのは十時半ごろだった。会社を出てからまだ一時間も経っていないけれど、わたしたちの用件はもう済んでしまった。 出版社のビルの来客用駐車場で、クルマに乗り込んだ忍がわたしに訊いた。まだ時間が早いので、二人で外食という選択肢は確実に消えてしまった。というか、わたし自身がそういう気分ではなくなったし。「会社に戻ろう。仕事しなきゃ。それに、お留守番してもらってる村井さんに申し訳ないし」「……そうですね」 彼はほんの少し不満そうだったけれど、とにかくわたしたちは会社へ戻ることにした。「――何だか、『やっぱり』っていう感じの展開でしたね」「うん……。あの記事を書かせたのが南井さんっていうのは予想どおりだった。けど、よりにもよって平本くんが南井さんのスパイになってたなんて……」 助手席のわたしは途方に暮れて天を仰いだ。そうであってほしくないと思っていたのに、「やっぱり」そうだったなんて……。ある程度の覚悟はできていたつもりだったけれど、ダメだ。ショックが大きすぎる。「どうします、社長? このまま会社に戻られるのはおつらいんじゃないですか?」「それは……そうだけど。だからって戻らないワケにもいかないじゃない? 平本くんともちゃんと話さないと」「…………そうですか。社長がそうおっしゃるなら……。ですが、社長はお強いですね」「……えっ? そうかなぁ?」 忍にいきなりそんなことを言われ、わたしは面食らう。自分ではそんなに強い方ではないと思っているのだけれど……。「はい。社長に就任されてから、動画配信サイトやSNSでかなり叩かれていましたし、イヤがらせもあったでしょう? ですが、社長はそれにも屈することなくいつも毅然としていらっしゃいますから。あなたは強い人だ。僕は初対面の時からそう思っていて、そこに惹かれたんですよ」「えっ、そう……なの? ありがとう」 彼の言葉からはわたしへの強い愛情を感じて、すごく嬉しい。まだ付き合い始めたばかりなのに、ここまで愛されているなんて幸せすぎる。 でも嬉しい……はずなのに、素直に喜べないのは彼に対する負い目がわたし側にあるからだろうか。「いえ、『ありがとう』を申し上げたいのは僕の方ですよ。先ほど、除法提供者の候補に僕をカウントしなかったで
last updateLast Updated : 2025-12-27
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揺れ動く心…… PAGE9

 そこまで言って彼の顔を窺うと、彼は少しだけ動揺しているみたいだった。 「……えっ? あの……、それは……どういう――」 「お願いだから、前向いたまま聞いて。運転中でしょ」 「あ……、はい。すみません」  思わず、という感じでわたしの方を向いた彼をたしなめた。わたしのせいで事故を起こさないでほしい。 「昨日、あなた言ってたよね。わたしに『過去の自分の気持ちと向き合ってみたらどうか』って。それでキチンと向き合ってみたの。昔の……あなたに出会う前のわたし自身と」 「その結果が、先ほどおっしゃっていた……」 「そう。わたしは多分、彼のことが好きだったの。それが恋心だったのかどうかは、向き合ってみて初めて分かったんだけど」 「そうだったんですね。……あれ? ですがその頃、社長は遠藤さんと」 「うん、すでに付き合ってたけど、わたしの心の中にいたのは平本くんだった。別れた理由は彼だけじゃなくて、わたしの方にもあったの」  もしもっと早く自分の中にある彼への恋心を自覚していたら、わたしは真也と付き合っていなかったんだろうか。平本くんと付き合っていたんだろうか。 でも、もしそうなっていたとしたら、忍と運命の出会いをすることもなかったかもしれないけれど。 「平本くんには、真也と付き合ってた頃にも色々と相談に乗ってもらったりしてて。彼に話を聞いてもらうとなんかホッとして、気持ちが落ち
last updateLast Updated : 2025-12-28
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本当の気持ちと二重スパイ PAGE1

「――村井さん、ただいま」「ただいま戻りました」「社長、野島くん、おかえりなさい。ずいぶんお早いおも戻りでしたね」 わたしたち二人が会社に帰ると、予想外に早い帰社に村井さんが目を丸くした。「昼食も外で済ませて来られると思ってましたけど」「うん。そのつもりだったんだけど、用件が思ってたより早く片付いたもんだから。今日も社食に行くことにした。――留守の間、何か変わったことあった?」 わたしは彼女にそう答え、デスクの傍らにバッグをドサッと置き、パソコンを起動させた。 もっとも、社食へ行く前に平本くんをつかまえて話をすることになるだろうけれど……。忍には先に行って席を確保しておいてもらおうかな。「ああ、会長がチラッと顔を出されてましたよ。あの記事のこと、会長も気にされてたようですね。社長が陽信出版へお出かけになったとお伝えしたら、『やっぱりそうか』とおっしゃってました」「そっか。お父さんも気にしてくれてたんだ。村井さん、ありがとう」「いえいえ」「村井さん、他に何か変わったことはありませんでした?」 忍も同じように、先輩である彼女に訊ねた。とはいえ、彼が訊きたいのは多分仕事に関することだろう。「野島くん、あなたが訊きたいのは仕事のことでしょ? ちゃんと頼まれていたとおり、社長の決裁が必要な案件はリストアップしておきました。――社長、リストはこちらです」「ありがとう、村井さん。助かるわ」 村井さんは秘書席を立ち、わたしのデスクまでプリントアウトしたリストを持ってきてくれた。外出していた時間が短かったためか、決裁が必要な案件はそれほど多くない。 わたしはさっそく、村井さんのパソコンから共有されたメールの添付ファイルを開き、内容の確認を始める。「……あ、外は蒸し暑かったでしょう? 私、何か冷たい飲み物をお持ちしますね。お二人とも麦茶でいいですか?」「うん。ありがとう! 野島さんは?」「僕もそれで大丈夫です。ありがとうございます」「分かりました。では、ちょっと失礼します。すぐにお持ちしますね」 村井さんはそう言うと、給湯室へ向かった。「……ねえ、野島さん。ちょっといい?」 メールの返信をしながら、わたしはデスクまで彼を呼んだ。「はい? ……何でしょうか?」「わたしね、お昼休みに入ったら平本くんをつかまえて、話そうと思うの
last updateLast Updated : 2026-01-05
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本当の気持ちと二重スパイ PAGE2

 村井さんが淹れてきてくれた冷たい麦茶を飲みながら、わたしと忍は午前中の仕事をバリバリこなした。 平本くんにどう話を切り出そうか、もしまた「俺にしとけ」なんて言われたらどう答えようか……なんて雑念も混ざってはいたけれど、それらはほとんど仕事をするうえでの支障にならず、どうにか無事に午前の業務を終えることができた。 その合間に、平本くんにメッセージを送ってみた。『今日、社食に行く?』と。すると、彼から『今日は行くつもりだ』と返信があった。 彼に連絡先をブロックされていたらどうしよう……と思ったけれど、ブロックされていないということは、彼はまだ完全にわたしと縁を切ったわけではないみたいなのでちょっと安心した。〈じゃあ、社食に入る前にちょっと時間もらえないかな? あなたと話したいの〉〈分かった。社食のエントランスの前で待ち合わせな〉 話の内容まではメッセージに書かなかったのに、彼もわたしと話をしたがっていることが分かる。どうやら彼には、わたしを拒絶するつもりはないらしい。(じゃあ、なんで南井さんにホイホイついて行ってるのよ……? 平本くん、どういうつもり?) ちゃんと話をしてみて、彼の言い分を聞くまではその本心が分からない。少しモヤモヤするけれど……。 ――そしてやってきたお昼休み。「野島さん、社食に行こう。わたし。平本くんと社食のエントランス前で待ち合わせしてるから」「はい」「あ、じゃあ今日は私もご一緒に。安心して下さい。お二人とは別のテーブルに着きますので」 今日は村井さんも社食に行くらしい。珍しいこともあるもんだ。「……いや、村井さん。わたしたちにそこまで気を遣わなくても」 ――それぞれお財布を持ったわたしたちは、三人一緒にエレベーターで二十二階まで下りた。「それじゃ、私はお先に」「僕も先に行っていますね。席、取っておきましょうか?」「あー……、そうね。多分、萌絵も来ると思うから一緒のテーブルに座ろっか。時間かかるようなら先に食べてて」「分かりました。では、また後ほど」 二人と別れたわたしは、すぐにエレベーターから降りてきた平本くんを見つけて駆け寄った。「平本くん!」「よう、佑香。待たせちまって悪りぃな」「ううん、わたしもついさっき下りてきたところだから。ちょっと、人がいないところで話そう?」 というわけで、わたしと
last updateLast Updated : 2026-01-05
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