晴真が響をベッドに座らせた。ベッドは少し軋んだ音を立てる。そして自分も隣に腰を下ろす。夕方の光が窓から差し込み、二人を柔らかく照らしていた。「なあ、響」「ん?」「もう一度聞かせてくれ。本当に、俺と一緒にいてくれるのか?」 晴真の不安そうな声に、響は晴真の顔を両手で包んだ。頬はまだ涙の跡が残っていて、響はそっと親指で拭った。「何度でもいうよ。俺は晴真と一緒にいる。もう離れない」「でも、大変だぞ。周りの目とか、家族の反対とか。就職だって難しくなるかもしれない」 晴真の現実的な心配に、響は優しく微笑んだ。「分かってる」 響は晴真の額に自分の額を合わせた。お互いの呼吸が混ざり合う。「でも、晴真となら乗り越えられる。一人じゃないから」「響……」「それに」 響は少し照れたように笑った。「俺、晴真のためじゃなきゃ曲が書けない」「は?」 晴真が目を丸くした。「晴真の歌声を思い浮かべないと、曲が書けなくなっちゃった。メロディーは浮かぶんだけど、晴真の声で歌われることを想像しないと、完成しない」 その告白に、晴真は息を呑んだ。「本当?」「うん。晴真と離れてた間、なにも書けなかった。頭の中で晴真の声が聞こえてきて、でも晴真はもういないんだって思うと、音が消えていく」 響の目に涙が浮かんだ。「怖かった。もう二度と曲が書けないんじゃないかって」「俺も」 晴真が響の手を強く握った。「響の曲じゃなきゃ歌えない。他の曲を歌おうとしても、声が出ないんだ。カラオケで適当に歌おうとしても、喉が締め付けられるように」「困ったね」 響が涙混じりに笑った。「ああ、困った」 晴真も笑った。「完全に依存症だ」 二人は顔を見合わせて、そして笑い出した。涙でぐちゃぐちゃの顔で、それでも心から笑っ
最終更新日 : 2025-10-31 続きを読む