مشاركة

4話 懐かしい優しさ

مؤلف: 空蝉ゆあん
last update تاريخ النشر: 2025-10-12 08:00:32

右足に違和感を感じて、緊急《きんきゅう》停止するルルア。人のお腹のような柔《やわ》らかいものを蹴《け》った気がした。遠くから呻《うめ》き声が聞こえてくる。ルルアは何が起こったのか分からず、呆然《ぼうぜん》としていた。

「こんな所に突っ立って、何をしてるんだ?」

急に走り出したルルアに追いついたロザンは真っ青になっている姉の様子を心配しつつ、状況《じょうきょう》を確認しようとする。すると、遠くから老人がお腹を抑え、蹲《うずくま》っているのが見えた。

一瞬の事だった。吹っ飛ばされたミミロウは建物《たてもの》に激突《げきとつ》し、周囲に破壊音を齎《もたら》していく。

なんだなんだ、と村人達が音に引き寄せられるように家から出てきた。自分達と老人しかいなかったのに、村人全員が勢揃《せいぞろ》い。

「あー。ミミロウ村長、どうしたんですか?」

「大丈夫……じゃ。わしは……」

村人の一人がミミロウの元へ駆《か》け寄り、安否確認をする。プルプル震えている体を庇《かば》いながら、体制《たいせい》を整えていく。

驚異的《きょういてき》な破壊力を体験したミミロウは、この子達を預《あず》かるのか、と心の中で呟きながら、頭を抱《かか》えるしか出来ない。

まさかここまでじゃじゃ馬とは思いもしなかったようだったーー

「ルルア、お前何をしたんだ?」

「さ、さぁ?」

「……はぁ」

初めての村で大変な事をしてしまった姉の代わりに、村長へ謝罪をしようと近づいていく。ルルアはその様子をぼんやりと眺《なが》めながら、体から魂を飛ばしていった。

□□

眠っているルルアがいつ目を覚ますのだろうか。トラブルはロザンがどうにか収《おさ》め、ミミロウは勿論《もちろん》、村人達にも許してもらう事が出来た。

彼がいなかったら、どうなっていたのだろうか。想像すると悲惨《ひさん》な末路しか見えてこない。

「お転婆《てんば》を通り越《こ》したな、ルルア」

自分のした事を頭では理解出来ていたのだろう。それでも精神的に受け入れる事が出来ない。彼女は自分を守る為に、意識を手放す選択をしたよう。

ピンとルルアの額を突く。その姿は姉弟《きょうだい》と言うより恋人のように見えてしまう。二人には血の繋がりがない。それでも共に過ごしてきた今までがあるから、姉弟《きょうだい》の関係を保《たも》つ事が出来ている。

「お前の姉さんは凄いの~。さすがのワシも驚いたわい」

「すみません……」

「いやいや何もお前さんが謝らんでも……大変じゃの」

ミミロウは軽く言っているが、どう見ても驚いているようには見えなかった。あれは負傷《ふしょう》していると断言《だんげん》出来る。ロザンは数時間前の光景を思い出しながら、項垂《うなだ》れた。

「自己紹介がまだじゃったの。お前の姉さんは寝ているし、ワシらだけでも」

「そうですね。名乗らずすみません」

ロザンの紳士的《しんしてき》な対応に感涙《かんるい》しそうになるミミロウ。自分の息子もロザンのようだったらと思う程だ。この弟がいるから、あの姉がいるのだな、と納得する。

一人でうんうんと頷いているミミロウは、自分の中で勝手に結論《けつろん》づけていく。

「あの……自己紹介は」

「おっと、そうじゃった。ワシの名前はミミロウ・ナバリー。ルンガ村の村長をしておる。老人に見えても心は青年じゃ」

「……俺の名前はロザンと言います。姉はルルア。冒険者です」

冒険者と一括《ひとくく》りに説明してみるが、自分達は何の経験も、実績《じっせき》もない。そりゃそうだろう。今日冒険者になったばかりなのだから。細かい説明をした方がよかったのかもしれない。

「ほほう、冒険者か。ルルアは自分の武器を持っているようじゃが、お主は持っておらんの。もしかして魔術師《まじゅつし》か?」

「……いえ」

バリスはルルアだけに専用武器《せんようぶき》を与《あた》えたが、ロザンには渡さなかった。その光景を見ている瞬間、もやもやとした感情が渦巻いたが、ルルアの楽しげな顔を見ていると、考えないようにしていた。

それなのに、初対面の人に指摘《してき》されるとは考えていなかった。ズキリと心臓が痛む。

表情に出さないように、痛みを感じないようにスキル精神力を使う。ロザンにとって安定を失う事は何よりも恐ろしい。このスキルを取得《しゅとく》する為、バリスに指導をしてもらった事が、昨日のように感じた。

「そうじゃ、ワシらがお前さんの専用武器《せんようぶき》を作ったる。冒険者なら武器は必需品《ひつじゅひん》じゃからのぉ」

「え?」

「何を驚いておる。この村は鍛冶屋《かじや》の村じゃぞ? お前さんの武器をワシに打たせてもらえんかの?」

迷惑しかかけていないのに、こんな提案《ていあん》をされると思っていなかったロザンは驚きを隠せない。どう反応したらいいのか考えてみるが、答えは出てこなかった。

「嬉しそうな顔をしとるの~。よし了承《りょうしょう》も得《え》れたし、明日からお前さんの武器の制作に取り掛《か》かるぞい」

「ありがとう……ございます?」

「うむ。それでいいのじゃ」

ミミロウの瞳は優しく、暖かい。まるでロザンが置いてきた大切なものを思い起こせるような。不思議な感覚に支配されている。

「ん」

二人の会話に反応するようにルルアが声を漏《も》らす。起きたのかと確認するが、すやすやと気持ちよさそうに眠っている。

「今日は疲れただろう。お前さんも早めに休むといい。この部屋はお前さん達の好きなように使ってくれい」

「ありがとう。ミミロウさん」

敬語を崩す事のなかったロザンはミミロウの人柄に触れ、心を開いていく。バリスでさえも出来なかった事を、この数分の間に成《な》し遂《と》げたのだ。

にっこり微笑む姿がどこか懐かしい。ロザンはそんな事を考えながら、二人きりになったルルアの横に甘えるように沈んでいく。

استمر في قراءة هذا الكتاب مجانا
امسح الكود لتنزيل التطبيق

أحدث فصل

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   最終話 光の勇者と月夜の君

    ロザンはルルアの問いかけを聞かなかった事にしたら、背中に向けて、右手を掲げた《かか》げた。 ふと何もなかったはずの空間に目が見えし、黒い渦がぐるぐると満ちている。手にしてないのに、一瞬彼の右手には聖剣《せせぬ》ガイアが闇色《やみいろ》に輝きながら存在感を現している《現れている》。「……ロザン?」「……」ようやく事が出来ると思っていたのに、そうは簡単にうまくいかない。自分に見向きも消した彼の意識に語りかけようが、結果は悲惨な敗北《ざんぱい》だった。「私の名はロザン――今、闇王《えんおう》の名の下に異界《いかい》の勇者として命令を下《くだ》す。帝国《ていこく》ミミリアをそしてこの世界の住人共《じゅうマインドも》の魂を喰う」 《く》らえよ」高《たか》らかに宣言《せんげん》する彼に言葉が出ないルルア。 あの時、一瞬彼の心に触れる《ふ》れる事が出来たと感じたのは錯覚《さっかく》だったのだ不安。受け入れ、前世のように異界《いかい》へ繋《つな》がる最終門《さいしゅうもん》を発生させてしまった。ルンガの村の裏手《うらて》に隠されていた門とは違い、この門は世界の終焉《しゅうえん》を予言する力を持っている。「我が片割《かたわ》れの勇者に旋律《せんりつ》を――」ロザンが口にすることで聖剣《せせかえ》の姿が変化《へんい》していく。う》の体制《たいせい》まで整《ととの》行ってゆく。戦いたくない。一番は話合いで解決できればどれ程良いかだけ。こんな状況になるなんて想像する事もなな彼女の希望の光が砕けた《くだ》かれた瞬間だった。進んで現実に打ちのめされていると、ルルアに追い打ちをするように、闇の雨が降ってきた。 黒い炎は殺気《渦》を纏い《まと》いながら、彼女の体を貫こうと牙《きば》を剥《む》いた。 数十の刃がルルアの全身に突き刺さっていく。「闇炎《やみえん》の剣の味はどうだ? その刃は一度あったと魂《たましい》に侵食《しんしょく》する。君が君でいられる時間は限界《かぎ》されていく」「ふ……こんな痛くもなんともないわ。お前の意見に比べたら」カノンからもらった《モラ》った死の泉の原液《げんえき》を飲み干していたの。う通り飲めない状態で闇炎の剣を受けて今の彼女はいないかもしれない。門を塞ぐ《ふさ》ぐ事は難しい《むずか》しいだろう。一方ロザンの暴走《ぼうそう》を食い止める事

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   11話 狙った獲物は逃さない

    予感はあった。自分が飲み干した液体が何なのか。ルルアは闇に飲まれそうになりながらも抵抗《ていこう》を続ける。心の奥底に湧《わ》き上がってくる力は一体何なのだろう。額に脂汗《あぶらあせ》を垂《た》らしながら考えている。苦しみの中にいるルルアを見ているカノンは彼女が闇に打ち勝つ姿を確認するように見守っていた。 「乗り越えられないと、お前の願いは叶わない」 カノンがルルアに託《たく》した思いはそこにある。自分には決して出来ない役柄《やくがら》を率先《そっせん》して受け入れようとしていた。ルルアの脳裏《のうり》に焼き付いているのは前世の記憶。自分とロザンが正反対の道を選び、敵対関係として成《な》り立つもう一つの世界線がそこにある。 「同……じ事は……繰り返さない!」 自我《じが》を保つ為に心の言葉を口にしていく。すると彼女を支配しようとしていた闇は見る見るうちに姿を失い、彼女の右目の奥底に取り込まれていった。ドッと疲れを感じた彼女は、はぁはぁを見出した呼吸を整《ととの》える。 第一段階をクリアする事が出来た。その事に安心したカノンは感情を抑えるようにルルアを力強く抱きしめた。ふるふると震《ふる》えそうな体を支えてくれる温もりを感じながら、妹のバリスの事を思い出すーー 二人は同じ世界を生き抜き、冒険を知った。その先に待っているのがどれ程、過酷《かこく》な現実だとしても、諦める事はしない。その思いを受け継《つ》いでいるのがルルアだった。カノンにとって彼は家族よりも深い繋《つな》がりを感じる存在なのだろう。 「耐えきる事が出来たな。後はお前に託《たく》す」 「任せて。きっと彼を取り戻す」 ルンガの村を襲《おそ》い、定期的《ていきてき》に姿を見せてくるロザン。その足取りは簡単には終えない。闇の力を秘めた彼は、今では全ての力を思うように自由に扱《あつか》う事が出来る。一度、自分の性質《せいしつ》を受け

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   10話 命の泉死の泉

    昔の事を思い出しながら自分の背負った十字架《じゅうじか》を魂に刻《きざ》んでいく。ミミロウにかけて貰《もら》った優しさを捨てなければ受け止める事が出来なかったロザンは、彼が魂を込め打ち続けた聖剣《せいけん》ガイアを暗黒の世界へ掲《かか》げると、異界《いかい》へ繋がる門が顔を覗かせた。 「駄目よ、ロザン!」 「……」 あの時よりも大人の雰囲気《ふんいき》を漂《ただよ》わしながら、ルルアが叫んだ。一緒に歩こうと誓《ちか》い合った約束を忘れてしまったのかと言わんばかりに。太陽のように希望に満ちていた彼はもういない。ミミロウが彼の立場を世界の事実を告げた事により、本当の自分の居場所が何処《どこ》なのかを知ってしまった。 隣でいたはずのルルアの笑顔も優しさも、バリスの愛しさも……全てを否定して、最初からなかった事のように記憶から排除《はいじょ》していく。最初は悲しくて苦しかったロザンも、同じ事を繰り返し、人々の悍《おぞ》ましさ、恐ろしさを体験する事で、作られた価値観が崩壊《ほうかい》し、昔のロザンへと戻していく。 ルンガの村はこの世界の中心に聳《そび》えている。その中から終焉《しゅうえん》の魔術師から受け取った宝石を使い、守護《しゅご》の村へと替《か》えていた。表面から見たら鍛冶屋《かじや》が集う村だが、奥側に埋め込まれていたものは世界を司《つかさど》り力を与える大樹《たいじゅ》の祠《ほこら》として清《きよ》められている。 無くしたものを取り戻す事が出来たロザンはあの時と同じように、ルンガの村を襲《おそ》うと、炎で満たしていく。結界《けっかい》の核《かく》を壊す事に成功した彼を止める者は何処《どこ》にもいない。少年だったロザンが大人になった姿を懐《なつ》かしそうに悲しそうに見つめているミミロウは、自分のしてしまった過《あやま》ちの大きさに気づくのだった。 「この村の裏手《うらて》

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   9話 ミミロウの願いと運命の分かれ道

    急に倒れたルルアを覗《のぞ》き込《こ》んでいるロザンは昔にも同じ事があったのを思い出していた。昔は何が原因なのか分からず、慌《あわ》てふためくしか出来なかった。少し大人になった彼は、環境の変化により彼女の精神に負担《ふたん》を与《あた》えてしまったのではと思っている。慣《な》れ親しんだ環境から未知の世界に足を踏《ふ》み込んだのだ。そうなるのも仕方ないかもしれない。バリスに忠告《ちゅうこく》はされていたが、こんなにも早く現れるとは思っていなかった。村を案内してくれたラウンには申し訳ないが、事情《じじょう》を話して泊まらせてもらっている家へと向かう。こういう時、俊足《しゅんそく》のスキルがあればあっという間だろう。生憎《あいにく》ロザンはスキルを所有《しょゆう》していない。普通なら適正《てきせい》を持ちながらに生まれた肉体はスキルを生成《せいせい》する事が出来る。しかしロザンはその当たり前の事が出来ない、唯一《ゆいいつ》の人物だった。この事はルルアも知らない。事実を把握《はあく》しているのは彼以外にバリスだけ。これから生きていく為には黙っていた方がいいと指摘《してき》を受け、それから口にした事は一度もない。「……すぐに休もう。俺も側《そば》にいるから」この時のロザンは隠れている事実に気付けないでいる。ルルアがこうなるのは彼の存在に原因があるからだ。彼はこの世界で唯一《ゆいいつ》の勇者として召喚《しょうかん》されたはず。しかし時は流れ、世界は変化していった。ヒューマンとしての勇者は存在しない。彼の存在は異質《いしつ》で、受け入れられる事はないだろう。その反対にルルアは全ての獣人族《じゅうじんぞく》の力を使用出来るチートスキルの持ち主。バリスの魔法によって隠されているが、この事実を猫耳族《ねこみみぞく》に周知《しゅうち》されると、勇者以上の立ち位置、そして女神としても祀《まつ》られる。より強い力を引き出し、自分のものに出来た時には蛇神《じゃしん》と同じように崇拝《すうはい》されていく。それ程《ほど》の存在だ。2つの対立《たいりつ》している力が

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   8話 二人のルルア

    最初はミミロウの武器を打つ姿を見ていようと考えていたルルアは残念そうな表情《ひょうじょう》を浮《う》かべながらトボトボと歩いている。彼に紹介《しょうかい》された息子ラウンは二人を客人としてもてなしてくれた。ルンガの村はそれほど大きくない。その代わりに村を守るように聳《そび》え立つ鉱山《こうざん》があった。裏手《うらて》の通りを進んでいくと辿《たど》り着《つ》くと説明を受ける。鉱山《こうざん》と聞いた事はあったが、実際《じっさい》身近に感じたのは初めての事だった。 「ルンガ村は鉱山に守られているんだ。この地形のお陰《かげ》で盗賊《とうぞく》の被害《ひがい》も殆《ほとんど》どない」 ラウンはそう言い切ると、ミミロウと同じ笑顔を見せてきた。意識《いしき》して観察《かんさつ》すると父親にそっくり。若い頃のミミロウもラウンのようだったのか、と想像を膨《ふく》らませていた。 「盗賊《とうぞく》がいるのか?」 「ああ。ここは大丈夫だけど隣の町には出るみたいだね。役人《やくにん》達がいるからどうにか保《たも》ってるみたいだよ」 盗賊《とうぞく》もいて、取り締《し》まる役人《やくにん》もいる。本で読んだ通りの事が外では起きている。そう考えると、バリスに守られていた自分達は幸せだったのかもしれない。新聖域《しんせいいき》から出てはいけない、この決まり事さえ守れば、後は自由に過ごしていい。その当たり前がここでは歪《いびつ》に感じるだろう。 「盗賊《とうぞく》……か」 引っかかりを覚えたルルアはそう呟《つぶや》くと、考え込む。ラウンは村の細《こま》かな説明をし続けて、ロザンは楽しそうに聞いている。そんな二人の背中を見ながら、ゆっくりと着《つ》いて行った。 意識は現実から遠《とお》のき、見た事のない景色《けしき》に紛《まぎ》れ込《こ》んでいく。今とは違う姿を見せる彼女は目の前の光景《こうけい》に涙しながら、歯痒《はがゆさ》さを噛《か》み砕《くだ》いた

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   7話 鍛冶師ミミロウ

    ミミロウはカンカンと金槌《かなずち》を振るっている。鉄の塊《かたまり》に熱を加《くわ》えながら、原型《げんけい》を壊していった。どれくらいの時間が経過《けいか》してのか分からない。一々《いちいち》、作業を中断《ちゅうだん》して確認する程《ほど》でもないと自分に言い聞かせながら、集中力を高めていく。久しぶりに腕を振るうミミロウは、昔に戻ったように没頭《ぼっとう》していた。年老いてからは村長としての立ち位置を優先《ゆうせん》していたから。余計新鮮に感じているよう。「……ふう。体力が落ちたわい」自分の弟子たちは今では立派な鍛冶師《かじし》に成長している。ガヤガヤしていた昔の景色は、遠い昔のように思えた。元々弟子を取るタイプではなかったミミロウだが、必死に頭を下げる若者達を無下《むげ》に追い返す事は出来なかった。「今ではワシ一人じゃか。時が経つのは早いの」ブツブツと誰かに聞かせるように独り言を呟《つぶや》いている。そんな姿をこっそりと見ている二人がいるとは知らずに、思い切り金槌《かなずち》を振り下ろした。「……邪魔しちゃ悪いよな」「招待《しょうたい》してくれたんだから……大丈夫でしょ」ルルアとロザンは扉の隙間《すきま》を作り、彼の背中を見つめている。村長としてのミミロウしか知らない二人は、珍《めずら》しそうにキラキラと目を輝かしていた。どんな武器になるのだろうかと思いながら、ロザンの背中に体重をかけていく。すると、バランスを崩《くず》したロザンは小さく「わっ」と漏らすと、ドサッと前に崩れていく。多少の音なら彼の集中をとぎらす事はなかっただろう。思ったよりも大きな音を立ててしまったようだった。ビクリと背中を震《ふる》わせながら手を止める。完璧《かんぺき》に集中力が切れてしまったミミロウは音のした方向に振り向いた。「……何をしておる、お前達」「ははは」「来たなら来たと言わんかい。ビックリするじゃろ」近くにある机に金槌《かなずち》

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   2話 物語として語り継いで

    2話 物語として語り継いで 無意識の中に隠れているのは意識的に繋がる空間だった。見えない力に縛られているロザンはバリスの能力により彼女の腕の中へ、スポンと堕ちていった。 満月には見えない力が宿っていると言われている。そんな昔の伝承を思い出しながら、彼を受け止めていく。 見えない糸に操られていたように空中に浮いていた彼はどこにもいない。バリスはあどけない姿の少年を見つめている。 見た目は少年なのに、中身は全く違う。それが申し子の特徴だった。見た目だけで判断する事は出来ない。先読み師である彼女だからこそ出来る技だった。 「彼はヒューマンなのね」 長い年月を生きてきたバリスは

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   第1話 異世界転生者

    同じ景色を見ながら、この関係性が永遠に続くのだと信じていた。 あたしは彼の背中を見つめる事しか出来ない。 剣と剣がぶつかり合う音がついさっきの事のように思えて仕方なかった。 草原に包まれていた世界は反転し、ロザンを闇へ迎えようとしている。黒い渦に吸い寄せられるように、前進し続ける彼を止める事が出来ない。 「……待ってロザン! 行かないで」 彼の剣技、瞬間相殺《しゅんかんそうさつ》によって負傷してしまった体は思うように動いてくれない。 二人の冒険の終焉《しゅうえん》がこんな残酷なものになるなんて── 振り返る様子もないロザンは帝国ミミリアを捨て、魔王によって作られたも

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   6話 相容れる事の出来ない二人

    月夜の姿が風と共に消えていく。元の空間に置き去りにされたルルアは、前世の記憶を手にする前とは確実に変化した。心がざわついて、安定する事が出来ない。今までのルルアとしての自分ならこんな感情を抱く事はなかっただろう。 一つの体に自分とは違う人格《じんかく》が生まれた。受け入れるかどうかを決めきれないルルアは、ただその姿を呆然《ぼうぜん》と見る事しか出来なかった。そんな姿を見ている月夜は困ったように微笑むと、最低限《さいていげん》のサポートを発動させていく。 「私にはこれくらいしか出来ない」

  • ルルアの冒険録〜異質な存在の二人〜   5話 不思議な体験

    長い時間、夢の中にいたルルアは鶏《にわとり》の鳴き声に叩《たたき》き起こされた。バチッと瞼《まぶた》を見開くと、知らない天井が見える。どうしてベッドで寝ているのか、思い出そうとするが、記憶は曖昧《あいまい》だった。考えても仕方ないと感じたのか、勢いよく起き上がると、んーと背伸びをしていく。 「ふぁあ、良く寝た」 ベッドで寝る事のなかった体は、全ての疲れを吹き飛ばし、ルルアに異様《いよう》な力を与えていく。睡眠がいいとここまで体調的にも精神的にもいいのかと実感する事が出来る。周囲

فصول أخرى
استكشاف وقراءة روايات جيدة مجانية
الوصول المجاني إلى عدد كبير من الروايات الجيدة على تطبيق GoodNovel. تنزيل الكتب التي تحبها وقراءتها كلما وأينما أردت
اقرأ الكتب مجانا في التطبيق
امسح الكود للقراءة على التطبيق
DMCA.com Protection Status