Semua Bab あなたの「愛してる」なんてもういらない: Bab 31 - Bab 40

94 Bab

31話

◇ パタン、と玄関のドアが背後で閉まる。 御影は背中を向けたまま、ちらりと背後を振り返った。 「……見送りもなし、か」 だが、それもそうか。と御影は鼻で笑いつつ、御影は足取り軽く廊下を戻って行く。 これでもう。 こそこそと隠れて涼子と会う必要はなくなる。 藤堂家に恩があり、断れなくて仕方なく受け入れた婚約。 だが、それも今夜で全部が終わる。 ようやく表立って涼子を自分のパートナーだと、婚約者だと紹介できるようになった。 まさか、あの日の写真を撮られているとは思わなかった。 だが、遅かれ早かれ婚約は解消していた。 それが少し早まっただけだ。 「……あの写真を撮ったのは誰か知らないが、褒めてやりたい気分だな」 御影は、鼻歌でも歌ってしまいそうなほど上機嫌で自宅へと戻った。 ◇ [夜 藤堂本家] 私が本家の駐車場に車を停めると、しばらくして御影さんの車が本家にやってきた。 私の車は「家族専用駐車場」に、御影さんの車は「来客専用駐車場」に通されるのを横目で見て、お父様も既に記事の事をご存知なのだと知る。 今までは、御影さんの車に私が乗ってくるか、例え別々であっても、御影さんの車は「家族専用駐車場」に案内されていた。 けれど、藤堂の家はもう御影さんを身内とは判断しておらず、線引きしたと言う事。 私は藤堂本家の対応に、ほっと安堵した。 良かった、私はお祖父様にも、お父様にも見捨てられていない──。 そう考えていると、使用人が車の扉横にやってきて、私に話しかけた。 「お帰りなさいませ、茉莉花お嬢様。旦那様と大旦那様がお待ちです」 「分かったわ。今行く」 こくり、と頷いて私は車から降りる。 遠くに車から降りた御影さんの姿が見えたけど、私は彼に声をかける事なく玄関に向かった。 私の姿を見るなり、すぐに鍵が解錠されて中に入る。 私は長い廊下を歩きながら、先程使用人から言われた言葉をふと思い出す。 「お帰りなさい、か……」 確かに、家に戻るのもいいかもしれない。 あのマンションに居続ける理由は、もうない。 それなら、家に戻り、家のためにまた会社に戻る事もいいかも。 けど、私が仕事に戻る事をお父様とお祖父様がすんなり認めてくれるかは、分からない。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-25
Baca selengkapnya

32話

「茉莉花──。本当に良いのか……?」 「お祖父様。……はい、御影さんとも話して、私も納得しています」 言葉数は少ないけれど、お祖父様が仰りたい事は簡単に分かった。 お祖父様は、私が子供の頃から御影さんに懐いていて、彼を慕っていた事を知っている。 そして、ただの優しいお兄さんを慕っていた、という気持ちから時間が経つにつれて彼を1人の男性として好きになった事も、お祖父様は知っている。 だから、お祖父様の言葉は、最後の確認のようなものだろう。 本当に、彼と婚約を解消してもいいのか──。 私が嫌だ、と我儘を言えば、お祖父様はきっとどんな手を使ってでも御影さんと私の婚約を継続させていただろう。 多分、お父様もその事には何も言わない。 だけど、私がキッパリと言い切った事で、私の表情──目を見たお祖父様は「そうか」とだけ一言呟くと、私に向かって「分かった」とだけ告げた。 お話は、本当にこの確認だけだったのだろう。 お祖父様は私に退出を促すような素振りを見せた。 お祖父様とのお話はこれで終わりだ。 私はソファから立ち上がり、扉に向かって歩いて行く。 「それでは、お祖父様。失礼します」 「ああ、茉莉花。またあとでな」 ゆったりとした、威厳あるお祖父様の声が部屋に響く。 私は1度頭を下げてから、お祖父様のお部屋を退出した。 「──ふぅ」 普段は、優しいお祖父様。 けど、今日はどこか緊張感を孕み威圧感があった。 さすが、藤堂家を受け継いで来たお方だ。 お父様も威圧感があり、怖い時もあるけどお祖父様の比ではない。 私が廊下で一息ついている
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
Baca selengkapnya

33話

私と御影さんが客間に着いて、ほどなくしてお父様がやってきた。 御影さんはソファから立ち上がろうとしたが、お父様はさっと手のひらを御影さんに向けてそれを断る。 お父様が何も言葉を発さず、客間の空気が重くなってきた頃、お祖父様がようやく部屋にやってきた。 「お父様」 「ああ、ああ…すまないね。待たせたかな」 「いえ、とんでもございません。お久しぶりです」 私のお父様が、お祖父様を出迎え、ソファに促す。 御影さんは今度はすっと立ち上がり、お祖父様に頭を下げた。 お祖父様は、何をお考えか読ませない表情のまま、御影さんに顔を向けて声をかける。 御影さんはお祖父様に言葉を返し、改めてソファに腰を落ち着けた。 「単刀直入に問おう。あの記事は、何だ?」 御影さんがソファに座り直した直後。お祖父様が低い声で御影さんに問う。 お祖父様の言葉に、室内が一気に凍りつき、緊張感が満ちる。 さすがに御影さんも青い顔をして、こくりと喉を鳴らした。 「その…あの記事は…」 「御影くん。君は、茉莉花と婚約を結んでいるのに、それにも関わらず他の女性と一夜を明かした。茉莉花だけではない。この所業は、我が家を馬鹿にしたも当然」 「──っ、そんな事は…!」 「黙りたまえ。君が発言する資格は無い」 お祖父様の言葉に、御影さんは真っ青になったまま言葉を失い、力なくソファに沈む。 「君は婚約と言う言葉の意味をしっかりと理解していなかったようだ。我々の世界では、婚約は家同士の契約にも等しい。それをあのような記事を出し、一方的に反故にした罪は大きい」 「契約……」 「そうだな…君の身勝手な行いにより、我が家は被害を被った。君のミスだ。茉莉花と君の婚約を大々的に発表していなかった事が幸いした。茉莉花へのダメージは無いが、御影家への信用は失墜した。今後一切、我が家と御影家は事業の提携を組まない」 「と、藤堂さん──」 「賠償金を請求させてもらおう。それと、今後一切茉莉花に関わらないと言う誓約書を」 お祖父様の言葉に、すぐにお父様が数枚の書類をテーブルの上に置いた。 そして、胸ポケットから万年筆を取り出すと御影さんに差し出す。 「ここに、サインを」 「まっ、待ってください…これは私と、茉莉花、さんの問題で…」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
Baca selengkapnya

34話

けれど、御影さんは違ったみたいで。 お父様から渡された万年筆を握り締め、侮辱されたと感じているのだろう。 憤りを顕に、震えている。 けど、その怒りを表に出す事は得策ではないと彼も分かっている。 だから震えつつ、それでも万年筆を書類に走らせた。 まさか、御影さんも藤堂家から婚約の解消について先に切り出されるとは思わなかっただろう。 むしろ、私がお祖父様やお父様に泣きついてでも婚約を維持しようとしていると考えたかもしれない。 それなのに、蓋を開けてみればお祖父様から婚約解消について切り出され、果ては両家の契約的な話にまで影響は及んだ。 そして、賠償責任が発生するなんて夢にも思わなかっただろう。 御影さんはきっと自分から自信満々に私との婚約解消についてを切り出すつもりだったのに、その機会を失い、お祖父様にここまで言われてしまい、プライドは粉々だろう。 けど、御影さんも今は頭に血が上っていると思うけど、時間が経って冷静になればお祖父様の言葉に納得するはず。 それだけの問題が起きてしまったのだ、と。 「──終わり、ました」 御影さんの声が聞こえる。 彼はサインを終えると、納得のいっていないような雰囲気だけど、万年筆をお父様に返し、記載を終えた書類を回収したお父様はそのままお祖父様に渡した。 内容を確認したお祖父様は「確かに」と呟き、さっと扉へ自分の手のひらを向けて御影さんに告げる。 「お帰りいただこう。ご苦労さま」 「……っ、失礼します」 御影さんは悔しそうに一言だけ告げ、その場に立ち上がる。 私はその間、一切口を開く事も。御影さんを見る事もせず、ただただ真っ直ぐ前を向いていた。 ソファを立ち上がった御影さん
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
Baca selengkapnya

35話

「くそ…っ、これでは俺が恥をかいて終わっただけじゃないか…!」 直寛は苛立ちをぶつけるようにハンドルを殴りつける。 そして、ふと思い立ち、自分のジャケットからスマホを取り出して秘書の連絡先を呼び出す。 数コールもたたない内に秘書が電話に出た。 「俺と涼子の熱愛記事を出した記者を調べて、その記者を俺の所に連れてきてくれ」 誰がこんな事をしたのか。 その人物のお陰で、直寛はかかなくていい恥をかき、損害賠償責任まで負った。 熱愛記事を出した記者をどうにかしてやりたい気持ちを何とか抑え、直寛は涼子が待つマンションに車を走らせた。 ◇ 御影さんが部屋を出た後。 重苦しい空気も、緊張感も綺麗さっぱりなくなった。 お祖父様は先程の話なんて無かったかのように、私に向かって話しかける。 「茉莉花は、今日はこのまま家に泊まって行くだろう?」 「お祖父様、良いのですか?」 「良いも何も…ここは茉莉花の家だろう?今も昔も、茉莉花の家はここだ」 お祖父様の暖かな目に見つめられ、私はじんと胸が熱くなるのを感じた。 「茉莉花。お茶とお茶菓子を用意する。手伝ってくれないか?」 「はい、お父様」 お父様に誘われ、私はソファから腰を上げる。 2人でキッチンに行き、戸棚を開けているとふとお父様から話しかけられる。 「父は、ずっと茉莉花を気にかけていた。自分のせいで、茉莉花が辛い思いをしているんじゃないかとずっと悩んでいたよ」 「──お祖父様が!?」 「ああ。茉莉花が御影くんを慕っていたのは分かっていた。…だけど、御影くんはずっと違う女性を見ていただろう?」 お父様の言葉に、私はきゅっと唇を噛み締める。 お父様やお祖父様にも、御影さんが涼子を想っている事は明らかだった。 それなのに、私が御影さんを好きだからお父様もお祖父様も黙って見守っていてくれたのだ。 「茉莉花。父は、自分が御影家を助けて…結果茉莉花に嫌な思いをさせてしまっている、とずっと胸を痛めていた。…けど、今回茉莉花が御影くんと婚約を解消すると聞いて…無理をしているんじゃないかと私も、父も心配していたんだが…」 お父様は、私の顔をじっと見つめたあと優しく目を細め、安心したように微笑んだ。 「だが、茉莉花の顔を見れば分かる。無理してい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
Baca selengkapnya

36話

私のお母様。 お母様は数年前、私が高校生の時に交通事故に巻き込まれ、酷い怪我を負った。 手術も成功したのに、頭に強い衝撃を受けた事で、未だに目を覚まさないのだ。 けど、生きている。 生きてくれている。 「茉莉花、どうした?」 「すみません、すぐに行きますお父様」 先を進んでいたお父様が、不思議そうに私を振り返り、待っている。 私はすぐに思考を切り替え、笑みを浮かべてお父様に追いつくため足を早めた。 翌朝。 私は自分の部屋で目を覚まし、ぐっと伸びをした。 今日は、マンションに戻り引っ越しの手配をしなくてはいけない。 「今日は、忙しくなりそう…」 まとめる荷物は殆どない。 けど、業者の手配は私自身が行わなくては。 しばらく忙しくしていれば、余計な事は考えなくてすむ。 引っ越しが落ち着いて、御影さんとの婚約の解消も無事に終えたら。そうしたら、お母様の顔を見に行こう。 私は一日の段取りを頭の中で組み、ベッドから足を下ろした。 「お祖父様、お父様おはようございます」 朝。 朝食を取りにダイニングに向かうと、既にお祖父様とお父様は席に着いていた。 お祖父様は新聞を読み、お父様はコーヒーを飲みながら何やら仕事の書類を捲っている。 「おはよう、茉莉花」 お祖父様とお父様から笑顔で挨拶が返ってくる。 私が席に着くと、お手伝いさんが朝食の配膳を始めた。 「茉莉花。家に帰ってきたあと、仕事はどうする?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-28
Baca selengkapnya

37話

本当は、小鳥遊さんから言われた事をお父様に聞きたかった。 けど、彼から聞いた事をお父様に聞くには、彼と出会ったきっかけを話さなくてはいけない。 虎おじさまの時は、何とかうまく誤魔化せたけど、お父様とお祖父様はきっと上手く誤魔化せない。 私の些細な態度の変化に、何か違和感を覚えて彼と私の間に起きた事を聞かれたら。 私は誤魔化しきれない。 婚約者以外の男性と一夜を共にした、と言う事を知ったらお父様もお祖父様も卒倒してしまうかも。 そう考えた私は、藤堂家と小鳥遊家の事業提携については聞かずに食事を終えた。 朝食後。 私は早速今まで住んでいたマンションの引き払いのため、藤堂の屋敷を出る。 車をマンションに走らせ、マンションの駐車場に着いた所で、私は車から降りてマンションに入って行く御影さんの後ろ姿を見た。 「……気まずいし、時間をおいてから部屋に向かおう」 今向かえば、エレベーターで御影さんと鉢合う可能性がある。 もう、昨夜御影さんと私の関係は終わったのだ。 当人同士が顔を合わせる必要はなくなるし、私もまだ御影さんへの気持ちを全て捨て去った訳ではない。 好きだった時間が長すぎる。 少しずつ少しずつ御影さんへの気持ちを整理して、彼への恋情も、愛情も全て消し去る。 そうするのには、まだ少し時間がかかる。 だから、私はなるべく御影さんの姿を見たくなかった。 姿を見れば、彼を慕っていた昔の気持ちに引っ張られてしまいそう。 だから、私は車の中でたっぷり10分ほど時間を置いてから、車から降りた。 「これだけ時間があいていれば、御影さんももう部屋に戻ったはずよね」 でも、何で平日のこんな時間にマンションにいるのだろうか、と今更になって疑問を覚える。 今までだったら、この時間は会社にいるはず。 でも、もしかしたら今までだって時々マンションに戻ってきていたのかもしれない。 ただ、私が知らなかっただけで。 「御影さんの事を考えるのは、もう止めよう」 考えても仕方の無い事だし、御影さんとはもう関係は切れた。 私の人生で、御影さんと関わる事はもう二度とないのだから。 エレベーターに乗り込み、自分の部屋がある階のボタンを押す。 フロアに到着して部屋に入った私は、早速引越し業者を手配
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-28
Baca selengkapnya

38話

引越し業者を頼んで早数時間。 私の住んでいた部屋は、引っ越して来た当初のように家具や家電が全て無くなり、広々とした空間が広がっていた。 「それでは、我々はここで」 「はい、ご苦労さまでした」 キャップを脱ぎ、一礼して去っていく業者の方に私は笑顔で答えた。 玄関の扉が閉まり、私は1人になった部屋で最後にもう1度だけぐるり、と部屋を見回す。 「数年前住んでいたから、少しだけ寂しいわね…」 けど、これは新しいスタートだ。 私は、私のしたい事をする。 カバンを肩にかけ、それから私は1度も振り向く事なく部屋を後にした。 地下駐車場に向かい、車に乗り込んだ。 ふ、と視界の隅に御影さんの車が見えて、私はそちらに顔を向ける。 まだ部屋にいるのだろうか。 珍しい。 「……まあ、もう私には関係ないわね」 私はぱっと視線を外し、エンジンをかけて車を発進させた。 もう、この駐車場にも戻ってくる事はない。 私は家に戻ろうかと考えたけど、お父様に言われた事を思い出す。 そう言えば、虎おじさまの会社と一緒に仕事をする事になるんだっけ。 それと、小鳥遊さんの会社とも。 それなら、虎おじさまに連絡をして、今日お伺いしても大丈夫か聞いてみよう。 そう考えた所で、私のお腹がきゅる、と鳴った。 「──お昼を食べ損ねていたわね。先に軽くご飯を食べて、虎おじさまに連絡しよう」 そう決めた私は、ハンドルを握ってどこに行こうか、と考えた。 レストランに1人で行くのは何だか気分じゃない。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-29
Baca selengkapnya

39話

私がいくら冷たくあしらっても、小鳥遊さんは嬉しそうな表情を崩さず、私に話しかけ続ける。 「藤堂さんは、どうして今日ここに?」 「……普通にご飯を食べに来ました」 「へぇ……」 小鳥遊さんは相槌を打ちながら、店員を呼び、コーヒーを1つ注文した。 まだまだ私の食事に同席するつもりなのだろう。 ゆったりと足を組み直しながら、水の入ったグラスに手を伸ばす。 私は自分のスマホに視線を落としながら、小鳥遊さんがどういうつもりなのかを確認するため、ちらりと彼を盗み見る。 周囲の色めき立った視線を物ともせず、堂々とした佇まい。 余裕を崩さない表情。 グラスを持つ男らしい太く、長い指。 腕まくりをしているせいで見える、筋肉がしっかりとついた腕と、そこに浮かぶ血管。 水を嚥下すると動く、喉仏──。 水に濡れた唇──。 順々に視線を向けていた私と、小鳥遊さんの視線がバチリ、と合わさり、私は咄嗟に視線を逸らす。 盗み見ていた事がバレてしまった事が、なんだか気まずい。 私が慌てている事を表情に出ないようにしていると、正面から隠しきれていない笑い声が聞こえてきて、私はじとっとした目を向けた。 「はっ、はは…すみません…」 「じろじろ見てすみません」 「いえ。藤堂さんにならいつまででも見つめて欲しいので、いくらでもどうぞ?」 「そう言う冗談……」 「俺も、冗談は嫌いです。けど、これは冗談ではなくて本心ですから」 軽く両手を広げ、いくらでも見て?と言うように首を傾げる小鳥遊さん。 私は呆れてしまい、ため息を吐き出した。 「小鳥遊さんとお話していると、疲れてしまいます…」 「そうですか?俺は藤堂さんと話すのはとても楽しくて時間を忘れてしまいます」 小鳥遊さんがそう言ったあと、店員がコーヒーを運んでくる。 彼は「ありがとう」と口にして、コーヒーを受け取ると私に視線を戻した。 「藤堂さんの注文はまだ来ないんですか?」 「私は、パスタを注文したので……」 「ああ、なるほど。随分遅いお昼ですね?忙しかったんですか?」 「今日はやる事があったので」 そうなんですね、と答える小鳥遊さんの後方から、私が注文した品を持って歩いて来る店員の姿が見える。 先程まで小鳥遊さんの背後にいた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-29
Baca selengkapnya

40話

それからも、私が食事をしている間、彼は楽しそうに私に話しかける。 私が答え、彼が更に言葉を重ねる。 私は食事を口に運びながら、素直に彼の話術に関心した。 答えにくい話は一切口にせず、世間話を軸にして、でも最終的に彼が知りたかった内容をうまく会話に盛り込み、答えさせる。 話の誘導が巧みで、違和感がない。 私は口元を紙ナプキンで軽く拭い、彼に視線を戻す。 「…知りたい情報は得られました?食事は終わりましたので、私はそろそろ帰りますが」 「はは。大体は。けど、俺が本当に知りたい事はまだ知れてませんけど」 あっさりと肯定する小鳥遊さんに、私は目を細める。 小鳥遊さんが本当に知りたい事って、なんだろうか。 会社の事? それとも虎おじさまの事? 以前彼が話していた藤堂家と小鳥遊家が仕事で手を組む事? でも、私は数年ぶりに会社に復帰するから、今の事業内容は把握していない。 私に接近して、何か情報を引き出そうとしても私が持っている情報なんて、大した物はない。 「会社の事は、私は何一つ知りませんよ…?私に接触しても、小鳥遊家が知りたい情報は引き出せないと思いますが」 「会社……?」 私の言葉に、小鳥遊さんはキョトンと目を瞬かせる。 それから、小鳥遊さんはおかしそうに笑った。 「ふふっ。俺が知りたかった事はそんな事じゃありませんよ」 「じゃあ、一体何を……」 仕事以外で、彼が私に接触してくるのは…やっぱり虎おじさま?と私が考えていると、彼がそっと私に腕を伸ばしてくる。 「俺が知りたかったのは、藤堂さんは俺をどう思ってるのかな……、と気になって……」 「─
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-30
Baca selengkapnya
Sebelumnya
123456
...
10
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status