お母様が病院に入院して、もう暫く経つ。 最初の頃は辛くて、家族以外にこの事実を話す事が難しかった。 だけど、今はある程度事故の事実を飲み込めているし、お母様だってその内絶対に目を覚ましてくれる。 だから私は以前ほど悲観していないし、それにお父様だってお母様の大好きな日本庭園カフェを造ろうとしている。 お父様だって、ちっとも悲観していない。 私の笑みを見て、小鳥遊さんは安堵したように微笑みを浮かべ、続けた。 「それなら、私も藤堂さんのお母様のお見舞いに行ってもいいですか?」 「えっ、小鳥遊さんが?」 小鳥遊さんの申し出に、私は驚いてしまう。 そんな中、小鳥遊さんは続ける。 「今回、藤堂さんと田村さんの会社と仕事を一緒にしますし…ご挨拶をさせて頂こうかな、と」 「そう、なのですね」 一緒に仕事をするから。 だから小鳥遊さんはわざわざお見舞いに同行を申し出てくれた。 とても真面目な方なのね、と私が感動していると、小鳥遊さんは「それでは出しますね」と告げてアクセルを踏み込んだ。 病院に到着した私と小鳥遊さんは、駐車場に車を停め、受付で手続きを済ませてから病院に入った。 お母様の入院している個室に向かい、廊下を進む。 お母様の入院している病室は、個室だ。 私はお母様の病室の前で足を止め、小鳥遊さんに顔を向けた。 きっと、小鳥遊さんはお母様の意識があると思っているだろう。 だけど、お母様は意識不明状態。 病室に入る前に、彼には説明しておこう、と私は彼に向かって口を開いた。 「小鳥遊さん」 「──はい?」 「その、お母様はお話する事は出来ません」 「え……」 「ずっと、意識不明なんです。だから、会話は出来ないのですが、話しかけてあげてください。きっとお母様も喜ぶと思います」 私の言葉に、小鳥遊さんの目が驚きで見開かれる。 だけど、それもすぐに真剣な表情に変わり、私の言葉にこくりと頷いてくれた。 小鳥遊さんの頷きを確認した私は、病室の扉を開けて声をかける。 「お母様、茉莉花です」 「失礼します」 私の後に、小鳥遊さんが声を掛けてくれる。 「今日は、お仕事を一緒にする事になった小鳥遊さんも一緒なんです。いつもは私だけだから、人が多くて嬉しいでしょう?
Last Updated : 2025-11-04 Read more