宅配か何かを頼んでいただろうか。シャワー上がりで、薄着だったため、私は簡単にバスローブを上に羽織り、インターホンを確認しに行く。モニターを確認すると、そこには想像もしていなかった人物の姿があり、私は目をぎょっと見開いた。「ど、どうしよう…このまま居留守を使う…?いえ、駄目よ。下の駐車場に車がある…」これで居留守を使う事は出来ない。モニターには、信じられない事に御影さんが映っていて、彼は応答がない事に苛立っている様子だ。このままだと、彼を怒らせてしまう。そう考えた私は、モニターボタンを押した。「──は、はい」「……やっぱり家に居たか。開けてくれ」「す、すみません、御影さんの前に出れるような格好じゃないんです」こんな、バスローブ姿で御影さんの前に出たら、何と思われるか。きっと御影さんは眉を顰めるだろう。だから、私は御影さんに帰ってもらおうとそう口にしたのだけど、御影さんは一瞬黙ったがすぐに口を開く。「君がどんな格好だろうが、俺は気にしない。話したい事があるから開けてくれ」「……分かり、ました」御影さんがここまで言うのであれば、仕方がない。私は首筋やデコルテについたキスマークを隠すようにしっかり前を合わせ、きつく紐を縛る。首筋は纏めてアップにしていた髪の毛を下ろし、手ぐしで整えて首を隠すように前に持ってくる。「お待たせしました……」「……」鍵を開け、御影さんを出迎えると私の格好を見た御影さんはやっぱり訝しげに眉を顰めた。色仕掛けを疑われても困る。私は御影さんに向かって先に口を開いた。「シャワーを浴びていたので、こんな格好ですみません……」「……構わない。邪魔をする」「どうぞ」御影さんを通し、リビングのソファに座ってもらう。私は紅茶を。御影さんにはコーヒーを用意して、カップを前に置くと、御影さんはお礼を口にしてからコーヒーを一口飲んだ。私は一方的に気まずさを感じていて、御影さんから視線を逸らし、紅茶ばかりを口にしてしまう。だから、御影さんがじっと私を見つめている事にも気づけなかった。カップを静かにテーブルに置いた御影さんが、口を開いた。「昨夜、は……会場に置いて行ってすまなかった」「──え」ちらり、と御影さんから視線を向けられ、謝罪される。私は、御影さんの言葉に驚き
Last Updated : 2025-10-20 Read more