All Chapters of 私が本物だった!?~死に戻った彼女は死より恐ろしい復讐で返り咲く~: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話

 義母は複雑な表情をしていた。上手くかける言葉が見つからないのだろう。 しかし春美は、心の底で黒い感情が浮かんでいた。憎まれるのは仕方がない。 だが、だからといって……そこまでする? 星野家には未練などない。本当の両親は、どんな人なのだろうと? と思ったことはあるが、覚えていないのでピンとこない。 彼女が欲しいというのならあげてもいい。しかし涼介は別だろう。(自分を蹴落とすために、涼介の心まで利用して、お腹の子を殺すなんて) 自分が子宮まで取られる必要性までなかったはずだ。自分の子を殺されたことに激しい怒りがこみ上げてきた。ギュッと布団を握り締める。(アイツら……絶対に許せない) 春美の心は憎しみから殺意に変わった。お腹の子を殺したことが、どうしても許せなかった。 義母が何かを言っていたが、春美には何も聞こえなかった。 その後の春美は大人しかった。ジッとスマホと芸能ニュースを眺めている日々。 そして星野美優と涼介の結婚式の日。春美は病院から姿を消した。失踪した彼女を探すために、病院中は騒ぎになる。 その頃、教会で星野美優とバージンロードを歩いていた。涼介の前まで来ると、2人は神父のところに。 神父に誓いの言葉を告げられている最中だった。バンッと扉が開くと、現れたのは春美だった。コートを着ているが、中身はパジャマ姿だった。 手には果物ナイフが握られていた。「春美……!?」 涼介は目を大きく見開いて驚いていた。周りはざわめく。 春美は真っ直ぐに2人を目がけて走り出した。「死ねっ~」と奇声を上げながら。 真っ先にナイフを振り下ろした先に居たのは星野美優だった。 悲鳴を上げる彼女の腹に突き刺した。その後も何度も。真っ白なウエディングドレスは、一瞬で真っ赤に染まった。 慌てた涼介は、春美を掴むと突き飛ばした。勢いよく突き飛ばされた春美は、信者席に後頭部をぶつけてしまう。そのせいで後頭部から血が流れて倒れ込んだ。 周りは悲鳴を上げながら逃げ回る。涼介は刺された星野美優の方を抱きかかえた。 1人取り残された春美は、意識を朦朧とさせながらハハッと小さく笑う。 これでお腹の子の復讐を果たせた。 結局のところ自分の人生は、ここで終わってしまうのだが。(ああ~私の人生って、一体何だったのだろう? ただ幸せなりたかっただけなのに) でも、
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第12話

 ハッと春美は目を覚ました。どうしたことか、気づいた場所は病室のベッドの上だった。 どういうことだろうか? 挙式で星野美優を刺して、その後に涼介に突き飛ばされて死んだはずでは?? 混乱していると、 目を覚ましたのを見て、義母が慌てて手を握ってくれた。「良かった……心配したのよ。あなたが病院に運ばれたと聞いて」「……お義母さん?」 起き上がろうとするが頭がクラクラする。それに下半部に痛みと違和感が。「どうして? 私は死んだはずでは……?」「何を言っているのよ!? それよりも中絶手術って、どういうこと? あなた妊娠していたの?」「えっ?」「そうだぞ、春美。涼介君とは上手くやっていたのではないのか? 何故そんなことをしたんだ?」 義両親は、何も知らないような言い方だった。何を言っているのだろう? 中絶手術どころか子宮の手術までしたのに。あれだけ怒り狂っていた義両親が、おかしなことを言ってくる。涼介と上手くやれるはずがない。 彼は、星野美優と結婚式を挙げたのだから。「お義父さん、お義母さん。どうしたの? とっくに婚約破棄されて、彼は星野美優と結婚式を挙げたじゃない?」「えっ? それって、どういうこと!? 婚約破棄って」 どうも話が嚙み合っていないようだ。こんなことは……おかしい。「ねぇ、今って、何年の何月何日?」「えっ? 今日は○年5月12日じゃない。どうしたのよ?」「○年……ありえない」 それは去年だった。しかも日にちが、中絶手術をした日だ。 頭がぐるぐると混乱してしまう。(どういうこと? 私は過去に戻ったってことなの!? そんなはずは……) 下半部の痛み、義両親が噓をつくはずがないことは知っていた。慌ててスマホを見たら、真実だと知る。 春美が過去に死に戻ってきたと決定づける。しかし、それは残酷な意味を持った。「なら……どうして今なのよ」 よりにもよって中絶手術をした日だなんて。もう少し前だったら、お腹の子を守れたかもしれないのに。 死に戻っても、守ることも出来なかった……。 春美は泣き崩れる。義母と義父は、戸惑いながらも抱き締めてくれた。 しばらく泣いていて、春美は過去を振り返る。 もし中絶手術前で、それを隠そうとしたところで、いずれバレてしまうだろう。そうなったら星野美優のために何をするか分からない。彼はそうい
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第13話

 そして、退院後。すぐに義父は神崎家に電話をした。ハッキリと婚約破棄になったことを告げた。そして涼介が中絶手術をさせたことの謝罪を要求。 向こうの両親は大慌てで謝罪の場を設けてくれた。レストランの個室で話し合いをすることになった。「この度は息子が申し訳ございませんでした。何とお詫びをしたらよいか」 神崎家の当主で涼介の父親・涼一郎(りょういちろう)が深々と頭を下げてくる。しかし頭を下げたのは父親だけだった。 涼介の母親・美佳子(みかこ)は、罪悪感はあるが息子を守らないといけないと思ったのか、ふてぶてしい態度だった。 涼介本人は椅子に座っていて謝罪する気すらない。むしろ勝手なことを言ってくれたと思っているのか、春美を睨んでくる。「……こちらは大事な娘を傷つけられたんですよ。産ませる気もないのに、妊娠までさせた。なのに中絶手術までさせるとは……どういう教育の仕方をされているのですか?」 涼介の父親は何も言えなくなっていたが、母親の方が口を開いた。「若いカップルなら、よくあることですよ。今回のことだって、息子の話を聞いたら、他の男とも関係を持っていたらしいじゃない。そんなことを知ったら、動揺するし……誰の子か分からないなんて。そんなのおろしたくもなりますよ」 そうしたら涼介のテーブルをバンッと叩く。「そうだ。誰の子か分からないのに、そんな子供を産ませる奴がいるのか?」 人を指さしながら怒鳴ってくる。この世に及んでも自分の子だと認める気はないようだ。「何だと!?」 義父が掴みかかろうとするが、春美がそれを阻止する。ここで暴力になったら、何を言ってくるか分からない。「お義父さん……下がって。涼介。あなたの子なのは間違いないわ。避妊もしないで、覚えあるでしょ?」「……だとしても、ピルを飲めと言ったはずだ!?」「私は……もし妊娠したら、あなたが変わってくれると思って飲まなかった。その結果が……これよ!」「はっ? だったら、お前が悪いんだろう? 俺は妊娠させる気はなかった」 彼が笑いながらハッキリと、そう言った瞬間だった。春美は彼に平手打ちをする。 春美に叩かれるとは思わなかった涼介は、啞然とする。「あなたは最低よ。お腹の子は間違いなく、あんたの子よ。でも、おろしたいはずよね?だって、あなたは大切な初恋の人・星野美優と結婚したかったのだものね
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第14話

「春美さん……考え直してちょうだい!? 息子には、あなたが必要なの」「そうだぞ。春美さんより優秀な秘書は居ない。婚約者もだ。今回はお互いにすれ違っていたかもしれない……今後は話し合って、やり直せば」 涼介の両親は必死に引き留めようとしてきた。春美は優秀な秘書でもあったから、退社されると不味いと思ったのだろう。それに世間体も悪い。「いいえ……結構です。そんなことをしたら、彼女にも悪いですから。どうやら彼女は私が居るのは気に入らないみたいですから」 そうしたら涼介が怒鳴りだした。「春美。お前……調子に乗るのも大概にしろ!? こんな時でも美優を悪く言う気か?」 こんな時でも星野美優のことで腹を立てるとは。呆れて、ため息が出てしまう。「何か勘違いしてない? 私は本当のことを言っただけよ。それに私達の関係は終わらせた方がいいわよ? か弱い彼女が私の関係を知ったら、失神するのではなくて?」「……くっ」 いつも言っていることだ。か弱い性格だと。それに事実を知らないと思っている。 本当はかなり図太い神経をしているのだが、彼はそれに気づいていない。だから、あえてその言葉を使った。「……脅迫をする気か?」「脅迫ではないわ。いつまでも、くだらない関係を続けていても未来がないだけよ。か弱い彼女のためにも、早く結婚した方がいいわ。その方が安心するでしょう?」 これは事実だ。これ以上続けても、何の意味もない。 しかし涼介は、それが作戦だと取ったようだ。ハハッと突然笑い出した。「ハハッ……お前も考えるようになったな。俺の両親に取り入れて、俺と美優を別れさせる気だだろう? これだけ騒ぎを大きくしたら、俺が折れるとでも思ったか?」「……あなた、何を言っているの?」「だが、そうはいかない。お前が嫉妬で、小賢しい作戦を立てたところで俺は屈しない。今、謝れば許してやる。退職のことも聞かなかったことにしてやる」 彼は……何処までも自分勝手な思考の男だった。星野美優のことがあるせいで、ただの嫉妬での行為だと思ったようだ。(やはり簡単ではないようね。この男は思い込みが激しいから) だからこそ勘違いして、あれだけのことをしたのだ。星野美優を恩人だと思って。「私は謝る気もないし、婚約破棄と退職を希望する。退職届は覆す気なら、覚悟しておくことね? 不動な扱いを受けてきたと訴え
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第15話

 春美は、あれから荷物をまとめて実家に戻った。前のマンションを引き払い、引っ越しを考えている。これからのことに備えて。 無職になった春美は、自分を変えるためと復讐に向けて芸能界に入りを決意する。そうすれば、星野美優を表舞台から引きずり落とすことが出来るからだ。 と、言っても事務所に入っていないので、まず受け入れてもらえる事務所を探さないといけない。春美は大手事務所のオーディションを探す。 星野美優と張り合うには、涼介の事務所と戦わないといけない。小さな事務所では潰されてしまう。 そこで涼介と同じぐらいの大手で、ライバル事務所・幸村芸能プロダクションのオーディションに受けることした。 第一次審査である書類審査には問題なく合格。問題は第二次審査だ。 審査には自己紹介の他にアピール力が試される。自分の特技や経歴などを披露するのだが、春美は華やかな特技と経歴を持っていなかった。 頭の偏差値なら名門の大学を卒業したからいいだろう。資格もいくつか持っている。だが、それだけではダメだ。 ただのインテリアキャラで終わってしまう。そんな芸能人は腐るほど居る。 芸能界ならピアノや歌。またはダンスなので優勝経験がある方が優遇されるだろう。それか、お芝居で有名なミュージカルに出演したとか。 星野美優の合格は涼介の独断だったが、それなりのアピールポイントがあった。星野グループのお嬢様だけあって、ピアノやバイオリンなど習っていたらしい。 何かないかと部屋中を見渡した。すると1冊の小説に目が留まった。その本は、ずば抜けた記憶力がいい名探偵が、それを頼りに事件を推理していくものだった。(そうだわ。私には、これがある。これを上手く活用が出来たら) 春美は瞬間記憶力という特殊な才能を持っていた。 瞬間記憶力とは瞬時に見たことを全て記憶していく。カメラの映像のように、くっきりと。別名『カメラアイ』とも呼ばれている。 一見は地味で目立たない特技だが、台本などを覚えるのには必要なことだろう。 それに春美は、この特技があったからこそ秘書の仕事を上手くやれた。 取引先の生年月日から趣味などを全て記憶。それに合わせて対応してきたからスムーズに取引が成功したのだ。 他にもスケジュールの管理から調整、会議や会話の内容まで全て暗記して、涼介を支えてきた。 彼は春美の能力のことを知ら
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第16話

 深々と頭を下げると審査員達は、こそこそと話し始める。年齢的にギリギリだったから、印象的にどう映るか分からない。そうしたら1人の審査員の人が口を開いた。「履歴書だと、有名な○○大学に卒業したとか。そこで何を?」「はい、そちらで経営を。他にもいくつか資格を持っています」「仕事は、神崎芸能プロダクションの社長秘書をしていたとか? どうして、そんな経歴を持っているのに、ウチの事務所のオーディションを受けたのですか?」 やはり、そこの経歴を指摘してきた。普通なら不思議に思うだろう。ライバル事務所の芸能界に入りたいと希望しているのだから。 幸村もそれが気になるのか、春美の方をジッと見ている。「私は……自分を変えたかったからです」「自分を変えたかった?」 幸村が初めて口を開いた。何故だかその声に、ドキッと心臓が高鳴る。「……私は大人しく目立つことが苦手でした。でも……それが変わる出来事がありました。自己主張しないと何も手に入らない。だったら、それを変えるために全力を尽くしたい。ここに入ることは、その第一歩だと思っています」 芸能界に入ることは第一歩に過ぎない。復讐を果たすためには同じ土俵に立つことから始まる。「……ここに入って何をしたいんだい?」「まず有名になること。そして自分をさらけ出すことで、初めて自分を手に入れます。もちろん足りない部分もあると思います。それを改善することも忘れません」「有名か……どうやって?」「そうですね……よく周りに言われるのはモデルです。私は背があるので、それを活かせたらと思っています。あと女優。どうしても勝ちたい相手が居るので、それを越える頂点に立ちたいと思っています」 幸村の質問にスラスラと答える春美。秘書として目上の人と接するのは慣れている。 そうしたら幸村は「勝ちたい相手は誰?」と質問をしてきた。 春美は、はっきりと「星野美優」だと伝える。周りはざわつく。勝ちたい相手が、自分の以前の職場で活躍する女優だったからだ。「彼女は前に働いていたところの女優さんだよね? 何か因縁でもあるのかい?」 春美は、その言葉に一瞬ピクッと反応する。因縁どころではない。しかし何処まで話すべきか。 復讐もだが、あんまり問題事を言うと、印象が悪くなってしまうからだ。色々と問題がある女性だと思われたら落されてしまう。「彼女は私の
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第17話

 スタッフに呼ばれて、1人ずつ自己アピールを披露することになった。周りは、やはり華がある特技を披露してきた。日本舞踊にジャズダンス。バンドで鍛えた歌など。 それを聞いていたら、緊張してきた。 春美は目を閉じて精神を落ち着かせようとする。そうすると思い出すのは過去の記憶だった。忘れたくても鮮明に覚えている。忘れることが出来ない屈辱的な思い出。 グッと拳を握り締める。(ここで躓いている場合ではないのよ。私がやりたいのは……アイツらを舞台から引きずり落とすこと) そう思っていると、春美の出番になった。呼ばれたので中に入る。そしてチラッと幸村を見るとニコッと微笑んでくれた。何だか彼を見ていると調子が狂う。 審査員の前に立つと、ふう~と深呼吸をする。「130番。加賀野春美です。よろしくお願いします」 深く頭を下げて挨拶をすると、再び1人の審査員の人が口を開いた。「では自分の特技がありましたら、披露をお願いします」「は、はい。私の特技は記憶力です。『カメラアイ』という瞬間記憶力を持っているので、それを披露したいと思います。審査員の方。誰か本や台本など何でもいいので貸していただけないでしょうか? それを全て与えられた時間内で覚えて、朗読します」 春美は、そう言って本を貸してほしいと申し出た。自分で持っていくと、その前に覚えたのだと思われるからだ。 そうしたら幸村は1冊の台本を出してきた。「丁度朝に出来上がったばかりの台本があるんだ。これを5分で覚えることは出来る?」「いえ……3分で結構です。お借りします」 春美は彼から台本を受け取る。そして合図と共に台本を読み込む。パラパラと高速で本をめくっていく。そして台本を閉じた。「覚えました。ありがとうございます」 そう言って、そのまま台本を返した。「速いね? では、そうだな~27ページの4行から30ページの最後まで読んでくれる?」「分かりました」 春美は記憶を辿っていく。そのまま読むことも出来るが、台本なので多少なりにも感情を入れた方がいいだろうか? スッと目を閉じて、一呼吸してから目を開けると台本の世界に入っていく。『……聖花(せいか)は、貴之の言葉に激怒する。『あんたは、私のことを何だと思っているの? 家事も育児も私に任せきり。それなのに、今度の主催パーティーに加恋も一緒に同席させろと言うの
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第18話

 そして、残りは合格発表のみとなってしまった。もし合格したら、その場で番号を呼ばれるはずだ。合格者は何人呼ばれるか分からない状態だ。 春美は控え室で発表が終わるまで待機する。そうしたら、しばらくしてスタッフの人が入ってきた。周りは一瞬で静まり返った。「合格者を発表します。130番です。おめでとうございます。残りの方は帰ってもらっても大丈夫です」 春美以外の参加者達は、騒ぎ出した。批判ではなく、圧倒的な記憶力と演技力を見せつけられて動揺をしていた。「では、合格者の方は、こちらに。幸村社長から契約のことで話があるそうです」「はい」 春美自身も同じぐらい動揺をしていた。まさか、本当に合格してしまった。 嬉しいと思う半面、何だか現実味がないようだ。 スタッフの人に連れられて、さっき呼ばれた部屋に入っていく。中に入ると、幸村だけが待っていた。「合格、おめでとう。実に良かったよ。演技とかやったことがあるの?」「いえ……初めてです。演技そのものが」「そうなんだ? 演技そのものは荒削りだったけど、きちんと感情がこもっていた。素人で、あれだけの演技が出来るのなら大したものだ」「あ、ありがとうございます」 まただ。どうも彼に褒められると調子が狂う。心がざわざわするような気分だ。 そうしたら、う~んと考え込む幸村。「そうだな。さっきの演技を見て考えたんだけど、まず新人モデルとしてデビューした方がいい。君の美貌とスタイルなら問題ないだろう。それから少しずつ名前を売り出して、最後に女優として売り出す。その間に演技力を学べば、もっと伸びるだろう」 ざっとデビュープランを立ててくれた。それは自分の希望するやり方だった。「あ、あの……どうして私を合格させてくれたのですか?」 凄い人達は他にもたくさん居たのに。「もちろん、圧倒的な存在感と記憶力。そして演技力。でも、私が気に入ったのは、君の強い意思だ」「……えっ?」「この芸能界は厳しい世界でね。必ず足の引っ張り合いがある。それを、もろともせずに立ち向かっていけるような向上心。その意思を君から感じた」 まさか星野美優に負けたくないと、そう思って言った言葉が合格理由だなんて。「ありがとうございます」「フフッ……私には分かる。君は他の子と明らかに違う。これから楽しみにしているよ。それより一つ聞いてもいいか?」
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第19話

 そして撮影当日。 幸村に連れられて、撮撮するスタジオに向かった。スタジオは既に何人のモデルの女性が撮影を始めている。さすがモデルなだけあって、全員顔が小さくて、スタイルがいい。 しかもキラキラしていて美人。「凄いですね。さすがモデルさん」「今回は夏に向けての服を撮影することになっている。君には、それを着てほしいみたいだよ。秋服も夏ぐらいに撮ることもあるけど」「秋服を? どうして夏なのですか?」「雑誌は一走り先に始める。それから編集部に送って、作成するから早い方が都合いい。ドラマでも同じやり方だよ」「へぇーそうなんですね」 知らないことばかりだ。そこまで意識して雑誌を読んだことはなかった。そう考えると、改めてモデルは凄いと思った。暑い時期に秋服を着ないといけないとは。 休憩に入ってカメラマンが来たので、幸村が挨拶と春美の自己紹介をしてくれた。「こちらが最近入ってきたモデル志望の子だ。加賀野春美です」「加賀野春美です。よろしくお願いします」 春美は深々と頭を下げる。そうしたらカメラマンの人が春美をジロジロと見てくる。 そして明るい表情になる。。「お~確かにイメージにピッタリだ。今回はパンツやミニスカート。ロングブーツを中心だったから背が高くて足の細い子の方が良かったんだよ」「大丈夫そうですか?」「ああ、問題ない。スタイルもいいし、全体のバランスもいい。この子は、磨き方に寄ったら化けそうだ」 幸村が尋ねると、カメラマンは問題ないと答えた。どうやら合格みたいだ。「着替えてきて」と言われたので控え室に向かう。 用意された服は、ワインレッドのブラウスと白色のサイドベルテッドパンツ。百七十センチある春美が着ると足の長さが強調されて、より見栄えが良くなる。 プロのヘアメイクに髪をいじられ、メイクもされる。完成した時に、春美は鏡を見ると衝撃を受けた。「これが……私?」 プロがメイクをすると、ここまで違うものなのだろうか?  肌は艶々で透明感がある。唇もぷるぷるで、さらにキリッとした目元まで綺麗に仕上げてくれた。ヘアメイクの人も興奮して絶賛してくれた。 そうしたら幸村がノックをして控え室に入ってくる。見違えるほど良くなった春美を見て、幸村は目を大きく見開いた。「……どうですか? 似合いませんか?」「いや……あまりにも綺麗だったから、
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第20話

「大丈夫? 緊張しちゃったかな?」「すみません。上手く出来なくて」「フフッ……はじめてだから、仕方がないさ。まずは先輩の動きを見て覚えるといいよ。「先輩の動き?」 チラッと幸村が言われたように他のモデル達の方を見る。 他のモデル達はカメラマンの指示に的確に応えていた。カバンを見せながらと言われば、すぐにポーズを変える。 笑顔でと言われれば、ニコッと楽しそうに微笑むなど臨機応変にやっていた。「……凄い」 さすがプロだ。表情や動きを1つ1つ意識して違う。綺麗な動作。「そうだね。意識すると緊張してしまうのなら、演じながらやってみたらどうかな?」「演じながら……やる?」 幸村の言葉に驚いて聞き返してしまった。それは、どういう意味だろうか?「君の役は人気モデル。そう思いながらやると緊張が和らぐはずだ。それに、特技を活かすことも1つの手。先輩達の動作、表情、ポーズなどを盗み、真似ることも上手くなる秘訣だよ」「盗んで……真似る?」「そう。ただ盗むだけではいけない。どういう動きがいいのか、またどうしたら見栄えするのか。先輩達はそれを瞬時に判断する。それを見極めるのも、演技力では必要なことだよ」「先輩達の動き……」 幸村の言葉に反応するように、ジッと先輩達の動きを観察する春美。その一点を見つめる目は鋭かった。 その後に、もう一度カメラマンの前に立った。 目をつぶり、さっきの光景を1つ1つ頭に思い浮かべる。はっきりと映し出された撮影風景。 先輩達は、どのように撮影をしていたか。幸村が言っていた演じるとは。(私は人気モデル。多くのファンから支援されているプロのモデル) 何度も自分に言い聞かした。 加賀野春美だと思うと緊張してしまう。自分が違う人間だと思わないと。 スッと目を開けた春美の姿勢は真っ直ぐに。そして他のモデル達をイメージしながら、ポーズを取っていく。 その姿はさっきと違い、自然な動きに変わっていく。「いいね~その動き。そのまま」 バシャッ、バシャッと写真を撮っていく。その変わりように、周りも驚いていた。 幸村もクスッと笑っていた。 その後の撮影も上手くすることが出来た。そして無事に終わる。「いや~良かったよ。見違えるほどに上手くなっている」「本当ですか? ありがとうございます」「これからも期待しているよ。頑張って」
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