私は本物の令嬢と初恋の人だった!?~彼女は死より恐ろしい復讐で返り咲く~

私は本物の令嬢と初恋の人だった!?~彼女は死より恐ろしい復讐で返り咲く~

last updateLast Updated : 2025-10-06
By:  愛月花音Updated just now
Language: Japanese
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孤児だった加賀野春美は、芸能プロダクションの社長・神崎涼介と婚約。 だが彼は初恋の人・星野美優が帰国した途端に婚約破棄する。 彼にとったら春美は代役に過ぎなかった。 しかし秘書として彼を支える春美。 それでも屈辱的な差、監禁、義父の死。 どれもが星野美優を守り、自分の性欲を吐き出すため道具。 しかも知ることに。星野美優を両親は、実は自分の両親だった!? 初恋だけではなく、令嬢として全て奪われた春美。 監禁されて病んでいく自分。義父の死に怒り星野美優を式場で殺害。 自分も刑務所で命を絶った。しかし過去に戻ったことで一変。 2人に復讐するためにライバル事務所社長・幸村の力を貸してもらい芸能界の道へ 後悔しても遅い。彼らを舞台から引きずり下ろすだけだ!

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Chapter 1

第1話・婚約破棄

「星野美優・死ね~」

 加賀野春美(かがの はるみ)は、そう言いながら結婚式を挙げてしている幸せそうな花嫁に向かって血塗られた包丁を振り下ろした。

「は、春美!? やめろ!」

 そう言って、驚いている花婿は春美の元婚約者・神崎涼介(かんざき りょうすけ)。

 彼は業界でも1、2を争う大手神崎芸能プロダクションの社長。

 そしてめった刺しにされた花嫁は浮気相手であり、彼の初恋の人・星野美優(ほしの みゆう)。

 春美は2人に裏切られ、花嫁の座まで奪われてしまった。そして監禁されて、義父をひき逃げで殺された。もう春美には何も残ってはいない。

 なのに、彼は他の女性を妻にするために結婚式を挙げたのだ。それは許されるわけがない。式場は一瞬で血の海になった。

 そもそもどうして、こうなってしまったのだろうか? 

 涼介の出会いはお見合いだった。

 春美は赤ん坊の頃に施設の捨てられた孤児。幼い頃はそこも施設で育ってきた。しかし、子供がデキなかった加賀野の義両親に七歳の頃に引き取られた。義両親は、2人とも優しい人達で本当の娘のように可愛がってくれた。

 そして春美が22歳の頃。義父・加賀野和彦(かがの かずひこ)が結婚相手の心配をして、友人である神崎家とのお見合いを計画した。

 神崎家は昔、事務所の経営が上手く行っていない頃に、エリート銀行員で顔の広い義父(加賀野和彦)が資金の援助をかけ合ってくれたらしい。他にも才能ある俳優達を紹介。  

 そのお陰で経営は持ち越し、大きく成長した。いわば恩人だろう。

 その縁もあって、1人息子の涼介との縁談が生まれたのだ。いい年になっても夢を追いかけてばかりいる息子を心配して計画したらしい。

 最初の春美から見た涼介の印象は、とても素敵なイケメンな男性だった。

 キリッとした二重に端正な顔立ちは『イケメン社長』として有名だった。

 髪はダークブラウンで、背も180センチでグレーのスーツ姿もよく似合っている。春美は初めて見た時はドキッと心臓が高鳴るほどに。

 しかし、春美は彼を何処かで見たことがあるような気がした。何処だったか覚えていないが。

 しばらく両親との話をするが涼介は自信と向上心に溢れていて、たくましいと思った。春美は、そんな彼を支えたと思うように。

 それが間違いだったのかもしれない。その後は、お互いに何回かデートする。無理やり婚約させられたのが嫌だったのか素っ気ない態度だった。

 それでも親の面目のために高級ホテルのディナーやお洒落なバーとか連れて行ってくれた。

 そんなある日・酔った彼はホテルのスイートルームに連れて行かれると、ベッドに押し倒してくる。強引に覆い被さると唇にキスをされる。彼なら抱かれてもいい。

 そう思った春美は黙って大人しくしていると涼介は、あるモノが目に入る。春美の首筋に赤色の星の痣が。

「これは……!?」

「ど、、どうしたの?」

 意味が分からない春美は聞くが、ハハッと可笑しそうに笑う涼介。春美は困惑するが、納得したのか涼介はニヤリと笑った。

「……なるほど。やって知ったか分からないが、よほど俺と結婚をしたいようだな」

「えっ? それは……どういう」

 聞き返そうとするが、涼介は強引に唇を塞いだ。その後は、荒々しく春美を抱いた。

 まるで憎しみと欲情をぶつけるかのように。

「や、やめて……私初めてなの」

「噓をつけ。今までこうやって男を欲情させてきたんだろう? 俺のために痣まで彫ったぐらいのしたたかさがあるんだ」

「えっ? ああっ……」

 彼は、何をどう勘違いしたのだろうか? 

 それでも涼介は腰を容赦なく動かしてきた。春美の初めては神崎涼介によって奪われてしまった。

 翌朝。目を覚ますと、ベッドの上で眠っていた。チラッと見るとシャワーを浴びた涼介はスーツに着替えていた。

 起きたことに気づくとギロッと、春美を睨みつけてくる。

「起きたか?」

「あ、あの……おはようございます」

 慌てて春美が挨拶をすると、涼介は春美の顎をクイッと上げる。

「よく聞け。お前の度胸に免じて許してやろう。身体の相性もいいようだしな。ウチの面目もあるし、婚約も続けてやる。だが、勘違いをするな。これはあくまでも政略結婚のための婚約。俺達の中に愛情はない」

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第1話・婚約破棄
「星野美優・死ね~」 加賀野春美(かがの はるみ)は、そう言いながら結婚式を挙げてしている幸せそうな花嫁に向かって血塗られた包丁を振り下ろした。「は、春美!? やめろ!」 そう言って、驚いている花婿は春美の元婚約者・神崎涼介(かんざき りょうすけ)。 彼は業界でも1、2を争う大手神崎芸能プロダクションの社長。 そしてめった刺しにされた花嫁は浮気相手であり、彼の初恋の人・星野美優(ほしの みゆう)。 春美は2人に裏切られ、花嫁の座まで奪われてしまった。そして監禁されて、義父をひき逃げで殺された。もう春美には何も残ってはいない。 なのに、彼は他の女性を妻にするために結婚式を挙げたのだ。それは許されるわけがない。式場は一瞬で血の海になった。 そもそもどうして、こうなってしまったのだろうか?  涼介の出会いはお見合いだった。 春美は赤ん坊の頃に施設の捨てられた孤児。幼い頃はそこも施設で育ってきた。しかし、子供がデキなかった加賀野の義両親に七歳の頃に引き取られた。義両親は、2人とも優しい人達で本当の娘のように可愛がってくれた。 そして春美が22歳の頃。義父・加賀野和彦(かがの かずひこ)が結婚相手の心配をして、友人である神崎家とのお見合いを計画した。 神崎家は昔、事務所の経営が上手く行っていない頃に、エリート銀行員で顔の広い義父(加賀野和彦)が資金の援助をかけ合ってくれたらしい。他にも才能ある俳優達を紹介。   そのお陰で経営は持ち越し、大きく成長した。いわば恩人だろう。 その縁もあって、1人息子の涼介との縁談が生まれたのだ。いい年になっても夢を追いかけてばかりいる息子を心配して計画したらしい。 最初の春美から見た涼介の印象は、とても素敵なイケメンな男性だった。 キリッとした二重に端正な顔立ちは『イケメン社長』として有名だった。 髪はダークブラウンで、背も180センチでグレーのスーツ姿もよく似合っている。春美は初めて見た時はドキッと心臓が高鳴るほどに。 しかし、春美は彼を何処かで見たことがあるような気がした。何処だったか覚えていないが。 しばらく両親との話をするが涼介は自信と向上心に溢れていて、たくましいと思った。春美は、そんな彼を支えたと思うように。 それが間違いだったのかもしれない。その後は、お互いに何回かデートする。無理やり婚約
last updateLast Updated : 2025-10-05
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第2話
「そ、そんな……」「それに俺には心から決めた初恋の人が居る。その人は君と違って純粋な人気女優だ。今は事情があって離れ離れだが、いずれ戻ってくる。それまでなら相手をしてやる」 彼は同然のように彼女の身代わりとしてなら受け入れてやると言ってきた。それ以外は受け付けないと。 その後は仕事があると行って1人で帰ってしまったため、春美だけ取り残されてしまう。 それでも春美は彼のことが諦めきれなかった。初めてを捧げ、どうしても彼のことが忘れなかったからだ。 春美は彼のことを調べた。彼の初恋の人。その彼女は星野美優(ほしの みゆう)だった。 涼介が所属する事務所の看板女優で数多くの映画、ドラマに出演。年齢は当時22歳。 茶髪のふわふわロングヘア。152センチの小柄で、ぱっちりした大きな目が特徴的な華やか美女。 しかし半年前に海外に無期限で留学していた。 昔、涼介が12歳の頃に交通事故に遭った。命にかかわるぐらいだった怪我だったが、意識が朦朧としていた時に幼い女の子に助けてもらったらしい。 誰か分からなかったが、当時7歳ぐらいの年齢で首筋に赤色の星の痣があったらしい。救急車に乗るまで、ずっと手を握って励ましてくれた。それが星野美優だったと、後で知ることに。彼女の首筋には星の痣があったからだ。ただし赤色ではなく黒色だったが。本人も覚えていると言い、運命の再会を果たした。 それからが彼にとったら、彼女は命の恩人として、女優の夢を叶えさせたという。 涼介の両親が夢ばかり追っているというのは、こういうことなのだろう。両親は星野美優をいい風に思っていない。 しかし、春美は、その調査報告書に違和感があった。その事件内容は見覚えあったからだ。 春美が7歳の頃。施設近くで交通事故を見かけた。12歳ぐらいの幼い男の子が事故に遭ったと。苦しんでいる彼を心配して、近くの人に救急車呼んでもらう。その間は彼を励まして、手を握っていた。顔は忘れてしまったが、内容は全く同じ。(もしかして、あの時の男の子は神崎涼介ってこと!?) それが事実だとしたら、彼はどうして勘違いをしているのだろうか? 春美にとっても、その男の子は印象的で忘れられない人だったのに。しかも星野美優にも同じ星の痣があったとは驚きだ。だから彼は、あんなに驚いたのだろう。 もしかしたら自分が初恋の人の特徴を知っ
last updateLast Updated : 2025-10-05
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第3話
 その後も宝物のように星野美優に接する。彼女が望めば、どんなドラマ、映画でも大役を与える。 神の名にかかれば容易いこと。星野美優は、あっという間に人気若手女優に。 中には星野美優のゴリ押しと騒がれた時期もあったが、そんなアンチは潰すことを徹底する。彼女みたいな美貌と実力を持っていれば嫉妬でアンチが湧くのも仕方がない。 しかし、それでも対処が難しい事件が起きた。星野美優が飲酒運転で、人をひき逃げしてしまった。夜で、ほとんど人が少なかったのが幸い。 涼介は、すぐさま大金を使って別の人に身代わりをさせる。そして事件が収まるまで、彼女を海外に留学させた。その間の生活費と自宅を与えた。 両親は、そんなこともあって彼女の交際に猛反対してきた。相応しくないと言って。 それから半年後に加賀野春美のお見合いを計画させた。ムカついたが親がうるさいので、適当に相手してから理由をつけて断わろうとした。 だが、星野美優に会えないイライラで羽目を外してしまい、うっかり酔った勢いで加賀野春美を抱いてしまった。 しかし彼女の首筋にも星の痣が。それを見て、涼介は確信する。この女は自分に近づくために、わざわざ星の痣を彫ったのだろう。そして父親を利用として近づいてきた。 なんて卑しい女だ。涼介にとって加賀野春美は、そういう印象だった。 それでも身体の相性は良かった。というのも彼女は見た目だけは良かったからだ。 スラッとして流れるような曲線美の腰つき。手足はモデルでも十分にやっていけるほど細長い。身長も170センチはあるのだろう。 それに大きくも小さくもなく、丁度いいサイズの胸は触り心地がいい。初めてだったらしいが、気づいたら腰を激しく打ち付けていた。 容姿は星野美優と正反対でキリッとしたつり目。顔はまったくタイプではないが、芸能界に入っても十分にやっていけるほどの美貌を持っていた。 認めたくはないが、会った時に目を奪われたのは確かだ。 そして何処か懐かしくもあるいい匂い。抱くだけなら最高級品。 そう考えたら手放すのも惜しくなってくる。本当だったら、さっさと縁を切りたいところだったが、チャンスをやることにする。 婚約を続ける代わりに、星野美優の代役を与える。と言っても、あくまでも星野美優が戻ってくる間だけの期間限定。彼女が帰国したら、すぐに婚約破棄するだけだ。。 それ
last updateLast Updated : 2025-10-05
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第4話
 加賀野春美は、啞然とする。どんなに一生懸命に尽くしたとしても、この一瞬で星野美優に全て奪われてしまったからだ。 涼介が空港まで迎えに行くと言い、春美に運転させた。そして自分を放って、再会を楽しんでいた。 その後。車に乗り込む春美の運転で車を走らせる。涼介と星野美優は、後部座席に座るが、ずっとベタベタとイチャついていた。 無言で運転していると、美優が春美を気にする。「ねぇ~この女性は見ない人よね? 新しい使用人?」「あ、ああ彼女は加賀野春美。俺の秘書だ」「あ~そうなんだ!? てっきり使用人かと思っちゃった。ごめんなさい、加賀野さん。こんな綺麗な人が使用人なわけがないですよね」 えへへと間違えちゃったと笑う星野美優。(この人……何回使用人と言うのかしら?) 見た目は無邪気で可愛らしいのだが、何か言葉に棘があるように気がした。 その後。彼女を用意した高級マンションに送り届けると、春美と車で帰ろうとする。 しかし星野美優は降りる直前で涼介の腕を引っ張る。「涼介さ~ん。せっかく帰国したのに、もう離れ離れになっちゃうの? せっかくだからお茶でも飲んで行ってほしいな。荷物も重いし」 猫のような声で離れたくないと甘えてくる。「分かった。じゃあ、荷物を下ろしてから行くから先に入っていてくれ」「本当!? うん、分かった」 星野美優は嬉しそうに言うと、車に降りて先にマンションの中に入って行った。 涼介は黙って車のトランクから彼女の大きなキャリーバッグを取り出す。春美は慌てた。「えっ? 涼介さん、彼女のマンションに入るの!?」「当然だろう彼女がそう望んでいるんだ。それと、彼女の前では名前で呼ぶな。勘違いされたら困る」「勘違いって……私は、あなたの婚約者よ!?」 まるで他人事のように発言をする涼介。春美が婚約者だと主張と、ギロッと睨みつけてきた。「勘違いすると言ったはずだが? 君と俺の関係は彼女が戻ってくるまでの代理に過ぎない。美優が戻ってきたんだ。この婚約はなかったことにしてもらう」「そ、そんな……」 ショックを受ける春美。しかし涼介は当然だという顔をする。「婚約破棄だ! 今後は何の関係もない、ただの秘書としてわきまえろ」 彼は、婚約破棄を突き付けてきた。恐れていたことが起きてしまった。「で、でも……そんなの許されないわ。親同士が決
last updateLast Updated : 2025-10-05
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第5話
 しかし別れたはずなのに涼介は春美との関係を終わらせる気はなかった。 涼介は二股をかけるが星野美優との差は大きく違っている。 星野美優にはお姫様のように扱う。彼女が要求することは全て叶えるし、デートも高級レストランやどんな場所でも連れて行ってあげる。 遊園地で遊びたいと言った時にはロマンチックな夜に貸し切りまでした。 逆に春美のさらに扱いは雑になる。星野美優の現場の付き添いで多忙になったため、その尻拭いを全て春美にさせた。 星野美優とのデートの準備や予約をさせたあげく、送り迎えまで。 その上で急に家に呼びつけたりする。社長室でも同じく。一人暮らししているタワーマンションに涼介に呼び出されると、そのままベッドに連れて行かれてドサッと押し倒された。 覆い被さると首筋にキスをしてくる。「や、やめて……」 そう言い抵抗するが、やめようとしない。それなのに、例え行為の最中でも美優からの着信には、すぐにやめて出る。「どうした?」『涼介さ~ん。さっき時間があったから料理をしたの。そうしたら指を切っちゃって。血が出て……痛いの』「分かった。すぐに行く。ちゃんとタオルで押さえておいて」『あ、でも……これぐらいの事で来てもらうのも悪いわ。美優が我慢すればいいだけだし』「何を言っているんだ!? 美優は人気女優なんだから、もし指の傷が深くて痕に残ったら大変だ。病院に連れて行くよ」『ああ、そんな深い傷ではないから、病院はいいの。でも……凄く痛くて。涼介さんが、指をフーフーして絆創膏を貼ってくれたら治るかも』「まったく、可愛いことを言うな。すぐに行ってやる」 そう優しく言って、電話を切る涼介。そしてベッドに居る春美に声をかける。「今から、美優のマンションに行かないといけない。さっさと終わらすから、君は着替えたら帰ってくれ。俺はタクシーで行く」「えっ? 今から?」「当たり前だ。美優は君と違って繊細なんだ。女優の指に怪我でも残ったら大変だ」「で。でも……指の怪我なのよね?」 どこに指の怪我ぐらいで人を呼びつける人がいるのだろうか? 病院どころか、自分で治療が出来る範囲だ。 しかし涼介にとったら違った。どんな怪我でも星野美優やれば一大事みたいだ。 乱暴に済ませると、さっさと服に着替える。そして、裸のままの春美を残して部屋から出て行ってしまった。 春
last updateLast Updated : 2025-10-05
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第6話
「こら、そんなに自分を責めるんじゃない」「だって~こんなことも出来ないなんて涼介さんのお嫁さんとして失格だよ。美優は涼介さんが自慢の出来るお嫁さんになりたかったのに」 目をうるうるさせながら、上目遣いで涼介を見る。それに胸がキュンとした涼介は彼女をギュッと抱き締めた。「本当に君は健気でいい子だ。心配するな。美優は俺の自慢の花嫁だ」「……本当?」「ああ、だから気を落すな。ほら、片付けは俺がやっておく。手当てもしないと」「……うん。ありがとう。涼介さん」 お礼を言うと、涼介は、気分良くゴミ袋とほうきを取りにキッチンに向かっていく。それを見ながら星野美優はニヤリと笑った。(ほら、彼は私のためなら何でも言うことを聞くの。見てなさい、加賀野春美) その後は、涼介はワイングラスを片付けて星野美優の手当てをした。その時に、星野美優からキスを求められて、そのまま一夜を過ごすことに。 しかし寝静まった部屋で、涼介は1人でワインを飲んでいた。チラッと見ると、星野美優はベッドの上で気持ち良さそうに眠っている。 涼介は窓から見える夜景を見て、考え込む。(美優は顔と声は好みだし、天使みたいに可愛いのだが……何だか物足りない) 星野美優は涼介にとって理想通りだ。しかし大切にするあまり、加減をしないといけない。彼女は激しくてもいいと言うが、か弱く華奢な身体を壊さないように優しく抱く。 昔ならそれで満足したのだが、彼は知ってしまった。 その点、加賀野春美は良かったと。星野美優みたいに大切に扱わなくていいから、激しく抱けた、ギュッと締まる蜜壺に自分の欲望を吐き出すには丁度良かった。 顔も性格は好みではないが、身体の相性は良い。 あの美しい身体と喘ぎ声を想像しただけで、思わず生唾を呑むほどに。捨てるには、あまりにも勿体ない。 それに両親が早く謝罪して婚約破棄を取り消せと、うるさい。(まあ……いい。どうせアイツは俺のことを愛している。気が向いたら明日でも抱いてやればいい。そうすれば機嫌も良くなるだろう) 涼介は、自分の欲望のことしか考えていなかった。星野美優で満足しない部分は春美にやらせればいいと思っていた。 心と愛情は星野美優に。身体は春美が補えば丁度いいと。両親には、まだ理解していないだけで、もっといい方で分からせればいいと目論んでいた。 だが星野美優は
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第7話
 そのせいで半年後の夏になる頃には根暗の地味女と社内でも有名になる。涼介にも、「真面目だけが取り柄の地味女だな。華もないし、もっと美優を見習えよ」と、言われる始末。 一体誰のせいで、こうなったと思っているのだろうか? それでも彼女の要求は収まらなかった。あれが嫌だとか、これがいいと言っては、全て春美に尻拭いをさせられる。 それだけではない。春美のコミュニケーションアプリに、個人的にメッセージを送ってくるように。ほとんどはマウントみたいな自慢話と中傷ばっかりだ。『今日は、涼介さんに高級レストランに連れて行ってもらいました。高級ネックレスまでプレゼントしてくれて『愛している』と言ってくれたんですよ。この幸せを加賀野さんにも分けてあげたいぐらい』『幸せで怖いぐらい。加賀野さんは恋人とか居ないですか? あ、ごめんなさい。フラれたばかりでしたよね。涼介さんに。ざんね~ん』『お前みたいな平凡な地味女が涼介さんに似合うわけがない。人の男を盗るな。さっさと辞めろ。マジで目障り』 どうやら涼介の関係を知っているようだ。それが余計に気に入らないのだろう。 天使みたいな無邪気で純粋と売っていた彼女とは程遠い。彼女の裏の本性が見えた。 写真で送ってくることもあったが、どれもイチャイチャしたものばかりだった、 ベッドで寝ている彼を撮ったものから、寄り添って笑顔で撮ったものまである。自分の方が愛されていると言いたいのだろう。(こんなの送ったとしても……私には、どうすることも出来ない。文句なら彼に言ってほしい) 辞めるにも涼介は退職を許すとは思えない。仕事の事もあるし、親との信用問題に関わるからだ。 それに関係だって、涼介が無理やり迫ってくるからで、こちらから盗ったわけではない。 星野美優の仕事が多忙になってくると、かなり回数は減ってきたが、それでも隙をついては春美に近づいてきた。。 こないだもドラマのロケでホテルに宿泊することがあった。 春美もスケジュールの管理のために付き合わされることになったが、涼介は星野美優の部屋に入り浸る。部屋は別々に予約したはずだが、もともと一緒に過ごす気だったのだろう。 しかし涼介は深夜になる頃に、春美の部屋に訪れてきた。 春美は、その時は、やっと解放されて、シャワーを浴び終わった時だった。バスローブ姿でドアを開けると、バス
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第8話
 その頃。涼介は起こさないように部屋に戻った。そうしたら星野美優が目を覚ました。「う~ん。涼介さん? どこ~?」 寝ぼけたように、手さぐりで涼介を探す。「ああ、こっちだよ。悪い……自分の部屋で荷物を取りに行っていた。あと、電子タバコを吸ってきたんだ」「……そうなんだ。良かった~何処かに行って、消えちゃったのかと思った」「俺が君を置いて何処かに行くわけがないだろう。ほら、俺はシャワーを浴びてくるから、大人しくおやすみ」 涼介はクスッと笑う。星野美優のおでこにキスをして布団を掛けてあげた。「うん。おやすみなさい」「ああ、俺の可愛い天使」 そう言って、眠るまで傍に居てくれた。 しかし星野美優は眠ったふりをしていただけ。内心は、はらわたが煮えくり返るぐらいだった。 彼が何処に行っていたか、すぐに分かったからだ。歯を食いしばる。(本当に、鬱陶しい女ね。絶対に追い出してやる) 次の日。ドラマのロケの撮影で、ぶたれるシーンが嫌だと星野美優は、そう言って泣き出してしまう。  この小屋で新人医師だが院長の娘である彼女が誘拐犯に捕まってしまい、ヒーローに助けてもらうシーンだ。 さすがに原作でも大事なシーンでもあるので、脚本を変更させるわけにはいかない。「美優さん。お願いですから、撮影を続けて下さい」 ホテルの部屋で必死に説得をする春美。だが、彼女はご立腹なのか頬を膨らませた部屋から動こうとはしない。 どうしたものかと悩んでいると、美優は急にクスクスと笑ってきた。「あ~可笑しい。あなたって、本当バカだよね。そこまでして美優に機嫌を取ったりしてさ。恥ずかしくないの?」「……えっ?」 立ち上がった星野美優は笑いながら私に近づいてくる。急に近寄ってきたのでビクッと肩が震える。 普段は涼介が傍に居るから、直接には近寄って来なかったのに。「でもねぇ~あんたは、結局のところは、私の身代わりなの。そこは、ちゃんとわきまえなさいよ」「そ、そう言われましても」 しかし、その時だった。ガチャッと誰かが入ってくる。「美優~体調は大丈夫か?」 涼介の声だった。その時だった。彼だと分かった星野美優は、何を思ったから急に壁にドンッと自分でぶつかってきた。「キャアアッ~」と、悲鳴を上げながら。 涼介が驚いて来た時には地面に倒れる星野美優。 慌てて起こす涼介
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第9話
「もういい。お前は、本当に最低な女だな!? 美優がどんな思いで人生を歩んできたか、知ってやったのか?」「人生……?」「美優はもともと施設育ちなんだ。実の両親は不仲で。父親の不倫のせいで母親は精神的におかしくなって、赤ん坊の美優を捨てた。ずっと施設で酷いイジメに遭って……やっとの思いで両親の場所を知って、命からがら逃げてきたんだぞ」 どういうことだろうか? 彼女は星野グループの社長令嬢なのに。 星野グループは、電気機器など多くの会社経営している、日本でも数少ない大手企業だ。(星野美優が施設育ち? いや、それよりも赤ん坊の頃に捨てられたって) 春美が驚いたのは、それだけではない。自分も同じ境遇だったからだ。「母親は未だに精神が病んだままで認識すらされていない。それでも健気に頑張っているんだぞ? そんな辛い経験をしてきた彼女に同情するならまだしも、よくそんな酷いことがやれるな!? お前には血と涙がないのか?」「そ、そんなつもりは……それに、だったら私も同じじゃない」 春美自身だって、赤ん坊の頃に施設に捨てられた。イジメは受けていないが、寂しい思いはしてきたのだ。彼は、そのことを忘れたのだろうか?「はっ? お前が美優と同じ? 加賀野家に引き取られて、幸せに暮らしているではないか。彼女と一緒にするな。俺は自分の恩人を屈辱されるのは許さない」 そう言って、怒鳴られる。春美は啞然とする。 それだったら、星野美優も同じではないか? 今では誰よりも裕福なお嬢様の立場だ。 本当の両親の元に帰っている。父親から溺愛されているのは世間でも有名。星野グループが、彼女の出演しているドラマなので多くスポンサーを務めている。 だからこそ、彼女のどんなワガママでも通る。神崎芸能プロダクションと星野グループを敵に回すわけにはいかないからだろう。 しかし、何かがおかしい。こんな偶然あるのだろうか? 同じ赤ん坊から捨てられたと言い、施設育ち。しかも涼介の初恋で恩人。自分と正反対ではあるが、何かが切り取られているような感覚がした。大切な何かを。「でも……やったのは私じゃない。それに、あなたの命の恩人は私。あなたを助けたのは私よ!」「はっ?」 すると、美優は涼介の腕を掴んだ。「もういいよ……涼介さん美優が全て悪いの。ううっ~お腹が痛い」 そう言いながら、突然お腹を押
last updateLast Updated : 2025-10-06
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第10話
 どうしたのだろうか? なんか義母の様子がおかしい。 何か言い難そうにしている。星野美優のことを知っているのだろうか?「お義母さん? どうしたの?」『ああ、ううん。何でもないわ。ちょっと気になっただけ。それよりも、寒くなってきたから温かくするのよ? それでは、また電話するわね』 そう言って、一方的に通話を切られてしまった。一体何だったのだろうか? 春美は不思議そうに首を傾げるが、何か引っかかった。星野美優のことだから余計に。 考え込んでいると、また着信が。見てみると涼介からだった。仕事のことだろうか? 電話に出ると、一言『今から自宅に来い』と言われた。「えっ? 私、今自宅謹慎中なのですが?」『そんなのは分かっている。いいから、俺が許可を出したのだから、大人しく来い。来ないと、自宅謹慎を延長するからな』 それだけ言うと、こちらも一方的に通話を切られてしまった。 春美は不満に思ったが、社長である彼に言われたら行くしかない。来ないと、本当に長するかもしれない。 すぐさま着替えてタクシーで涼介の自宅マンションに向かった。オートロックになっているがインターフォンを押すと、すぐに開けてくれた。 エレベーターで上がり、最上階にある彼の部屋に。中に入ると何故か、リビングの床に正座をさせられる。「それで、反省したのか? 美優に謝罪する気になったんだよな?」 涼介はソファーに座りながら足を組んで、床に正座をしている春美を見下ろす。「……私は本当に、彼女に何もしていません」 実際に何もしていないのだから、謝罪と言われても出来ない。それに、彼女はワザと自分を嵌めたのだ。現場から追い出すためだけに。 だが、涼介は素直に認めない春美に苛立ちを覚える。バチンッと春美の頬を叩いた。「往生際が悪いぞ。この期に及んで、まだ反省をしない気か!?」「ほ、本当に何もしていないのです。私を信じて下さい」 春美は叩かれた頬を押さえながら必死に言った。どうせ信じてもらえないと思ったが、それでも言うしかなかった。誰も証明してくれないから。 そうしたら涼介は春美の顎を掴んで上げた。「もういい。強情で聞き分けが悪いことは最初から分かっていた。どうせ、これ以上言っても白状しないだろう」「……いえ……本当に身に覚えが」「もういいって言っただろう!? お前は本当に言い訳ばか
last updateLast Updated : 2025-10-06
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