All Chapters of 私が本物だった!?~死に戻った彼女は死より恐ろしい復讐で返り咲く~: Chapter 21 - Chapter 30

53 Chapters

第21話

 星野総一郎の妻で、加賀野春美の本当の母親・星野智美(ほしの ともみ)は、春美にそっくり。それが世に知られたら、自分がニセモノだとバレてしまう。 自分の身元を調べられたら、一巻の終わり。「どうにかしないと……」 星野美優は、歯を食いしばりながら考える。しばらくすると、スマホを取り出して涼介に電話をかけた。『どうした?』「涼介さ~ん。どうしよう。えぐっ……加賀野さんが美優を陥れようとしているの」 星野美優は、すぐさま得意の泣きの演技をする。電話なので声だけで、目は涙一粒も流れていない。『どういうことだ?』「あのね……さっきモデルをやっている友達から電話があったの。加賀野さん。モデルの仕事を始めたみたいで。そうしたら他のモデル達に変な噂を流しているって。星野美優は男癖が悪い性悪女だとか。自分がモデルになって有名になったら潰すとか。美優怖くて……そうなったら芸能界なんて居られない」『春美がモデルとして芸能界だと!?』 涼介は知らなかった。あれから仕事を辞めて無職のはずだ。なのに、反省して謝罪するどころか芸能界に踏み入れようとしていたとは。(何処の事務所に入ったんだ? それよりも、そこまでして美優を陥れようとしているだと?) 芸能界にやっていくには何処かの事務所に入るのが通常だ。しかもモデル。 春美は確かにモデルをやっていくだけの美貌とスタイルを持っている。それは理解していたが、彼女は芸能界には興味がなかったはず。 そう思っていた涼介は驚く。『だ、大丈夫だ。あんな女が厳しい芸能界で生き残れるはずがない』「でもでも、加賀野さんって、凄く美人だし。スタイルが良くて、美優なんかが太刀打ちなんか出来ないよ。ひっく……怖いよ~涼介さん」 星野美優は泣き真似をしながら涼介の心を揺さぶった。これだけ言えば、動くしかないだろう。 結局のところ涼介は芸能プロダクションの社長だ。彼が動けば状況も変わる。それに、もし春美に未練があったとしても愛しているのは自分。 星野美優は、それだけの自信があった。そのために婚約破棄までしてくれたのだ。『……分かった。俺がどうにかしよう』(ほら、やっぱり) 彼の反応に星野美優の口元が上がった。思った通りに返事があった。「でもね……そうしたら友達がこう言ったの。『美優と競わせて、どっちが上かハッキリさせた方がいいって。
last updateLast Updated : 2025-11-01
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第22話・盗作問題

 それから1週間後。春美は幸村に呼び出されて、事務所に居た。 雑誌は話題になっているという良い知らせだった。その知らせに喜ぶ春美。「えっ~本当ですか!?」「ああ、評判が良くて、売り上げも順調。雑誌の出版社さんから専属契約をしないか? と依頼が来た。これで専属モデルとして第一歩が踏み出せた。あと、有名な化粧品ブランドから、君にピッタリだとオファーがあったよ。新商品ファンデーションのCMなんだけど。ただ形式だけのオーディションがあるから、それに参加する条件で」「形式だけのオーディション?」 それを聞いて春美はハッと思い浮かべる。そういえば、そういうケースもあったと。「君も芸能界事務所の秘書をやっていたのなら聞いたことがあるはずだ。オーディションを受けて、多くの応募者から合格させる。新人とかだと大きな話題性を狙えて、けして珍しくはない行為だ」 確かに幸村の言った通りだ。その手なら、涼介の事務所で秘書としてやっていた時に、何度か耳にしたことがある。 特に星野美優の時に使われていた手口だ。 たくさんのオーディションを勝ち抜いた大型新人。話題のドラマに、自ら応募など。それだけで期待も高まる。それを涼介が陰でプロデューサーと掛け合い、合格させていた。「……しかし、これには少し気になる点があってね」「気になる点ですか?」 不思議がると、幸村はオーディションの現在の応募リストを見せる。「これを送られてきたんだけど。ここ。応募に星野美優って書いてある」「えっ?」 慌てて見てみると、確かに彼女の名前が記されていた。形式オーディションなのに。(もともとやっていたオーディションに私が割り込んだから? いや……でも、このブランドは、確か彼女はやっていないはず) 記憶の中から過去を振り返ってみる。星野美優が選んだのは違う化粧品ブランド。このオーディションは確かにやっていたが、彼女は参加していなかった。 だとしたら、この歪みは何だろうか?「応募リストをあらかじめに見せることも本来なら禁止だ。そこの化粧品ブランドは、それでも君に応募してほしいと申し込んできた。私は……これは罠のような気がするんだ」「罠……?」 幸村の言葉に動揺するが、可能性は高いと思った。 そう考えた方が納得するからだ。あのプライドの高く、ずる賢い星野美優が形式オーディションを受けるとは思
last updateLast Updated : 2025-11-01
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第23話

 そしてオーディション当日。 会場ホールには、たくさんの参加者が居たが、星野美優と涼介の姿があった。 いつものように彼女は涼介にべったりだった。始まると、関係者やマネージャーは、会場の外で待っていないといけない。「私は外で出ていかないといけないが、このままでやれそう?」「はい。何とかいけそうです」 その時だった。幸村と話していると「春美!?」と大声で呼ばれる。 声をする方に振り向くと涼介だった。後ろには星野美優と一緒だ。 しかし涼介は怒っているのか、鬼のような怖い顔をしていた。周りの参加者は驚いて、こちらを見てくる。「あの人って、最近SNSで話題になった新人モデルだよね?」「えっ? 神崎社長と知り合いなの?」「彼女達も参加するの? えっ~激戦じゃん」 ひそひそと内緒話をされる。オーディション以外は注目を浴びたくなかったので、余計に困ってしまった。 今回は普通のオーディションと違って、形式。あまり悪目立ちをしてしまうと、色々と疑われてしまう。 他人のふりがしたいと思っていると、眉間にシワを寄せて血相を変えた涼介が、こちらに向かってくる。そして春美に腕を強く握り締めた。「どうして勝手に辞めて、芸能界入りしたんだ!?」「キャアッ!?」「しかも美優を陥れようとするとは……人として恥ずかしくないのか!?」「はっ? 何を言っているのよ? とにかく離して」「いいから、帰るぞ!? ここは、お前のような人間が来るところではない」 何を思ったか、春美を無理やり連れ去ろうとする。必死に抵抗するが、強く握り締められているため外せない。 そうしたら幸村が、涼介の腕を掴んだ。「離してもらおうか? 彼女は、ウチの大切な事務所のモデルだ」 しかし涼介の表情がピクッと変わる。ギロッと幸村を睨みつけてきた。「はっ? 春美は、お前のところのモデルじゃない。それに俺の元婚約者だ」 何を言っているのか、自分でも分かっているのだろうか? 元婚約者と自分でバラすし。 それに、もう他人。 仕事も辞めているので、とやかく言われる筋合いはない。「元婚約者なら、なおさら関係ないだろう。それに退職もしているし、契約自体はウチのモデルで間違いはない」「はっ? 何だと!?」 涼介は幸村に掴みかかる。しかし幸村は冷静だった。それに慌てたのは星野美優だった。 春美に騒ぎ
last updateLast Updated : 2025-11-01
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第24話

「えっ? あの……」 星野美優は戸惑ってしまう。文句を言ってくれば、いくらでも反撃が出来た。それなのに逆に謝罪されたら言葉が出てこない。「彼女は、まだこの場には慣れていない。私から、よく注意をしておくから、この場は大人しく収めてくれないだろうか?」 毅然とした態度で優しい口調で言ってくる幸村。 これには周りも啞然としながらも、こそこそする。。「幸村社長って、紳士的よね。下手な言い訳をせずに、すぐに謝罪をするなんて」「と、いうか突き飛ばしたのは神崎社長だよね? なんで幸村社長が謝るの?」「そうよね。神崎社長って、星野美優さんと噂があったわよね? えっ? 二股?」「二股なら、別れて当然よね。それなのにつきまとって、怒鳴り散らすなんて」 紳士的で大人の対応をする幸村に対して、傲慢で暴力的な態度を見せていた涼介に批判が集まり始める。それもそうだろう、彼らは大人なのだから。 顔を赤くして慌てた涼介は星野美優に「俺が外で待っている」とだけ残して、会場の外に出てしまった。 それには星野美優もあんぐりと口を開いた。まさか自分を庇うどころか逃げてしまうとは。 そうしたら騒ぎに駆けつけたスタッフが声をかけてきた。「あの~大丈夫ですか? もうすぐ始まるのですが……何か問題でも?」「ああ、何も問題ない。始めてくれ」 それに対して幸村はニコッと微笑んで答えた。そして春美の方を見る。「大丈夫。君は何も気にせずに、やってごらん。私は外に出て待っているから」 いつものように励ましてから立ち去って行った。どうなるかと思ったが、幸村のお陰で、これ以上騒ぎにならずに済んだ。 ドキドキしながら司会者の説明を聞いていたら、急に星野美優が春美に近づいてくる。 嫌な予感がして後ろの一歩下がると、彼女は、ギロッと怖い顔で睨んできた。「調子に乗らないことね? あんたなんか、涼介さんと星野家の力を借りれば、簡単に潰せるんだから」 あの純粋で天真爛漫だと言われている彼女は、何処に行ったのだろうか? 今、傍に居るのは羊の皮を被ったオオカミみたいだ。「そう? でも、あなたこそ調子に乗らないで。私は奪い取られた分を取り戻したいだけよ」「はっ?」 そうしたらスクリーンに画面が映し出される。書かれた文字は『自分を美しく魅せる』だった。 司会者が口を開いた。「今回は自己紹介だけ
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第25話

 良かった、相談に乗ってくれる。それにお祝いもしてくれるなんて、断わる理由がないだろう。「では、行こうか?」「はい」 春美はそのまま出ようとすると、鋭い視線を感じた。チラッと横目で見ると、涼介だった。眉間にシワを寄せながら、こちらを睨みにつけていた。春美は無視する。 その後。春美と幸村は高級ホテルのレストランで食事をする。景色が一望できる窓際側に案内された。 前菜などを食べながら、今回出された審査課題のことについて意見を聞いた。そうしたら、やはり予算についておかしいと言ってくれた。 自分の考えが間違いではないと分かって、少し安心する。「これは、合格させる気がないようにも取れるな。低予算で高クオリティを求めるとは。形式なら、そこまでやるのは変だ」「そうですよね!? やっぱり」「まあ、あの様子なら神崎社長が、何かしら糸をひいている可能性があるだろうな。そうなると、厄介だな。もし星野美優を合格させるつもりなら、それ以上の作品を製作しないと勝ち目がないだろう」 ため息を交じりに言う幸村に春美も頭を抱える。 そうでもなくても、演技は未経験。それに決まった予算となると、かなり限られてくる。「どのようなCMにしたいか、案とかある?」「いえ……まったく。そもそも、どのようにしたらいいのか分かりません」 CMとか、あまり意識してこなかった。何となく流れてきたのを見て、欲しかったら購入していたぐらいだ。春美にとったら、そんな感じだった。「本来のCMは短い時間にインパクトを残すかが重視されている。印象とか、これ何処に売っているのだろう? とか視聴者に思わせるのが大事。例えば」 そう言いながら、分かりやすいように別のCMを例にさせて教えてくれた。幸村は、さすが社長なだけあって詳しい。「そうだな……私が女性だったら、こんなCMだったら欲しくなるだろう」 1つか2つイメージする案を出してくれた。「あ~いいですね。でしたら、こうした方が良くないですか? 私なら気になるかも」 2人で案を詰めていく。幸村は話上手だ。 さり気なく参考になることを言ったりしてくれる。それに否定とかせずに、それに適したアイデアを一緒になって考えてくれた。 楽しい。そのせいか話は弾んでいく。しかし何だか鋭い視線を感じた。 そうしたら、幸村は何かに気づいたようだ。「チラッと右後
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第26話

 頭を軽く下げて、慌ててお手洗いに向かった。そして済ませた後に、さっとメイクがおかしくないかとチェックする。 そして出ようとしたら、涼介と遭遇してしまった。 と、いうよりも外で待っていたようだ。春美を見るなり、ガシッと強く腕を掴まえてきた。「お前・事務所の社長と2人で食事に行くなんて、どういうことだよ!? もしスクープとされたらどうする気だ?」 そう言って注意してきた。それを聞いた瞬間「はっ?」と思った。 自分は星野美優と何度も2人きりで食事とかデートを重ねているのにもかかわらず。それどころか貸し切って遊園地デートまでしているのに。「何を言っているか分からないわ。私と幸村社長は何もないし、お祝いをしてくれただけよ。打ち合わせも兼ねて」「噓を言うな!? だったら、何であんなに嬉しそうに笑っているんだ? あの男が下心を持っているのが分からないのか?」 怒鳴りつけてくるが、まるで涼介自身のことを言っているように聞こえる。その言葉には、春美はカチンとくる。「勝手なことを言わないで。幸村社長は、あなたと違って誠実な人よ。それに、何で居るのよ? 私達をつけてきたの?」「お前が勝手にこそこそと浮気をしているから、連れ戻すためだ。それを辞めさせるのは、当然だろう」「私達は婚約破棄しているのよ? だったら、私が誰と会うかなんて、関係ないじゃない」「あれは、お前を大人しくさせるためで。それに美優が居るんだから、お前の方から身を引くのが当然だろう。別に別れるつもりはなかった。いいから、帰ってこい」 なんて勝手な言い分だろうか。 勝手に婚約破棄しておいて、帰ってこいと言ってきた。戻ったところで、どうせ濡れ衣を着せて解雇するくせに。 前世でもそうだった、どれだけ頭がお花畑なのか。「いいから離して。帰る気もない。何度も言うけど、あなたは星野美優さんが居るのでしょう? そんなことしていないで、彼女のところに戻ったら?」「言っただろう!? 彼女は恩人だ。大切にするのは当然だろう」 また、これだ。彼女の噓を信じているくせに、それを自分に押し付けようとしてくる。「あなたが、そう思いたいのなら、勝手にそうすればいいじゃない。私まで巻き込まないで」「何だと?」「もう、いいでしょ? 幸村社長が待っているから」 そう言い、手を振り払う。だが、まだ納得が出来ない涼介は
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第27話

 どうして、そういう考え方になるのだろうか? 幸村が下心を持っていると決めつけて、暴言を吐いてくる。しかも、人のことは言えないのに。「だったら君は、どうなんだ?」「はっ?」「君は星野美優さんと関係を持っているようだが。婚約者だった加賀野さんを捨ててまでやることは、どうなんだい?」 その言葉に、涼介は目を大きく見開いた。星野美優との関係性だけではなく、春美との婚約破棄まで知っていることに驚いた。「春美……お前。こいつに話したのか!?」 こちらを睨みつけてくる。春美はビクッと身体を震わせるが、幸村は春美を後ろに隠した。「君達と何かあるような気がして、私から無理やり聞き出したんだ。彼女だけ責めるのはおかしい。それで彼女が傷ついているのが分からないのか?」「ぐっ……」「これ以上、彼女につきまとうのなら、こちらにも考えがある。弁護士に相談しないといけなくなるだろう。困るのなら今後一切、彼女につきまとうな」 それだけ言うと、幸村は春美を連れて、その場を去った。涼介は悔しさのあまり壁を殴っていたが、追ってこなかった。 そのままレストランから出て、エレベーターに乗り込む。「あの、すみませんでした。ご迷惑をおかけしまして」 2人きりのエレベーターの中で、春美は幸村に頭を下げた。まさか、こんな場所まで追いかけてくるとは思ってもみなかった。星野美優が傍に居たのに。 それに、社長である幸村まで嫌な思いをさせるなんて。幸村は、こちらを見るとクスッと笑った。「アレでは別れたいと思っても仕方がない。自分の価値を上げ過ぎて、人の道から外れているのだからね」「は、はい。そうですね」 彼の発言に思わず正直に答えてしまった。そうしたら、春美はフフッと笑ってしまった。 幸村はニコッと微笑んだ。「君は笑った方がいいね。笑顔やよく似合う」「えっ?」 幸村の言葉にドキッと心臓が高鳴った。笑顔が似合うなんて男性に言われたことが、なかったからだ。 そうしたらエレベーターのドアが開いた。幸村は手を差し出して、「さあ、行こうか? 追いかけてくる前に」 そう言って、春美の手を握ってくるではないか。思わず驚いて何も言えなかったが、手を握られたことは嫌だとは思わなかった。 涼介に腕を掴まれた時は抵抗するぐらいに嫌だったのに。これは、どうしてだろうか? そのままホテルから出
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第28話

(もう~お義母さんが変なことを言うから、変に意識しちゃうじゃない) そんなつもりはなかったが、お似合いと言われると照れてしまった。 その後。シャワーを浴びた後に、部屋に行ってベッドに転がった。ゴロゴロとしながらレストランのことを思い出してしまう。 涼介の行動は未だに意味不明だし、だからと言われて彼のところに戻るつもりはない。 しかし幸村が助けてくれるとは思わなかった。あのままだったら余計に騒ぎになっていただろう。 芸能人が揉め事を起こしたら、評判にも影響が出てしまうところだった。(それにしても、幸村社長も代わりに殴ってくれて、ちょっとスッキリしたかも。フフッ) まさかの事態だったが、思わない仕返しにスッキリしている自分が居た。前世では、義両親以外で味方になってくれるが居なかったから。 もしかしたら心強い味方になってくれるかもしない。そう思ったら、心の中が少しあたたかい気持ちになった。 その後も幸村と何度か話し合いをする。義母のせいで内心ドキドキして目を合わせるのも大変だったが、何とか絵コンテまで作ることが出来た。 場所などで困っていると、顔の広い義父が知り合いの会社に頼んでくれて、1日だけ工場を無料で貸してくれることになった。イベント会社やアパートまで名乗りを上げた。 どうやら義父は、いろんな人から相談を受けることもあって、アドバイスなど力を貸していたらしい。 そのお陰もあり、低コストで撮影がすることが出来た。感謝しかない。 そして2回目のオーディション翌日。 春美は幸村と一緒に会場に乗り込んだ。とりあえず、やれることはやった。 会場では、それぞれ自分が演じた映像を順番に流した。チラッと見ると、星野美優は自信満々な表情をして、こちらを見ていた。 低予算で、大したものは出来ないと思っているのだろう。順番からして、春美が先に見せることになった。 テーマの『自分を美しく魅せる』 映像に春美は、町工場で働く女性。いつも汗水たらして機械をいじったり、重い機材を運んだりしていた。時に上司に怒られて泣くことも。 しかし仕事が終わった彼女は、古いアパートの洗面台で、顔を洗い、身支度を始める。 いつもよりお洒落をして、普段しないメイクをする。その化粧品は、お気に入りのブランド。小汚い恰好ではなくて、とびっきりお洒落をした自分に生まれ変わる。 
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第29話

 周りも、ひそひそとこちらを疑ったように見てきた。違うと言おうとしたら涼介が星野美優を抱き締めながら怒鳴ってきた。「お前な、よくもそんな酷いことが出来るな!? 美優は一生懸命考えて、俺に見せようとしたんだぞ? それなのに無い、無いと泣きながら探していて。本当に可哀想だった」「違う……私は、そんなことはしていないわ」「噓をつくな。お前以外に居ないだろう。美優も見たと言っているし、前に秘書として働いていたから入りやすかったはずだ。偽装でもして潜入したんだろ?」「……そんな!?」 確かに秘書として働いていたが。レッスン場とか一部を除いて、事務に入るのにはICカードが必要。退職した時に、ちゃんと返却した。 それ以前に退職してから、一度も行っていない。星野美優が噓を言っている。 この様子だと、涼介も知らなかったようで、まんまと彼女に騙されているようだ。「だったら、会社の監視カメラでも何でも調べてみなさいよ!? 私は、辞めてから一度も行っていないから記録に残っていないはずよ」「そんなの調べなくても明白だろう。お前は美優に嫉妬している。純粋な美優が噓なんて、つくはずもない」 彼女のことを信じ切っている涼介は監視カメラを確認するのを拒んでくる。 そうしたら星野美優は、また泣きながら春美を見る。「加賀野さん。もう辞めようよ……美優が悪かったの。加賀野さんを追い出す形になっちゃったから恨んで、盗んだのよね? それに美優……知っているの。このオーディションだって、本当は形式だけで加賀野さんが合格することになっていること」「えっ?」「そこまでして美優を陥れようとするなんて思わなかった。芸能界まで入って、悪行を染めてまでやらなくても……美優が辞めるから。だから……許して」 涙をポタポタと流しながら、床に肘をつけて泣いてきた。これには、さすがに周りも星野美優の方に同情がいく。「酷い……そこまでして星野さんを恨むなんて」「彼女が可哀想。そんな奴が芸能界なんかに居てほしくない」「ここまで追い込む必要があるの? 盗作までするなんて、こんなの不合格よ」「形式って……私達まで利用しようとしたの? 最低」 立場が一気に逆転した。これでは浮気の件で、逆恨みをして星野美優に八つ当たりして、嫌がらせをしたことになってしまう。 最初だけでもイメージが悪いのに。形式オーディ
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第30話

 言われてみれば矛盾だらけ。合格だと決まっているのに自分から騒動を起こすのは、あまりにも不自然だ。「それに、これを考えたのは私。でも、君は加賀野さんが盗んだと言っている。証拠の監視カメラで調べられるのに、それすら拒否。と、いうことは、確かな証拠がない。それなのに、彼女の言葉だけで判断するのは、いささかおかしくないか? そこまで言うのなら、きちんと証拠をあげているのが筋ってものだ」「……分かった。監視カメラを調べればいいのだろう」 冷静沈着な幸村の発言にムキになった涼介は会社に電話をかけようとする。しかし、それを止めたのは星野美優だった。これ以上調べられたら一巻の終わり。「待って。もういいよ。そこまでしなくても」「だって……」「美優が悪かったの。それでいいじゃない? 美優が全ての責任を取って、今回のオーディションは辞退するから。そうすれば……皆の気が済むの でしょ? いいの。美優は、こういうこと慣れているから」 目尻に涙を溜めながら、今にも泣きそうな表情をする星野美優。さすが女優。こういう演技は得意のようだ。 これでは被害者相手に責任を取らせたように見えてしまう。「可哀想」と同情を買ってしまったら、それを責めた人が悪者扱いされる。非道な人間だと。 周りは、同情な目を向けてきた。「……美優。そんなことを言うなよ。お前は悪くないのに」「もういいの。美優が全て悪い。昔からそう言われ、施設で育ってきたし。それで加賀野さんの気が済むのなら、美優は我慢する」 そう言いながら春美の方を見る。「……加賀野さん。ごめんなさい。美優は辞退するね」 また、その手で行くのか。しかし、春美もそれに黙っていなかった。これに流されたら、また前世のようになる。「辞退するのは構わないけど。せっかくなら、あなたのCM映像を見てみたいわ。それからでも遅くはないわ」「はっ? 春美……お前、こんな時でも、非道なことを言うのか!? 美優が傷ついているのに」 春美の発言に怒鳴りつける涼介は、非道扱いしてくる。「誰も非道なことは言っていないわ。それに、せっかく製作したのでしょ? だったら皆の前で披露して、どちらか素晴らしいか平等に、はっきりさせた方がいいじゃない? このままだと私に濡れ衣を着せたみたいで気分が悪いわ」「そうだね。このままだと不平等だ。私達の誤解を解くためにも公平
last updateLast Updated : 2025-11-02
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