「あの人って、最近SNSで話題になった新人モデルだよね?」「えっ? 星野美優と知り合いなの?」「彼女達も参加するの? えっ~激戦じゃん」 ひそひそと内緒話をされる。オーディション以外は注目を浴びたくなかったので、余計に困ってしまった。 今回は普通のオーディションと違って、形式。あまり悪目立ちをしてしまうと、色々と疑われてしまう。 他人のふりがしたいと思っていると、眉間にシワを寄せて血相を変えた涼介が、こちらに向かってくる。そして春美に腕を強く握り締めた。「どうして、勝手に居なくなったんだ!?」「キャアッ!? 痛い」「お前が居なくなって、俺がどれだけ探したと思っているんだ!? それなのに、美優を陥れようとするとは」「はっ? 何を言っているのよ? とにかく離して」「いいから、帰るぞ!? ここは、お前のような人間が来るところではない」 何を思ったか、春美を無理やり連れ去ろうとする。必死に抵抗するが、強く握り締められているため外せない。 そうしたら幸村が、涼介の腕を掴んだ。「離してもらおうか? 彼女は、ウチの大切な事務所の子だ」 しかし涼介の表情がピクッと変わる。ギロッと幸村を睨みつけてきた。「はっ? 春美は、お前のところの子じゃない。それに俺の元婚約者だ」 何を言っているのか、自分でも分かっているのだろうか? 元婚約者なら、もう他人。 仕事も辞めているので、とやかく言われる筋合いはないはずだ。「元婚約者なら、なおさら関係ないだろう。それに退職もしているし、契約自体はウチのモデルで間違いはない」「はっ? 何だと!?」 涼介は幸村に掴みかかる。しかし幸村は冷静だった。それに慌てたのは星野美優だった。 春美に騒ぎを起こさせる気だったのに、涼介の方が騒ぎを起こしてしまった。しかも春美を元婚約者だと言ってしまう。これでは、自分の立場が悪くなってしまう。「涼介さん。もうやめて。皆が見ているわ」「うるさい」 怒りのあまり、腕を掴んでいた星野美優を振り払ってしまった。彼女は咄嗟に大げさに転んだ。そして目尻に涙を溜めながら、「ううっ……酷いわ。涼介さん」と、言いながら泣き出した。 それにハッと我に返った涼介は、慌てて星野美優を抱き締める。「美優、すまない。怪我はないか?」「美優はいいの……我慢すればいいだけだから。でも、こんなところ
최신 업데이트 : 2025-11-07 더 보기