二箇所のバイトと大学を毎日こなしていたから、体力には自信があった。 だからこそ思いっきり島を満喫すべく、穂高さんと一緒に船に乗せてもらったり、船長さんの口利きで漁協の倉庫で昼間のバイトさせてもらいつつ、空いた時間に大学のレポートをまとめてみたり康弘くんと遊んだりして、とても充実した日々を送っていた。 しかしながら気を遣ったり、慣れない生活を送っていたせいか、ちょっぴりだけ疲れが出てきたみたいだ。 コッソリため息をついて、玄関で名残惜しそうに胴長をいそいそ着込む、穂高さんを見やった。 朝早くに漁から帰り、食事をしてから寝ているんだと聞いていた彼の生活は、俺が来てから少し変わったと思われる。寝る時間を惜しむようにその――俺を抱いてばかりいるから、体は大丈夫なのかなって心配になった。「じゃあ、行ってくる。寂しくないかい?」「うん、大丈夫だよ。気をつけてね」「俺はこんなに寂しいのに、千秋は随分とあっさりしているな」 小首を傾げながら、俺の前髪に意味なく触れてくる。「だって寂しいって言ったら、余計に寂しくなるし……」 顎を引きつつ上目遣いで穂高さんを見たら、前髪を弄っていた手を後頭部に回してきて、強引に引き寄せた。そのまま、くちびるを塞がれるのかと思いきや――。「寂しい思いをさせてゴメン、すぐに帰ってきてあげるから」 ちゅっと額に、キスを落としてくれる。「穂高さん……」「そんな顔しないでくれ。帰ってからたくさん、そのくちびるにキスしてあげるからね」 くちゃくちゃと頭を撫でてから、振り切るように家から出て行った。「逆に気を遣わせちゃったな。しかも体調が大丈夫かどうか、声をかけ損ねてしまった」 キスされた額をそっと触れながら居間に戻る。穂高さんがいないだけで、だだっ広く感じるのはしょうがないのだけれど。「っ、はっくしょんっ!!」 薄ら寒く感じるのは、いつも傍にあるぬくもりがないから――あーあ、イヤになるなぁ。地元に帰ったら、きちんと生活していけるんだろうか。穂高さんなしの生活をしなきゃいけないのに、今からこんなんで大丈夫な気がしない。 鼻をすすりながら、Tシャツから出ている腕を擦ってしまった。夜になると昼間の熱気が、ウソみたいに気温が下がる。半袖しか持ってきてないから、対処のしようがないのがつらい。 クローゼットの代わりをしている押入
最終更新日 : 2025-10-24 続きを読む