*** その後、3人仲良く並んで漁協に顔を出した。 お父さんの顔を見た瞬間、倉庫の中にいた人たちは揃って固まってしまった。 その後、互いに顔を見合わせて何て声をかけたらいいか困っている様子に、大丈夫ですよと言おうとした俺の口を一瞬早く、穂高さんが大きな手で塞ぐ。「っ、ぷ!?」「いいから千秋。黙って見ているといい」 どこか楽しげに、くすくす笑いながら言う。 隣にいるお父さんを見ると、俺が最初に逢ったときと同じく何も言わずに一歩だけ前に出て、周りを見渡しているだけだった。誰が話しかけてくれるんだろうかと、ワクワクした感じにも見える。 その内、みんなに押された船長さんが、頭をバリバリ掻きながら照れくさそうに歩み出てきて、しげしげとお父さんを見上げた。「おい、井上。イタリア人って、英語が通じるのけ?」「はい。通じますので、遠慮せずにどうぞ」 船長さんのいつもの威勢はどこへやら。頭に巻いていたタオルを外して、それをぎゅっと握りしめながら、恐るおそるといった感じで口を開く。「えー……っと、なっ、ないすと、みぃーちゅーぅ! はーわーゆー? だっけか?」「はじめまして、いつも穂高がお世話になってます」「にゃっ!? 日本語が喋れるのけ? ひゃあー、おったまげたぁ。井上テメェ、はじめから日本語喋れるって、教えとけよ!」「穂高、この方どちら様なのですか?」「この人が俺のボスです。いろいろと丁寧に仕事の仕方を教わってます」 ニッコリ微笑みながら、説明した穂高さんだったのだが――。「こちらからご挨拶しなければならないのに、大変失礼致しました。息子がお世話になっております。いろいろと申し訳ございません!」「あ~、ええだ、ええだ。井上の不祥事は、いつものことだきゃらよ。そそっかしくて、目が離せない面白いヤツですわ」「何ということでしょう……。瑞穂のそそっかしい所を、受け継いでしまったのでしょうか。父親として何と弁解すればいいのか」 大きな体をこれでもかと小さくして、隣にいる穂高さんを睨んだお父さん。その目は、マジで怖かった。 そんな目で睨まれているというのに、飄々とした態度を崩さない穂高さんが、ある意味凄いというか何というか。当事者じゃない俺がハラハラしてるなんて、正直なところおかしな話だ。「ええがら、おとぉさんっ。頭を上げておくんなまし。それよか
最終更新日 : 2025-11-13 続きを読む