今回、静奈は自ら押し入れから予備の布団と枕を取り出し、ソファへと運んだ。彰人が部屋に戻ると、静奈がすでにソファで寝入っているのが目に入った。手のひらほどの小さな顔が、柔らかい枕に埋もれている。布団は、体のラインが分からないほど、きっちりと掛けられていた。彰人はわずかに面食らった。これまでは、自分がどれほど遅く帰ろうと、彼女はベッドで彼を待っていた。今日のように、自ら距離を置くのは初めてのことだった。ふと、陸が送りつけてきたあの写真を思い出す。他の男ができたから、急に自分と距離を取り始めたというわけか?静奈は、シャワーの音で目を覚ました。ぼんやりと目を開けると、彰人がゆったりとしたバスローブを羽織って、バスルームから出てくるのが見えた。帯は無造作に腰で結ばれ、鍛えられた胸筋と腹筋が覗き、妙な色気を放っている。静奈は視線を逸らし、寝返りを打ってもう一度眠ろうとした。頭上から、低く冷たい声が降ってきた。「お前に最後のチャンスをやろう。四年間、俺に『仕えた』免じて、法外な望みでなければ、何でもくれてやる」彰人の言葉が、静奈の胸を突き刺した。彼が言う『仕えた』とは、夜の相手をしたことか。彼は自分を何だと思っているのか。この四年間は、金で清算できるものだというのか。「何も要らないわ」静奈の声は低かったが、迷いはなかった。静奈の「物分かりの悪さ」に、彰人は苛立ちを覚えた。四年前、彼は彼女を抱いた。あの夜の薬が彼女の策略だったかはともかく、翌朝のシーツに広がっていた血は嘘ではなかった。あれは、彼女の初めてだったのだ。結婚生活の間、操られたことへの不満から、寝室では彼女を酷く扱った自覚がある。そのすべてを、金で清算してやろうと思ったのだ。だが、彼女の拒絶は、逆に彼の中に奇妙な負い目を生じさせた。彰人は冷たく言い放った。「これが最後のチャンスだ。よく考えろ。後になって後悔しても、もう遅いぞ」「後悔しない」静奈の答えは、ただそれだけだった。その淡々とした、それでいて確固とした態度は、まるで暖簾に腕押しのような、手応えのない無力感を彼に与えた。「明日の朝九時、市役所だ。絶対に遅れるな。それから、一つ忠告しておく。俺たちが離婚届を出すその瞬間まで、お前は俺の妻だ。二
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