写真には彰人の手が彼女の腹部に当てられている様子が写っていた。彼が伏せたその目元は暖かい光の下で、格別優しげに見える。静奈がナイトウェアに着替え、ベッドに入ろうとした、まさにその時だった。携帯が一度震えた。画面を開くと、そこには一枚の、見る者に二人の親密さを伝えるような写真が表示されていた。静奈の指が瞬時に空中で止まった。結婚して四年、あれほど尽くしても心を動かせなかった男が、沙彩にはこれほどまでに優しいのだ。すぐに二通目のメッセージがポップアップした。【ごめん、送る相手間違えちゃった〜】語尾の波線が、見え透いた嘘を物語っていた。静奈は深く息を吸い、携帯を置いた。視線がベッドサイドの軟膏に落ちる。彼女はためらうことなく、それをゴミ箱に投げ捨てた。これまで散々傷つけられてきたのだ。たまに差し出される優しさなど、偽善的で、吐き気を催させるだけだった。静奈はベッドサイドのランプを消し、布団の中に潜り込んだ。翌朝。静奈と昭彦がエレベーターホールで待っていた。チーンという音と共にドアが開くと、中には、彰人、沙彩、そして陸が立っていた。空気が瞬時に凍りついた。昭彦がそっと静奈の袖を引いた。「次のに乗ろう」沙彩は彰人の腕に絡みつき、意地の悪い笑みを浮かべた。「乗らないなら、先に行くわよ」静奈はバッグのストラップを固く握りしめ、エレベーターへと足を踏み入れた。やましいことなど何もないのに、なぜ自分が避けなければならないのか。昭彦もその様子を見て、すぐに彼女の後に続いた。閉鎖された空間。五人の距離は近い。静奈は彰人から香る、嗅ぎ慣れたシダーウッドの匂いを感じた。「彰人さん」沙彩が不意に口を開いた。「昨日は、夜遅くまで看病してくれてありがとう。おかげで、今日はすっかり良くなったわ」彰人は短く答えた。「ああ」静奈はエレベーターの階数表示を、無表情で見つめていた。昭彦がさりげなく彼女のそばに寄り、彼女を守るかのような立ち位置を取った。隅に立つ陸の視線が、四人の間を行ったり来たりする。どうにも、自分だけが場違いな部外者のように感じられた。ホテルのロビー。支配人が通りかかると、清掃ワゴンのゴミ箱に、新品の火傷薬が捨てられているのが目に入った。彼は眉をひそめ、それを拾い
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