「……俺の父さんもなかなかのもんだと思っていたけど、佐伯さんのところも、けっこう……」「君のお父さんは、進学については、なんて?」「大学のランクについては、興味ないんですよ。あるのは、俺が大学生という身分を手に入れて、春にこっちに来ることだけ」 何かありそうだなと思ったが、ハンドルを握る綾瀬の部下にすべて聞かれているため、迂闊に探りを入れられない。 ただ、会話を交わしながら、新鮮な感覚を味わっていた。和彦の周囲には、千尋を含めて若者がいることはいるのだが、組と関わりを持つ堅気とは言いがたい若者が大半だ。しかし玲は、父親がヤクザではあるものの、本人は荒んだ様子もなく、ごく普通の高校生だ。こうして進学について話せるだけでも、和彦にとってはある意味、非日常の体験だった。「だったらもう、来るのは確定みたいなものだ」「それでも、多少はハッタリのきくようなところには行きたいですよ。将来、あの父親を、俺が食わせなきゃいけなくなるかもしれませんから」「あー、じゃあ、一人っ子?」「認知されたのは俺だけのようだから、多分、そうです」 和彦が複雑な表情をすると、横目にちらりと見た玲が口元を緩める。「こういう話、多いでしょう。この世界。男の甲斐性とか言って」「――……そうなんですか?」 返事に困った和彦が、ハンドルを握る綾瀬の部下に尋ねると、なぜか玲が噴き出した。「おもしろいですね、佐伯さん」 そうかな、と小声で応じる。 他愛ない会話を交わしているうちに、いくらか車中の空気が和んだ頃に、目的地の近くまでくる。 大学の周囲を歩いてみるかと言ってみたが、それは合格してからの楽しみにしておきますと答えられた。その代わり、次の目的地をリクエストされる。「ちょっと、服を見たいです。なんだったら、俺だけ適当な場所で降ろしてもらえたら、一人で店を回るんで」「いいよ。一緒に行こう。実は買い物好きなんだ」 和彦の言葉に、玲は大まじめな顔で忠告してきた。「値段が高いところはダメっすよ。
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