「俺、ずっと触れてみたかったんです。オンナに。あの父さんが臆面もなく、『惚れていた』と言い切っていたのは、御堂さんというオンナでした。俺は、俺の想像の中にいたオンナにずっと触れたかった――」 玲が本気で言っていることは、向けられる眼差しや表情を見ていればわかる。だからこそ和彦は、困惑する。 ため息をつくと、玲との間に一人分のスペースを空けて座り直し、苦々しい口調で諭した。「やっぱり君は、毒されたんだ。ぼくも含めた、悪い男たちが放つ毒気に……。あと半年ちょっとで、楽しい大学生活を始めて、人間関係だってどんどん広がっていく。そうしたら、本当にキスしたいと思う相手にも出会える。そのときになって、血迷って三十男にあんなことするんじゃなかったと後悔するはずだ」「しません」 この頑固さは子供特有のものなのだろうかと、和彦は腹が立つより、微笑ましさを感じる。つい口元が緩みそうになったが、それどころではないと、なんとか表情を引き締める。「――……ぼくは、君の想像の中にいるオンナじゃない。現実に存在していて、怖い男たちと寝ているし、守ってもらっている。お互い厄介な立場にいるし、何より高校生の君と関わりを持つのは、面倒だ」 玲が顔を伏せたので、言い過ぎただろうかと内心気が気でなかったが、いかにも健やかに育ってきた玲の将来を思うと、これでいいのだと和彦は自分に言い聞かせる。 このとき脳裏を過ぎったのは、鷹津の存在だった。あの男は、健やかとは対極にいる存在ではあったが、和彦と深い関わりを持ったことで、結果として警察官という身分を失った。何もかも自分のせいだというのは傲慢な自惚れになるかもしれないが、それでも、高校生の将来を慮ることぐらいは許されるはずだ。「……また、つらそうな顔していますね」 黙り込んだ和彦が気になったのか、顔を上げた玲に指摘される。和彦は眉間にシワを寄せると、玲の肩を軽く小突いた。「気分がマシになったんなら、もう少しだけ奥に行ってみようか。せっかく入園料を払ったんだし」 頷いた玲とともに橋のほうへと戻ると、ずっと待っていたらしい、綾瀬の部下が
Read more