困惑する和彦にかまわず、御堂は慣れた様子で大きなカートを押してくると、こちらに手招きをして歩き始める。和彦としてはおとなしくついていくしかない。「昨夜、賢吾にちょっと用があって電話したとき、ポロッと洩らしたんだよ。買い物に出かけると。そうしたら、うちの先生は買い物好きで、いい気晴らしになるかもしれないから同行させていいかと言われたんだ。……普段は抜け目ない男なのに、こっちが何を買いに行くかも聞かずにそんなこと言い出したものだから、おかしくてね。嫌とは言えないよ」「……すみません」「わたしとしては、うちの隊員以外の同行者は嬉しいけど、むしろ、君にとっては退屈な時間になるかもしれない。まあ、覚悟しておいてくれ」「それは大丈夫です。ホームセンターに来ることなんてないので、商品を眺めているだけでも楽しそうで」「わたしは、最近は足が遠ざかっていたんだけど、部屋に一人でいるとなんだか手持ち無沙汰で。それで、また始めてみようと思ったんだ」 軽やかにカートを走らせて向かった先は、出入り口横に設けられた園芸コーナーだった。変わった形のプランターに和彦が気を取られている間にも、御堂はどんどん先を歩いていき、慌てて追いかける。 ようやく足が止まったのは、たくさんの花苗や鉢が並んだ一画だった。「前に住んでいた家に庭がついていたから、暇つぶしと体力作りのつもりであれこれ花を育ててたんだ。今はマンション暮らしになったけど、ベランダが広くて殺風景なのが気になってね。それで――」 そう説明しながら、御堂はじっくりと花苗を眺めている。和彦は、そんな御堂の横顔を眺めていたが、ふと気になって振り返ると、さすがにこんな場所では目立つと考えたらしく、少し離れた場所に護衛が二人だけ立っていた。「ずいぶん物々しいと思ったかもしれないけど、護衛というより、荷物持ちのために連れてきたようなものだよ。苗だけじゃなく、土も肥料も、大きな鉢も買って帰るつもりだからね、今日は」「……花を育てるための準備って大変なんですね。ぼくはせいぜい、人に世話してもらっている鉢に、水をやっているぐらいで」
Terakhir Diperbarui : 2026-08-03 Baca selengkapnya