二人分の精で汚れた和彦の下腹部を見下ろし、ぽつりと南郷が洩らす。和彦のほうは呼吸を整えるのが精一杯で、自分の姿を気にかける余裕はない。 南郷は、自分が脱ぎ捨てたワイシャツを掴み寄せると、惜しげもなく和彦の下腹部を拭き始めた。一瞬戸惑いはしたものの、少し前まで確かにあった屈辱や羞恥という感情は、虚脱感によって踏み潰されてしまった。 傲慢に振る舞われた意趣返しというわけではないが、後始末は南郷に任せることにする。「暑い……」 いまさら暖房の効きが気になり、つい声が洩れる。眉を跳ね上げて反応した南郷が、くっくと喉を鳴らした。「そりゃあ、あれだけ燃え上がればな」 腕を伸ばした南郷がスウェットのトレーナーを取り上げ、和彦は漫然とその様子を目で追う。太い首から胸元にかけて幾筋もの汗が伝い落ち、身じろいだ拍子に、脇腹に差した影も視界に入ってドキリとする。 汗が、百足も濡らしていた。ゾクリとするような生気を帯び、ますます艶が増している。総毛立つほど気味が悪いと感じる一方で、どこかで心惹かれるものがあると、この瞬間、和彦は認める。 それと同時に、南郷の脇腹に向かって手を伸ばしていた。 意識しないまま取った自分の行動に驚いた和彦だが、一方の南郷も、何事かと怪訝そうに眉をひそめる。だが、すぐに和彦の行動の意味を察したようだった。 伸ばしかけていた手を取られ、また脇腹へと導かれる。和彦は自分から指先を這わせていた。そんな和彦を、南郷は興味深そうに見下ろす。「――ほらな、あんたは刺青と相性がいい。それとも、俺と相性がいいのかな」 そう言って南郷が顔を寄せ、ベロリと目元を舐めてくる。その拍子に、ムッとするような雄の匂いが強く漂い、眩暈に襲われる。 心も体も疲れきっているというのに、それでもまだ胸の奥から湧き起こる淫らな衝動に、和彦は、南郷でも百足でもなく、自分自身を恐ろしいと感じた。**** ウトウトしていた和彦は、急に肩を揺すられて目を開く。南郷に見下ろされていると知り、慌てて起き上がろうとしたが、狭い折り畳みベッドの上だと
Last Updated : 2026-07-30 Read more