「あの男、鍛えることに関してはスパルタだ。毎日嫌になるほど地面に転がされた」「体を鍛えて、先生自身に戦ってほしいわけじゃないだろう。いざというとき、動じず、怯まない気持ちを持ってくれたらと願ってたはずだ。結局のところ、いくら取っ組み合いが強かろうが、ヤクザの場合、拳銃を使ったほうが話が早いからな」「……身も蓋もない」「だが、それが俺たちのいる世界だ。――先生も戻ってきてくれた」 そう、自分は戻ってきたのだ。 その事実を改めてかみしめていた和彦の耳に、にぎやかな犬の鳴き声が届く。何かと思って見てみれば、柵で囲った芝生で、犬たちが元気よく駆け回っていた。 ドッグランまであるのかと、ついふらふらとそちらのほうに歩み出そうとして、ハッとして三田村を振り返る。優しい目で頷かれた。「――和泉の家には、猫が何匹もいたんだ。もしかすると、まだ会ってない子がいたかもしれない。人懐こいというのとは違って、なんだか客のあしらい方が上手い猫ばかりだったな。ぼくに撫でさせてくれたかと思ったら、すぐにスルッとどこかに行ってしまって。……あと、冬の間生活してたところは山奥だったから、たまに野ウサギとかイノシシを見かけたし、野鳥観察もしてたんだ」 そんな話をしながら、二人で柵の側に立つ。元気に駆け回る犬ばかりではなく、芝生の隅に所在なさげに佇んでいたり、他の犬に一方的にじゃれつく犬もいて、個性が出ている。眺めているだけで楽しくて目を細めていると、三田村がこう提案してきた。「組長に頼めば、マンションでペットを飼えるんじゃないか。先生、動物が好きだろう」「……ぼく程度で動物好きなんて名乗ったら、本物の動物好きに叱られるな」 走り回っていた大型犬が、何が気になるのか二人の側まで寄ってきて愛嬌を振りまいてくれる。人懐こい大型犬にも心惹かれるものがあるが、この大きさで飛びつかれては自分ならひっくり返るだろうなと、一人で納得した和彦は、三田村を促してドッグランを離れる。「別に、一人でいて寂しいというわけじゃないから。賢吾もそれを気にしてたのか、いつだったか、猫を飼ったらどうだと言
Terakhir Diperbarui : 2026-09-18 Baca selengkapnya