ここまで言われて、今度は和彦は苦笑いをする。俊哉は、長嶺賢吾という男を、本性を見せなければならないほどの存在だと認めたということなのだろう。守光に対抗しうると賢吾が判断されていなければ、即座に話し合いは打ち切られていたはずだし、和彦を長嶺の本宅に預けるという結論には至らなかったはずだ。「……難解な人なんだ。でも義理堅いとは思う。一度した取り決めは、守るはずだ」「義理堅い、か。それがつまり、お前が実家にも顔を出したいという根拠になるのか?」「和泉の家に行って、いろいろわかったことがある。それを踏まえて、家族とまた話がしたいんだ。……向こうが、ぼくを家族と認めてくれるなら、だけど」 悲しいことを言うなと、賢吾に手荒く頭を撫でられた。「わかった。お前がやりたいようにすればいい。ただし、行動するなら、事前に予定を知らせろ。それは絶対だ」「――……実は、和泉の家で紹介された人からも、会社に一度来てほしいと言われてて……」 賢吾が大仰に眉を動かす。「ずいぶん交友関係が広がったな」「自分でもびっくりしている」「和泉家と繋がるというのは、そういうことだろうな。佐伯家は、官僚として特殊な世界で力を振るってきた一族で、一方の和泉家は、ある意味対照的だ。調査書類を読んだだけだが、昔から手広く商売をやって成功してきたらしいな」「おばあ様の話だと、その商売を畳んだりしたみたいだけど」「和泉家が今扱っているものは、一つだけだと言っていい。だがその一つが、強力だ」 実のところ、和彦はまだ和泉家というものを把握しきれていない。広大ではあるものの、周囲を田畑に囲まれた土地に老夫婦が静かに暮らしている様子をこの目で見てきた。だが、総子から渡された、和彦に譲るという財産目録はあまりに凄まじかった。そこに、和泉家が持つ力の一端を見た気がしたのだ。「和泉の家に厭われると――……」 ふっと、俊哉に電話越しに言われた言葉が口を突いて出る。訝しむように賢吾がこちらを見たので、なんでもないと和
Last Updated : 2026-09-14 Read more