多少の雨を浴びながら守光についていくと、驚いたことに東屋があった。これでは本当に公園だ。 守光に勧められてイスに腰掛ける。正面には、雪が積もっているのかと錯覚するほど、枝先にたくさんの白く小さな花をつけた低木が並んでいた。鼻先を掠めるのは雨の匂いと、控えめな甘い香りだ。「少なくとも一時は、わしと佐伯は共犯関係だった。代々受け継いだものを否応なく背負わされて、足掻いている二人だからこそ、佐伯はわしを頼ったし、わしは佐伯に使われた。官僚とはいえ当時は権力なんぞまったく持っていない若造のくせに、奴は居丈高だった。わしには、新鮮だったよ」 俊哉から聞かされた守光との関係は、利害でのみ繋がっているドライなもので、友誼めいたものなどなかったように思えたが、守光の語り口からは、仄かな熱情のようなものを感じる。「あなたと父は、本当にそれだけの関係だったのですか? 友人……というのは、父に否定されました」 守光は、雨音に紛れるような密やかな笑い声を洩らした。「……あんたにだから打ち明けよう。大昔、まだ組長だったわしの父親が、佐伯に目をつけた。政治に絡んだ旨みは好きだが、面倒事はとにかく嫌いな男で、後始末はわしの仕事だった。ある政治家から、佐伯の抱えた問題を処理してほしいと頼まれたとき、当然のようにわしが任された。それが佐伯とのつき合いの始まりだったことは、前にあんたに話したと思う。わしの父親は、佐伯の将来性を特別なものだと思ったようだ。極道らしい方法で、佐伯家そのものに接近しようとして、わしは、それは上手い方法ではないと説得したんだが、残念ながら聞き入れる度量のある男ではなかった。ただ、実行に移す前に、死んでしまったのは、幸いだったな。佐伯にとっても、わしにとっても」『追い落とした』と俊哉には語っていたという、守光の父親の死だ。これが事実なら、守光は実の父親から、俊哉を守ったことになる。 和彦がゆっくりと目を見開くと、守光は正面の白い花を見つめたまま薄く笑んだ。雨で冷えたのか、強い寒気がした。「自分で自分に驚いたよ。家のため、組のためという理由以外で、わしが行動を起こせたことに。――ぬるい感情からではない。佐伯俊哉
Last Updated : 2026-09-24 Read more