危うく身を乗り出しそうになった。和彦はアイスティーを一口飲むと、慎重に周囲を見回す。護衛たちは席が取れなかったらしく、少し離れた場所で立ったまま紙コップに口をつけている。「たまたま、か?」「たまたまです。買い物の最中にちょうど連絡があって。あの人も忙しいらしくて、手が足りないときはわたしを頼ってくるんですよ。急ぎだというので、こうして返事をしてるんです」「忙しいって……、無事ということでいいのか?」「今のところ誰もあの人に手を出せません。先生のお父さんが、各方面に釘を刺されたそうですね」「……まだ使い道があるようだ。元悪徳刑事を駒にしようと考えるのは、ぼくの父親ぐらいだろうな」「似ているんじゃないですか。父子で」 皮肉かと思いきや、こちらを見つめる秦の眼差しは優しい。差し出されたフライドポテトを和彦も一個摘まみ上げる。「先生が、鷹津さんと一緒に姿を消したと聞いたとき、わたしが何を最初に考えたかわかりますか?」「鷹津と友人なのを後悔した」 秦はあっさり首を横に振る。「先生と鷹津さんの偽造パスポートを準備しようかと考えたんですよ。写真はどこで入手しようか。送り出す国はどこにしようか。どの業者に偽造を頼もうか――。まあ、あれこれと」 胡散臭いが、品のよさも感じさせる男は、和彦が想像もつかない修羅場を潜り抜けている。前に少しだけ生い立ちを聞いたことがあるが、生まれた国から逃げてきたらしく、他人に国を捨てさせることにも抵抗がないのかもしれない。「鷹津さんから連絡があって、その計画はとめましたけどね」「よかったよ……。ぼくは、何もかも捨てる覚悟なんてつかなかっただろうから」「本当に?」 和彦は曖昧な返事をしておく。「――鷹津さんからの伝言ですが、無茶はせずに待っていろ、とのことです」「待っていろ……」「あの人、各方面にケンカを売っておきながら、戻ってくる気満々ですよ。またわたしは、酒を集られるんでしょうね」 口ではそうぼやく
Huling Na-update : 2026-09-28 Magbasa pa