Home / BL / 血と束縛と / Kabanata 581 - Kabanata 590

Lahat ng Kabanata ng 血と束縛と: Kabanata 581 - Kabanata 590

952 Kabanata

第15話(34)

「あっ……、はあぁっ」「もっと感じたいなら、また裸にひん剥いてやろうか? それこそ、全身を舐め回してやるぜ。好きだろ、舐められるの」 そんなことを言いながら、鷹津の片手がワイシャツの下に入り込もうとする。和彦は懸命にその手を押し返した。「時間が、ないんだっ……。もう、ロビーに下りないと――」「組員なんて、待たせておけばいいだろ」「あんたと違って、こっちは予定がある」「……組長のオンナは、忙しいことだな」 和彦が睨みつけると、鷹津は鼻先で笑う。上体を起こして和彦の両足を抱え直すと、衰えることのない力強い律動を内奥で刻み始めた。和彦は甲高い声を上げ、仰け反りながら頭上のクッションを握り締める。 鷹津と体がドロドロになるほど求め合ったあと、和彦はシャワーを浴びる時間も惜しくて、手早く後始末だけを済ませてスーツを着込んだのだが、その姿が鷹津の何かを刺激したらしい。再びベッドに引っ張り込まれて下肢だけを剥かれ、貫かれた。 内奥で、興奮した鷹津のものが脈打っている。その逞しいもので突き上げられるたびに、和彦の体は悦びに震える。「あっ、あっ、いっ、い、ぃ……」「本当に、ムカつくぐらい、快感に脆い体だな。ここなんて、涎を垂らしっぱなしだ」 身を起こして震える和彦のものに鷹津の手がかかり、先端をヌルヌルと撫でられる。鋭い快感に息を詰めると、鷹津が乱暴に腰を突き上げた。「あうっ」 先端に爪を立てて弄られ、和彦は身をしならせながら嬌声を上げ、再び内奥を突き上げられて、精を噴き上げた。 鷹津が楽しげに目を細めてから、ゆっくりと腰を動かし始める。その動きはすぐに余裕のないものとなり、察するものがあった和彦は、なんとか声を上げる。「中は、嫌だっ……」「いまさら何言ってる。さっき出しただろ」「すぐに部屋を出ないと行けないんだ」 聞く気があるのかないのか、鷹津は返事をしない。和彦は熱い体の下から抜け出そうとしたが、もちろんそれは不
Magbasa pa

第15話(35)

 不思議な感じだった。一昨日、三田村と求め合って体を重ねたばかりの自分が、〈嫌な男〉そのものの鷹津と、今はこうして繋がっている。反発心や嫌悪感もねじ伏せて、感じているのだ。「――……嫌な、男だ……」 ぽつりと和彦が呟くと、鷹津はニヤリと笑う。「俺にとっては褒め言葉だな」「ぼくは本気で言ってるんだ」「ああ、そうだな」 鷹津に唇を啄まれ、促されるまま差し出した舌をきつく吸ってもらう。律動の激しさに、たまらず和彦は鷹津にしがみついていた。 鷹津が一際大きく腰を突き上げた次の瞬間、内奥から一気に熱いものが引き抜かれる。下腹部に生温かな液体が飛び散る感触があり、何が起こったのか和彦は理解した。 大きく息を吐き出しながら、突然快感が去った余韻でビクビクと震える体を、鷹津に抱き締めてもらう。「……一応、ぼくの意見を聞く耳はあるんだな」 奇妙な羞恥が湧き起こり、それを誤魔化すように和彦が言うと、耳元で鷹津が笑った。「俺だって、お前に嫌われたくないからな」 この言葉は、鷹津なりの冗談として受け止めておくことにする。 緩慢な動きで体を離した鷹津が、ティッシュペーパーで下肢の汚れを拭ってくれる。和彦はその間、仰向けになったまま動けなかった。体中の力を、奪い取られたようだ。 それでも、組員からかかってきた電話に出たあとは、機械的に体を起こして身支度を整える。鷹津は、煙草に火をつけていた。「俺はもう少しここでサボらせてもらう」「部屋代を支払ったのはあんただから、ご自由に」「あとで請求書は、長嶺に回してやる」 ジャケットを羽織った和彦は、なんとも鷹津らしい言葉に思わず声を洩らして笑ってしまう。すると、意外そうな顔で鷹津がこちらを見ていた。和彦は急に気恥ずかしさに襲われ、マフラーとコートを取り上げると、半ば逃げるように部屋を出た。** 自宅に戻ったらすぐにシャワーを浴びるつもりだったが、疲れ果てた和彦は、一度ソファに腰掛けると、なかなか立つきっかけ
Magbasa pa

第15話(36)

 偶然、賢吾がこの場に現れたということはない。和彦の行動を逐次、組員から報告させていれば、こうやってタイミングよく現れるのは容易だ。おそらく、今日一日、和彦が何をしていたか、すべて把握しているだろう。 その証拠に、賢吾は開口一番にこう尋ねてきた。「――鷹津はなんと言っていた?」 心臓がじわじわと締め上げられるような息苦しさを覚え、和彦は短く息を吐き出す。賢吾は目の前に立っているが、見えない大蛇は、しっかりと和彦の体に巻きついていた。「実家の、ことで……。兄が、国政選挙に出馬するかもしれない、という話だ」「落ちぶれても、刑事だな。そういう情報を仕入れてくるってことは。俺の可愛いオンナを喜ばせようと思って、あいつもがんばったのかもな」 おもしろがるような賢吾の口調にわずかな反感を覚え、和彦は軽く睨みつける。しかし、口調とは裏腹に、賢吾は何事か考え込む表情をしていた。和彦と目が合うと、薄い笑みを向けてくる。「どう思う、先生?」「どうって……」「もし仮に、選挙云々という話が事実だとして、佐伯家が先生を捜す理由は何が思い当たる? 弟に、兄の出馬のことを伝えたいだけなのか、兄の輝かしい将来のために、連絡も寄越さない弟の身辺調査をしたいのか。単に、行方知れずの弟を心配しているだけかも――」「わからないっ」 思わず大きな声を出した和彦はすぐに我に返り、唇を噛む。 本当に、わからないのだ。佐伯家の人間の考えることは、和彦にはわからない。和彦は常に、父親が決めたことを押し付けられ、それに逆らうことは許されない生活を送ってきた。実家を出て何年も経つというのに、いまさら、あの家の思惑に振り回される気はなかった。「……兄が国会議員になろうが、なんだろうが、勝手にすればいい。ぼくには関係ない」「先生がそのつもりでも、佐伯家はどうだろうな」 和彦がすがるように見つめると、賢吾は大仰に肩をすくめる。「年が明けたら、佐伯英俊の動向を集中的に探らせる。出馬する気があるなら、嫌でも利害関係者は動くし、勤務先でも、何かしら動きが
Magbasa pa

第15話(37)

**** 実家に住んでいる頃、和彦にとっての年末年始は、とにかく息苦しいものだった。大勢の大人が出入りして、そのたびに和彦と兄は引っ張り出され、堅苦しい挨拶を繰り返していた。 子供心に楽しい思い出はなく、高校生の頃には、予備校の合宿のため、大晦日も正月も実家にはいなかった。 もっとも、その合宿を申し込んだのは、母親だったが――。 和彦が年末年始を楽しむ術を知ったのは、医者になってからだ。一人でふらふらと出歩いたり、そのときつき合っている〈男〉がいれば、ともに旅行に出かけたり。 ただ、誰かの家で過ごすということだけは、なかった。そうやって過ごすのは退屈だと、意識に刷り込まれていたのかもしれない。 ダイニングのテーブルに肘をつき、子供の頃の無味乾燥な思い出に浸りながらも、和彦の視線は忙しくあちこちに動いていた。 そんな和彦の様子が、組員にとってはおもしろいらしい。組員に、笑いながら話しかけられる。「――先生、さっきからずっと眺めてますけど、楽しいですか?」 目の前にお茶が出され、礼を言った和彦は、湯飲みの縁に指先を這わせる。「楽しい。大きな図体の男たちが、甲斐甲斐しくキッチンを行き来して、おせち料理を作っているんだ。なんだか、見ているだけでワクワクしてくる」「うちの組では、おせちは二種類あるんです。料亭に頼む分と、こうして賄い係が総出で作る分が。料亭のおせちは、客人に振る舞うんですが、ここで作ったおせちは、組員たちで食べます。長嶺組のしきたり、というやつです」「いいんじゃないか。そういうのは……、好きだ」「今晩の年越しそばも期待してください。今、ダシを取っているところなんです。下手なそば屋より美味いですよ」 楽しみだ、と答えて、和彦は声を洩らして笑ってしまう。 大晦日の朝早くから長嶺の本宅はにぎやかで、客間にいても人の足音や話し声が聞こえてきた。年末の浮き足立つような空気に、和彦のほうもなんとなくソワソワしており、こうして朝からダイニングに居座って作業を眺めていたというわけだ。 ここで朝食も済ませ
Magbasa pa

第15話(38)

 あちこちにドロリとした闇が潜み、いつ深い穴に転がり落ちても不思議ではない物騒な世界だが、人間同士の結束が固く、利害が絡んでいるにしても、和彦を大事に守ってくれるこの場所は、居心地がいい。 いつまでここで過ごせるのだろうか――。ふっとそんなことを考えてしまい、和彦は小さく身震いする。そう考えることが、ひどく不吉であると思ったのだ。 今はただ無邪気に、年越しを控えた熱っぽい高揚感に浸っていたい。 つい難しい顔になってしまいそうになるが、そんな和彦に組員が、作りたての伊達巻を味見させてくれる。 次は栗きんとんを食べてみますかと話しかけられていると、一人の組員がダイニングにやってきた。賢吾が呼んでいると言われ、和彦は席を立つ。 案内されたのは、大広間だった。普段は使われない座敷があるのは知っていたが、足を運ぶのは初めてだ。いくら寛ぐことを許されている和彦とはいえ、長嶺組組長の本宅だ。ヤクザの領域ともいえる場所を歩き回るのは、さすがに気後れするし、やはり組員たちに遠慮もしてしまう。そのため、この本宅での和彦の行動範囲は、案外狭く、限られていた。 障子を開け放っている大広間に足を踏み入れると、新しい畳特有の匂いが鼻先を掠める。広々とした座敷で、壁は白い布で覆われていた。ゆっくりと座敷を見回した和彦が最後に視線を向けたのは、上座だ。 こちらに背を向けて、黒のスラックスにワイシャツ姿の賢吾が立っていた。スッと背筋を伸ばしている後ろ姿は、それだけで圧倒的な存在感を放ち、凄みがある。ワイシャツの下には、禍々しくも艶やかな大蛇が息づいているのだと思うと、和彦は静かに息を呑むしかない。 ふいに賢吾が振り返り、手招きしてくる。和彦は吸い寄せられるように歩み寄った。「……何か、用か」「先生に、祭壇作りを手伝ってもらおうと思ってな」「祭壇?」「昼から、うちの組の若頭補佐以上の者や、親睦組織の幹部連中が集まって、同志会を行う。まあ簡単に言うなら、今年の総括をやって、来年もよろしく頼むと、俺が挨拶するんだ。そういう儀式のとき、祭壇は必須だ。組長の上にいるのは神だけ――という形式を取るために」
Magbasa pa

第15話(39)

 不遜だ、というのは簡単だが、ヤクザの世界にハッタリは必要だ。それがわかったうえで、男たちはしきたりを守っているのだ。 上座の壁には、三軸の掛け軸が掛けられている。そこに描かれているのが、賢吾の言う神なのだろう。物の良し悪しの判断は和彦にはできないが、掛け軸をかけてあるだけだというのに、大広間の空気がピリッと引き締まって感じる。「手伝うのはかまわないが……、組員でもないぼくが手を出していいのか?」「ヤクザの手に比べたら、先生の手なんざ、まっさらの絹布みたいにきれいだろ。うちの組の守り神さんも、先生に手伝ってもらうほうが喜びそうだ。大した仕事じゃない。ただ、運ばれてくる品物を、上座に並べていくだけだ」 そういうことならと、和彦は頷き、賢吾とともに祭壇作りを始める。 神酒に徳利・盃、盛り塩を配していると、見事な大皿が運び込まれてきたが、この皿にはあとで鯛を置くそうだ。 年末の同志会の場合、大広間の飾りつけは仰々しくはあっても派手ではいけない。だが、年が明けると様相は一変する。今度は組員たちとの新年会のために、壁に屏風が並び、新年用の華やかな飾りや献納品が上座を彩る。そんな説明を賢吾から受けている間に、組員たちが大広間に座布団を並べていく。「昼前には、強面の男たちがぞろぞろやってくるから、そいつらに物珍しさで詮索されたくなかったら、先生は二階に避難しておいていいぞ。俺も打ち合わせや着替えがあるから、相手をしてやれないしな」「……ぼくは一人遊びもできない子供かっ」 和彦が声を潜めて抗議すると、賢吾は意味ありげにニヤニヤと笑う。これが、寸前までヤクザのしきたりについて語っていた男の顔かと思うほど、見事な変わり様だ。「夕方まで、ゆっくり過ごせばいい。ただし、外には出るなよ。同志会を警戒して、警官がうじゃうじゃ張り込んでいるからな。本宅の空気もピリピリする。だがそれも、夕方までだ。あとは内輪で大宴会だ。先生ももちろん、参加しろよ。――三田村も顔を出すからな」 反応を見られていると知り、和彦はつい険しい視線を賢吾に向ける。「ぼくを試すような物言いは、好きじゃない」「大
Magbasa pa

第15話(40)

 和彦の虚勢など見抜いているのか、賢吾はわずかに目を細めると、もう行っていいと軽く手を振った。助かったとばかりに和彦は、急いで大広間をあとにした。 賢吾の言葉通り、夕方までは二階に上がって過ごす。 これまでの忙しさとは打って変わって、非常に静かな――退屈な時間だ。そもそも、これが本来の過ごし方であり、いままでが異常だったのかもしれない。本宅に泊まり込んで数日経つが、客間で休むとき以外は常に側に人がいた。 ただ、普段であれば和彦にまとわりついてくる千尋は、総和会の行事のために、和彦が本宅にやってきたのと入れ違いで、祖父宅に泊まり込んでいる。さすがに今日は帰ってくるらしいが、何時になるかは不明だ。 一階からときおり聞こえてくる、男たちの野太い声や、拍手の音に、同志会とはどんなものなのか気になりつつも、和彦はあることを考えていた。 兄である英俊の、国政選挙出馬の噂についてだ。事実かどうかは、家族なのだから電話をかけて確認すればいいのだが、ヤクザとはまた違う、一癖も二癖もある佐伯家の人間が素直に話してくれるとも思えない。 自分のことさえ放っておいてくれるなら、英俊が政治家になろうが、官僚として出世しようが、和彦にはどうでもいい。むしろ、こうしてヤクザの組長の〈オンナ〉になった今、放っておいてくれるほうがありがたい。 ひとまず、なんらかの防衛策を取るなら、年が明け、賢吾が佐伯家の情報を集めてくれてからだ。 実家のことを考えるだけで気分が滅入りそうになるが、絶妙のタイミングで組員が和彦を呼びにくる。 みんな揃ったので、晩メシにしましょうと。 なんだか救われた気持ちになり、和彦はいそいそと立ち上がった。** 人の熱気にあてられたのか、のぼせているようだった。それに、軽く酔っている。 和彦は火照った頬を軽く擦り、ほっと息を吐く。夜の外気は凍えるほど冷たく、吐き出した息が白く染まる。ただ、澄み切った空気を感じるのは、心地よかった。 中庭に置かれたテーブルに一人ついた和彦は、ゆっくりと周囲を見回す。少し前まで、一階のあちこちから、にぎやかな話し声が聞こえてきて、頻繁に人が出入りしていたのだが
Magbasa pa

第15話(41)

 どれだけ宴会が盛り上がろうが、組長宅に遅くまで留まるのははばかられるし、何より、年が明ける瞬間は、自宅で、もしくは家族と一緒に迎えたいのかもしれない。「――この家なら、部屋にいても除夜の鐘は聞こえるはずだ、先生」 引き戸を開ける音に続いて、低く抑えたハスキーボイスが語りかけてくる。ハッとして和彦が視線を向けた先では、コートを腕にかけたダークスーツ姿の三田村が立っていた。「いつまでもこんな寒いところにいたら、風邪を引く」 三田村に片手を差し出され、自然に笑みがこぼれる。すぐに立ち上がった和彦は、三田村の元に歩み寄った。「夕飯のあと、姿が見えなくなったから、もう帰ったのかと思った」「別室で、他の補佐たちと連絡会をやっていた。年末だけは、組長の本宅で酒を飲みながらやるんだ」「しきたり、か?」「みたいなものだな」 サンダルを脱いだ和彦は、三田村に手を引かれるまま廊下に上がる。このとき、何かに気づいたのか、三田村にきつく指先を握られた。「三田村?」「指が冷たくなってる」「ああ、これから風呂に入って温まる。それからお酒でも飲みながら、のんびりと除夜の鐘が鳴るのを待つんだ」 優しい目となった三田村が、周囲の様子をうかがってから、そっと和彦の髪に触れてくる。このときジャケットの袖口から、和彦がプレゼントしたカフスボタンがちらりと覗いた。 実は、大広間でみんなで夕食をとったときに気づいていたのだが、三田村との席が離れていたため、確信が持てなかったのだ。こうして改めて見て、やはりプレゼントしてよかったと思う。 すぐに二人は微妙な距離を取り、廊下を歩きながら話す。「先生、大勢のヤクザに囲まれての晩餐はどうだった? 俺が見た限りでは、堂々としていたから、やっぱり先生は肝が据わっていると感心してたんだが……」 三田村の口ぶりに和彦は、小さく声を洩らして笑う。「みんな、気をつかってくれた。どうして組長の〈オンナ〉がここに、と思っただろうな。それでも、話しかけてくれたし、酌もしてくれた。疎外感はなかった。……楽しかった。
Magbasa pa

第15話(42)

 玄関に行くと、若い組員が直立不動で立っていた。三田村を見るなり、深々と頭を下げる。「お疲れ様ですっ。タクシーを待たせてあります」「ああ、ありがとう」 そう応じた三田村の顔は、すでに若頭補佐のものだ。ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような無表情になっている。 若い組員の前で、三田村の威厳を損なわせても悪いと思い、和彦は黙ってその場を立ち去ると、その足で着替えを取りに行き、風呂場に向かう。 三田村に話した通り、ゆっくりと湯に浸かって体を温めるつもりだったが、なんとなく気が急いてしまう。大晦日の夜に、こんなふうに時間を使うのがもったいなく思えてきたのだ。 浴衣の上から丹前を着込んで脱衣所を出ると、ちょうど和彦を捜していた組員と出くわす。賢吾からの伝言を聞かされて、自分の気が急いていた理由がわかった気がした。 和彦は、髪を乾かす間もなく、賢吾の部屋に顔を出す。 意外なことに賢吾は、一人で飲んでいた。「――……大晦日の夜に、組長が手酌で飲んでいる姿を見るなんて、思わなかった」 和彦がそう話しかけると、顔を上げた賢吾がニヤリと笑う。「そんな俺を放っておけなくて、先生が濡れ髪で駆けつけてくれた」「部屋に来いと言ったのは、あんただろ」 障子を閉めた和彦は、賢吾の向かいに座ろうとしたが、それは許されなかった。手招きされて、賢吾の隣に座らされる。 このときにはもう、あることを予感した和彦の鼓動は、速くなっていた。風呂上がりのせいばかりでなく、体温も上がりつつある。「先生も飲むだろ?」「だったら、もう一つお猪口をもらって――」「いらねーだろ」 そう言って賢吾が、自分が使っている猪口を差し出してきた。一瞬戸惑いはしたものの、素直に猪口を受け取り、酒を注いでもらう。一息に飲み干すと、すかさずまた注がれた。「うちの組の年越しそばは美味かったか」 賢吾の言葉に、ちらりと笑みを浮かべて和彦は頷く。「ああ。おせちも楽しみにしている。朝、伊達巻を味見させてもらったが、あれも美味しかった」「…
Magbasa pa

第15話(43)

 呷るように飲み干した賢吾が、自然な動作で肩を抱いてきた。ビクリと体を強張らせた和彦だが、ぎこちなく賢吾にもたれかかる。「ヤクザに囲まれて過ごす年末は、どうだ? 先生はどんなときでも、この家の中をふわふわと歩いているから、居心地がいいのか悪いのか、見ているだけじゃよくわからねーんだ」「ぼくは……そんなふうに見られてるのか。なんだかショックだ」「だったら、姐さんらしく、キリッとしていると言ってもらいたいか?」「……その例えは笑えない」 和彦が応じると、代わりに賢吾が笑ってくれる。本当に、機嫌がいい。 じっと賢吾を見つめていると、視線に気づいたのか、流し目を寄越された。人によっては剣呑としたものを感じるかもしれないが、和彦が感じたのは、身震いしたくなるような体の疼きだ。「どうした、先生」「どうも、しない……。ただ、あんたが少し浮かれているように見えたから――」「俺は、身内でワイワイやるのが好きなんだ。毎年こんなふうに大晦日を過ごして、そのたびに、今年も命があったことに安堵する。浮かれる気持ちもわかるだろ? 何より今年は、大事で可愛い〈オンナ〉が、こうして側にいてくれる」 本気で言っているのか怪しいものだと、和彦は自分にそう言い聞かせるが、知らず知らずのうちに頬が熱くなってくる。 賢吾の眼差しに心の中まで暴かれそうな危惧を覚え、思わず視線を伏せる。すると賢吾は、手酌で猪口を酒で満たし、一気に口に含む。和彦はあごを持ち上げられ、ゆっくりと口移しで与えられた。 賢吾の唇を吸うようにして酒を飲む。唇の端から少しこぼれ落ちたが、賢吾の舌にベロリと舐め取られ、そのまま濃厚に舌を絡め合っていた。 賢吾に帯を解かれ、丹前を肩から滑り落とされる。そして、浴衣の衿の間に手が入り込んできて、胸元を荒々しくまさぐられる。「うっ……」 和彦が微かに声を洩らすと、唇を離した賢吾が薄い笑みを浮かべた。「――明日は、朝、雑煮を食ってから、初詣に行くぞ。その足で、総和会の会長の家に年始の挨拶だ」
Magbasa pa
PREV
1
...
5758596061
...
96
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status