Home / BL / 血と束縛と / Chapter 561 - Chapter 570

All Chapters of 血と束縛と: Chapter 561 - Chapter 570

952 Chapters

第15話(14)

** 玄関に入ると、マフラーを外す間もなく三田村に引き寄せられ、唇を塞がれた。一瞬驚いた和彦だが、次の瞬間には、三田村と同じ激しさで口づけに応える。 忙しかったせいで、こうして三田村と二人きりになれたのは、半月以上ぶりだ。 英俊を見かけて憔悴していた和彦が、秦に安定剤を飲まされて眠っているとき、賢吾と交代で三田村は側にいてくれたのだが、和彦は意識が朦朧としており、かろうじて三田村の存在を認識できる状態だった。ようやくはっきりと目が覚めたとき、すでに三田村の姿は枕元になかった。 そして今日、やっと三田村に会えた。 貪るように互いの唇を吸い合い、舌を絡める。明日の夜まで三田村と一緒に過ごせるのだと思うと、クリスマスなど関係なく、気分が高揚する。何より、嬉しいのだ。 深い口づけを堪能して、ようやく唇を離したものの、すぐには体を離しがたい。三田村に抱き寄せられ、吐息を洩らした和彦は、甘えるように肩に頬ずりした。「……いい匂いがする……」 軽く鼻を鳴らして和彦が言うと、三田村が後ろ髪を撫でながら、柔らかな声で教えてくれた。「先生を迎えに行く前に、準備しておいたんだ。――今夜は、ダラダラと過ごすために」 三田村らしくない表現に、和彦は小さく声を洩らして笑う。顔を上げ、三田村の唇をそっと吸ってから、ようやく体を離した。 部屋に行くと、三田村の言葉通り、テーブルの上には夕食の準備が整っていた。ローストチキンを見たときは、柄にもなく和彦は歓声を上げてしまう。自覚していた以上に、はしゃいでいるようだ。 照れ隠しに口元を手で覆ってから、うかがうように三田村を見る。なぜかこちらも、照れたような表情を浮かべていた。「三田村?」「いや……、レストランで予約しておいたものを受け取って、テーブルの上に並べただけなのに、こんなに先生が喜んでくれるとは思ってなかったから――」 ぼそぼそと三田村は言葉を続けたが、聞き取れなかった。 二人揃って、まるでママゴトをしているようだと感じているのだ。ヤクザと、ヤクザ
Read more

第15話(15)

「プレゼントを用意してあるんだ。好みじゃなくても、文句は言うなよ」 すかさず手からマフラーが取り上げられ、コートも脱がされる。三田村がハンガーにかけている間に和彦は、持ってきた袋の中から、ラッピングされた小さな箱を取り出した。 慣れない様子でその箱を受け取った三田村は、曖昧な表情を浮かべる。「……こういうとき、どんな顔をすればいいんだろうな。嫌なもんだな、ヤクザってのは。体面を取り繕ってばかりだから、素直に喜ぶのが下手なんだ。……いや、俺が下手なだけか」 こちらからは何も言っていないのに、一人で言い訳めいたことを呟く三田村が――おもしろい。 和彦は必死に笑いを噛み殺し、こう提案した。「開けてみてくれ」 頷いた三田村が、見ているこちらが気恥ずかしくなるような丁寧な手つきで、包装紙を外し、箱を開ける。現れたのは、ビロードのケースだ。「これは……」 ケースを開けた三田村が、目を瞠る。「何が欲しいか聞いたところで、あんたは言ってくれないだろうから、ぼくの趣味で選んだ。あまり派手じゃないものにしたつもりだけど――」 和彦がうかがうように眼差しを向けると、じっとカフスボタンを見つめていた三田村が、ふと我に返ったように顔を上げる。そして、武骨で優しい男らしく、照れたような微笑を見せてくれた。「ありがとう、先生。……俺みたいな粗雑な男が身につけていると、落としそうで怖いな。部屋に保管しておきたくなる」「ぼくは、そのカフスをつけている姿を見たい」 わかった、という意味なのか、三田村の返事は唇へのキスだった。もちろん、与えてくれたのはそれだけではない。三田村からも、小ぶりのケースを手渡された。 和彦がケースを開けようとすると、照れ臭くて見ていられないのか、三田村は背を向けてしまう。その姿を見ていると笑いたくて仕方ないのだが、必死に堪える。しかし、ケースに収まっているものを目にして、我慢できず和彦は笑みをこぼした。 もちろん、おかしかったからではなく、嬉しかったからだ。「
Read more

第15話(16)

** 三田村と過ごすクリスマスイブの夜は、穏やかで、静かだった。時間が緩やかに過ぎていく感覚が心地いい。 小さなテーブルに向き合って座り、オードブルを食べながらシャンパンを飲み、他愛ない会話を楽しむ。普段と大差ない過ごし方かもしれないが、やはり今夜は特別なのだ。 用意のいい三田村は、男二人が食べるのに困らない大きさのケーキまで、しっかり買っておいてくれた。 ひとしきり笑った和彦は、切り分けられたケーキのクリームをフォークの先で掬うと、舌先で舐める。甘いものが好物というわけではない三田村も、黙ってケーキを口に運ぶ。こうすることで、いままで味わえなかったクリスマスというイベントを実感しているのだと思うと、微笑ましいような、切ない気分になる。 和彦の視線に気づいたのか、顔を上げた三田村が苦笑に近い表情となる。「どうかしたのか、先生。ヤクザがケーキを食う姿が、そんなに珍しいか?」「確かに、滅多に見られる姿じゃないな」「……さすがに買うときは、事務所の若い奴に行かせたんだ。小遣いを握らせて」 顔を背けた和彦は、必死に声を押し殺して笑う。「若頭補佐に、余計な手間と苦労をかけさせたみたいだな」「初めてのことだから、俺もはしゃいでみたくなったんだ。まさか、三十半ばで、こんなふうにクリスマスイブを楽しむことになるとは、思っていなかった。……生きていると、いろいろある」 そういうことは、もっと長く生きている人間が言うものではないかと思った和彦だが、ヤクザの死生観は独特なのかもしれない。 フォークを置き、片手を伸ばして三田村の頬に触れる。こういうとき、小さなテーブルは便利だ。触れたいとき、手を伸ばせば簡単に相手に触れられる。「――三田村、今、楽しいか?」 頬に触れる和彦の片手をきつく握り締め、三田村は低く応じた。「ああ。とても」 夜は長いと思いながらも、この瞬間から、二人の行動は落ち着きがなくなる。 和彦はやや急いでケーキを食べ、一足先に食べ終えた三田村は、残ったオードブルを片付けると、キッチン
Read more

第15話(17)

 パジャマを着込んだ和彦が部屋に戻ると、三田村は放心したようにベッドに仰向けとなっていた。和彦に気づき、小さく笑いかけてくる。「朝からずっと、同じことばかり考えていた。何か失敗して、先生の機嫌を損ねるんじゃないか、と。……どんな物騒な仕事だって、完璧にやる自信はあるんだ。だけど先生が相手だと、些細な反応が気になって仕方ない。俺は何かやらかしたんじゃないかと、気が気じゃなくなる」「強面のヤクザが、しおらしいことを言うんだな」 そう言いながらベッドに歩み寄った和彦は、三田村の上に覆い被さる。すかさず唇に軽いキスをして、あごの傷跡に舌先を這わせた。「ぼくはただ、あんたとこうして過ごせることが、楽しみで仕方なかった。――今のところ、完璧なクリスマスイブだ」 ほっとしたように笑みをこぼす三田村の唇に、和彦はもう一度自分の唇を押し当てた。 三田村の体の上に馬乗りになり、ワイシャツのボタンを外していく。さすがに驚いたような顔で見上げられたが、和彦は静かに見つめ返す。「……ぼくが、あんたに触れたいと思ったら、おかしいか?」 大きく息を吐き出した三田村は、緩く首を横に振った。「いや」 和彦はちらりと微笑むと、黙々とワイシャツのボタンを外し、一瞬逡巡してから、ベルトにも手をかける。スラックスの前を寛げたところで、ようやく顔を上げた和彦は、三田村と唇を啄み合う。 口づけが深くなる前に、三田村の首筋に唇を這わせる。明らかに三田村は落ち着かない様子だが、和彦は気づかないふりをして愛撫を続ける。いつも自分がされているように。 逞しい胸元にてのひらを押し当て、撫でながら、合間に唇を何度となく押し当てる。舌を這わせ始めると、三田村は微かに声を洩らし、その声を聞いた途端、和彦は痺れるような興奮を覚えた。 胸の突起を舌先でくすぐり、吸い上げる。胸元に押し当てたてのひらを通して、三田村の体が熱くなっていくのがわかった。和彦だけでなく、三田村も興奮しているのだ。何より、高ぶっている。 ときおり肌を強く吸い上げながら、鬱血の痕を残していく。痕が一つ増えるたびに三田村の息遣いが変化し
Read more

第15話(18)

 唇で締め付けながら扱き、濡れた舌をたっぷり絡める。先端を丹念に舌先でくすぐってから、柔らかく吸い上げる。そして再び、口腔深くまで三田村のものを呑み込もうとしたとき、三田村の手に髪を掻き上げられた。行為を止められたのだ。 顔を上げた和彦に、静かな表情で三田村が言った。「――次は俺が、先生に触れる番だ」 口調は落ち着いている三田村だが、和彦を見つめてくる瞳は狂おしい欲情を湛え、怖いほどだった。** 羞恥のあまり、和彦の全身が燃えそうなほど熱くなる。だが、蕩けそうな心地よさに、どうしても突き出した腰が揺れ、浅ましく愛撫をねだってしまう。 内奥に挿入された指がゆっくりと出し入れされていたかと思うと、不意打ちのように引き抜かれる。すかさず、柔らかく濡れた感触が内奥の入り口に這わされ、ヌルリと中に入り込んでこようとする。「あうっ――」 やめてくれるよう哀願しようとするのだが、肉の愉悦が勝ってしまい、唇からこぼれ出るのは悦びの声だけだ。「はっ、あぁっ。うっ、うっ、うくっ」 再び内奥に指が挿入されると、和彦は貪るように締め付ける。三田村の唇が腰や尻に押し当てられ、そんな行為にすら愛情を感じてしまい、和彦の感度はさらに高まっていた。「……先生のここも舐めたい」 三田村がそう言って、前方に触れてくる。反り返った和彦のものは熱くなり、震えていた。濡れた先端を指先で撫でられた和彦は、ビクビクと腰を震わせて反応する。「い、い。今は、いい……」「今は?」「今は、もっと欲しいものが、あるんだ」 三田村の意地悪は、さほど長続きしない。和彦がねだると、すぐに欲しいものを与えてくれる。「くうっ……ん」 情熱的な愛撫で蕩けた内奥の入り口を、三田村の逞しいもので慎重に押し開かれていく。背をしならせながら和彦は、クッションの端を握り締めた。 いつもと同じ、すでに体に馴染んだ行為のはずなのに、それでも、こうして三田村と一つになる瞬間、和彦は切なくなるような苦痛と、身を捩り
Read more

第15話(19)

「はっ……、あっ、んあっ」 尻を掴まれて割り開かれたとき、焼け付くような三田村の視線を感じた。ひくつきながら欲望を呑み込んでいく様子を、見つめられているのだ。 芽生えた羞恥に和彦は腰を動かそうとしたが、それがかえって三田村を煽ったらしい。さらに深く押し入られ、内奥を開かれた。「うっ、うっ――」 これ以上なくしっかりと繋がったところで、クッションを握り締める和彦の手に、三田村の手が重なってくる。充溢した欲望の熱さと硬さに体が順応したところで、和彦は掠れた声でせがんだ。「……三田村、奥、してほしい」 三田村の唇が掠めるように肩に触れたあと、腰を突き上げられる。抉るように内奥深くを突かれてすぐに、一気に熱い欲望が引き抜かれた。和彦は尾を引く甲高い声を上げ、自分から腰を三田村に擦りつける。 求めに応じるように、再び三田村のものに内奥の入り口をこじ開けられたが、焦らすように浅い部分を擦り上げてくるだけで、奥深くまで押し入ってこようとはしない。 和彦ははしたなく呻き声を洩らし、腰を揺らす。自分から、三田村のものを奥まで呑み込もうとしたのだ。 背をしならせ、腰を蠢かす和彦の反応を愛でるように、三田村の両手が体に這わされる。「はあっ、あっ、三田村っ……」「俺が先生を、中から食おうとしているのに、俺が食われそうだ。――よく締まってる。俺のものをきつく締め付けて、奥に誘い込もうとしている」 そう言う三田村の欲望は硬く張り詰め、狭い内奥を容赦なく犯してくる。脆く感じやすい部分は、わずかに動かれるたびに、狂おしい感覚を生み出していた。 腰を抱えられ、三田村が内奥深くをぐうっと突き上げてくる。痺れるような快感が腰から背筋へと駆け上がり、頭の芯まで溶かし始める。和彦は小さく声を上げたあと、必死に三田村のものを締め付けながら、こう言った。「虎を……食うなんて、どんな物騒な獣だろうな」 微かに三田村の笑い声が聞こえたが、答えは返ってこなかった。 会話を交わす余裕すらなくなり、二人は快感を貪るこ
Read more

第15話(20)

 反り返った和彦のものは、触れられないまま、内奥からの刺激だけで悦びのしずくを滴らせていた。自分で慰めようとするのだが、背後から押し寄せる三田村の動きを受け止めるのが精一杯で、結局、クッションを握り締めるしかできない。 三田村の顔を見たいが、今のこの状態で一度繋がりを解くことなど、不可能だった。「いっ、い……、気持ち、いい……」「ああ、俺も――」 腰を引き寄せられると同時に、乱暴に内奥を突き上げられる。三田村の熱い精を奥深くに注ぎ込まれた瞬間、和彦はビクビクと体を震わせながら、放埓に声を上げる。 呼吸が止まっても惜しくないほどの快感に、頭の中が真っ白に染まる。このまま意識を失ってしまいそうだが、背で感じる三田村の体の熱さや、腰に絡みつく腕の力強さが、和彦の意識を引き止めてくれた。 内奥で、三田村のものがまだ脈打っている。吐息をこぼした和彦は、無意識にそれを締め付けていたが、この状態は少し不満だ。 和彦と同じ気持ちだったのか、ふいに三田村が身じろぎ、繋がりを解いてしまった。和彦の体は簡単に仰向けにされ、覆い被さった三田村と、やっと抱き合うことができる。「んんっ」 繋がりを解いたわずかな時間すら惜しむように、三田村と再び一つになる。 堪えきれない悦びの声を上げた和彦は、いつものように、汗に濡れた三田村の背に両腕を回し、愛しい〈オトコ〉を抱き締める。 衝動に突き動かされるように、虎の刺青を忙しくてのひらで撫でる。この行為が三田村を駆り立て、欲望を煽ることを、和彦はよく把握していた。手を動かすたびに、無言で三田村にせがんでいるようなものだ。 もっと強く、愛してくれと。「――先生っ」 ハスキーな声をさらに掠れさせて、三田村に呼ばれる。身震いするような興奮を覚えた和彦は、意識しないまま三田村の背にぐっと爪を立てていた。「あうっ……」 精に塗れた襞と粘膜を擦り上げながら、内奥深くを抉られる。和彦が大きく息を吸い込んで仰け反ると、これ以上なく凝った胸の突起を激しく吸われた。「あっ、あっ、三田村
Read more

第15話(21)

** 張りきってはいたものの、クリスマスだからといって特別なことをする予定はなかった。 いつものように二人でのんびりと、穏やかな時間を過ごせればいいと思っていたのは和彦だけだったらしく、クリスマスの朝、三田村が妙に切羽詰った顔でこう切り出してきたのだ。「……先生、どこか行きたいところがあるなら、遠慮せず言ってくれ」 三田村が作ってくれたホットサンドを食べていた和彦は、目を丸くする。昨日の三田村の言葉ではないが、今日は夜まで、ひたすらこの部屋でダラダラと過ごすつもりだったので、この申し出は意外だった。「特に、考えていなかった……。クリスマスだから、どこも人が多いだろうし、買い物は昨日のうちに腹いっぱい堪能したから――。三田村、どこか行きたいところがあるのか?」 三十代半ばにして若頭補佐という肩書きを持ち、常に無表情を保って、鋭い刃物のような雰囲気を湛えているはずの男が、今は和彦の目の前で、うろたえたように視線をさまよわせている。「そうじゃない。ただ、もしかして先生が、俺に気をつかっているんじゃないかと思ったんだ。俺としては、こういうときぐらい、先生を外に連れ出したい。……俺みたいな物騒なツラした連れとは、外で並んで歩きたくないか?」 こういう言い方をされたら、和彦は外出せざるをえない。三田村なりに、そう計算したのだろう。 気をつかっているのはどっちだと思いながら、苦笑を洩らした和彦は頷く。「なら、ドライブがしたい。どこでもいい。あんたが運転する車に、ずっと乗っていたい」「それなら、少し遠出しよう。夕方までに帰ってこられるような場所で、美味いものが食えて、どうせなら、景色がきれいなところがいいな」 こう呟いた三田村が、途端に楽しげに顔を綻ばせる。和彦はホットサンドを食べながら、そんな三田村の顔を眺める。 この男を喜ばせるために何ができるのだろうかと考えていたが、結局、和彦自身が、今日という日を――自分の〈オトコ〉といる時間を楽しいと思うことが一番なのだろう。何をするより、きっと三田村は喜んでくれる。
Read more

第15話(22)

 ホットサンドを食べ終えた和彦が皿の上で手を払うと、待ちかねていたように三田村が立ち上がり、食器を片付け始める。几帳面な三田村には、出かけて戻ってきてから片付けるという選択肢はないようだ。 和彦はコーヒーを飲み干すと、カップをキッチンに持って行く。泡だらけの手で三田村がカップを取り上げた。「ありがとう、先生」 当たり前のように礼を言った三田村が、こちらに背を向ける。この瞬間、昨夜の濃厚な行為の余韻が蘇り、衝動に突き動かされるように和彦は、三田村の背に身を寄せていた。両腕を腰に回すと、柔らかな声で三田村が言った。「背中が気になって、皿を割りそうだ」「……器用な若頭補佐は、そんな粗相はしないだろ」 そう三田村をからかって、首筋に軽くキスする。 お互い浮かれているなと思いながら、三田村が動けないことをいいことにじゃれつく。次第に和彦の行動は大胆になり、三田村が着ているトレーナーの下に手を這わせ、素肌を撫でる。 最初は本当に、ふざけているつもりだったのだ。しかし、トレーナーの下に隠れている背の刺青を撫でているうちに、体が熱くなってくる。それは三田村も同じなのか、てのひらを通して、高い体温が伝わってくる。「三田村……」 呼びかけると、両手に泡をつけたまま三田村が体の向きを変える。和彦は今度は胸元にしがみつき、自分から三田村の唇を塞いだ。 朝から交わすには淫らすぎる口づけを、二人は堪能する。激しく唇を吸い合い、口腔を舌でまさぐったあと、差し出した舌を絡めて唾液を交わす。そんな口づけを交わしながら和彦は、三田村が両手を使えないのをいいことに、熱い体を好きなだけまさぐっていた。「……先生、手を洗っていいか? これじゃあ、先生を抱き締められない」「今、あんたに抱き締められたら、出かけたくなくなるから、ダメだ」 三田村が苦笑し、和彦もちらりと笑みをこぼす。ようやく唇と体を離すと、今になって自分の行動が恥ずかしくなり、和彦は逃げるようにキッチンを出ていた。
Read more

第15話(23)

** ドライブをして、行った先で寒さに震えながら軽く散策して、人目がないところでキスを交わす。地元の名物を昼食に食べ、ついでに土産物屋を覗く。帰りの車中では、エンジンの振動が心地よくて、ついうたた寝をした。起きたとき、体にかけられていたのは、三田村のジャケットだった。 今日がなんの日であるか忘れてしまうような、まっとうなデートをしたと思う。気恥ずかしくなるぐらい、ありふれて、特別な出来事などないデートだ。 だが、楽しかった。 ベッドに腰掛けた和彦は、意識しないまま口元に笑みを浮かべ、髪を掻き上げる。シャワーを浴びたあとドライヤーで乾かしたばかりの髪から、シャンプーの香りがふわりと漂った。 帰り支度を整えてしまったので、あとは、日付が変わる前に一階に下りるだけだ。無粋な着信音で、追い立てられるようにクリスマスを終わらせるのは、本意ではない。 和彦は座り直して体の向きを変え、三田村を見下ろす。まるで獣が寝そべっているように、うつ伏せの姿勢で眠っていた。 和彦がシャワーを浴びに行くときは起きていたのだが、待っている間に眠ってしまったようだ。一緒にいる二日間で、和彦が振り回したせいで疲れたのか、それとも緊張を解いているのか。なんにしても、寛いだ三田村の姿を見るのは楽しい。 三田村が静かな寝息を立てるたびに、露になっている背がわずかに上下する。刺青の虎の顔がいつもより穏やかに見えるが、もちろん、和彦の思い込みだ。 和彦は三田村の背に顔を伏せると、そっと唇を押し当てる。ピクリと三田村の体が動いたが、かまわず唇と舌を、虎に這わせる。次第に愛撫は大胆になり、背を舐め上げ、吸い上げるようになると、三田村の筋肉がぐっと緊張した。次の瞬間、和彦は手首を掴まれて、ベッドの中に引きずり込まれ、あっという間に三田村にのしかかられた。 間近で見つめ合ってから、言葉よりも先に、口づけを交わす。合間に三田村に言われた。「すぐにシャワーを浴びて、着替える。今夜は先生を送っていけないんだから、せめて見送りぐらいしたい」「そんなことしなくていい。それより、ギリギリまでこうしていたいんだ」 三田村は目元を和らげ、和彦の耳に唇を押
Read more
PREV
1
...
5556575859
...
96
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status