「彩葉代表がまだ物足りないというなら、あの女を片付ける手段はいくらでもあるよ。一言言ってもらえば……」「北川社長、少し踏み込みすぎじゃないですか」彩葉は眉をひそめ、一歩横にずれて彼の無言の威圧感を逃れるように身を引いた。「林家との因縁は、自分で決着をつけます。男の力を借りる必要はありません。あなたが私のために動いてくれたつもりでいるのはわかっています。でも、あなたのしたことは、私が望んでいたやり方とは違う。だから感謝するつもりもありません」「なるほど、好意の押し売りをしてしまったと」理はのんびりと背筋を伸ばした。「それなら受け取らなければよかっただけだよ。さっさと帰ればよかったじゃないか。でも見ていたよ、かなり楽しそうに言い返してやったじゃないか」彩葉は黙った。確かに、林家への復讐の機会は、かねてより窺っていた。ただ、機会を待っていただけだ。機会がなければ、いつまでも待つつもりだった。だが機会が訪れたなら、最大限に活かすまでのことだ。理はスーツの内ポケットからタバコの箱を取り出し、一本を抜き取ると、ゆっくりとくわえた。「強すぎる女は得をしないんだぞ。弱々しく、かよわく見せる女のほうが、男には好かれる。君の妹さんがいい例じゃないか。彼女はどうしようもない女だが、君の旦那様が溺愛するくらいには魅力的というわけで」彩葉には、その言葉の狙いが透けて見えた。蒼真との間に楔を打ち込もうとしているだけだ。だがこの男は知らない。ふたりの間にはとっくに何も残っていないことを。今さら何を言われても、傷つく余地など残されてはいないのだ。「あなた自身が、雫を『どうしようもない女』と言ったんでしょう。同じように媚びを売って、男に尻尾を振るなんて、私が私でなくなってしまいます」「それはそうだな」理は煙の輪を一つ吐き出し、話の向きを変えた。「ただ、ひとつ言わせてくれ。俺が余計なことをしたと思うかもしれないが、実は俺も、誰かの手の上で踊らされていたようでね」彩葉は警戒心を露わにして彼を見た。「どういうことですか」「山口が俺たちを盗撮したあの件、誰が俺に教えたと思う?」数秒の間を置いて、理の目に静かな鋭さが宿った。「翔だ」彩葉は「翔」という名に心当たりはなかった。だがその名を耳にした瞬間、なぜか心臓の鼓動が速くなった。「ああ
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