弘明の表情が、わずかに強張った。「利用」という言葉は、聞いているだけで胸に刺さる。刺さったまま、鈍い痛みを引きずるような響きだった。「社長、私は長年お傍に仕えてきました。この間、社長が氷室様に対して抱いておられる気持ちも、はっきりと見えています。社長が彼女のためにされてきたことは、すべて善意から出たものだと確信しています。時に手段を選ぶ必要があったとしても、悪意などひとかけらもないと」言い切る弘明の声には、揺れがなかった。長く仕えた者だけが知る確信が、その言葉には宿っていた。「彼女への気持ち、か……」翔吾の長い睫毛がかすかに揺れた。腕時計の陰にヘアゴムを再び隠しながら、視線を落として言った。「俺のこの気持ち、彩葉に本当に必要なものだろうか。俺より、彼女が本当に望んでいるのは、氷室蒼真に愛されることだろう」「そんなわけないじゃないですか!五年間本気で尽くしてあの仕打ちを受けても、まだ諦められないなんて……彼女だって、相当な変わり者ですよ……」どこまでお人好しなんだ。弘明はずっと感じていた。翔吾と彩葉の間には、まだ解けていない誤解があって、言いたいことを言い切れていないのだと。互いに踏み込みきれず、言葉が途中で折れてしまう、そんな空気があった。それでも同時に、彩葉に向き合うとき、普段は果断で先を読む翔吾が、妙に慎重になり、踏み出せなくなっていることも見えていた。まるで、臆しているようだった。これほど端正で、有能で、強い男が、なぜ彩葉の前でそれほど自信をなくすのか。別人のようだった。「でも、三好。正直に言えば、今回の件、俺にもまったく私心がなかったわけじゃない」翔吾が車窓の外に向ける視線は、何も映さないほど暗かった。読み取れるものは何もない。だがゆっくりと丸まっていく指の、白くなった関節が、胸の奥に潜む何かを、密やかで、しかし隠しきれない感情を露わにしていた。「二十九年間、屈辱を噛みしめながら生きてきた。復讐という強い意志がなければ、とっくに川底に沈む、冷え切った骸となっていたはずだ」幼い頃、自ら命を絶つことを幾度も考えた。すべてを終わりにして、楽になりたかった。彩葉の母が与えてくれた、あの初めての温もりがなければ、本当に諦めていた。だからこそ、北川家に必ず報いを受けさせる。どんな代償を払っても、奪わ
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