「あなたがそう言うなら、私だってあなたを捨ててもいいのよ」 「何だと?」 「あなただって、他の女の人とキスしたことくらいあるでしょ?」 宗也は絶句した。 「分かったわよ、これからは自分の身は自分で守るから。あなたも怒らないでよ、理不尽だわ」 「お前こそ被害者面か?」 「違うの?」 音は彼を見つめた。「危うく乱暴されそうになったのは私なのに、どうしてあなたに怒られて、罰まで受けなきゃいけないの。誰に泣きつけって言うのよ」 「俺に泣きつけばいいだろう」 宗也は彼女の腕を引き寄せた。 「音、どうして何かあった時に俺を頼らないんだ?」 「え?」 「葉山さんに助けを求めるメッセージを送って、なぜ俺には送らない?あいつがお前に何をしてやれるっていうんだ?」 音はようやく少し合点がいった。 この藤堂家の御曹司が怒っていたのは、自分が取引先に会いに出かけたからでも、相手が男だったからでもなく、ピンチの時に、真っ先に彼に助けを求めなかったからなのだ。 確かに、この点については自分が間違っていた。 そもそも音には、何かあった時に宗也を頼るという習慣がなかった。 これまでずっと、宗也は仕事で忙しく、音のことなど気にも留めなかった。 だからこそ、この結婚生活において彼女は自立し、自分のことは自分で解決する性格になってしまったのだ。 「藤堂さんが言ったのよ。自分は忙しいから、用もないのに電話してくるなって。私はただ、あなたの言いつけを守っていただけだわ」 彼女の口調が少し和らいだ。 宗也は彼女の言葉に詰まった。 彼も思わず口調を和らげた。 「それは昔の話だ。今はいつでも俺に電話をかけたり、メッセージを送ってきていい。気づけば必ず出るし、返信もする。もし今日みたいな緊急事態なら、俺が出るまでずっとかけ続けろ。 篠原に電話しても、高橋に電話してもいい。誰でもいいから連絡しろ」 「本当に?」 音の心に、微かな喜びが湧き上がった。 これはどういうことだろう?彼がすでに自分を完全に受け入れ、甘やかしてくれるようになったということだろうか? 「俺の言葉が疑わしいか?」 宗也は指で彼女の顎をくいっと持ち上げた。「分かったな?」 「分かったわ」 音は頷いた。「これからは困っ
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