目尻に笑い皺を作って微笑んだ橋本を見て、野木沢も同じような表情を作った。「学生時代の橋本なら、喜んで飛びついたでしょ?」「そうだな。だけど時間が経ちすぎた上に、雅輝が相手じゃ分が悪かったわけか」 野木沢は橋本の言葉に、笑いながら額に手を当てる。「橋本がとことん惚れた相手じゃ、無理なわけだよね」「ああ……」「同性婚するからそれの証しに、ペアリングを作ろうと思ったんだ?」「そのつもりさ。だから野木沢の店に来てるんだけど。作ってくれないのか?」 即答したセリフを聞いた途端に、力なくその場にしゃがみ込む野木沢を見て、橋本はカラカラ笑い声を立てた。「わかりやすいリアクション、サンキューな」「ノックダウンさせられたよ、参った……。それで、どんなデザインをご所望ですか、お客様」 野木沢はよいしょと呟きながら、やっと立ち上がった。橋本に見せる顔には、すでに悲壮感が漂っておらず、一番最初に店で見た商売人としての表情がそこにあった。その切り替えの早さに、すごいなと思わずにはいられない。「野木沢、おまえ――」「どんなものにするか、早く言ってほしいんだけど。好きだった男のペアリングを作る、僕の気持ちを考えてくれよ」 腰に手を当てて自分を見上げる野木沢の迫力は、橋本がたじろいでしまうものだった。「わ、悪い。えっと雅輝と出逢ったきっかけが車関連だったから、それをモチーフにしてほしいなと思って」「了解。すっごいデザイン考えて、橋本からお金をふんだくってやるよ。できたら宮本様に連絡するから、楽しみに待ってて」 あからさますぎる笑顔を振りまいたと思ったら、さっさと店の中に消える。「ありがと、野木沢。楽しみに待ってる」 橋本はあえて追いかけず、扉に向かって囁いたのだった。
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