「移動しますか……。勘付かれたっぽいからな」 リーダー格の男がそう呟くと、男たちは懐からキラキラと光る石を取り出した。その石から放たれる不気味な光が、レイニーたちを囲むように魔法陣を浮かび上がらせる。空間がグニャリと歪み、次の瞬間、二人は別の建物へと移動していた。 そこは動物臭が漂い、木造で薄暗い。王都から離れた場所なのか、周囲はしんと静まり返っていた。ひんやりとした空気が肌を撫で、どこからか獣の鳴き声が微かに聞こえる。 あらら……転移? 転移されちゃったじゃん……。これじゃ、複数いた監視がまかれちゃったんじゃないの? レイニーは、頭を抱えたくなる衝動に駆られた。それにしてもエリゼは落ち着いてるね……。自分が置かれた状況を理解していないのかな? 頭は良さそうだけどなぁ、俺たち誘拐されてるんだよ?? レイニーは隣のエリゼの表情を伺い、その能天気さに少しだけ安堵しつつも、内心では焦燥感を募らせていた。「お前ら、ここで大人しくしてろよ?」 リーダーっぽい男が、ニヤけた顔で話しかけて来ると、重い足音を立てて部屋から出て行った。その足音は、レイニーの心臓に響く。「分かるよな? 頭良さそうだしよ! 大人しくしてろな……じゃないと、痛い目にあうからな!」 続いて、下っ端の男が顔をしかめ、いかにも悪党といった面構えで威圧的に言ってきた。その言葉には、粗暴な力が込められており、レイニーは思わず身構えた。リーダーに続いて部屋を出た。「まあ、念のため拘束させてもらうけどな」 残された悪党面の下っ端がそう言うと、持っていた縄を素早く扱い、レイニーとエリゼの両手両足を縛り上げた。縄が肌に食い込み、チクリとした痛みが走る。男たちは、満足げな顔で別の部屋に行ってしまった。その足音は、遠ざかるにつれて、レイニーの不安を増幅させた。「エリゼ、落ち着いてるね? 怖くないの?」 レイニーは、繋がれた体でエリゼに問いかけた。「ん……少し怖いけど、
Last Updated : 2025-11-16 Read more