All Chapters of 転生したら王族だった: Chapter 61 - Chapter 70

87 Chapters

61話 黒い魔法陣と、リリスとディアブロの畏敬

 武器の召喚かぁ〜。召喚の呪文は習ったけど……大して強くない精霊とか魔獣の召喚なんだよね。俺にも召喚できるかなぁ……? 召喚の詠唱をして〜後はイメージで補う感じで良いか? 試してみよっと♪ 静かな森の中、レイニーが黙り集中しだすと、その場の空気が一変した。異変に気づいた周りの者たちは、まるで空気に飲まれたかのように黙り込み、固唾を飲んでレイニーの様子をじっと見つめた。詠唱が深まるにつれて、レイニーのあどけない表情は次第に険しさを帯び、澄んだ瞳の奥には一瞬だけ漆黒の光が宿った。彼の可愛らしい体の周囲には、微かな闇のオーラがさざ波のように立ち上り始めた。 レイニーが詠唱を始めると、リリスの時とは次元が違った。彼の足下には、不気味な黒く恐ろしいオーラを放つ巨大な魔法陣が、まるで漆黒の割れ目のように地面を侵食しながら、ゆっくりと展開されていく。その魔法陣からは、周囲の空気を重く冷たくする異様な負のエネルギーが、まるで生きた影のように渦を巻きながら放たれ、森の木々がざわめき始め、葉が激しく震え、地面の草が霜に覆われるかのように白んでいった。肌を刺すような冷気が全身を包み込み、まるで異世界に引きずり込まれるかのような錯覚に陥った。 辺りは瞬く間に黒い霧で覆われ始め、その霧はまるで生きているかのようにうねり、森の中の空気をさらに緊張させた。突如として内臓を揺らすほどの重低音が地鳴りのように鳴り響き、レイニーの手に、やりの形をした黒い炎がボワッと音を立てて燃え上がった。その炎は瞬く間に広がり、周囲の色彩が吸い取られるかのように色褪せ、見る者すべてに冷たい恐怖を与えた。 霧の中心からは、徐々に禍々しいオーラが漏れ出し、周囲の空気をさらに冷やしていく。レイニーが詠唱を続けると、その黒い炎は次第に凝縮し、空間が引き裂かれるような鋭い音とともに槍の形が浮かび上がった。赤黒い光沢を持つその刃は、鋭く尖った矢じりの形状をしており、刃の表面には古代の呪文が刻まれていた。その文字は微かに青紫色の光を放ち、妖しく輝いている。 レイニーが、その禍々しい槍を握ると、周囲の雰囲気は一変した。彼の可愛らしい外見とは対照的に、その槍は圧倒的な威圧感を放っている。レイニー
last updateLast Updated : 2025-12-21
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62話 天使の襲来、そして深まる主従の絆

 レイニーは、リリスの態度を特に問題視しなかった。「さっきも言ったけど、闇の王じゃないし。リリスの言う通り、別に良いよ」 うん。うん。問題なし。レイニーは、にこやかに頷いた。「……従者の口の利き方じゃないぞ。馬鹿者めが」 ディアブロは、やはり不満げにリリスを睨んだ。その視線には、いまだ納得できない様子が滲んでいる。「……むぅ。その話し方って……疲れるしさー」 リリスは、不満げに口を尖らせながら、レイニーの顔をじっと見上げてきた。その瞳には、早くいつもの関係に戻りたいという甘えが込められている。「うん。許可する〜。友人設定だし良いよ、あーちゃんもね」 レイニーは、いつもの屈託のない笑顔で二人に言った。「そもそも闇の王って……なに? 知らないんですけど?」「闇の王ってのはね、闇の支配者で暗闇を支配して負の感情と負のオーラを支配する存在で……悪の存在である魔物や魔界全てを支配する者だぞ!」ツンとした表情と可愛い仕草で説明をしてくれた。うん。リリスの仕草が可愛くて、あまり話が入ってこないかも。 それは、すごい。だが……そんな者になった覚えはないぞ。  「あの槍はイメージをしたら勝手に出てきたんだから、似たような物が出てきただけじゃないの?」まさか、他人の物を召喚って……それ、泥棒じゃん!?「そのオーラ、その威圧感は間違いなく闇の支配者の証である槍です」ディアブロが頭を下げたまま答えた。 まあ、分からないことを話し合っても時間の無駄だし、なんでも良いやぁ。……俺専用の武器も手に入ったし、戻るか。「さ、戻るぞ〜。ディアブロも擬態してー」向きを変えて、二人に言った。「王の背中に背負われるのに抵抗があるのですが……レイニー様」とディアブロが気まずそうに言ってきた。
last updateLast Updated : 2025-12-22
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63話 黄金の粒子、白銀の翼を持つ少女

 目の前の虚空に、突如として黄金の粒子が舞い踊った。それはまるで意志を持つ星屑のようにふわりと浮遊し、瞬く間に密度を増していく。やがて粒子は強烈な光を放ち、周囲の景色を白一色に塗り潰すほどに発光し始めた。 その光の渦の中心から、一人の少女が音もなく降臨した。「……」 彼女は純白のワンピースに身を包み、その背には汚れなき白銀の翼を携えている。年齢は十七歳ほどに見えた。ふわりと地面から浮き上がった彼女の金髪は、実体のない風に撫でられるようにサラサラとなびいている。その一房一房が光を反射し、まるで細い糸状の宝石のように眩い輝きを振りまいていた。 鼻腔をくすぐるのは、春の陽だまりのような、どこか懐かしくも清らかな香り。これまでに対峙してきた魔物たちが放つ、肌を刺すような禍々しい殺気や腐臭を孕んだオーラとは根本から異なっていた。彼女から溢れ出す力は、触れるだけで魂が洗われるような神々しさに満ち、それが極めて純度の高い聖属性であることを否応なしに理解させる。「…………」 透き通るような肌に整った目鼻立ち。その容姿は間違いなく美しく、愛らしい。  しかし、少女は眉間に深い皺を刻み、これ以上ないほどにムスッとした表情を浮かべていた。桃色の唇をぎゅっと結び、こちらを睨みつける瞳には明らかな不快感が宿っている。  その場に佇むだけで周囲を浄化してしまいそうな聖なる存在でありながら、彼女の纏う空気は嵐の前触れのようにひどく機嫌が悪そうだった。 宙に浮く少女は、不機嫌そうに空を仰いだまま、鈴を転がすような、けれどひどく突き放したような声で口を開いた。「ちょっと、あなた達……こんな場所で何をしているの? 聞かなくてもわかるけれど。はぁ……面倒ごとは起こさないでよ。っていう方が無理ね。最上位の悪魔と上位の悪魔が2体の反応があったようだけど……あら、どこかしら?」 彼女は空中でくるりと身を翻し、周囲をせわしなく見渡した。その瞳は澄んでいるが、どこか遠くを追っているようで、すぐ目の前に
last updateLast Updated : 2025-12-23
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64話 「ウソつきはダメだよ」と笑う天使が味わう戦慄

 腕に覚えのある低級から中級の冒険者たちが、血の気の引いた顔でパーティを組み、ようやく探索に挑むような険しい地なのだ。「お姉さんこそ、何しに来たの?」 上目遣いで、無垢な好奇心を装って問いかけてみる。彼女がこの場所にそぐわない「獲物」を探していることは百も承知だ。だが、その華奢な腕で一体何を成そうというのか。「あぁ……そうそう、恐ろしい悪魔を見なかったかな? 見ていたら、ここにはいないかぁ……あはは」 セラフィーナは、自分の問いかけの矛盾に気づいたのか、力なく笑って肩を落とした。子供の足で逃げ切れるような相手ではないと、彼女自身の理性が突きつけているのだろう。呆れたように吐き出した溜息が、白い喉を震わせた。「悪魔を見つけたら……どうするの?」 今度は、わずかに首を傾げて聞き返した。柔らかな髪が肩から滑り落ち、彼女の視線を捉える。その仕草に、彼女の表情から僅かに余裕が消えた。「今回は、見逃せない気がするのよ……」 セラフィーナの声音から、先ほどまでの柔らかさが消え、代わりに凛とした冷たさが混じり始めた。彼女の背後にある白い翼が、意志を持つかのようにぴんと張り詰める。「上位以上の悪魔が三体も集結している異常事態なんですもの。消し去りに来たのよ」 その言葉と共に、彼女の瞳の奥に鋭い光が宿った。それは慈悲深き天使の顔ではなく、秩序を乱す異分子を断罪する「執行者」としての横顔だった。彼女の周囲の空気が一変し、清浄な魔力が、まるで刃のように研ぎ澄まされていく。 彼女が漏らした「消し去る」という言葉は、冗談でも誇張でもない。  この場所を根こそぎ浄化せんとする、静かな、けれど逃れようのない決意がそこに宿っていた。 やっぱりそうなるのか。 胸の奥で、冷たい諦念とそれを上回る苛立ちが静かに渦を巻いた。せっかくこの世界に転生し、ようやく巡り合った大切な仲間たちだ。彼らがかつて何であったにせよ、今は共に歩むと決めた唯一無二の存在なのだ。それを消されるなど、到底受け入れ
last updateLast Updated : 2025-12-24
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65話 「仕方ない」の真意と絶望を運ぶ黒き槍の顕現

 目の前にいる「無垢な子供」から溢れ出した、計り知れない力の深淵を前に、彼女は己の正義が揺らぐほどの衝撃を受けていた。「俺は、この王国の第三王子のレイニーだよ。悪魔を二体倒して、転生をさせたんだけど……リセットされてるでしょ? 見ての通り、今はもう人間になってるし」 静かな、けれど通る声で告げた。彼女の反応を確かめるように、真っ直ぐにその瞳を見据える。セラフィーナは、まるで理解を拒むかのように小さく首を振った。「それは、ムリね……三体の悪魔のオーラを、私は確かに感じていたし。そんなこと、法則が許さないわ」 彼女の言葉は、確固たる信念に基づいた拒絶だった。天使としての「正解」から外れる事象を、彼女の魂が認めようとしていない。その頑なな態度に、俺は小さく吐息を漏らした。「ふぅ~ん……」 視線を落とし、足元の影を見つめる。そして、ゆっくりと顔を上げた。そこにはもう、先ほどまでの無邪気な子供の表情はない。「転生をして、悪いことは何もしていない俺の仲間に手出しするなら……天使さんでも、俺には『悪』の存在として扱っちゃうよ?」 言葉の温度が、一気に氷点下まで下がる。周囲の空気が重く澱み、結界の外側で渦巻く彼女の神聖なオーラと、俺から発せられる静かな威圧が衝突して火花を散らした。守るべき仲間を傷つける者は、たとえ天の遣いであっても容赦はしない。その決意を、剥き出しの言葉に乗せて突きつけた。「それは、仕方ないわね……」 セラフィーナは悲しげに、けれど一切の迷いなく言い切った。彼女の背の翼が大きく広がり、周囲の光を吸い込んで激しく輝き始める。その美しさは、今や命を奪うための残酷な輝きへと変貌していた。「その悪魔を消し去りに来たんだもの。それが、私の使命なのよ」 互いの譲れない一線が、ついに交錯した。彼女が纏う聖なる光が膨れ上がり、洞窟の薄暗い壁面を白銀の色に焼き尽くしていく。一触即発の緊張感が、張り詰めた弦のように空気を震わせていた。「
last updateLast Updated : 2025-12-25
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66話 天使の変質と消えた嫌悪感と刻まれた支配印

「レイニー様……許可なく擬態を解き、申し訳ございません。擬態の状態では、この負のオーラに耐えきれそうにありませんでした……」 傍らに立つディアブロもまた、膝をつかんばかりに肩を揺らしていた。最上位の悪魔である彼をもってしても、この槍から溢れ出す純粋な闇の重圧は、魂を削り取るような苦痛を受けているようだった。 ひりつくような殺気が洞窟を支配する。手に馴染む槍の冷たさを感じながら、俺は青褪めた天使を見据えた。「さあ……お姉ちゃん、どうする? まだ続けるつもりかな?」 俺の声が、闇に溶けて冷たく響いた。 俺は、苦しげに肩を揺らすディアブロへ、短く顎を引いて下がっているようジェスチャーを送った。彼は深々と頭を下げると、その圧倒的な重圧から逃れるように静かに後退していく。 一人、逃げ場のない闇の渦中に取り残されたセラフィーナを見つめた。「状況? 最悪? いやぁ……、もう遅いよ。お姉ちゃん、自分をまだ天使だと思ってる? まあ、天使ではあるんだろうけど……。どうやら、俺の支配下に入っちゃったみたいなんだよねーっ♪」 その言葉に、彼女は目を見開いて硬直した。改めて彼女のステータスを視界の隅に展開し、確認をした。そこには明確に「闇の王の支配下」という忌々しくも絶対的な刻印が記されていた。(あらら……本当に俺、闇の王になっちゃってるみたいだね) 内心で苦笑が漏れた。さっきの問いかけが決定打になったのだろうか。「俺には悪の存在として扱っちゃうよ」という宣告に対し、彼女は「それは仕方ない」と答えた。それは図らずも、自分自身が悪の側に堕ちることを容認してしまったも同義だったのだ。「そんな……あれ? 悪魔に対して、あんなに強かった嫌悪感が消えちゃってる……」 俺に指摘され、彼女は自身の胸元に手を当てた。漆黒の重圧に押し潰されそうな苦痛は消えていないはずだが、その整った顔立ちには不
last updateLast Updated : 2026-01-01
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67話 断罪の使徒から愛欲の虜へ、セラフィーナの変質

 俺はニコニコと屈託のない笑顔で答えた。まるでおもちゃをねだられた時の話でもするかのような軽さに、セラフィーナはさらに呆然とした様子を見せた。「……レイニー様に、勝てると思うか? ムリだろ……」 傍らで控えていたディアブロが、諦念の混じった、けれどどこか誇らしげな声で呟く。その言葉に、セラフィーナは力なく笑いながら、深く頷いた。「そうね……貴方でもムリだわ。私だって、あんな得体の知れない力を前にしたら、戦う気なんて起きないもの」 彼女は吹っ切れたように、肩の力を抜いた。俺はここぞとばかりに、期待に満ちた目を輝かせて、ぐいっと彼女に顔を近づける。「ねぇ、ねぇ~。もう、敵じゃないんだよね? 仲間になったのかなぁ?」 無邪気な子供を装って尋ねると、セラフィーナは柔らかな笑みを浮かべ、俺の頭を優しく撫でた。「敵対してるように見えるのかな? 私も、レイニーくんの配下になるわ。よろしくね」 彼女がそう口にした瞬間だった。足元の空間が淡い白銀の光を放ち、精緻な紋様を描き出す魔法陣が浮き上がった。契約の儀式など行っていないはずなのに、言霊がそのまま世界の理に刻まれていく。 光の粒子がセラフィーナの身体を包み込み、俺の魂の奥底と彼女の存在が、強固な一本の線で結ばれるのを感じた。 契約完了。最上位の悪魔に続き、今度は天使までもが。彼女の指先から伝わる温もりは、先ほどよりもずっと親密で、絶対的な忠誠を誓う配下のそれへと変わっていた。「お姉ちゃんっ♪」 俺は弾むような足取りで歩み寄り、そのままセラフィーナの胸元へと飛び込んだ。顔を埋めた瞬間、ふにゅっ、という抗いようのない柔らかな感触が頬を包み込む。天使の衣越しに伝わる、その女性らしい温もりと弾力に身を任せながら、俺はわざとらしく甘えてみせた。「あらぁ~甘えん坊さんなのね。レイニーくんは♪」 セラフィーナは驚いたように少しだけ体を震わせたが、すぐに慈愛に満ちた声を漏らした。彼女の手が俺の背中に回され、優しくトントンとリズムを刻む。
last updateLast Updated : 2026-01-02
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68話 天使のファーストキス、生涯一度の神聖なる付与

 不意に重なったのは、マシュマロのように柔らかな唇の感触。頬ではなく、正面から深く。吸い付くような熱を帯びた、甘い密着感。俺の記念すべきファーストキスは、こうして目の前の天使・セラフィーナに奪われる形となった。「わぁっ。俺のファーストキス、セラフィーナだよ」 驚きで目を丸くして呟くと、彼女はとろけるような、それでいてどこか勝利を確信したような笑みを浮かべた。「うふふ……♡ 私もです……レイニーくん♪ これでレイニーくんは、私の能力の『天使のファーストキス』と『天使の愛』が付与されたわ」 セラフィーナは満足げに細い喉を鳴らし、再び俺を胸元にぎゅぅっと引き寄せた。彼女から放たれる聖なるオーラが、祝福のように俺の身体を包み込んでいく。ステータスを覗くと、確かにそこには彼女との深い繋がりを示す特別な加護が刻まれていた。天使の唇という、神聖かつ甘美な対価を得たことで、俺と彼女の運命はもはや切り離せないほどに強く結ばれたのだ。「ん?」 魂の奥底で、見慣れない力が脈動を始めたのを感じた。もしこれが俺にとって迷惑で邪魔な呪いのようなものなら、即座に「王」の権能で強制解除するつもりだったが、どうやらその必要はなさそうだ。意識を集中して中身を確認してみると、そこには驚くほど膨大な天使の加護が並んでいた。どうやら、さっきまでの濃厚なキスと甘い時間は、これらを付与するための「儀式」でもあったらしい。「色々と恩恵があるでしょ♪ 私の気持ちよ♡」 セラフィーナは、上気した顔で満足そうに微笑んだ。この「ファーストキス」というスキルは、天使が生涯でたった一度しか使えない究極の秘奥。その分、与えられる恩恵は凄まじいものになる。付与する内容自体はセラフィーナ自身の意志で選べるようだが、彼女が俺に贈ったのは、考えうる限り最強の組み合わせだった。(こんな貴重なものを、出会ったばかりの俺に使っちゃって良かったのかな……) 内心でそんな困惑を抱きつつ、俺は少しだけ茶化すように口を開いた。「なぁ〜んだぁ、スキルの付与のためのキスだったんだ?」
last updateLast Updated : 2026-01-03
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69話 繋いだ手の温もりは、天上の光よりも眩しくて

 透き通るような白い肌は、血色の良さを物語るほのかなピンク色を帯びている。健康的な肉付きを感じさせるスラリとした手足は、柔らかそうな質感を予感させた。膝丈のワンピースから覗く魅力的な膝のラインが、彼女の若々しい可憐さをいっそう引き立てている。 初めて出会った時の、あの世界を断罪せんばかりの険しい表情はもうどこにもない。重圧と使命から解き放たれた彼女は、陽光を反射して輝く金髪のロングヘアーをさらりと揺らした。深い青色をした透き通る瞳には、好奇心と喜びが満ち溢れている。時折こぼれる無防備な笑顔は、まるで年相応の少女そのもので、思わず見惚れてしまうほどに可愛らしかった。「ここ、足元が悪いから……手を繋ぎましょうか」 セラフィーナが優しく目を細め、白く繊細な手を俺の方へと差し伸べてくる。俺はその掌に自分の手を重ね、そっと指を絡めた。伝わってくるのは、驚くほど柔らかく、そして安心するような温かな体温。(うわぁ……なんか、緊張するなぁ……) 繋いだ手の感触が妙に意識されてしまい、俺は誤魔化すように、隣を歩く彼女の横顔をチラチラと盗み見た。すると、視線に気づいたセラフィーナが、こちらを向いてふわりと微笑んだ。その笑顔は、洞窟の薄暗がりさえも一瞬で塗り替えてしまうほど、眩い光に満ちていた。「ふふ、どうしたの? レイニーくん」 繋いだ手に少しだけ力がこめられる。俺は照れ臭さを隠しきれないまま、彼女の優しさに導かれるようにして、共に地上への一歩を踏み出した。 三人を守っていた結界を解く前に、どうしても確かめておきたいことがあった。お互いに「好き」だとは言い合った。けれど、この関係はこれからどうなっていくのだろう。ただの主従か、それともお姉さん的な関係なのか。 繋いでいた手を少しだけ強く引き、もじもじと落ち着かない様子で彼女を促す。すると、セラフィーナは不思議そうにしながらも、優しく顔を近づけてくれた。「あのねっ、セラフィーナともっと仲良くしたいなぁ……」 結局、本当に聞きたかったことは喉の奥に引っ
last updateLast Updated : 2026-01-04
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70話 少女たちの嫉妬と、禁じられた私室への招待

「そうだったけど、今は違うぞ。ただの小娘になったからな。これからは、自由にさせてもらうのだっ♪」 リリスはふんぞり返るように胸を張り、両手を胸元で組んで偉そうに笑ってみせた。その子供っぽくも勝気な仕草は、見ていて思わず頬が緩んでしまうほどに可愛い。「そう。勝手にねぇ~……じゃあ勝手に、ここで暮らしていくのね」 俺はわざとらしく意地悪な笑みを浮かべ、リリスをニヤリと見つめ返した。ここは薄暗く、じめじめとした洞窟の奥深く。普通の少女として、一人で取り残される状況を想像させた俺の言葉に、リリスの表情が瞬時に凍りついた。「え……? ここで、一人で……?」 さっきまでの威勢は消えて、彼女の視線が不安げに周囲の暗闇を彷徨い始めた。その様子を隣で見ていたセラフィーナが、クスクスと鈴の鳴るような声で笑いながら、俺の手をさらに優しく握りしめた。「もぉ、そういう話じゃないっ。うぅ……ばかぁ。一緒に行くわ……」 さっきまでの威勢はどこへやら、リリスはしゅんとした様子で眉を下げ、縋るように俺の服の裾をぎゅっと掴んできた。その潤んだ瞳には、置いていかれることへの本気の恐怖が滲んでいた。「そろそろ帰らないと。ロディーとエリゼも帰るよ」 納得がいかない様子でこちらを窺っていた二人も、俺が促すと観念したように歩み寄ってきた。俺はセラフィーナの手を握り、リリスたちを円の中心に招き入れると、意識を城の自室へと飛ばした。 視界がふわりと揺らぎ、次の瞬間には、見慣れた天蓋付きのベッドと重厚な調度品が並ぶ俺の部屋に立っていた。 洞窟の湿った空気から、磨き上げられた床の乾いた匂いへと一気に切り替わる。けれど、俺の心には一つの疑問が浮かび上がっていた。(あれ? 王都の結界、それに城の結界も通り抜けられちゃったんだ?) 以前、捕らえた盗賊たちが「王都には強力な結界があって、転移では侵入できない」と話していたのを覚えている。ましてや王の住まう城の守りはそれ以上のはずだ
last updateLast Updated : 2026-01-05
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