輝くんが自然な動作で私の隣に並び、私の荷物をひょいと取り上げる。彼の大きな手が私の指先に触れた瞬間、パチリと小さな静電気が走ったような錯覚に陥った。 「あ、うん。いいよ」 「よかった。……栞、今日は髪、下ろしてるんだね。すごく綺麗だよ」 彼は私の耳元に顔を寄せ、甘く、低い声で囁いた。ふわりと漂う、彼特有の爽やかなシトラスの香りが私の理性を優しく溶かしていく。その大きな掌が私の腰に添えられ、自分の方へと引き寄せられる。 「……っ、輝くん。大学だよ?」 「……うん。つい」 腰の手が離れた。少し寂しくなってしまう自分に困りながら、私は代わりに彼の指を握る。輝くんがこちらを見て、笑った。 二人で中庭へと続く大階段を降りようとした、その時だった。 正門の方から、不自然なほどの静寂が広がっていくのが分かった。学生たちのざわめきが波が引くように消え、代わりに一台の黒塗りの高級リムジンが、重厚な音を立てて校舎の前に滑り込んできた。 その圧倒的な存在感に、私も輝くんも足を止める。 運転席から黒いスーツに身を包んだ、いかにも「有能」といった風情の男性が降りてきた。彼は一礼すると、後部座席のドアを恭しく開ける。 そこから現れたのは、一人の女性だった。 カツ、カツ、と石畳を叩くハイヒールの音が、静まり返ったキャンパスに凛として響き渡る。 プラチナブロンドに近い、透き通るような美しい金髪。陶磁器のように白く滑らかな肌。そして、すべてを見下すような、気高くも冷ややかなエメラルドグリーンの瞳。 彼女が纏っているのは、一目で最高級品だと分かるシャネルのスーツ。無駄のない洗練されたシルエットが、彼女の完璧なスタイルを際立たせている。 「(……っ!? なにあの美貌。二次元? 二次元から飛び出してきたの!?)」 私の脳内腐女子センサーが、これまでにないほど激しく警告を発した。これはただの美少女じゃない。物語を根底から揺るがす「最強のライバル」だけが持つ、圧倒的なオーラだ。 彼女は周囲の視線など一顧だにせず、まっすぐに階段の上にいる私たち――正確には、輝くんの方へと歩み寄ってきた。 「あら、こんなところで何をしているの? 輝様」 鈴を転がすような、けれど芯の通った誇り高い声。 その瞬間、私の隣にいた輝くんの空気が、ぴしりと凍りついたのが
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