攻略対象は私じゃない! ~腐女子が神視点で推しカプ見てたら、いつの間にか逆ハーレムの中心にいた件~의 모든 챕터: 챕터 71 - 챕터 80

125 챕터

第71話:最強のライバル令嬢・エリカ登場③

 目の前に突きつけられた、重厚な質感を放つ招待状。その金色の家紋が、夕暮れの陽光を反射して不気味なほどに輝いている。「……総帥の、誕生パーティー?」 私の震える声に、エリカ様は勝ち誇ったような笑みを深くした。「ええ。天王寺家に関わる政財界の重鎮たちが一堂に会する、一年で最も華やかで、そして最も残酷な社交の場。そこで、わたくしと輝様の婚約についても、正式な発表があるはずでしたのよ。本来であればね」 彼女の視線が、再び私を頭の先からつま先まで、値踏みするように舐めていく。その瞳に宿るのは、明確な蔑みと、それ以上の——揺るぎない自信。「輝様がそこまで仰るのなら、わたくしも無粋なことは致しませんわ。この泥棒猫さんが、どのような覚悟で輝様のお隣にいらっしゃるのか……その『格』というものを、わたくしが直々に拝見して差し上げますわ」「エリカ、いい加減に——」 輝くんがさらに一歩踏み出し、私の前に立ちはだかるようにして遮った。彼の背中から伝わってくる怒気は、もはや抑えきれないほどに膨らんでいる。「栞を君のくだらない遊びに巻き込むな。彼女にそんな場所へ行く義務はない」「あら、逃がして差し上げるつもり? 輝様。愛し合っているのでしょう? 一生を共にすると誓い合ったのでしょう? でしたら、彼女もいつかは通らなければならない道ではありませんか。それとも、わたくしたちの世界の空気に触れた途端に、息が止まってしまうような弱々しい小鳥さんだと、輝様も心の底では分かっていらっしゃるの?」 エリカ様の言葉は、氷の矢のように正確に輝くんの痛いところを突いていく。輝くんの握りしめた拳が、微かに震えているのが見えた。 その光景を見ながら、私の脳内では別の回路がフル稼働していた。「(……っ! これよ、これだわ! 『身分差』の恋における最大の障壁、超名門家のパーティー! 場違いな一般人ヒロインが、豪華絢爛なドレスに身を包んだセレブたちに冷たい視線を浴びせられ、シャンパンをかけられるあの大定番のやつ!! まさか私の人生で、この『獅子の
last update최신 업데이트 : 2025-12-23
더 보기

第72話:ドレスアップと逆転劇①

 運命の日は、皮肉なほどの日本晴れだった。 雲ひとつない青空を見上げながら、私の心の中はどしゃ降りの大雨警報が発令されていた。「……無理。やっぱり無理。お腹痛い。仮病使いたい」「はいはい、往生際が悪いよ。あんたが『行く』ってタンカ切ったんでしょ」 私の狭いワンルームアパートで、親友の神崎乃亜が仁王立ちしている。彼女の手には、今日のためにレンタルした(というか、乃亜がコネを駆使して調達してきた)ドレスの入ったガーメントバッグが握られている。 今日は、天王寺総帥の誕生日パーティー当日。 すなわち、私が「平民」として公開処刑されるかもしれない、運命の決戦日だ。「でもさぁ、乃亜。相手はあの西園寺エリカ様だよ? バックには有能執事付きだよ? 私みたいなパーカーとデニムが正装の腐女子が、太刀打ちできるわけないじゃん……」「だから、アタシがいるんでしょ。……それに、今日は強力な助っ人も呼んであるから」「助っ人?」 乃亜がニヤリと不敵に笑った、その時だった。 ピンポーン、とチャイムが鳴る。「あ、来た来た。どうぞー、開いてるわよー」 乃亜が勝手知ったる様子で返事をすると、ドアがガチャリと開き、狭い玄関に似つかわしくない長身の影が二つ、入り込んできた。「失礼する。……ここが月詠の部屋か」「お邪魔しまーす! 先輩、迎えに来ましたよ!」 現れたのは、フォーマルなスーツを着崩した七瀬陽翔くんと、逆に隙のないスリーピーススーツに身を包んだ氷室奏くんだった。「え、えええええ!? なんで二人がここに!?」 私が素っ頓狂な声を上げると、陽翔くんがキラキラした笑顔で靴を脱ぎながら答えた。「なんでって、乃亜さんに呼ばれたんですよ。『栞がピンチだから、男の手が必要だ』って」「俺は断ろうと思ったんだが……君が恥をかけば、同じゼミの俺まで恥をかくことになるからな」 奏くんはツンとした態度で言い訳をしているけれど、その手には何やら高級そうな紙袋が握られている。そして陽翔くんの手にも、大きなメイクボックスのようなものが。「ちょ、ちょっと待って! ここは女子の部屋だよ!? しかもこれから着替えとか……」「安心しろ。着替えを覗くような趣味はない」「そうそう! 俺たちはあくまで『仕上げ』の手伝いに来ただけですから!」 二人はズカズカと部屋に入り込み、私の生活感あふれる
last update최신 업데이트 : 2025-12-24
더 보기

第73話:ドレスアップと逆転劇②

 会場に一歩足を踏み入れた瞬間、私は光の洪水に飲み込まれた。 天井には、巨大なシャンデリアが幾千もの星のように煌めいている。床は大理石で磨き上げられ、壁には名画が飾られ、会場の隅々まで芳醇な花の香りと、弦楽四重奏の生演奏が満ちていた。 集まっているのは、テレビや雑誌でしか見たことのないような政財界の大物や、煌びやかなドレスに身を包んだ淑女たち。(……空気が、違う) 酸素の濃度まで違うんじゃないかと思うほどの、圧倒的な「上流階級」のオーラ。 普段の私なら、この場違い感に押しつぶされて、即座にUターンして逃げ出していただろう。 けれど、今は違う。「大丈夫。堂々としていて」 隣を歩く輝くんが、私の腰に手を回し、力強く支えてくれている。 タキシード越しの彼の体温と、耳元で囁かれる落ち着いた声。それが、震えそうになる私の足を地面に繋ぎ止めてくれる。 それに、私には強力な味方がついている。 乃亜が締めてくれたコルセット、陽翔くんが結ってくれた髪、そして奏くんが選んでくれたドレス。 彼らの想いが込められたこの姿は、今の私にとって最強の鎧だった。 私たちが会場の中央へと進むにつれ、ざわめきが波紋のように静まっていくのが分かった。 視線が集まる。 一つ、また一つ。やがて、会場中の視線が私たち二人に注がれる。(……見られてる。やっぱり、変なのかな……) 不安で俯きそうになった時、近くにいた老婦人の囁き声が聞こえた。「あら……あの方、どなた? 見たことのないお顔だけど……」「なんて美しいの。輝様のお隣にいても、一歩も引けを取らないわ」「あの深い青のドレス……まるで夜空のようだわ。とてもお似合いね」 え? 耳を疑った。嘲笑や蔑みの言葉が飛んでくると思っていたのに、聞こえてくるのは感嘆の声ばかりだ。「……聞こえた? 栞」
last update최신 업데이트 : 2025-12-25
더 보기

第74話:ドレスアップと逆転劇③

「……輝。それが、お前の選んだ『答え』か?」 天王寺総帥の声は、決して大きくはなかった。 怒鳴っているわけでも、威嚇しているわけでもない。 ただ、そこに存在するだけで周囲の空気を支配し、重力さえも捻じ曲げてしまうような、絶対的な強制力を持った「王」の声。「父さん……」 輝くんの喉仏が、ごくりと動くのが見えた。 私の腰を抱く腕に、痛いほど力が込められる。それは私を守ろうとする意思表示であると同時に、彼自身が恐怖と戦っている証のようにも思えた。(……この人が、ラスボス) 天王寺グループの頂点に立つ男。 輝くんが逃れようとしても逃れられない、血の呪縛の源。 総帥は、杖をつくこともなく、背筋を定規で引いたように伸ばして、ゆっくりと私たちの方へ歩み寄ってきた。 一歩、また一歩と近づくたびに、心臓が凍りついていくような錯覚に陥る。 彼の後ろには、黒いスーツに身を包んだ屈強な男たち――SP(セキュリティポリス)が数名、影のように付き従っている。彼らの耳にはインカム、懐にはおそらく護身用具。その一糸乱れぬ動きは、総帥という存在がいかに重要人物であるかを物語っていた。「……久しぶりだな、輝」 総帥が私たちの目の前、わずか数メートルの距離で足を止めた。 その視線は、輝くんだけを捉えている。隣にいる私など、路傍の石ころか、あるいは壁のシミであるかのように、完全に無視されていた。「誕生日の祝いに来たわけではなさそうだ。……そのふざけた格好と、隣の『異物』を見る限りではな」 異物。 私に向けられた言葉だと理解するのに、数秒かかった。 人間扱いすらされていない。「言葉を慎んでください、父さん」 輝くんが、低い唸り声を上げるような声で反論した。 彼は一歩前に出て、私を背に庇う。「彼女は異物じゃない。俺が……天王寺輝という人間が選んだ、唯一のパートナーです
last update최신 업데이트 : 2025-12-26
더 보기

第75話:ドレスアップと逆転劇④

 パーティー会場の隅、少し人目が避けられるテラスへの出入り口付近。 そこへ避難した私たちは、しばらくの間、言葉もなく寄り添っていた。 夜風が、火照った頬と震える体を冷やしていく。 総帥が去った後の会場は、何事もなかったかのように再び談笑と音楽に包まれている。けれど、私たちに向けられる視線の質が変わったことは明らかだった。 好奇心、同情、あるいは「終わったな」という冷ややかな嘲笑。 輝くんの手が、私の肩を抱く力を強めた。「……ごめん」 絞り出すような声だった。「せっかく綺麗にしてきてもらったのに。……こんな、最悪な夜にしてしまって」 彼は悔しげに唇を噛み締め、俯いた。 その表情は、傷ついた子供のように脆く見えた。いつも私を守ってくれる「王子様」の、痛々しい素顔。 私は、彼の胸にそっと額を預けた。 タキシードの滑らかな生地の向こうから、彼もまた震えているのが伝わってくる。「謝らないで、輝くん」「でも……父さんの言葉は、君を傷つけた」「うん。……悔しかったよ。悲しかった」 正直に言う。強がっても仕方がない。あの冷徹な瞳に見下ろされた時の恐怖は、まだ指先の震えとして残っている。「でもね」 私は顔を上げ、彼の瞳をまっすぐに見つめた。「私、来てよかったと思ってる」「え……?」「だって、輝くんがどれだけ大変な場所で戦ってるのか、少しだけ分かったから。……それに」 私は、彼の頬に手を添えた。「輝くんが、お父さんに逆らってまで私を守ろうとしてくれたこと。……一生、忘れないよ」「栞……」「だから、後悔なんてしてない。……私、輝くんの彼女でよかった」 精一杯の笑顔を作って見せると、彼の瞳が潤み、揺れた。 次の瞬間、私
last update최신 업데이트 : 2025-12-27
더 보기

第76話:SP×SPの妄想暴走①

天王寺家の本邸、大広間。 数百人の招待客がひしめく煌びやかな社交場は、先ほどの総帥による「査定」の余韻を色濃く残していた。表面上は穏やかな談笑と弦楽四重奏の優雅な音色に包まれているものの、私と輝くんの周囲だけは、まるで透明な結界が張られたかのように空気が張り詰めている。 遠巻きに向けられる視線には、好奇心と同情、そして「天王寺家の異端児とその恋人」という、腫れ物を見るような色が混じっていた。 「……大丈夫? 栞」 隣を歩く輝くんが、私の顔を覗き込む。 腰に回された腕は、テラスの入り口で誓い合った時と同じように力強い。けれど、タキシード越しに伝わる指先は、微かに強張っていた。彼もまた、父親という巨大な壁と、この家が持つ特有の重圧と戦っているのだ。 「う、うん。大丈夫……」 私は強がって頷く。 嘘ではない。さっき輝くんと抱き合ってチャージした勇気は、まだ胸の奥で温かく灯っている。しかし、それとは別に――私の本能が、けたたましく警報を鳴らしていた。 視線が、痛い。 社交界の人々が向ける好奇の目ではない。もっと物理的で、粘着質で、こちらの急所を探るような、プロの視線だ。 会場の要所要所に配置された、黒いスーツの男たち。SP(セキュリティポリス)。 総帥が去った後も、彼らは微動だにせず、鋭い眼光で会場全体を――とりわけ私たちを、監視し続けている。 怖い。やっぱり、ラスボスの親衛隊だ。隙を見せれば即座に別室へ連行され、『手切れ金だ』と封筒を突きつけられる展開に違いない。BL小説の読みすぎによる偏った知識が、恐怖を加速させる。 胃がキリキリと痛み出し、輝くんの腕にしがみつこうとした、その時だった。 「……B班、配置につけ」 「了解(ラジャー)」 すぐ近くの柱の陰から、低く短いやり取りが鼓膜を震わせた。 弾かれたように視線を向けると、そこには二人のSPが立っていた。 一人は、三十代半ばとおぼしき、銀縁眼鏡をかけた知的な男性。仕立ての良いダークスーツを着こなし、インカムに手を添える仕草には、現場を統率する「リーダー」特有の冷徹な落ち着きが漂う。 もう一人は――さっき、総帥が去り際に私と目が合った、あの背の高い青年だった。 若く、精悍な顔つき。前髪を少し長めに遊ばせた黒髪の隙間から覗く瞳は、飢えた狼のよ
last update최신 업데이트 : 2025-12-28
더 보기

第77話:SP×SPの妄想暴走②

(なんて熱い視線……! これは私を見ているんじゃない。私を通して、その背後にある『任務』という名の運命(さだめ)を見据えているのね……! ああ、その禁欲的なスーツの下で、どれほどの情熱を隠しているというの!) 「ふふ……っ」 口元から、抑えきれない笑みが漏れた。 マスクをしていないことが悔やまれる。ニヤけそうになる口角を、必死にシャンパングラスで隠した。 「し、栞……? 顔色が悪いよ? やっぱり、父さんの言葉がショックで……」 「ううん、違うの輝くん。……私、見つけちゃったかもしれない」 「え? 何を?」 「この、冷たく閉ざされた鳥籠(パーティー会場)の中に咲く、一輪の……いえ、二輪の徒花を……!」 うっとりと目を細め、SPたちを見つめる。 眼鏡のリーダーが、耳元のインカムに手を当て、何やら指示を出している。手袋をした指の動きが、あまりにも扇情的で美しい。それを受けた青年SPが短く頷き、鋭い視線を巡らせる。獲物を狙う猛禽類のような横顔のラインが、どうしようもなくセクシーだ。 (ああ、尊い……! 私が今、ここで彼らに捕縛されたら、あの手錠が使われるのね? そして別室で尋問……その時、リーダーは冷静に問い詰め、青年は荒っぽく机を叩く……完璧な役割分担(グッド・コップ・バッド・コップ)……!) 脳内妄想は留まることを知らず、暴走を始めていた。シリアスな状況であればあるほど、逃避行動としての妄想は加速する。これは私の防衛本能なのだ。 「……ねえ、栞。君、今、どこを見てるの?」 輝くんの声のトーンが落ちる。 ハッとして隣を見ると、彼は私の視線の先を追い、眉をひそめていた。そこにあるのは、ただ無愛想に立っているだけの、むさ苦しい男たちだ。 「あ、あのSPたちがどうかした? ……まさか、怖いの?」 輝くんが私を庇うように一歩前に出る。 違う、そうじゃない。邪魔しないで輝くん。今、眼鏡のリーダーが中指でブリッジを押し上げるという神仕草をしたところなのに! 「ち、違うの輝くん! 怖いんじゃないの! むしろ……その逆というか……!」 「逆?」 「見て、あの身長差! 体格差! そして漂う『ビジネスパートナー以上』の信頼関係のオーラ! ……ここが戦場なら、間違いなく背中を預け合って死ぬタイプよ!」 「……は
last update최신 업데이트 : 2025-12-29
더 보기

第78話:SP×SPの妄想暴走③

コツ、コツ、コツ。 硬質な靴音が、不気味なほど正確なリズムで近づいてくる。私の熱視線――という名の不審なガン見――に気づいたSP二人が、ついにこちらへ向かって歩き出したのだ。 (ひっ……! 来た! 本物が来た!) 慌ててシャンパングラスを口に運んだが、中身は空だった。動揺をごまかす手段すら失い、迫り来る「萌えの塊」を直視することしかできない。 近くで見ると、その破壊力はさらに増していた。 眼鏡のリーダーは、肌が陶器のように白く、冷徹な美貌がいっそう際立つ。スーツの上からでも分かる、細身だが鍛え上げられた肉体美。対する青年SPは、荒削りな野性味が溢れている。シャツのボタンを一つ開けた首筋には、じっとりと汗が滲んでいた。 (……汗! 労働の汗! しかもインカムのコードが首筋を這うそのライン……エロすぎる!) 脳内シャッターが高速連写される中、二人は私たちの目の前でピタリと足を止めた。 物理的な距離、わずか1メートル。 SP特有の威圧感と、ほのかな整髪料と煙草の混じったような「大人の男」の匂いが漂ってくる。 「……失礼いたします」 眼鏡のリーダーが、温度のない声で口を開いた。レンズの奥の瞳が、私を冷ややかに見下ろしている。 「先ほどから、こちらの警護対象(ターゲット)……失礼、お客様を凝視されているようですが。何か不審な点でもございましたか?」 慇懃無礼。その言葉の意味を擬人化したような態度だ。「不審なのはお前だ」という言葉を、オブラートに包んで突きつけられている。 「あ、い、いえっ! 不審な点なんて滅相もないです! むしろ完璧すぎて! その隙のなさが最高というか!」 ブンブンと首を横に振りながら、しどろもどろに答える。私の挙動不審さに、隣の青年SPが眉間の皺を深くした。 「おい、アンタ。さっきからニヤニヤして何なんだ。俺たちの顔になんかついてんのか?」 「コラ、言葉を慎め。お客様だぞ」 「チッ……すいませんね」 青年が舌打ちし、リーダーがそれを嗜める。その一連の流れ。「狂犬を飼い慣らす冷静な飼い主」という構図。 (んぐっ……! 尊い……ッ! ご褒美ですありがとうございます!) 感激のあまり、胸の前で両手を組み合わせた。 瞳孔は開ききり、頬は紅潮し、荒い息を吐いているに違いない。客観的
last update최신 업데이트 : 2025-12-30
더 보기

第79話:SP×SPの妄想暴走④

侮辱されたことへの怒りで、彼の手が握りしめられる。けれど、ここで怒鳴り合えばパーティーは台無しになる。私がこれ以上、彼に迷惑をかけるわけにはいかない。 何か言い返そうと口を開きかけた時、輝くんが一歩前に出て、私を背に庇った。そして、冷や汗を流しながらも精一杯の「虚勢」を張って、とんでもない言い訳を口にしたのだ。 「ち、違います父さん! 栞は……色目を使っていたわけじゃありません!」 「ほう? では、あのいやらしい目つきは何だと言うんだ」 「あ、あれは……!」 輝くんが、一瞬だけ私を見て、それから覚悟を決めたように総帥を見据えた。 「彼女は……その……芸術的な感性が、人一倍鋭いんです!!」 「……は?」 総帥が初めて呆気にとられた顔をした。SP二人もポカンと口を開けている。 私も驚いた。芸術的? 私が? BL妄想が? 輝くんは止まらなかった。もう、勢いで押し切るしかないと悟ったのだろう。彼は真剣な顔で、ペラペラと嘘(という名の優しい解釈)を並べ立てた。 「そ、そうなんです! 栞は、この……配置されたSPたちの、一糸乱れぬ動き! そして、父さんを守るという鉄壁のフォーメーション! その『機能美』に、深く感動していただけなんです!」 「機能美……だと?」 「はい! 彼女は、美しいものを見ると、つい没頭してしまう癖がありまして……。決して、やましい気持ちなどありません。むしろ、天王寺家の警備体制の素晴らしさに、芸術的観点から敬意を表していたのです!」 シーン。 広い会場に、奇妙な静寂が落ちた。 私は輝くんの背中を見つめながら、心の中で土下座した。 ごめん、輝くん。違うの。私が感動していたのは「機能美」じゃなくて「関係性」なの。「鉄壁のフォーメーション」じゃなくて「密着度」なの。 でも、そんな健気な彼氏の必死のフォローを、無駄にするわけにはいかない。私は震える足で一歩前に出ると、女優になったつも
last update최신 업데이트 : 2025-12-31
더 보기

第80話:SP×SPの妄想暴走⑤

数十分後。 輝くんが知人に挨拶をする間、私は一人、会場の隅にある化粧室へ向かっていた。緊張が解けて、どっと疲れが出たのだ。冷たい水で顔を洗いたかった。 長い廊下を歩いていると、角を曲がった先の通用口付近で人影が見えた。 黒いスーツ。さっきの、青年SPだ。 彼は壁にもたれかかり、大きく息を吐きながら、ネクタイを緩めていた。手にはスマートフォンが握られている。 (あ、休憩中かな……) 見てはいけないものを見た気がして、引き返そうとした時。 彼の独り言が、静かな廊下に響いた。 「……はぁ。マジで焦ったわ。あの女、鋭すぎだろ」 え? 足が止まる。彼はスマホの画面を見つめながら、ボソボソと呟き続けている。 「『冷徹上司×狂犬部下』とか……解釈一致すぎてビビるわ。俺たちがワザとやってる『営業』を見抜くとはな……」 ――はい? 脳内処理が追いつかない。 解釈一致? 営業? その単語は、カタギの人間が使う言葉ではない。こちらの世界の……「沼」の住人の言語だ。 青年SPは、誰かにメッセージを送っているようだった。その指先が、高速でフリック入力をしている。 「『悲報。パーティー会場にガチ勢の腐女子が出現。俺たちの主従ムーブが完全にロックオンされた件』……っと」 送信ボタンを押して、彼はニヤリと笑った。 その笑顔は、さっきまでの「狂犬」のそれではない。もっと親しみやすく、そしてどこか「同志」の匂いがする笑顔だった。 (……まさか) ゴクリと唾を飲み込む。 震える足で、一歩踏み出す。これは、確認しなければならない。私のオタクとしての本能がそう告げている。 「あ、あの……」 声をかけると、青年SPはビクッとして顔を上げた。
last update최신 업데이트 : 2026-01-01
더 보기
이전
1
...
678910
...
13
앱에서 읽으려면 QR 코드를 스캔하세요.
DMCA.com Protection Status