自嘲気味に唇が歪む。その表情が、以前露天風呂で見せた切ない顔と重なり、胸が締め付けられた。 「軽蔑はしない。でも、次はやめてほしい」 手を借りていながら言うのは、気が引けた。それでも、黙って受け入れたことにはしたくなかった。彼が私を見て、小さく頷く。 「……分かった。もうしない」 彼は息を吐き、再び歩き出した。足取りはさっきより遅い。私が遅れないか、何度か振り返ってくれた。 「……月詠」 「ん?」 「怖いなら……もっと近くに来ていい」 彼が歩幅を狭めた。並んで歩くと、浴衣から微かに石鹸の香りがした。 「歩きにくければ、止まる」 「ありがとう。もう少しで大丈夫だと思う」 木々の切れ目に、遠くの灯りが見えた。私は足を置くところを確かめてから、手を離した。 「……分かった」 彼も小さく笑った気配がした。森の暗闇は相変わらず深かったけれど、足元を照らしてくれる光のおかげで、震えは止まっていた。 砂利道は徐々に登り坂になり、鬱蒼とした木々の枝がトンネルのように頭上を覆う。懐中電灯の頼りない光だけが、世界を切り取っていた。 静かだ。虫の音さえ、私たちの気配に息を潜めたように止んでしまった。聞こえるのは、砂利を踏む足音と、少しだけ早くなっている私の呼吸音だけ。 さっき借りた手の温かさが、まだ指に残っていた。助けられて嬉しいことと、同じ気持ちを返せないことが、一緒にある。どちらかをなかったことにすれば楽なのに、それはもうできなかった。 奏くんが、道の曲がるところで私を待つ。 「その先、石が浮いてる」 「うん」 並んで歩き直し、しばらくしてから口を開いた。 「奏くん、お父さんとは……その、いつもあんな感じなの?」 口に出してから地雷だと気づいたが、奏くんは怒る様子もなく、ふう、と息を吐いた。 「仲が悪いというより……俺が一方的に反発しているだけだ」 「反発?」 「父は優秀な研究者だが、家庭人としては落第点だ。母や俺のことなど、自分の研究対象の一部くらいにしか思っていない」 淡々とした口調に、深い諦めが滲む。教室で万年筆のことを暴露された時の、傷ついたような表情が脳裏をよぎった。 「俺は……あんな風にはなりたくない。大切な人を蔑ろにして、自分のエゴだけを押し付けるような大人には」 奏くんが足を止め、木々の
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