暗闇に包まれた資料保管庫。 外では激しい雨風が吹き荒れ、時折光る稲妻が二人の影を長く伸ばす。書架に押し付けられたまま、腕の中で身動きが取れない。「んっ……ふ……っ!」 唇が離れると、銀色の糸が引いた。 スマホのライトを反射した輝くんの瞳が、濡れたように光っている。そこにあるのは紛れもない『男』の色気と、私を欲する熱情だ。「……顔、真っ赤」「だ、だって……こんな場所で……!」「こんな場所だから、燃えるんじゃないの? 栞の好きな同人誌でも、よくあるシチュエーションでしょ?」「うっ……!」 痛いところを突かれた。確かに『停電・密室・二人きり』はBLの鉄板ネタ。『不安がる受けを攻めが慰めるうちに……』という展開は、穴が開くほど読んできた。だが、それを現実の自分――しかも経験値ゼロの身で実践するなど、話が別すぎる。「……現実は、妄想よりも刺激的?」「刺激的すぎます……! 心臓が持ちません……!」「まだ序の口だよ」 手が浴衣の帯にかかる。スルリ、と指が入り込む感触に背筋がゾクリと粟立った。「か、輝くん、待って! 本当に待って!」 必死でその手を押さえる。「ど、どうしたの?」「私、その……こういうの、本当に初めてで……! 心の準備とか、ムードとか、あとお風呂入ってないとか、色々気になっちゃって……!」 必死の言い訳だが、すべて本音だった。好きな人と結ばれたい気持ちはある。けれど、こんなハプニング的な状況で、埃っぽい資料室で初体験など、乙女心が許さない――というよりパニックで無理だ。「……ぷっ」 輝くんが吹き出した。「お風呂って&hellip
최신 업데이트 : 2025-12-13 더 보기