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第80話:SP×SPの妄想暴走⑤

Penulis: 花柳響
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-01 20:00:54

数十分後。

輝くんが知人に挨拶をする間、私は一人、会場の隅にある化粧室へ向かっていた。緊張が解けて、どっと疲れが出たのだ。冷たい水で顔を洗いたかった。

長い廊下を歩いていると、角を曲がった先の通用口付近で人影が見えた。

黒いスーツ。さっきの、青年SPだ。

彼は壁にもたれかかり、大きく息を吐きながら、ネクタイを緩めていた。手にはスマートフォンが握られている。

(あ、休憩中かな……)

見てはいけないものを見た気がして、引き返そうとした時。

彼の独り言が、静かな廊下に響いた。

「……はぁ。マジで焦ったわ。あの女、鋭すぎだろ」

え?

足が止まる。彼はスマホの画面を見つめながら、ボソボソと呟き続けている。

「『冷徹上司×狂犬部下』とか……解釈一致すぎてビビるわ。俺たちがワザとやってる『営業』を見抜くとはな……」

――はい?

脳内処理が追いつかない。

解釈一致? 営業?

その単語は、カタギの人間が使う言葉ではない。こちらの世界の……「沼」の住人の言語だ。

青年SPは、誰かにメッセージを送っているようだった。その指先が、高速でフリック入力をしている。

「『悲報。パーティー会場にガチ勢の腐女子が出現。俺たちの主従ムーブが完全にロックオンされた件』……っと」

送信ボタンを押して、彼はニヤリと笑った。

その笑顔は、さっきまでの「狂犬」のそれではない。もっと親しみやすく、そしてどこか「同志」の匂いがする笑顔だった。

(……まさか)

ゴクリと唾を飲み込む。

震える足で、一歩踏み出す。これは、確認しなければならない。私のオタクとしての本能がそう告げている。

「あ、あの……」

声をかけると、青年SPはビクッとして顔を上げた。
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