青年SP――名札には『高橋』とある――は、ニカっと人懐っこい笑みを浮かべた。さっきまでの狂犬のような鋭さはどこへやら。今は完全に、イベント会場で意気投合したオタク仲間のような顔をしている。 「じゃあ、さっきのリーダーさんとのやり取りは……?」 「ああ、あれっすか? あれはまあ、半分地で半分演技っすね」 「演技?」 「うちのリーダー、あんな感じで超カタブツなんすけど、たまに俺が反抗的な態度取ると、すげーいい顔するんすよ。『仕方ないな』みたいな、呆れと包容力が混ざった顔。……それが見たくて、つい煽っちゃうんすよね」 高橋さんが、悪戯っぽく舌を出した。 (……っ!! な、なにそれ尊い!! 無自覚天然タラシの上司と、それを計算づくで煽って楽しむ確信犯の部下!? 高度すぎる……! 天王寺家の警備班、人材の宝庫かよ……!) 感動のあまり、震える手で彼の腕(スーツ越し)を握りしめそうになり、ギリギリで理性を働かせて止める。 「すごい……すごいです高橋さん! その観察眼と実行力、まさにプロフェッショナル……!」 「へへっ、恐縮っす。……まあ、仕事は退屈なんで、こういうとこで楽しみ見つけないとやってらんないんすよ」 彼はそう言って、ポケットからタブレット菓子を取り出し、口に放り込んだ。その仕草すら、どこか「手慣れた男」の色気が漂っていて悔しい。 「あ、そうそう。これ、あげるっす」 高橋さんは懐を探ると、一枚の名刺……ではなく、小さなメモ用紙を私に渡してきた。達筆な文字でIDのようなものが書かれている。 「俺の裏垢(SNS)っす。今日の『上司観察日記』、後でアップするんでよかったら見てください」 「えっ、いいんですか!?」 「同志は助け合いっすから。……それに」 彼はふと真面目な顔になり、会場の方角――総帥や輝くんがいるであろう場所を見つめた。 「アンタの彼氏……輝様、だっけ? あの方、すげー頑張ってると思うっすよ」
آخر تحديث : 2026-01-02 اقرأ المزيد