「うん!」 「それに……父さんが連れてたあのSPたち。なんか妙な動きをしてたのが気になるしな」 輝くんが鋭い視線を会場の奥へと向ける。 そこには、先ほど私が「主従萌え」を感じ取ったあのSPを含め、数人の黒服たちが無言で配置についているのが見えた。 彼らの視線は、警備というにはあまりにも粘着質に、私たち――特に輝くんを監視しているように見えた。 「(……確かに。あのSPさん、ただのモブキャラじゃない気がする……)」 私のオタク的直感が、新たな波乱の予感を告げていた。 ドレスアップという魔法で掴んだ自信と、深まった絆。 それを武器に、私たちは再び光と視線の渦巻くパーティー会場へと足を踏み入れた。 天王寺家の本邸、大広間。 数百人の招待客がひしめく煌びやかな社交場は、先ほどの総帥による「査定」の余韻を色濃く残していた。表面上は穏やかな談笑と弦楽四重奏の優雅な音色に包まれているものの、私と輝くんの周囲だけは、まるで透明な結界が張られたかのように空気が張り詰めている。 遠巻きに向けられる視線には、好奇心と同情、そして「天王寺家の異端児とその恋人」という、腫れ物を見るような色が混じっていた。 「……大丈夫? 栞」 隣を歩く輝くんが、私の顔を覗き込む。 腰に回された腕は、テラスの入り口で誓い合った時と同じように力強い。けれど、タキシード越しに伝わる指先は、微かに強張っていた。彼もまた、父親という巨大な壁と、この家が持つ特有の重圧と戦っているのだ。 「う、うん。大丈夫……」 私は強がって頷く。 嘘ではない。さっき輝くんと抱き合ってチャージした勇気は、まだ胸の奥で温かく灯っている。しかし、それとは別に――私の本能が、けたたましく警報を鳴らしていた。 視線が、痛い。 社交界の人々が向ける好奇の目ではない。もっと物理的で、粘着質で、こちらの急所を探るような、プロの視線だ。 会場の要所要所に配置された、黒いスーツの男たち。警護スタッフ(SP)。 総帥が去った後も、彼らは微動だにせず、鋭い眼光で会場全体を――とりわけ私たちを、監視し続けている。 怖い。やっぱり、ラスボスの親衛隊だ。隙を見せれば即座に別室へ連行され、『手切れ金だ』と封筒を突きつけられる展開に違いない。BL小説の読みすぎによる偏った知識が、恐怖を加速
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