翌朝――離れで1人、メイドが運んできた粗末な料理を口にしていると、こちらへバタバタと向かって来る複数の足音が聞こえてきた。「お待ち下さい! ジークハルト様!」突然叔父の声が廊下に響き渡る。「いいえ! とにかくフィーネに会うまでは帰りません!」ジークハルト様の声だ!すると次の瞬間――ガチャッ!扉が突然開けられ、部屋に人がなだれ込んできた。「ジークハルト様!」慌てて立ち上がると彼は一瞬驚いた様に目を見開き……次の瞬間、駆け寄ってくると私を強く抱きしめてきた。「良かった……。フィーネ」「ジークハルト様……?」ひょっとして彼は私が昨日、倉庫に捕らわれていた事を知っているのだろうか? それで私の身を案じて……?「そ、そんな馬鹿な!」ジークハルトに抱きしめられているから状況はよく分らなかったが、叔父の驚いた声が扉の方から聞こえた。「そんな……! 確かに閉じ込めたはずなのに……!」悔しそうなヘルマの声が聞こえる。「およしなさい! 滅多なことを口に出してはいけません!」ヘルマを叱責するのは夫人だ。「貴方たちは嘘つきだ! 何がフィーネは出掛けているだ。ちゃんとここにいるではないか!」ジークハルトは私を抱きしめたまま叔父家族に怒鳴りつけた。その言葉で確信した。彼は私の身を案じてこんな朝早くから駆けつけて来てくれた。そして私が昨夜ユリアンによって助け出されたことを知らない叔父家族はジークハルトに私が行方不明なのを知られない為に出掛けていると嘘を……。「ジークハルト様……。会いに来て下さって嬉しいです……」彼の胸に顔をうずめ、私も強く抱きしめ返した。「フィーネッ! どうやってあの倉庫から抜け出したのよ! 確かに外側から鍵を掛けて閉じ込めたのに!」嫉妬に狂ったヘルマは先程自分の母に警告を忘れて、自分が私に対して行った事を自ら暴露した。「何だって!? ヘルマ嬢がフィーネを閉じ込めたのか!?」私から身体を離したジークハルトは怒気を含んだ声でヘルマを追及する。「ち、ちが……そ、それは3人のメイド達が勝手にやったことで……」「ならそのメイド達を連れて来るんだ! 早く!」ジークハルトの迫力に押されたのか、ヘルマは部屋を飛び出していく。「フィーネ……やはり君は閉じ込められていたんだね……」優しく私の髪を撫でていたジークハルトは、次に背
最終更新日 : 2025-10-31 続きを読む