古塚弓弦は、何も見えはしない暗闇の中に再び入れられた。もう何度目か、朝昼夜の3食の食事以外は外に出ることが許されず、顔を洗うことも風呂に入ることもできずに何日も過ごしている。 当初は当然反発心も持っていたが、自身の髪の毛や体から漂う酸っぱい臭い、祠と呼ばれる狭い部屋から漂うカビ臭さにも慣れた頃にはもう考える気力を失っていた。 肉や魚が入っていない味気のない料理を毎食食べ、毎日同じ黒袴を着て、毎日暗闇で過ごす。眠っては起きて、起きてはまた眠り、同じことを繰り返すだけの時間が過ぎるなかで、気がつけばというよりも気がつかないままに時間の感覚も失われていた。 ただただ長い暗闇の中を過ごしている。今、目を開けているのか閉じているのかさえ弓弦は判別がつかなくなっていた。 抵抗していた最初の頃は、「成人の儀」とは何か、なぜ結婚式で着るような黒い袴を着なければいけないのか、その目的と手段について何度も何度も祖父や祖母、そして母親に問いただした。ところが、返ってくるのは無言の訴えだった。 一度激昂して小さなちゃぶ台を両手で思い切り叩いたことがある。お椀や皿が木の床へと落ちて汚れる。それでも3人とも怒るなんてことはなく、まるで感情が無くなったかのように無表情で弓弦を6つの瞳がただただ見つめていた。母親がたまにする「遠い目」だった。 弓弦はその目に見つめられて心が冷たくなっていくのを感じていた。何も言葉は浮かばなかった。正確に言えば、口から声を発することさえ怖かった。何も言えないでいると、祖母は急に立ち上がった。落ちた食器を片付け床を丁寧に拭くと、また同じ料理を弓弦の目の前に置く。そして、じっと見つめるのだ。弓弦が仕方なく箸を取り、食べ始めてようやく視線は外された。砂のような味の料理を無理くり胃袋に流し込んだことを覚えている。 異常だと感じた。異常だと思っていた。 祖父も祖母も今まで一度だってそんな目を弓弦に向けることなどなかった。滅
Last Updated : 2026-02-11 Read more