乃愛の手が美月の手を握り返してきた。両手で力いっぱい引っ張り上げると、大量の蟲の絨毯の中から乃愛の体を引き起こすことができた。蟲がボタボタと体中から離れていき、美月は新鮮な空気を大きく吸い込んだ。 「乃愛! 行こうっ!」 階段目掛けて乃愛の手を引っ張るもの、|重石《おもし》のように動かない。どう引っ張ろうにも乃愛は体を動かすことができないのか、全く進むことができなかった。 「古塚さん! 先に行ってください!」 二俣が乃愛を後ろから抱き留めた。美月は乃愛を見つめる。暗くて表情までは読み取れないが、首の辺りからかなり血が出ているのはよくわかった。 「そんな! でも──」 「早く祠に人形を! 呪いを終わらせてください!」 掴んだ手を離すことができなかった。乃愛の手は温かい。離してしまえばもう二度とこの温もりを感じることはできないのではないか。そんな予感が頭をよぎった。 もう二度と──乃愛の笑顔を見ることはできないかもしれない。 白無垢の女が再び動き出す。大量の蟲のざわめきが押し寄せてくる。 「行ってください! 今、呪いを止めないと誰も止めることができない! 早く!!」 二俣の言葉に押されて美月は、前を向くと乃愛から手を離した。 (ごめん──乃愛……ごめん……) 弓矢を片手に弓袋をぎゅっとつかんで、美月は急いで祠へと向かった。 『いつも言ってるでしょ。みーちゃんはみーちゃんでいいけど、一人になろうとするのはダメだって。みーちゃん、一人になると何するかわからないんだから』『そう。恋人を作っちゃおう作戦です!
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