「永久に先、君をば待たん暗闇に、花の塵ゆく定めとしても」 二俣が白無垢の恋唄の句をすらすらと読んだ。 「先生、覚えたんですか?」 「あっ、ああ。僕もあのあとSNSで結構調べたからね。国語の教師ではないけど、短歌のリズムだから覚えやすいし。この句が仮に白無垢の女が作った句だとしたら、永久ってところが気になるんだ。なんか強い執念を感じて」 それは美月も最初に感じた違和感だった。誰かを好きになるとは、きっとそういうことなのだろうと思い、すっかり忘れてしまっていたが。 「化け物、幽霊。ほら、強い執念がそういうものを生むとも言う。別に日本でなくても世界中にそういう話はあるしね」 「……一緒になるはずだったのにそうなる前に亡くなってしまったから、その執念が白無垢の化け物を生んだ……ということですか?」 「そう解釈できるかもしれないってちょっと思ったんだけど……300年も経ってたらその間に何が起きてるかわからないから」 カーブを抜けると、見渡す限りの田園風景を車は加速していく。前にも後ろにも車はなく、ギリギリ二車線の狭い道を走るのは美月たちの乗っている車だけだった。 田舎らしい田舎、だと美月は思った。1度しか訪れていないはずなのになぜか鮮明に覚えている。何度もトンネルをくぐり抜け、その度に違う景色が広がっている。 田んぼに畑に、鬱蒼と茂る森、蛇のようにうねる川にぽつんと建てられた家々。都会の喧騒から離れれば離れるほど、白無垢の噂話やSNSなどとは無縁の世界にいるような気がしていた。だけどスマホを開けばすぐに繋がってしまう。どこにいても呪いは地続きだと言えた。 (子どものときは電車の窓に張り付いて見ていたっけ) 死後婚。旧家。白無垢の女。
Last Updated : 2026-03-13 Read more